カナダの先住民ユーコンの世界
北大道新アカデミー2022前期の最終講義を聴講した。
講師は北海道大学人文学部文化人類学研究室准教授山口未花子博士。研究分野は人類学、自然誌、動物論、狩猟研究、北米先住民研究。「文化人類学、生態人類学の分野から動物について研究、主なフィールドはカナダのユーコン準州。先住民のカスカや内陸トリンギットの人々と動物との関わりについて狩猟や芸術、信仰などに焦点を当てながら調査を続けています」と研究内容紹介にある。
◆山口未花子「変化する世界と北米先住民 ①伝染病のトラウマ」2022年7月9日
①カナダ・ユーコン先住民社会のフイールドワークを通じて、文化人類学的見地から人と動物の関係を探求した。ユーコンインデイアン古老の言葉「動物は考えや言葉を持つ存在であり、パートナーである」が象徴的。古老の言葉、古老を敬いながら(昔の生活は参考になる)、動物や自然と共生する生き方があった。
◆山口未花子「変化する世界と北米先住民 ②自然環境の変化」2022年7月23日
①カナダ先住民は核産業の最初の被害者でもあった。世界で初めてのウラン鉱がカナダ先住民デレネイ居住地にあり、ウランの採掘運搬に携わったため健康被害(肺がん)が増加、現在も補償が続いている。
②気候変動の影響は極地に大きな影響を与え、先住民地区では洪水の頻発、動物相や植生の変化、永久凍土の溶出、氷河の減少などが見られるが、変化を察知し淡々と対応する姿がそこにあった。古老の知恵を頼りに動物との関りを大事にしながら生きる先住民の視点は学ぶ点も多いと言う。
世界の先住民と呼ばれる人々は、多くが時代の流れに翻弄され虐げられてきた歴史を有する。カナダの原住民は狩猟採集を生業としてきたが、ヨーロッパ系カナダ人の移住により物流社会に翻弄され、新たな疾病や自然環境の変化にも対応を余儀なくされている。
先住民の対応は往々にして受動的にならざるを得なかったが、古来の知恵を大事にしながら変化に適応して生きてきた。しかし一方、社会の大きな流れに彷徨いながら変化せざるを得ないのも厳然たる事実。
文化人類学は歴史をどのように捉えているのだろうか。