豆の育種のマメな話

◇北海道と南米大陸に夢を描いた育種家の落穂ひろい「豆の話」
◇伊豆だより ◇恵庭散歩 ◇さすらい考
 

えにわ学講座「武四郎と往く」、はまなす砂丘(長沼町)に立つ

2018-08-26 14:48:44 | 恵庭散歩<記念碑・野外彫像・神社仏閣・歴史>

平成308月某日、えにわ学講座「武四郎と往く」(北海道150年 松浦武四郎の足跡を巡る、主催:恵庭市教育委員会)が開催された。講師は恵庭市郷土資料館学芸員大林千春氏。講師の解説を聞きながら松浦武四郎紀行足跡之碑(長沼町)、はまなす砂丘(長沼町)、イザリブト番屋(恵庭市)、茂漁川河川緑地(恵庭市)をバスで巡る行程であった。

台風20号が熱帯低気圧に変わり北海道を通過した余韻の雨が降る中、多くの参加者が長靴姿で、武四郎の蝦夷地踏査に思いを馳せた。本稿では、はまなす砂丘(長沼町)について触れる。

 

◆はまなす砂丘(長沼町)について

日本海の石狩湾から太平洋の苫小牧に広がる石狩低地帯(別名、札幌・苫小牧低地帯)は、今からおよそ1万年前には海の底であった。その後、海底火山などにより陸地が形成され、現在に至っている。このような内陸部に砂丘が存在するのは、海が次第に埋まり(海の後退)陸になって行く過程で砂丘が残された(残留砂丘、古砂丘)と考えられ、長沼町の「はまなす砂丘」もその一つであり、ハマナスなど海浜植物が多い。

長沼町では、市街地の南東にあたる長沼町東十線南十番地の古砂丘地帯約1haを貴重な自然遺産として保存している(郷土名所遺跡、平成3年指定)。保存されている土地はほぼ直角三角形で、雑木林と春先には冠水する低地(古砂丘の西側が湿地)がある。

はまなす砂丘(長沼町)の植物相については、五十嵐 博、長野 満、渡辺久昭、矢沢敬三郎氏らの詳細な調査報告があり(北方山草)、数百種の種類が確認されている。海浜植物、海岸草原植物、湿地植物など多様な植生が特徴的であるが、周囲が水田や畑地化されたことからオオハンゴンソウなど外来植物が群生化し、早急に対処が必要との指摘もある(松井 洋)。今回の訪問は植生観察が目的ではないので詳しくは観察していないが、ハマナス群落近くのオオアワダチソウ、セイタカアワダチソウの旺盛な群生は気にかかる。

◆武四郎上陸の地

さて、この場所は、陸地測量部(国土地理院)明治29年製版の「長都」(五万分の一)に重ねるとマオイトー(馬追沼)の東縁にあたる。武四郎の夕張日誌に「マオイトー(周囲三里余)に入り、左方ツカベツ(川口)を過ぎ水平(ヤムワッカヒラ)に至り清水あり。上陸す。」とあるが、江別から千歳川を遡ってきた武四郎が上陸した地点はこの場所ではないかと考えられている。武四郎は付近の木に、帰りの食糧を吊り下げて置き、陸路夕張方面を探索、数日後に此処へ戻って一泊し、和歌を詠んだのではないかと言う。

◆はまなす砂丘の「ハリギリ(針桐)、センノキ(栓の木)」

雨のため砂地を観察する余裕はなかったが、ハマナスは既に赤い実をつけていた。ハマナス群落の中に小さな案内標識が建っている。目についたのは標識脇の大木(写真)。カエデのような形の光沢ある葉が雨に濡れ、多数の白い花が目を引く。

「何という木ですか?」

一行の中に樹名を知る人はいなかった。

帰宅して、北海道の森林植物図鑑(北海道林務部監修1976)を開く。ハリギリ(センノキ)とある。ウツギ科の落葉、広葉、高木で、高さ25m、胸高直径1mにもなり、枝や幹に鋭いとげをつけ、成木になると樹皮は著しく縦裂する。葉は長さ、幅とも10-30cmあり、10-25cmの長柄をもち掌状に5-9裂し、裂片には荒い鋸歯がある。花序は当年生枝の先につき、花柄が数個ないし10数個あり、各々に径5mmの多数の花をつける。果実は径4-5mmの球形で、熟すと黒くなる。学名はKalopanax pictus Nakaiと記されている。

葉の形が天狗の団扇のような形をしているのでテングウチワと呼ばれることもあるらしい。日本各地(特に北海道)、中国、朝鮮、樺太、南千島に分布。材は適度な硬さで光沢があり、加工が容易なため家具などの加工に使用されている。また、若芽はタラの芽のように旬菜として食されると言う。

ハリギリは肥えた土地に自生するので、開拓時代にはこの木が開墾適地の目印だったとの言い伝えもある。アイヌ語ではアイウシニ(とげの多い木)と呼ばれ、丸木舟を作るのによく使われたらしい。

ハマナス砂丘にはカシワの木が多い。武四郎はカシワの木に帰路の食糧を吊るしておいたのか。それよりもハリギリの方が目立つ存在でなかったのか。ハリギリの大樹にその思いを込めて案内標識を建てたのではないかと、根拠もない要らぬ想像が膨らんだ。

見渡せばカシワ林の様相は原始の森というより第二次自然林。このハリギリも武四郎時代のものではないだろうと思いつつ・・・。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする