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安孫子賞と北農賞

2021-12-16 10:36:41 | 恵庭散歩<本のまち、私の本づくり>

安孫子賞と北農賞

北海道の農業分野に係わる歴史ある表彰事業(公益財団法人北農会)がある。「安孫子賞」と「北農賞」の二つだ。

安孫子賞」は、(1)北海道において農業に従事し、経営・技術に創意工夫を加え、堅実な経営を築き、将来の発展が期待できる農業者、(2)北海道において農業の指導・研究・普及などに従事し、誠実な実践活動により農業改良に顕著な成績を上げた人に贈られる。北海道農事試験場長、北海道農会長を歴任した実践の農学者(農民の父と称えられた)安孫子孝次氏の名を頂いた賞で、全道から毎年1~2名が表彰の栄誉に浴する。

北農賞」は、(1)「北農」の最近1年間に搭載された論文・資料等の中で普及上優秀なもの、(2)育成品種で顕著な実績をあげているもの、(3)技術・事務上の創意工夫・考案等により試験研究の推進に貢献したものに贈られる。

両賞の贈呈式は、例年12月16日(安孫子孝次氏の誕生日)京王プラザホテル札幌で開催されている。贈呈式では、受賞者の業績紹介の後、北農会会長から受賞者各人に賞状と記念品が贈られ、来賓の北海道農政部長及び北海道農業研究センター所長等から祝辞が述べられる。

両賞は、「安孫子顕彰会」を引き継いだ「安孫子賞・北農賞表彰基金協賛会」が110法人及び308名の協賛を得て創設した特別基金を基に運用されている。地味ではあるが、価値ある伝統の表彰事業として今後も継続されることを期待したい。

◆「北農会」と「北農」誕生の経緯

明治政府は、1869年(明2)北海道に開拓使を置き北海道開拓の第一用務は農業開発であるとした。開拓移住、欧米からの農業技術導入を進めるとともに、本道の気象条件に対応できる農業を確立するためには技術開発が大事であるとの認識で、亀田郡七飯村、上川郡旭川町、札幌郡白石村、十勝国帯広市などに順次農事試験場を設け試験研究を推進した。

明治三十年代に入り農事試験場は「報告」「彙報」「時報」の出版物を発行することになった。「報告」は試験成績の学術的発表、「彙報」は試験結果を総合して記述した指導上の指針、「時報」は指導上特に必要と認められる事項の試験結果を平易に記述して農業者に情報提供することを目的にした。

農事試験場では、「試験成績を一番先に届けたいのは農家の圃場である」との意図で、不定期発行の「時報」を市町村役場や農会などにまとめて送り、訪ねてくる農家に持って帰ってもらうようにしていた。しかし、それも心もとなく、有効な配布方法はないかと議論していた折、「成績をまとめた資料は不定期でなく、月刊として速報し、実費で買ってもらう。そうすれば目を通すだろうし、大切にするに違いない」との提案があり、「北農」として発行することになった。

「北農」第1巻第1号は、1934年(昭9)1月1日付けで発行された。それまで試験場が発行する普及向きの印刷物「時報」には試験担当者の氏名がなかったが、「北農」では担当者名を記すことになり、これにより生産現場と研究者の間が近づいたという。戦後まもない1950年(昭25)北海道農事試験場は国立と道立に分離されたが、「北農」は両場の成績を登載して北海道農業の発展に寄与してきた。

なお、北農会は1934年(昭9)「北海道農事試験場北農会」として設立。その後、1944年(昭19)「社団法人北農会」、1966年(昭41)「財団法人北農会」、2012年(平24)「公益財団法人北農会」となり、今日に至る。

「安孫子賞」誕生の経緯

安孫子場長は試験場を退任後も、道農会(農業会)会長として北海道農業の発展に尽力され、誰云うとなく「農民の父」と称えられた。その後、道農会で安孫子会長の指導と薫陶を受けた人々の発起により、「安孫子さんの名で北海道農業に献身されている人々をねぎらい、励ましたい」と、1960年(昭35)財団法人安孫子顕彰会を設立、「安孫子賞」が創設された。第1回安孫子賞の栄誉に輝いたのは、松井清行、松岡儀男、松尾栄の三氏。顕彰会は1980年(昭55)に解散し事業は北農会に委譲され、平成6-8年には協賛会からの寄託を受け「安孫子賞・北農賞表彰事業特別基金」創設、現在に至る。

「北農賞」誕生の経緯

1940年(昭15)、安孫子孝次場長は退任し、北農会会長も交代した。浦上啓太郎新会長は、前会長に対し北農会から記念品代にと金一封を贈呈した。安孫子前会長は北農会の台所事情も分かっていたので、それをそっくり北農会の発展のために役立てて欲しいと寄付された。浦上会長は、これを基金として、若い研究員を対象に「北農」掲載論文の中から営農に寄与したと認められる論文を表彰する制度を発足させたいと考え、11月10日紀元二千六百年奉祝式典に農事試験場を代表して出席した場長は、その日桑山覺幹事長に北農賞受賞規定の起草を命じた。12月7日に授賞規定が決済され、12月28日玉山豊ら審査委員6名を委嘱、翌年1月24日審査委員会、3月2日には「第1回北農賞」の授与式を行った。東京朝日新聞北海道版に「初の北農賞-農試が劃期的の壮挙」と題し、受賞者石井誠夫、加藤静夫両氏の事績と写真が掲載されている。

歴代受賞者

歴代受賞者一覧を添付した。

添付1 安孫子賞受賞者

添付2 北農賞論文部門受賞者

添付3 北農賞品種部門受賞者

添付4 北農賞技術事務部門受章者

   

      

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