旋頭謌
標訓 旋頭謌(せどうか)
集歌一四〇三
原文 三幣帛取 神之祝我 鎮齊杉原 燎木伐 殆之國 手斧所取奴
訓読 御幣帛(みぬさ)取り神(みわ)し祝(ほふり)が斎(いは)ふ杉原(すぎはら) 薪(たきぎ)伐(き)り殆(ほとほと)しくに手斧(てをの)取らえぬ
私訳 立派な幣帛を手に取って三輪の神官が祭る杉原よ。薪伐りの人は、神官に見つかって、もう少しのところで手斧を取られるところであった。
挽謌 雑歌
標訓 挽謌(ばんか) 雑歌(ざふか)
集歌一四〇四
原文 鏡成 吾見之君乎 阿婆乃野之 花橘之 珠尓拾都
訓読 鏡なす吾が見し君を阿婆(あば)の野し花橘し珠に拾(ひり)ひつ
私訳 鏡のように私が見つめていた貴女を、阿婆の野の花咲く橘の珠のような、その芳しい霊(たま)を心に思い浮かべる。
集歌一四〇五
原文 蜻野叨 人之懸者 朝蒔 君之所思而 嗟齒不病
訓読 蜻蛉野(あきつの)と人し懸(か)くれば朝(あさ)蒔(ま)きし君し思ほえて嘆(なげ)きはやまず
私訳 「あの秋津野」と人が口に出すと、朝、野に遺骨を撒いた貴女のことが思い出されて、悲しみは尽きない。
集歌一四〇六
原文 秋津野尓 朝居雲之 失去者 前裳今裳 無人所念
訓読 秋津野(あきつの)に朝居(あさゐ)し雲し失(う)せゆけば昨日(きのふ)も今日(けふ)も亡(な)き人念(おも)ほゆ
私訳 秋津野に、朝、棚引く雲が消え失せていくと、昨日も今日も亡くなった人を思い出します。
集歌一四〇七
原文 隠口乃 泊瀬山尓 霞立 棚引雲者 妹尓鴨在武
訓読 隠口(こもくり)の泊瀬(はつせ)し山に霞立ち棚引く雲は妹にかもあらむ
私訳 人が隠れるという隠口の泊瀬の山に霞が立っている。その棚引く雲は貴女なのでしょうか。
標訓 旋頭謌(せどうか)
集歌一四〇三
原文 三幣帛取 神之祝我 鎮齊杉原 燎木伐 殆之國 手斧所取奴
訓読 御幣帛(みぬさ)取り神(みわ)し祝(ほふり)が斎(いは)ふ杉原(すぎはら) 薪(たきぎ)伐(き)り殆(ほとほと)しくに手斧(てをの)取らえぬ
私訳 立派な幣帛を手に取って三輪の神官が祭る杉原よ。薪伐りの人は、神官に見つかって、もう少しのところで手斧を取られるところであった。
挽謌 雑歌
標訓 挽謌(ばんか) 雑歌(ざふか)
集歌一四〇四
原文 鏡成 吾見之君乎 阿婆乃野之 花橘之 珠尓拾都
訓読 鏡なす吾が見し君を阿婆(あば)の野し花橘し珠に拾(ひり)ひつ
私訳 鏡のように私が見つめていた貴女を、阿婆の野の花咲く橘の珠のような、その芳しい霊(たま)を心に思い浮かべる。
集歌一四〇五
原文 蜻野叨 人之懸者 朝蒔 君之所思而 嗟齒不病
訓読 蜻蛉野(あきつの)と人し懸(か)くれば朝(あさ)蒔(ま)きし君し思ほえて嘆(なげ)きはやまず
私訳 「あの秋津野」と人が口に出すと、朝、野に遺骨を撒いた貴女のことが思い出されて、悲しみは尽きない。
集歌一四〇六
原文 秋津野尓 朝居雲之 失去者 前裳今裳 無人所念
訓読 秋津野(あきつの)に朝居(あさゐ)し雲し失(う)せゆけば昨日(きのふ)も今日(けふ)も亡(な)き人念(おも)ほゆ
私訳 秋津野に、朝、棚引く雲が消え失せていくと、昨日も今日も亡くなった人を思い出します。
集歌一四〇七
原文 隠口乃 泊瀬山尓 霞立 棚引雲者 妹尓鴨在武
訓読 隠口(こもくり)の泊瀬(はつせ)し山に霞立ち棚引く雲は妹にかもあらむ
私訳 人が隠れるという隠口の泊瀬の山に霞が立っている。その棚引く雲は貴女なのでしょうか。