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豆の育種のマメな話

◇北海道と南米大陸に夢を描いた育種家の落穂ひろい「豆の話」
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親愛なる皆様へ,遠い国パラグアイからの便り(2006.3)

2011-08-13 16:37:55 | 南米で暮らす<歴史・文化・自然>

出発に際し,皆様には多大なご高配を賜り誠に有難うございました。雪の北海道から,連日35度を越える真夏のパラグアイへ安着したことを,まずは報告申し上げます

住宅の確保,電話の設置,インターネットの開設,車の取得,保険の契約など,パラグアイ時計のため大幅に遅れましたが,ようやくそれらも整い生活が軌道に乗りましたので,ご挨拶を兼ね最初のお便りをします。

1. パラグアイは,やはり日本から遠い国です

先ずは,成田出発からエンカルナシオン到着までを時系列で示してみましょう。

2151855分,成田発(JL048便)。およそ12時間のフライトの後,同日1745分(以下現地時刻)ニューヨーク着。空港ではトランジット客も両手人差し指の指紋登録と顔写真撮影の入国審査を行い,時間がかかりました。ニューヨーク空港は数日前に降った大雪の影響でフライト時刻が変更になり,ラウンジで6時間待機後2340分ニューヨークを出発しました。

216:さらに11時間半のフライト後,1215分サンパウロ着。ニューヨーク空港での遅れがなければ接続するはずのアスンシオン便は既に出発し,空港ホテルに1泊となりました。

217:サンパウロ空港を850分に飛び立ち,2時間のフライト後950分アスンシオン着。荷物をホテルに運んだ後,1430分からパラグアイ国企画総局庁へ表敬挨拶,JICAパラグアイ事務所に着任挨拶と担当者によるブリーフィング及び着任手続。

218:休日(土曜),2月19:休日(日曜)

2208時農牧省農業研究所を表敬し,農牧省研究局担当者及びJIRCAS佐野研究員等とシスト線虫プロジェクトの推進について協議。1130分パラグアイ国農牧省で副大臣及び研究局長に着任挨拶。15時在パラグアイ日本国大使館表敬。

221:車で朝8時アスンシオン発,14時エンカルナシオン着(目的地にようやく着きました。遠い国です)。

222:農牧省地域研究センター(CRIA)パニアグア場長,ウイルフリード大豆研究コーデイネーターに着任挨拶。その後,研究室で若い研究員及び旧知の技術者らと打合せ。ともかく,CRIAでの仕事がスタートしたのでした。

2. 休むまもなく

こちらの3月は早生大豆の収穫期ですので,到着後,行事や出張が重なり,慌しい日々をすごしました。

223224:大豆国際セミナ出席(オエナウ)。イタプア県農学士会と農牧省主催。ブラジル大豆研究センター(EMBRAPA),アルゼンチン農牧研究所(INTA),パラグアイ国内の研究機関,種苗会社の技師等が発表。生産者も多数参加。ブラジルからJIRCASの加藤さん(病理)も来られて,さび病の発生分布や生態に関する研究成果を発表。

227228:イグアス出張(走行距離約520km)。パラグアイ農業総合研究所(CETAPAR,イグアス市)訪問。有賀場長に着任挨拶後,研究連携について協議。夜はホテル・カサブランカで,北海道出身で在住の古明地通孝さん,ブラジルからパラグアイへ来ていた佐藤久泰さんご夫妻と会食。

3637:東北部のカニンデジュ県,アルトパラナ県,カアグアス県出張(走行距離約1,100km)。シスト線虫発生圃場の実態調査と育成系統の評価。この地方は,ブラジルに隣接するためブラジル系の生産者が多く,大規模な経営が行われています。シスト線虫も同国から入ったものと推察され,検定圃に予定しているイホヴィ圃場(レース3)は線虫密度が高く,感受性品種のシスト着生数は個体あたり100から300を数えました。

38日:カアグアス県のDia de Campoに参加。CRIAEMBRAPA,民間種子会社等が育成品種を展示し,また農薬会社は実証試験結果を展示し,農家にPRするのが目的の行事で,種苗会社等が各地で開催します。カアグアス県は最近大豆面積が増加している新興地域であり,農家の反応を知るために参加。集まった生産者には,品種や農薬の説明資料が入った袋(鞄のこともある)と社名入りの帽子(定番です),ペットボトルの水を配り,グループごとに引率者が説明しながら回ります。参加受付け登録時には,氏名と住所のほか,大豆の作付面積を聞き,アンケート用紙には展示栽培されている品種のどれを何ヘクタール作りたいか記入させるなど,商売に直結する仕組みです。

CRIAは国立の研究機関ですが,これまでに6品種を発表しているのでこれらを展示し,研究者が説明要員として出席して生産者からの質問に答えます。各地でDia de Campoが開催されるので,研究者にとってはなかなか大変ですが,有意義な情報収集の場でもあります。昼過ぎには全ての説明が終わり,近くの農家の倉庫でアサード(焼肉)とパン,サラダ,ガス入り飲料水がサービスされます。このような場合は人数が多いので,皿,ホーク,ナイフなどもなく,パンに牛肉やサラダをはさみ,立ったまま或いは適当なところに腰を下ろしてワイワイと食べ,勝手に帰るという方式です。生産者は新品種を直接観察することが出来ますし,種子会社は種子の需要が品種ごとに把握できますし,また売り込みも図れるなど,結構うまく回転しているなと感じます。

3. 懐かしい風景とアミーゴたち

首都アスンシオンに向け機首を下ろした飛行機の窓からは,亜熱帯多雨林の面影を残す木々の緑,赤い土壌が目に飛び込んできます。アスンシオンは緑に覆われた都市と言った印象です。しかし,空港を一歩出れば,ムッとする熱気と貧困の臭いが溢れます。

街中を車で走れば,日本では見たことのないような広大を庭をもつ豪邸があちこちにあり,これがパラグアイかと疑うような通りがあるかと思えば,バラック建てで生活する人々がたむろする地域が混在し,冷房を効かした新車のベンツの横をドアの閉まらないバスが走り,信号で車が止まれば物売りとフロントガラスを洗う裸足の少年が駆け寄るなど,アスンシオンはアンバランスの象徴です。

そして,アスンシオンから東部の穀倉地帯に向け車を走らせれば,草を食む牛の群れ,見渡す限り一面の大豆畑,庭先の木陰でマテ茶を回しながら寛ぐ人々がいて,長閑な田舎が広がります。パラグアイを南米の田舎と称することがありますが,忙しく動き回る我々にとっては気持ちの安らぐ風景です。もう少し経てば,私もアスタ・マニヤーナ(明日があるさ)の生活にどっぷり浸かることになるでしょう。

パラグアイ国エンカルナシオンにて。


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