豆の育種のマメな話

◇北海道と南米大陸に夢を描いた育種家の落穂ひろい「豆の話」
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研究室の入口に貼られた一枚の紙

2012-02-04 11:43:48 | 海外技術協力<アルゼンチン・パラグアイ大豆育種>

拙著「豆の育種のマメな話」(2000)の中で,研究室の入り口に「世界の飢えたる人のために」と書いて,新品種開発の仕事をしたと述べた。もちろん狭義というか真意は,日本のために,或いは北海道農業のために,農民のためにということを含んでいる。

時は過ぎて2006年,南米のパラグアイ地域農業研究センター(CRIA)でのことである。ある朝,大豆研究室のドアを開けると,正面の衝立に一枚の紙(写真)が貼られていた。それには,CRIAの若い農業研究者達へ(1)畑に出て観察せよ,そして記録をとれ,(2)研究員は年に一つは論文を書け,(3)農家の畑に立って考え,消費者の声に耳を傾けよ,ドクトル○○が語った,とある。

 

前日CRIAに赴任して,最初に顔をあわせた研究室の技術者達に挨拶したときの内容を,学校を出たばかりのインヘニエラ(Ingeniera女性学士)が几帳面にも書き留めたものである。「ああ,また例の調子で・・○○は,・・・」と思われる方がいらっしゃるかも知れないが,これは一つのメッセージ。技術的な伝達はその後に追々することにして,まず「これから2年間,私はこんな考えであなた方と仕事をしますよ」と伝えることにある。

 

若い研究者にそんな意図が,かすかなりとも伝わったのかな? 「技術協力プロジェクト」のスタートであった。

 

CRIAの若い研究者達は,毎朝出勤したときこの紙を無意識に眺める。訪れたゲストは,はてな? と眺める。そのプロジェクトが終了してから,既に4年が経過した。一枚の紙は風に吹かれてどこかに消えたかも知れないが,彼らの心には何かが残っていることだろう。

 

貴方は,研究室の入り口に何を掲げますか

 

 

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