Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

図書館戦争 革命のつばさ

2021-04-25 | 映画(た行)





◼️「図書館戦争 革命のつばさ」(2012年・日本)

監督=浜名孝行
声の出演=井上麻里奈 前野智昭 沢城みゆき

有川浩の原作は読破。ミリタリー色と権力に立ち向かう姿にアツくなりつつ、ラブコメ要素に胸キュン(死語)。これ以上ない適任キャストの実写映画化とドラマも制覇。フジテレビのノイタミナ枠で放送されたアニメーション版がこれまたクオリティ、シリアスとラブコメが見事なバランスで素晴らしい。コミック版以外は全部手をつけた。ここ10年でこんなに関連作(「レインツリーの国」含む)に手を出した作品って、「涼宮ハルヒの憂鬱」を除いて他にはこれだけかもしれない。

本作はアニメーションの劇場版。原発テロ事件が起き、その手口があるエンタメ小説にそっくりだった。政治家がテロ防止に動いて法改正を行ったことで、メディア良化隊の権限が強化され、問題の小説を書いた作家の創作権を制限しようと身柄確保に動き出す。図書隊は作家と表現の自由を守り切ることができるのか。

原作も読んでいてかなり熱が入るエピソードで、劇場版にこそふさわしいスケールとストーリーだ。有川浩の原作のシリアスなのにキュンとくる感覚は、アニメだからこそ上手に再現できているように思える。実写版はどうしてもアクションや爆破シーン、ミリタリー色、政治的駆け引きのスリルの味付けがどうしても強い。されどこのアニメ劇場版も頑張っていて、クリント・イーストウッドの「サンダーボルト」か!?と思うくらいに、銃弾を喰らいながらバリケードに突っ込むクライマックスは手に汗握るど迫力。さすがはプロダクションI.G.の仕事。

落ち込む手塚に芝崎が黙ってキスして「魔がさしたと思って。」と言いながら、それを担保に申し入れをする場面好き。「担保が足りない」って抱きしめる手塚。うわー、その台詞使ってみたい!(こら)

この作品だけ見ると、郁と堂上教官の恋愛ムードが前面に出てるけど、ラストの郁の台詞のように、これまでの出来事の積み重ねがあってこその今なんだ。興味を持った方は、テレビシリーズをまずはご覧になってから、本作に進まれたし。映画ファンには「華氏451」のエピソードが染みますぞ。



映画『図書館戦争 革命のつばさ』予告編


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チャイルド・プレイ

2021-04-24 | 映画(た行)





◼️「チャイルド・プレイ/Child's Play」(1988年・アメリカ)

監督=トム・ホランド
主演=キャサリン・ヒックス クリス・サランドン アレックス・ヴィンセント

ホラー映画を映画館で観ようとは普段思わない。なんで金を払って怖い思いをしなければならないのか。そんなのゴメンだ。映画館でホラーを観たのは、お目当ての映画と二本立てで仕方なく観たこと(「エルム街の悪夢」の3作目)、飛行機の便までの時間潰しで選択肢がどうしてもなかったこと(香港映画の「カルマ」)くらいだ。単独の上映でホラー映画なんてねぇ…あ!思い出した。一度だけある。「チャイルド・プレイ」だ。

おもちゃ屋に追い詰められた犯人がブゥードゥー教の黒魔術で人形に自分の命を宿す。しかしそのままでは、彼は人形の中に封じ込まれたまま。人間の身体を奪い取るチャンスを待っていた。そしてその人形は、アンディ少年の誕生日にプレゼントとして贈られることになる。それが惨劇の始まりだった。

気の迷いだったのか、人形だからと甘くみたのか。映画が中盤に差し掛かり残虐な描写が続いて、これをセレクトしたことを後悔した。やっぱり自分は映画館でホラーを観るのは向いてない。

ひぃー😣

クライマックス、黒こげチャッキーがこれでもかと迫るしつこさに、もういいよぉー!と思いながら観ておりました。

血飛沫やビジュアルで怖がらせる場面よりもゾッ!としたのが、電池が入っていないことに気づく場面。わかってるはずなのにー!知恵と工夫とアイディアで撮ってる映画だというのは、怖さと共にひしひしと伝わってきてそこは好印象。トム・ホランド監督作は、ビデオスルーではあるが「派遣秘書」が意外と拾い物(個人の感想です)。

それから数年後。ホラー映画嫌いと知っている配偶者が、寝ている僕のおでこに手を当てて、「チャイルド・プレイ」の呪文を唱え始めた。
👩🏻「アデ デュイ デンベラー…」
😫「やめろーっ!」



チャイルド・プレイ(1988) 予告編


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マンク 破戒僧

2021-04-20 | 映画(ま行)





◼️「マンク 破戒僧/Le Moine」(2011年・フランス=スペイン)

監督=ドミニク・モル
主演=ヴァンサン・カッセル デボラ・フランソワ ジョセフィーヌ・ジャビ

修道院の門前に置き去りにされた赤ちゃん。アンブロシオと名付けられたその子は修道院で育てられて成長し、誰よりも心に響く説教をする修道士となり信頼を集めていた。その修道院に顔を隠した少年バレリオがやって来る。頭痛に悩むアンブロシオを不思議な力で治した後、バレリオはその正体をアンブロシオに明かす。それはアンブロシオが戒めを破る始まりとなっていく。

18世紀に書かれた原作小説は道を踏み外していく修道士を描き、背徳的だと批判を浴びた問題作。主人公を育てた神父が「悪魔はどこからか迫って来る」と言っていた予言が、思わぬ形で現れる。

確かに地味な印象の映画。英米の大手が製作していたら、悪魔的な存在のイメージをもっとビジュアルで万人にわかるように示すのかもしれない。「お前も欲の罪を犯した」と現れる幽霊とネガポジ反転したイメージが主人公の表情と二重映しになるくらいしか特殊な場面もない。だけどバレリオの仮面の不気味さ、修道院の建物に施された彫刻、アンブロシオの物語と敬虔な信者である女性との物語がどう関係するのか、バレリオが彼に授ける秘策に気づくと引き込まれていく。その末路の悲劇と神でない者に救いを求めるラストがズシーンと心に響く。

過剰な映像演出がないだけ身近に悪魔が潜んでいる、俗っぽく言うなら"魔がさす"様子が生々しく感じられるのだ。その功績は照明だと思う。夜の場面でも何が起きているのかきちんと伝わるのがいい。自然光にこだわる監督なら訳がわからなかったかも。アンブロシオの説教に聴き入る群衆の中で一人の女性だけが輝いて見える様子や、バレリオが授けた魔力を持つ枝花がどれだけ特別なものかが、光線の加減だけで示される。そして、逆光で顔が見えない女性の姿が示されるラストシーン。地味だけど上手い。

もともと無表情なヴァンサン・カッセルが、他の映画よりもさらに思い詰めた表情に見えてしまうのもやはり巧さなんだろう。僕がこの映画をセレクトしたのは、お気に入りのフランス女優デボラ・フランソワが見たかったから。ここでは詳しくは触れないけど、あの瞳で迫られたら絶対に心揺れます。



映画『マンク~破戒僧~』予告編


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おっぱいとお月さま

2021-04-17 | 映画(あ行)





◼️「おっぱいとお月さま/La Teta I La Luna」(1994年・スペイン=フランス)

監督=ビガス・ルナ
主演=マチルダ・メイ ピエル・ドゥーラン ジェラール・ダルモン

愛すべき映画である。パトリス・ルコント監督作「髪結いの亭主」冒頭の女性賛美に通ずるおっぱいへの憧れを、素直に、いやフェチな心のままに表現した愛らしい映画である。また登場人物が皆一癖もふた癖もある変わり者だらけで、それが奇妙な人間臭さを漂わせており、また愛を感じてしまう。

自分だけのおっぱいが欲しい少年、性的に欲求不満の踊り子、性的不能のおなら芸人、踊り子のためにひたすら歌い続ける青年と、それぞれの偏愛ぶりが時に悲しく、時におかしい。それがこの映画の魅力だ。

男として身につまされるのは、なんといってもおなら芸人モーリス。若い男に妻を寝取られながらも、大人の男としての余裕を見せていたり、妻を愛しながらも満足させられない自分に怒る姿は涙を誘う。マチルダ・メイ演ずる踊り子は、男の足の匂いが好きで、自分の涙をビンに貯めるのが趣味というフェチ振り。彼らと主人公の少年も含めたハッピーエンドに思わず拍手。うん、愛すべき映画である。

マチルダ・メイは全裸吸血宇宙人役のイメージが強いけど、おっぱいだけの女優じゃない。オシャレなポップスを歌ってフルアルバムのCDも出してるし、ミュージカルもこなせる才女。大好きなんす。イヴ・モンタン共演の「想い出のモンマルトル」を学生時代に見逃したのが悔やまれる。観たいなぁー。

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カセットテープ・ダイアリーズ

2021-04-10 | 映画(か行)





◼️「カセットテープ・ダイアリーズ/Blinded By The Lght」(2019年・イギリス)

監督=グリンダ・チャーダ
主演=ヴィヴェイク・カルラ クルヴィンダー・ギール ミーラ・ガラトナ ネル・ウィリアムズ

イギリスで暮らすパキスタン人一家の少年が、ブルース・スプリングスティーンの歌で自分に目覚める爽やかな成長物語。繁忙期の慌ただしさでちょっと疲れてたから、ちょうどやってた映画館で観られなかったのが悔しいーっ!新作DVDで鑑賞。

ポップスやロックの歌詞を聴いて、この映画の主人公のように何か啓示を受けたような気持ちになったことが幾度もある。それを日々を送る為の聖エルモの灯みたいに思って生きてきた。だから、この映画の主人公にはとても共感できる。それに文筆業に憧れるところも、あの時代の自分が重なって見えてしまう。

映画の舞台となった1987年の僕は、まさにそのど真ん中にいた。バックに流れる当時のヒット曲(Cutting CrewやLevel42、一瞬だったけどa-haを使ったセンス、素晴らしい!)カレッジラジオ気取りの校内放送、壁に貼られたポスターにも当時の小ネタが満載で、80's洋楽好きなら楽しくて仕方ないだろう。
「ワム野郎にバナナラマ女子」
「Tiffanyがゴミなのは私も知ってるわ」
もう笑い転げそう。

でも映画は厳しさを描くことも忘れない。サッチャー政権下の大不況。移民問題にからむ対立が当時からいかに根が深いものだったのか。父親に代表される異文化の壁を乗り越えようとする主人公のもがきと挫折、反抗と気づき。もし自分が若い頃にこの映画に出会っていたなら、純粋に主人公たちとストリートを駆け抜けたい!と思っただけだったろう。でもこの年齢で観たからこそ、父と息子、家族目線にもじわーっと感動できた気がする。この手の青春映画にはお約束とも言える、いちばんの理解者である一歩引いた女子の存在も大きい。彼女のその後も気になるけど、こういう存在の女子はその後が描かれないんだよね。

ブルース・スプリングスティーンの「Born In The U.S.A.」は、高校時代だった。「ベストヒットU.S.A.」の録画であの曲のPVを見ているタイミングで、親父が居間に入って来た。そう、この映画で主人公がThe Riverをテレビで見ながら歌ってる場面とまったく同じ。

👨🏻「勉強もせんでなん見よんのか」
😏「ブルース・スプリングスティーン。」
ちょうど"サイゴンに黄色人種を殺しに行った"とかいう歌詞が出てきた。
👨🏻「なんちゅう詩だ。とんでもない歌手だな。」
🙂「これはベトナム戦争の帰還兵を歌ったものなんだ。そんな国に俺は生まれちまった、という悲しみを歌ってるんだよ。」
👨🏻「…そうか」
しばらく一緒にPVを見て、親父は言った。
👨🏻「…いい歌だな。」

「涙のサンダーロード」を歌うミュージカルめいた場面、最高。



映画『カセットテープ・ダイアリーズ』予告編


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今日のBGM:55 STONES/斉藤和義

2021-04-07 | 今日のBGM



繁忙期の仕事帰り。本日の通勤BGMは斉藤和義の新作「55 STONES」。コロナ禍の2020年に彼が何を考えていたのか、何をして過ごしていたのか、何が楽しかったのかが伝わる作品集。

オープニングを飾るのはYMOの名曲BEHIND THE MASK。かつてマイケル・ジャクソンやエリック・クラプトンもカバーしたニッポンのテクノを、オリジナルにほぼ忠実にギターの多重録音で奏でる。

僕と同い年だからYMOは真剣に聴いてた世代。外出自粛で家にずっといたら、こんなこと試したくなるよなー…。自分もこの曲打ち込んでやったことあるだけにすっごく共感。

でも気づいて欲しい。この曲を選んだ本当の理由は、マスクで半分顔を覆い続けた2020年だから。みんなマスクの向こうで何を考えていたんだろう。

♪ 緊急事態宣言が…で始まる8分に及ぶ大作2020 DIARYは、そんな年の生活を綴った作品。政治への不満、鬱憤をネットでぶちまける人々を歌いつつ、この最中に働いている人々への感謝と会いたい人への素直な気持ちが心に響く。窓の外の青空と、僕らのなんとも言えない気持ち。

心のつぶやきみたいな歌詞が散りばめられたセルフレコーディングの曲が多い中、バンドで演奏されたのがBoy。この曲のはじけっぷりがとにかく心地よい。こんな演奏を安心して目の前で見られる日が早くきますように。
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サブウェイ

2021-04-04 | 映画(さ行)





◼️「サブウェイ/Subway」(1985年・フランス)

監督=リュック・ベッソン
主演=クリストファー・ランバート  イザベル・アジャーニ ジャン・ユーグ・アングラード リシャール・ボーランジェ

別にリュック・ベッソンが嫌いではないのだけれど、ずっと敬遠してきた「サブウェイ」に挑む。なるほど、賛否分かれる映画なのは理解できる。確かにお話は深みがないし、説明不足も多々あるし、心情が読みづらい。でもこの上なく映像はカッコいいし、個性的な登場人物が面白い。起承転結がハッキリした映画の文法を切り捨てて、とにかく観ている僕らをグイグイ引っ張っていく。悪く言えば、問答無用の勢いだけの映画。でも他の映画では味わえない魅力がある。

冒頭のカーチェイスを除いて、終始地下鉄の駅内で物語は進行するアイディアもいい。そしてその限られた舞台をとことん活かそうと楽しんで撮影しているのが伝わってくる。しかし、それは観客置いてけぼりの作り手本位映画になりがち。社会的に追いやられた人々が地下鉄駅のさらに地下で暮らす様子と、地上にいるイザベル・アジャーニの裕福な夫や警察官たちの対比。「パラサイト 半地下の家族」と同様に貧富の差を上下で表現しているという見方もあるだろうけど、リュック・ベッソンはおそらく何にも考えてない。地下鉄という舞台が遊園地みたいで面白い。ただそれだけだ。

この映画のもう一つの主役は音楽。音楽家の一人として出演もしているエリック・セラの劇伴や挿入曲は、観ているこっち側の気持ちに訴えかけてくる。他のベッソン作品で聴ける近未来的なテクノでもなく、オーケストラでもなく、疾走感のあるエイトビート。それがスクリーンの向こうから僕らに拍の頭で手を叩けと要求しているかのようだ。これにノることができた人は、きっとこの映画を好む人。

イザベル・アジャーニを愛でる映画としてもナイス。ファッションと髪型が出てくる度に変化して、人気女優を着せ替え人形にして楽しんでるみたい。黒いレースが美しいドレス、鮮やかな黄色と黒のチェック柄ジャケット、モヒカンみたいな髪型でゴージャスなコートを身にまとい、グレーのダブルスーツにモノトーンチェックのシャツ。色素の薄い瞳に引き込まれそう。

そもそもスティングの出演を予定していたらしいが、クリストファー・ランバートが演じたことで、無軌道な若造の感じがよく出た気がする。85年当時のスティングは、ジャズに走ってちょっと落ち着きが出始めた頃だからパンクだけど上品な感じになってたかも。ジャン・ユーグ・アングラード、ジャン・レノ、リシャール・ボーランジェと好きなフランス男優たちが脇に揃い踏み。



サブウエイ(1986) 予告編


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