Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

2024年2月のプレイリスト

2024-02-29 | 今日のBGM


◆2024年2月のプレイリスト
2024年2月に聴いていた愛すべき29曲

1 Moonriver(Eric Clapton & Jeff Beck)
ジェフが亡くなって1年。クラプトンとの共演作を聴く。
2 Turn The Light Back On(Billy Joel)
久しぶりの新曲。ビリーらしいバラード、歌声も変わらず力強い。この人を聴かなかったら、鍵盤に触れようなんて思わなかったよな。
3 トドメの一撃(feat. Cory Wong)(Vaundy)
🎸カッティングがやたらカッコいいのだ。長澤まさみ出演のPVが素敵♡
4 FREEDOM(西川貴教with t.komuro)
後ろでギター弾いてる方の、ナルシスティックなアクションが気になるw🎸
5 The Same Old Sun(The Alan Parsons Project)
APPの名バラードの一つ。アルバム Vulture Culture はお気に入り。
6 Back In The U.S.S.R.(KAN)
KANちゃんの弦楽アレンジアルバムより。なんてカッコいい🤩
7 一線(JUJU)
あー、これ好き。粘着性のボーカルがたまんない♡
8 Chopin Prelude In E Mionr(米澤美玖)
ゲンスブールがJane B.としてカバーしたショパン楽曲。こちらはムーディーなテナーサックス🎷。
9 The Lonely Shepherd(Zamfir)
パンフルート奏者ザンフィルの哀愁漂う代表曲。「キル・ビル」でも印象的ない使われ方をしていたっけ。
10 陽の訪れのように(甲斐バンド)
陽の訪れのように現れては消えた/私を一人にしていってしまった

11 嘲笑(メレンゲ)
ビートたけしの名曲カバー。アコースティックなアレンジに癒される。
12 Pure(Hyper Mix)(小室哲哉)
ドラマ「二十歳の約束」サントラは愛聴盤なのだ。
13 渚のカンパリソーダ(寺尾聰)
カンパリのグラス空けてしまおう/君に酔ってしまう前に/少しは愛してくれ/夏の風も照れちまう程に
14 あなたといた時間(森口博子)
祝🎊配信解禁。待ちきれなくて💿ベスト盤を入手した私。彼女らしい明るいポップスもいいけど、こういう切ないの好き♡
15 夜のない一日(崎谷健次郎)
ピアノで弾き語りを練習したことある。難しかった💧
16 一度だけの恋なら(ワルキューレ)
唐沢美帆の言葉選び。センスを感じさせる秀作。「マクロスΔ」途中までしか見てないや。続き見なきゃ💦
17 Remo's Theme (What If) (Tommy Shaw)
スティックスのトミー・ショウによる映画「レモ/第一の挑戦」主題歌。
18 She's Always A Woman(原田知世)
ビリー・ジョエルの名バラードのカバー。いい選曲だ。一緒にハモってしまう私w。
19 Once In A Lifetime(Talking Heads)
映画「ストップ・メイキング・センス」鑑賞。これは特等席のライブ。
20 Genius Of Love(悪魔のラブソング)(Tom Tom Club)
昨日の余韻で関連作を。中坊の頃、ラジオでよく流れていた記憶はあるな。

21 The Look Of Love(恋の面影)(Dusty Springfield)
映画「007/カジノロワイヤル」(1967)より。パート・バカラックの音楽がオシャレ。
22 The Cold Song(Klaus Nomi)
映画「愛の記念に」で使われた曲と言うよりも、スネークマンショーのアルバムに収録されてた曲という方がわかってくれる人多いかも?
23 忘れていいの-愛の幕切れ-feat.小川知子(谷村新司)
通勤中にシャッフル再生してたら流れてきた。歌いたくなるのを我慢する😣。カラオケ行きたいっ🎤
24 ラッパと娘(福来スズ子)
バドジズデジドダー♪
25 北ウイング(中森明菜)
林哲司の大傑作。サビと平歌の高低差。駆け上るストリングス。シンセのリフ。明菜のボーカル。最高。
26 絶体絶命(三浦祐太朗)
お母さまの名曲をカバー。阿木燿子の言葉選びはすげえな、と改めて思う。やってられないわ♪
27 暁の車(Fiction Junction YUUKA)
ガンダム SEED楽曲の中でもお気に入りの一曲。
28 BURNING(柳ジョージ)
アサヒスーパードライCMで使われたかっちょいい楽曲。カラオケ十八番ですっ🎤
29 女王様物語第二章〜踊る女王様〜(女王様)
パッパラー河合の直訳洋楽カバー。70年代のディスコチューン。EW&Fを九月♪と歌い、君の瞳に恋してるを"愛してるー赤ぁちゃん♪"と歌う🤣






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コラテラル・ダメージ

2024-02-27 | 映画(か行)

◾️「コラテラル・ダメージ/Collateral Damage」(2001年・アメリカ)

監督=アンドリュー・デイビス
主演=アーノルド・シュワルツェネッガー フランチェスカ・ネリ イライアス・コティーズ

2001年9月の同時多発テロの影響で、爆破テロ場面があるこの映画は、改変や公開延期をせざるを得なかった。

シュワルツェネッガー演ずる主人公は消防士ゴーディ。映画冒頭、彼が火災現場で活躍している様子が示される。妻子を迎えに行ったカフェ近くで爆破テロが起こり、家族を失ってしまう。テロの犯人はコロンビアの活動家ウルフとその一味で、政府要人やCIA職員を狙ったものだった。事態が進展しないこと、亡くなった妻子を"やむを得ない犠牲"と言うマスコミや政府関係者への憤りは頂点に達した。彼はコロンビアの隣国から潜入してウルフ一味の拠点に乗り込み、復讐を果たそうと考える。

筋肉を見せつけるだけのアクション映画だと期待すると肩透かしを喰らう。この映画の監督は、名作「逃亡者」でアクション映画を単なるエンタメ以上の人間ドラマに昇華させた実績のあるアンドリュー・デイヴィス。テロが起こるのは何故か、何故解決ないのか。首謀者側の主張だけでなく社会的背景にも触れており、活劇だけの映画に終わらせないのは好感。

活動家ウルフを演ずるのは、名作「クジラの島の少女」でヒロインの父親を演じたクリフ・カーティス。「ダイ・ハード4.0」でもマクレーン刑事に協力するFBIを演じており、誠実そうな役柄の印象が(僕には)ある。それだけにこのウルフは悪役なんだけど、他のシュワルツェネッガー映画に出てくる極悪非道な悪党とは違う印象を受ける。それでもやることはきっちり悪事なんだけどね。

クライマックスまでにさらに観客を裏切る仕掛けが用意されていて、最後まで飽きさせない。だけど一介の消防士がなぜそこまで強い?という違和感を感じたら、それは最後までつきまとう。大ヒット作以外で、個人的なシュワルツェネッガー映画のお気に入りは、無駄に人を殺さない「ラストスタンド」かな。





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ルパン三世 風魔一族の陰謀

2024-02-24 | 映画(ら行)


◾️「ルパン三世 風魔一族の陰謀」(1987年・日本)

監修=大塚康生 銀河万丈 塩沢兼人 小山茉美 加藤精三

そもそもOVAの第1作として製作された作品で、短期劇場公開された。そのため劇場版第4作と呼ばれたり、劇場版にカウントされなかったりと扱いが微妙な「風魔一族の陰謀」。シリーズ唯一声優陣が異なることもあり、昔から興味はあったが、テレビで放送されないから観る機会がなかった。今回が初鑑賞。BS12に感謝。

五右衛門の結婚相手、紫の家に代々伝わる壺。そこには宝の在処が記されているという。長年宝を狙う風魔一族が紫を連れ去ったことから騒動に巻き込まれたルパン御一行。紫を救えるか。そして隠されたお宝とは。

劇場版としての期待とは違う、こじんまりまとまった話。「VS複製人間」のスケール感やハードな雰囲気、「カリオストロの城」の人間ドラマの深みには乏しい。それでも全編に貫かれたコミカルなアクションは、ルパンシリーズらしい魅力が感じられる。ルパン生存を知った銭形警部が復帰して、いつもの追いかけっこが始まるとやっぱりワクワクしてしまう。そこは期待どおり。

声優キャスティングに最初は居心地の悪さを感じるけれど、そこは実力もあるベテラン陣。話が進むと本作でしか味わえない魅力を感じた。古川登志夫のルパンは諸星あたるみたいな軽口が心地よいし、銀河万丈の次元大介もギレン・ザビ級にクール、塩沢兼人の五右衛門もぶりぶりざえもんに通ずる信念の人、小山茉美の峰不二子は「チャーリーズ・エンジェル」のシェリル・ラッドみたいなカッコよさ。そして加藤精三の銭形警部は星一徹にも負けない頑固さがある。




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ストップ・メイキング・センス 4Kレストア

2024-02-22 | 映画(さ行)


◾️「ストップ・メイキング・センス 4Kレストア/Stop Making Sense」(1985年・アメリカ)

監督=ジョナサン・デミ
主演=デビッド・バーン クリス・フランツ ティナ・ウェイマス ジェリー・ハリソン

トーキングヘッズを初めて知ったのは、1985年のアルバムLittle Creatures。名曲Road To Nowhereなど強烈な個性を感じるけれど、旧作を真剣に聴くほどハマったバンドではなかった。たぶん"ニューウェイブ"やら"ノーウェイブ"とカテゴライズされた音楽に、どうも苦手意識があったせいだと思うのだ。ちゃんと聴いてたのはメジャーなブロンディくらいで、アート・リンゼイとか坂本教授がいかに褒めても「わからん」としか思えなかった。トーキングヘッズもそんな流れで、デビッド・バーンの強烈な個性とパフォーマンスを当時の僕はカッコいいとは思えなかったのだ。

「羊たちの沈黙」のジョナサン・デミ監督がトーキングヘッズの1983年12月のコンサートを記録した映画「ストップ・メイキング・センス」。噂には聞いていたけど、苦手意識から避けていて、4Kレストアによる今回の再上映で初鑑賞。84年以前のトーキングヘッズはほぼ曲を知らないのが不安要素だったけど…

観てよかった!😆

普通のコンサートを記録した映画とは撮り方が全く違う。最後の方まで観客が映像に映ることがない。冒頭、ラジカセとアコギを持ったデビッド・バーンがステージに向かう足元から映画が始まる。アコギ一本のPsycho Killerから、曲ごとに一人一人メンバーが加わっていく演出。

通常、コンサート会場の臨場感を表現するために、映画は僕らを観客の一人にする。そのために前にいる聴衆の頭がフレームインしたり、踊り狂う人や歓声をあげる女の子が挿入されたり。そのアーティストがいかに観客を熱狂させているのかが描かれる。ライブエイドの完全再現がすごかった「ボヘミアン・ラプソディ」。クィーンを演じた人々は確かにすごいのだけれど、声出しオッケーの応援上映までしちゃうのは、あの場にいられたらいいのに!という気持ちがあるからだ。アーティストへの憧れと同時に、Radio GAGAで手を天に突き上げるオーディエンスの一人になりたい!という気持ちがあるのだ。

だけど本作はパフォーマンスを観ることだけに集中させてくれる。これ以上にない特等席に招待されたようなものだ。巧みな編集で、アイコンタクトを交わすメンバーたちの表情まで生き生きと捉えられている。デビッド・バーンの痙攣ダンスにこっちまで緊張させられるが、ティナ・ウェイマスの笑顔が挟まるだけでなんかほっこりしてしまうw。

ステージで起こっていることの全体像を見せる曲もあれば、演出過多のPVみたいにデビッド・バーンの芸を見せる曲もある。また、カメラがステージにいるのに、演奏する手元を過剰に撮らないのも印象的だった。演奏テクニックを見せつけるようなコンサートではないからだ。楽曲への理解があっての演出と言えるのでは。

観客の姿が見られるのはクライマックスとも言えるTake Me To The Riverのあたり。オリジナルの演奏はどこかおどろおどろしい感じすらある曲なのに、なんだこの盛り上がりは!😆♪。映画「コミットメンツ」でもパワフルなステージが印象的だった曲だが、このシーンの盛り上がりに、思わず立ち上がりそうになる。

繰り返し観たくなる気持ち、よーくわかりました。84年以前のトーキングヘッズ、ちゃんと聴きます!😆




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ジャッキー・チェンの秘竜拳

2024-02-18 | 映画(さ行)


◾️「ジャッキー・チェンの秘竜拳/少林門」(1975年・香港)

監督=ジョン・ウー
主演=レオン・タン ジェームズ・ティエン ジャッキー・チェン サモ・ハン・キンポー

Filmarksでフォローしている方が書いていたテレビの映画番組育ちのルーティン。
「新聞のテレビ欄でその日の映画をチェックして、赤ペンで丸をつける。その夜が楽しみだった。」
同世代には、まさに映画ファンあるあるだと思うのだ。それに触発されて思い出したことがあり、本作を配信で再鑑賞。何故って、当時テレビ放送という機会がないと、その映画に出会えなかったからだ。

ジャッキー・チェンがブレイクした80年代初頭。出演した未公開作が、"本邦初公開"として、テレビで放送されることもしばしばあった。本作は「ジャッキー・チェンの秘竜拳」のタイトルで、ある日のテレビ欄に名前が挙がった。しかしそれは、野球中継が雨で<中止の時>という条件付きだった。
🙏「うおーっ。今夜××球場付近は雨になりますように!」
結果、雨天のため中止!やたっ!!😆

…と記憶している。

※調べてみた。Wikiに83年3月20日月曜ロードショーで初放送との記述があるが、20日は日曜日。また、月曜ロードショーの放送記録を記したブログによると21日(月)は別の映画を放送している。20日のナイター中止枠?

少林寺の修行僧だったシーが絶対的な力を手にする為に、武術を弾圧する清朝の役人と組んで、武道家を次々に殺害していた。少林寺は武術に優れたユン・フェイを下山させる。シーの野望を阻止することはできるのか?

ジャッキーはユンに協力する若者役で、主演ではない。兄の復讐の為に日々を耐えてきたストイックな役を演じている。悪役の一人を演じているのはサモ・ハン・キンポーで、武術指導も担当する大活躍。脇役にユン・ピョウ、そして監督はなんとジョン・ウー!今の目線で観るとなかなかのメンバーなのだが、ビッグネームになる前の作品なので、なかなか貴重。

初期の作品だし、ジョン・ウーらしさは感じられないかなと思っていたが、愛した女が死んだ為に剣を抜かなくった剣豪が出てくるのは「狼 男たちの挽歌最終章」を思わせる。お約束の白い鳩は出てこないが、二丁拳銃ならぬ二刀流の剣士が背面ジャンプして切りかかる場面が出てくる。これを「男たちの挽歌Ⅱ」の、二丁拳銃で背中から階段落ちする場面と重ねるのは深読みのしすぎだろうか?ww。

今回再鑑賞したが、当時はジョン・ウー監督なんて全く知らなかったし、サモハンも意識して観てなかったので、よい再発見ができた。何にせよ、ジャッキーやブルース・リー以外が主演の王道カンフー映画を観たのはこれが初めてだったし、この年は他にもジャッキー未公開作がテレビで放送されたので、ますます興味が高まったのでした。



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宇宙よりも遠い場所

2024-02-16 | テレビ・アニメ


世間で評判がいいから気になっていた。2021年にBS11で再放送された録画で13話完走。

参りました。これは傑作。前半は今の自分を変えたい!という青春もの、日常もの的な彼女たちの自然さ、そして南極観測隊のお仕事ものとしても楽しんでいた。それが後半。露わになっていく、それぞれが抱え込んでいた感情や積年の思いの爆発に、こっちまで感情が揺さぶられる。

「ざまぁみろ!」を連呼する南極到着の回。今までバカにされ続けていた報瀬の気持ちであるのだけれど、藤堂隊長のひと声で全員が叫んだのに感激。無理だと言われ続けた民間観測隊の世間への気持ちが、そのひと言で爆発する。第1話のオープニングで砂遊びで溜まった水が流れ出す場面があるけれど、「ざまぁみろ!」はまさに溜まり溜まった感情。

さすがマッドハウスと思える作画、映像表現は見事だし、声優陣がオーバーアクトにならないギリギリのところで、登場人物の昂りや気持ちの揺らぎを吹き込んでくれている。最終回は彼女たちの確かな成長が刻み込まれている。

ラスト2、3話は涙がにじむ。日向の過去に触れる回は気持ちのこもった台詞と演技でしっかり人物を見せる。それに続くクライマックスの報瀬と母のエピソード。台詞も確かにいいのだけれど、パソコンやスマートフォンの画面を無言で見せるだけで、こんなにじわーっと感情に訴えかけてくるなんて。

友達のあり方。これまでの自分を振り返させてもくれた。等身大のキャラクターばかりなのに、南極大陸という壮大な舞台の物語。一見アンバランスな題材なのに、ここまで感動的な話になるなんて誤算だった。

南極観測隊の仕事や意義、南極の様子を知る上でも意義あるアニメ。2024年1月からEテレで再放送が始まったのは、いいセレクトだと思うのだ。多くの人に見て欲しい。初回を見直したら、広島に向かう新幹線の中で、報瀬の携帯の画面がチラッと映る。メールの件名は12話に登場するお母さん宛のものじゃないか😳。嬉しかった日常を綴って送っていたんだな、と理解できてまた涙しそうになったよ。


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アリスのままで

2024-02-15 | 映画(あ行)

■「アリスのままで/Still Alice」(2014年・アメリカ)

●2014年アカデミー賞 主演女優賞
●2014年ゴールデングローブ賞 主演女優賞

監督=リチャード・グラツァー ワッシュ・ウェストモアランド
主演=ジュリアン・ムーア アレック・ボールドウィン クリスティン・スチュワート ケイト・ボスワース

言語学者として大学で活躍していた主人公アリスが若年性アルツハイマーになってしまった現実と立ち向かう姿と、家族の愛を描いた本作。言葉を扱ってきたアリスから、その言葉が少しずつこぼれ落ちていく。周囲の人が誰かもわからなくなっていく。難病ものの映画というと、どうしても綺麗にまとまりがちなのがこれまでの映画だった。しかしジュリアン・ムーアの素晴らしい演技とその不安な気持ちを描く巧みな演出は、スクリーンのこちら側の僕らを単なる傍観者にさせないところが見事だ。

若年性アルツハイマーを扱った映画というと韓国の「私の頭の中の消しゴム」という秀作がある(元ネタは日本のテレビドラマだが)。ソン・イェジンン扮する美しい妻が次第に自分を失っていく姿が悲しく、彼女への夫チョン・ウソンの愛が心に染みる作品だった。こちらは二人に物語の焦点が絞られているだけにラブストーリーとして美しく仕上がっていた。同じ難病を扱っていても「アリスのままで」が大きく印象が違うのは、いくつか理由がある。ひとつは当事者アリスを物語の中心に据えていること。「消しゴム」はどちらかとチョン・ウソンの目線で彼女を見守る映画だった。対して「アリスのままで」は、当事者の不安やどうしようもない焦り、覚悟が描かれていることだ。

二つめは、彼女を支える"家族の成長物語"であることだ。難病を抱えた家族だが、それぞれに向き合う現実がある。それぞれの生き方、そして成長があるところが感動を生んでいる。扱いにくい存在だった次女が最終的に母アリスを支える立場になる。周囲にいるのが誰かもわからなくなってきた母親に本を読んできかせるラストシーンは美しい。いい映画に登場人物の"成長"はつきものだ。映画の冒頭と最後で印象が変わらない主人公なんて、これほどつまらないものはないだろう。「アリスのままで」は家族が変わっていく姿も印象的だが、認知症の当事者自身の成長を描いた映画もある。介護問題をテーマにした日本映画「老親」がそれだ。介護問題をきっかけに夫と別居した主人公のもとに認知症の義父が突然やってくる。何ひとつ自分でできなかった義父が、次第に変化していく姿が微笑ましく感動に導いてくれた。こちらも機会があれば是非観てほしい秀作。

僕が「アリスのままで」を見終わった後、最も心に残ったのはラストシーンの母と娘の会話。
「愛の話なのね」
「そうよ、愛の話なのよ」
記憶や言葉を失っていっても、人を愛する気持ちは残る。

 ★

そのラストシーンで思い出したことがある。私ごとだが僕の祖父のことを書かせて欲しい。僕が最後に祖父に会ったのは亡くなる数年前。自宅の狭い個室で寝ていた。祖父には僕の父を含めて四人の息子がいた。僕は祖父に挨拶したが、僕が自分の孫だとはわかってはいないようだった。その僕に祖父は壁に貼っているお気に入りの写真の話を始めた。その写真は大相撲のカレンダー。当時横綱だった四人の力士が和服姿で並んでいる。祖父は、その写真を指さして微笑みながら、僕にこう言った。
「これはわしの四人の息子だ。」
そこへ祖母がやってきて、祖父はもう誰が誰だかわからなくなりつつある。だけどこのカレンダーの写真の横綱が四人の息子のように見えるんだろうね、と言った。愛する気持ちは最後まで残る。「アリスのままで」のラストシーンでちょっと涙ぐんでしまったのは、じいちゃん、あなたのせいだよ。


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千年女優

2024-02-11 | 映画(さ行)


◾️「千年女優」(2001年・日本)

監督=今敏
声の出演=荘司美代子 小山茉美 折笠富美子 飯塚昭三 津田匠子

パプリカ」に満点つけておきながら、今敏監督の旧作を観ていなかった。昨年リバイバル上映で「パーフェクト・ブルー」を観て、演出と表現の凄さに圧倒された。そして未見だった「千年女優」が、再びFilmarksの上映企画で映画館で観られるありがたい機会が。

しかし、なかなかレビューをまとめられずにいた。一つの理由は検索してネタバレ考察の数が尋常じゃなく多いことだ。それだけ多くの人を考えさせた映画である。論客になる気はないし、自分が感じた「すげえ」をうまく言葉にできない気がしたのだ。もう一つの理由は、2024年新年早々に観たせいだ。関東大震災の年に生まれ、大きな地震の度に何らかの転機が訪れた千代子の人生。そのインタビューの真っ最中にも再び地震が起こる。スクリーンのこっち側で元日に起こったばかりの地震災害を思うと、心穏やかではいられなかった。映画は楽しんだけれど、地震の場面の度に現実に引き戻されてしまう。

そんなこっちサイドの事情こそあるが、この映画は自在に時空を飛び回り、そのイマジネーションに圧倒される。千代子が子供の頃に出会った"鍵の君"に憧れ、彼にいつか巡り合いたいとどれだけ思い続けたのかが、彼女の半生と共に描かれる。

「パプリカ」も映画愛なしに語ることのできない作品だったが、本作も然り。映画の撮影現場で起こった出来事が語られる一方で、千代子が演じた歴代のヒロインが"鍵の君"を追いかけ続ける。いつしかインタビューしに来た立花源也も映画の中に入り込んでいく。幾度も千代子の出演作品を観て、現場も知っている源也だから、インタビューしながら、場面を再現して会話しているのが現実なんだろう。

けれどそのやり取りが千代子の映画世界とつながるイメージになることで、二人の思い入れが伝わってくる。千代子が時代劇からSFまで演じた歴史と時代から、その年月は千年に達する。なんて壮大な恋絵巻。他の映画で感じたことのないトリップ感がある。映画館で観られて本当によかった。

千代子に千年長寿の酒を飲ませる老婆は「蜘蛛巣城」を思い出させる。また老婆が回す糸車が場面転換に用いられるのは、「無法松の一生」で同様に使われた車輪のイメージに重なる。映画の中で映画に入り込み、そこに現実世界の映画が重なる。地震というリアルがなければ、僕ももっとのめり込んで観ていたに違いない。

実績のある声優陣もいい仕事。脇役ながら、鍵の君役の山寺宏一と、彼を追い続けた官憲役の津嘉山正種。このイケボ二人は強い印象を残してくれる。音楽は本作で今敏監督と初めて組んだ平沢進。「パプリカ」同様に素晴らしい独自の世界を響かせる。

ここまで綴ってみると、繰り返し観て考察したくなる人の気持ちがわかってきた気がする。でも解釈は人それぞれ。千代子の最後の台詞「だって私、あの人を追いかけてる私が好きなんだもん」じゃないけれど、解釈を頭の中で楽しんでいる自分が好きなのかもしれない。




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007/カジノ・ロワイヤル

2024-02-10 | 映画(た行)


◾️「007/カジノ・ロワイヤル/Casino Royal」(1967年・イギリス)

監督=ジョン・ヒューストン ケン・ヒューズ ロバート・パリッシュ ジョセフ・マクグラス ヴァル・ゲスト
主演=デビッド・ニーブン ピーター・セラーズ ウルスラ・アンドレス ウディ・アレン

イアン・フレミングの原作「カジノ・ロワイヤル」の映画化作品。ダニエル・クレイグ版とは全く違う、大スケール、オールスターキャストのコメディ映画である。製作上の様々な問題があって出来上がった異様な産物。原作リスペクトとは程遠い映画だが、当時フレミング自身はこの映画化をどう思っていたのだろう、と想像してしまう。フレミング自身は、ジェームズ・ボンドはデビッド・ニーブンをイメージしていたと聞くので、その点についてだけは異論はなかったのかな。

確かに異様な作品なのだが、製作から長らく経った今観ると、その後の米国製プレイボーイスパイ映画や、「オースティン・パワーズ」に代表されるスパイコメディの先駆けとも言えるだけに、そのハチャメチャぶりを楽しんでしまう。

オシャレなデザインのタイトルバックにパート・バカラックの音楽。80年代のクイズ番組「世界まるごとHow Much」の最後に流れるプレゼントクイズのBGM、これだったよね!軽快なハーブ・アルパートのトランペット🎺に心が躍る80年代育ち😆w。挿入歌は名曲The Look Of Love(恋の面影)。いい曲だ。ライオンが出てくる場面では、「野生のエルザ」主題曲が流れるおふざけも。デボラ・カーが出る場面では突然悲しげなメロディに変わる。これ彼女がらみの映画主題曲?自信ないけど、修道女になる場面が出てくるから「黒水仙」なのかな。

ストーリーの軸となるのは、カジノで悪事の資金調達をするルシッフルの企てを阻止するために、独自のバカラ必勝法を持つイブリンにジェームズ・ボンドを名乗らせて対決させるお話。しかしそこに辿り着くまでに、引退したボンド卿を復帰させるための紆余曲折、女だらけの屋敷でのどんちゃん騒ぎ、マネーぺニーの娘による新007スカウト。そして実業家となったヴェスパー・リンドを使ってイブリンを仲間にし、ボンド卿の娘まで登場する。ストーリーをちゃんと追うと回りくどい展開にイライラすること必至だが、カラフルな色彩感覚と、今の誰?と目が離せないカメオ出演と遊び心を超越した悪ふざけで飽きないから不思議。

ボンド引退後に後継者がボンドを名乗っているから、複数のボンドがいるという設定。その一人で、ボンドの甥ジミー・ボンドを演ずるのはわれらがウディ・アレン先生。これがアレンらしいコンプレックスの塊で、笑わせてくれる。ウルスラ・アンドレスは「ドクター・ノオ」とは違って妖艶な役柄、ルシッフルはオーソン・ウェルズが貫禄を示す。イブリンを誘惑する美女ミス・フトモモはジャクリーン・ビセット♡。他にもシャルル・ボワイエ、ピーター・オトゥール、ジャン・ポール・ベルモンドなどなどチョイ役なのに豪華絢爛。ベルリンのオークション場面に出てくる男性は、「ロシアより愛をこめて」に出てくるチェスの人やんw。突然現れるフランケンシュタインの怪物。演じているのは後のダースヴェイダー、デビッド・プラウズw。

スパイ養成学校がドイツ映画「カリガリ博士」みたいな雰囲気だったり、共産圏の人物が出てくると照明が赤くなったり、クライマックスは空飛ぶ円盤まで登場して、まさに混沌。観る人を選ぶ映画だとは思うが、2時間のカオスを楽しもう。




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愛の記念に

2024-02-08 | 映画(あ行)

◾️「愛の記念に/A Nos Amonurs」(1983年・フランス)

監督=モーリス・ピアラ
主演=サンドリーヌ・ボネール モーリス・ピアラ ドミニク・ベスネアール

フレンチロリータに弱い私だが、何故かサンドリーヌ・ボネールはどうも苦手としている。「冬の旅」も「刑事物語」も観たし(後者はソフィー・マルソー目当て)、「仕立て屋の恋」や「僕と一緒に幾日か」はかなり好きな映画。だけど、主演作を立て続けに観たいとまでは思えなかった。最初に観た「冬の旅」がいけなかったのかな。働きたくない!楽して生きたい!と言った挙句に凍死する主人公に共感できなかったし。代表作である本作「愛の記念に」は、今回が初鑑賞。

登場人物の誰にも共感しづらい。革細工職人の父と精神不安定な母。ヒロインのシュザンヌは毎夜遊び歩いて、男性とも奔放に関係を結ぶ。昨夜の男失敗だったよなー、みたいなことを女友達に話す場面はあるけれど、単なる遊びではなく、誰が自分にちゃんと向き合って愛してくれるかを、試しまくっているような印象を受けた。そんな彼女を家族も疎ましく思っている。

多くの人も感想で述べている、父親との会話の場面は心に残る。それまで態度がなってないと顔を叩くような父親だが、やっとちゃんと向き合ってくれたとも言えるのか。ヒロインが幼い頃には二つあったえくぼが今は一つ。それを父は「お前は片方でもやっていけるさ」と言う。片方でもかわいいぞ、と言ったつもりだろう。でもその後、父は言い争いが絶えない母の元を去っていく。片方でもやっていけるさ。そういう意味だったのかも。

そこから先は男に身を任せる彼女と、家族の罵り合い。本気でバシバシ叩く場面が長いから、観ていてこっちまで不安になる。結婚を決めた彼女の元に身内が集まる場面は、芸術論を交えたフランス映画らしい会話劇が続く。この場面、ヒロインの兄貴が妙に妹にベタベタ。少し前まで殴りかかっていたくせに、その行動の変化がちょっと理解しがたかった。父が出ていってから、厳格な父親役を兄が演じていたとはいえ、そのベタベタは何?。

娘が旅立つラストシーン。父親が「お前は愛されたいばっかりで、人を愛することをしない」と言う。誰もがそうだと言う娘に、「愛を与える人はいる。選ばれし少数派だけどな」と諭す父の姿。劇中とエンディングで流れるクラウス・ノミのCold Songと共に心に残った。




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