麒麟琳記〜敏腕Pの日々のつぶやき改題

還暦手前の身の回りのこまごま。
スポーツや映画演劇など。

夜のジオラマ

2007年12月06日 | 鑑賞
 3つの時間軸・・・母と、姉と、弟の・・・を巧み操った素晴らしい舞台でした。

   「SPIRAL MOON」設立十周年記念公演第二弾
   『夜のジオラマ』(作/はせひろいち、演出/秋葉正子)
   11/28(水)~12/9(日) 於・下北沢「劇」小劇場

「2006年の愛知県芸術劇場演劇フェスティバルで、グランプリを争ったSPAIRAL MOONと劇団ジャブジャブサーキット。一年の時を経て、ジャブジャブサーキットのはせひろいち氏の新作がSPAIRAL MOONに登場」とプレスシートにあるが、磋琢磨した両雄が力を合わせた舞台は、いやあ…冒頭に書いたように、メッチャ良かったです

 まず、今と二つの未来を、ひとつの部屋で展開させるはせさんのホンが、緩さと緊迫感のバランスが実に見事! カルト集団やノマド(自立行動ロボット)なども登場しますが、良い意味で道具立てに止まっているのもいい。
 凡庸な作家は、調べたことを全部書こうとして失敗したり、そっちの説明に引っ張られて肝腎の本題が薄っぺらになったりするが、さすが、はせさんである!

 その巧みなホンを立体化した秋葉演出がまた冴えている。
 奥行きのないわりに間口のある独特の劇場空間に、役者の息づかいで拡がりを持たせ、まるで飽きさせない。これまたプレスシートの文言をお借りすれば「心を覗き込むような演出」に偽りなしダ!
 「劇」小劇場といえば、上手下手の柱がジャマなのだが、それを部屋の柱にみせた美術(田中新一、木家下一裕)も舞台成果に大きく寄与していた。

 役者に目を転じると、相変わらず最上桂子が貫禄だ。母親の細かな心の機微を抑えめに、だが、だからこそ強く印象づけた。不思議な不動産屋さんを演じた北村耕治(猫の会)の飄々とした味わいも良かったが、息子を演じた田中伸一のムードは特筆に値する。
 ウジこと田中くんとは旧知の仲で、あまり褒めてもなんだけど、時代に追いついていけない37歳の作家をしなやかに演じて、役(荻野目圭吾)が時空を行き交うように、複雑に絡み合う母姉弟の事情(あるいは絡み合わなかった三人の関係ともいえるか…)を、縫い合わせて客席に提示する重責を完璧に務めた。

 その他、旧型のノマド・ヨーコの戸谷和恵のアンドロイドぶりや、とぼけた不動産屋の助手・春菜の浅野千鶴(味わい堂々)の二人も、美味しい役どころを好演していた。
 カルト集団の指導者・石田の野村貴浩(劇団め組)のクールさも光った。

 今年(07年)僕の観た芝居の、ベスト3に入る作品です

 演劇の場合「こんな素晴らしい作品がたった3日や5日で終わってしまうなんて…」と嘆くことも多いけれど、約2週間14ステージを敢行した製作総指揮の落合由人の手腕にも大きな賛辞を送って、ブログを閉じましょう!

 今日含め、まだ6ステもあるので、是非是非、ご覧あれ

 
コメント
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