竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

万葉集 集歌1458から集歌1462まで

2021年02月08日 | 新訓 万葉集
厚見王贈久米女郎謌一首
標訓 厚見王(あつみのおほきみ)の久米女郎(くめのいらつめ)に贈りたる謌一首
集歌一四五八 
原文 室戸在 櫻花者 今毛香聞 松風疾 地尓落良武
訓読 室戸(やと)にある桜の花は今もかも松風疾(はや)み地に落(ち)るらむ
私訳 家に咲く桜の花は、今頃は松風のはげしさに地に散っているでしょう。

久米女郎報贈謌一首
標訓 久米(くめの)女郎(いらつめ)の報(こた)へ贈りたる謌一首
集歌一四五九 
原文 世間毛 常尓師不有者 室戸尓有 櫻花乃 不所比日可聞
訓読 世間(よのなか)も常にしあらねば室戸(やと)にある桜の花のあらむ日々かも
私訳 世の中はものの定まらないものですので、望んでも家に咲く桜の花が散り行く日々なのでしょう。

紀女郎贈大伴宿祢家持謌二首
標訓 紀女郎(きのいらつめ)の大伴宿祢家持に贈りたる謌二首
集歌一四六〇 
原文 戯奴 (變云 和氣) 之為 吾手母須麻尓 春野尓 抜流茅花曽 御食而肥座
訓読 戯奴(わけ)(變を、わけと云う) しため吾が手もすまに春し野に抜ける茅花(ちばな)ぞ御食(めし)て肥(こ)えませ
私訳 戯れをする貴方のために、私が手を休めないで春の野で引き抜いた茅花です。お食べになって太ってください。
注意 四句、五句目の「茅花曽御食而肥座」は、「遅早やそ、押すて越へませ」と訓じる可能性がありますから、「遅かれ早かれ、頑張って平山を越えて遊びに来て下さい」と云う裏の意味の可能性があります。

集歌一四六一 
原文 晝者咲 夜者戀宿 合歡木花 君耳将見哉 和氣佐倍尓見代
訓読 昼は咲き夜は恋ひ寝(ぬ)る合歓木(ねぶ)し花君のみ見(み)めや理由(わけ)さへに見よ
私訳 昼は花咲き、夜は恋しつつ寝る、その合歡木の花。恋の相手の男性だけが眺めるのでしょうか。合歡木の名の理由を思って戯れ者ととして眺めなさい。
左注 右、折擧合歡花并茅花贈也。
注訓 右は、合歡(ねむ)の花に并せて茅花(ちばな)を擧(こぞ)り折りて贈れり。
注意 左注の「折擧合歡花并茅花」の「擧」は、標準解釈では「攀」と校訂します。

大伴家持贈和謌二首
標訓 大伴家持の贈り和(こた)へたる謌二首
集歌一四六二 
原文 吾君尓 戯奴者戀良思 給有 茅花手雖喫 弥痩尓夜須
訓読 吾(あ)が君に戯奴(わけ)は恋ふらし賜(たは)りたる茅花(ちばな)を喫(は)めどいや痩(や)せに痩す
私訳 私の大切な貴女に戯れ者は恋をしているようです。頂戴した茅花を食べましたが、なおさらに合歡木の名の理由を感じて、その恋わずらいで痩せに痩せるばかりです。
注意 四句、五句目の「茅花乎雖喫弥痩尓夜須」は「遅早を召せど、いや安すに安す」と訓じる可能性があります。この場合、「遅かれ早かれ、何時でもいいから、いらっしゃいと呼ばれたら、いやあ、それは気が楽です」と云う裏の意味の可能性があります。

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