豆の育種のマメな話

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花梨を収穫する、恵庭の花-25

2020-11-08 15:38:24 | 恵庭散歩<花のまち、花だより、自然観察>

庭に一本の「花梨」がある。今年は台風や暴風雨の被害が少なかったので多くの実が残った。11月初旬の或る日、雪が降る前にと脚立を持ち出し収穫した。写真のように色づいた堅い実が100個以上、玄関に置いたら芳しい香りが充満した。

 

◇花梨

カリン(花梨、榠樝、学名: Pseudocydonia sinensis、英名Chinese quince)は、バラ科カリン属の落葉高木。4~ 5月頃、新葉とともに5枚の花弁からなる白や淡紅色の花を咲かせる(わが家の花梨は淡紅色)。葉は互生し楕円状卵形(長さ3~ 8cm)、先は尖り基部は円く葉縁に細鋸歯を有し光沢がある。秋には紅葉する。

果実は洋梨型(楕円形か卵形)で、未熟なうちは褐色の綿毛が密生するが、次第に肥大し成熟すると黄色を帯び表面がつるりとした状態になる。収穫時期は秋(10 - 11月)。トリテルペン化合物による芳しい香りを放ち、中国では「香木瓜」とも呼ばれるそうだ。

カリン属に最も近い近縁種にマルメロ属(Cydonia)があり、マルメロ(Cydonia oblonga)は花梨と混同されやすい(一部の地域でマルメロのことをカリンまたはセイヨウカリンと呼ぶことがある)。しかしよく観察すれば、マルメロの果実は球形で果皮にビロード状の毛がある。マルメロは葉の縁に細鋸歯がないことでも区別できる。北斗市(北海道)の街路樹にマルメロが植えられていて、同市の「せせらぎ温泉」にマルメロの実が浮かんでいたのを思い出した。

花梨の原産地は中国東部で広く分布する。一方、マルメロはイラン、トルキスタン原産と言われる。伝来時期ははっきりしないが、薬用および鑑賞果樹として導入されたのではないだろうか。耐寒性があり北海道でも育つ。

 

◇利用

果肉は石細胞が多いため硬くて生食には適さない。カリン酒、砂糖漬け、ハチミツ漬け、ジャム等に加工される。リキュールは数年前にも作ったことがあるが、暗所に保管したまま試飲すること無く何年か経ってしまった。

カリンの果実(生100g、水分80.7%)に含まれる成分は、炭水化物18.3%、食物繊維8.9%、タンパク質0.4%、脂質0.1%、灰分0.5%、カリウム270mg、リン17mg、βカロチン38μg、ビタミンC25mgなどである(日本食品標準成分表)。含有されるリンゴ酸やクエン酸が疲労回復に役立つと言われている。また、生薬、民間療法として咳や痰など喉の炎症に効くとされるが、これは未熟果や種子に含まれるアミグダリン(青酸配糖体の一種)の効果と考えられている。ただし、アミグダリンは加水分解により猛毒のシアン化水素を発生するため(青梅と同様)、過剰摂取は健康障害の危険性があると国立健康・栄養研究所は注意喚起している。

カリンの材は比較的固い事から、家具などの材木としても利用されると言うが、むしろ家庭果樹(庭木)として最適である。花・果実が楽しめ、新緑・紅葉・樹皮も美しい。昔から「金を借りない(語呂合わせ)」の縁起を担ぎ、庭に花梨を植えたものだと言う。

そう言えば、ミツバチの分蜂が我が家の花梨木に宿したのは8年前(2012年)の事だった。

  

追記2023.11.15:わが家の花梨は毎年実を着ける。今年も102個収穫した。

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