中学3年の年末に友達とノリで年間ベストを雑誌の真似して選んでから33年。いち映画ファンによる映画愛表現の手段として、今年もべスト作品を選出します。世間が一緒に盛り上がったり、アツくなったりする出来事が多かった印象の今年。ドラマから生まれた流行語や東京オリンピック招致、経済政策や改憲論、法案の賛否・・。物事に関心をなくしたらいろんな意味で終わりだな、というのを痛感した1年でもあったかな。そんな2013年に観たすべての映画から、私takが選んだ私的映画賞がこちら。国際映画賞の結果なんぞ関係なく、あくまでも個人としてグッときたかが基準です。(昨年の結果は
こちら)
★対象は2013年に観たすべての映画(劇場、DVD、VTR、地上波、BSすべて含む)。新作、旧作を問わない。
★劇場公開することを前提に撮られた映画を対象とする。いわゆるVシネマ、OVAなどビデオリリース目的のものは含まない。
■作品賞=
「タイピスト!/Populaire」(2012年・フランス)
これっ!こういう映画が観たかったんだよ!。エンドロールの後で思わず拍手。楽しくって、ロマンティックで、スリリングで、わくわくして、ドキドキして。そのまんまの勢いでシアターを出て、映画館スタッフに挨拶して帰っちゃうくらいの楽しい気持ちになれた(笑)。レトロな色彩、素敵な役者、クラシック映画への愛。この映画の言葉を借りるなら、ビジネスで映画をつくるのがハリウッド、愛でつくっちゃうのがフランスなのかも?
今年の10本
「かぐや姫の物語」(2013)
「風立ちぬ」(2013)
「人生、ここにあり」(2008)
「ジェーン・エア」(2011)
「タイピスト!」(2012)
「パリの恋人」(1957)
「マリー・アントワネットに別れを告げて」(2012)
「許されざる者」(2013)
「ル・アーブルの靴みがき」(2011)
「ローマでアモーレ」(2012)
■特別賞(ベストクラシック)=
「パリの恋人」(1957)
「スクリーンビューティーズ」と題された全国規模の特集上映で、今年はヘプバーン、ドヌーブ主演作のデジタルリマスター版がわが街のスクリーンに(嬉)。恥ずかしながら「パリの恋人」は初鑑賞。くーっ!この世にはまだこんな素敵な映画があるんだ、と大感激の2時間。貴重な機会、ありがとうっ!思えば中学時代からオードリーの主要作はほぼ映画館で観ている。
■監督賞=宮崎駿
「風立ちぬ」(2013)
今年引退を表明した宮崎駿監督。アニメでしかなしえない見事な描写とファンタジー。戦前戦中の不安な時代を写し取った見事な描写。監督が込めた空への憧れ。他の誰にこんな作品がつくれるだろう。そう思いながらスクリーンに向かい、ユーミンのひこうき雲が流れた後。スクリーンのこちら側に残るのは、何とも言えない切なさ。僕は席をしばらく動けなかった。
今年の10人
アキ・カウリスマキ 「ルアーブルの靴みがき」(2011)
石井裕也 「舟を編む」(2013)
今村昌平 「復讐するは我にあり」(1979)
ウディ・アレン 「ローマでアモーレ」(2012)「人生万歳!」(2009)
クエンティン・タランティーノ 「ジャンゴ 繋がれざる者」(2012)
スタンリー・ドーネン 「パリの恋人」(1957)
高畑勲 「かぐや姫の物語」(2013)
ベン・アフレック 「アルゴ」(2012)
宮崎駿 「風立ちぬ」(2013)
李相日(リ・サンイル) 「許されざる者」(2013)
■主演男優賞=テレンス・スタンプ 「アンコール!!」(2012)
愛する妻の死後、彼女が参加していた高齢者コーラスグループで歌うことになった頑固爺さんの一大決心。怪しい変な役が多かったテレンス・スタンプ(僕がそういうものしか観ていないせい?)が、嫌だけど愛すべき爺さんを好演。クライマックスで歌うのは、ビリー・ジョエルのLullabye (Goodnight My Angel)。それは不器用な男の子守歌。
今年の10人
アンソニー・ホプキンス「ヒッチコック」(2012)
アンドレ・ウィレム「ルアーブルの靴みがき」(2011)
ダニエル・ディ・ルイス「リンカーン」(2012)
テレンス・スタンプ「アンコール!」(2012)
トニー・レオン「グランド・マスター」(2013)
フレッド・アステア「パリの恋人」(1957)
マチュー・アマルリック「チキンとプラム」(2011)
松田龍平「舟を編む」(2013)
ラリー・デビッド「人生万歳!」(2009)
渡辺謙「許されざる者」(2013)
■主演女優賞=グレン・クローズ
「アルバート氏の人生」(2011)
今年は素敵なフランス女優さんやベテラン勢の貫禄の演技、体をはった熱演に出会えて素敵な年だった。2013年を語る上で選ぶならデボラ・フランソワ嬢かもしれないが、主演賞に選ぶ上ではやはりグレン・クローズ。舞台でも演じ続けた難役を自ら製作した映画でも演じきったその心意気には心底感動。あの頃「危険な情事」でスゲーと思ったけど、「アルバート氏の人生」は年齢を重ねた今だからできるいい仕事。
今年の10人
オードリー・ヘプバーン「ティファニーで朝食を」(1961)「パリの恋人」(1957)
カトリーヌ・フロ「大統領の料理人」(2012)
グレン・クローズ「アルバート氏の人生」(2011)
田畑智子「ふがいない僕は空を見た」(2012)
壇蜜「わたしの奴隷になりなさい」(2012)
デボラ・フランソワ「タイピスト!」(2012)
ヘレン・ミレン「ヒッチコック」(2012)
ミア・ワシコウスカ「ジェーン・エア」(2011)
宮崎あおい「舟を編む」(2013)
レア・セドゥ「マリー・アントワネットに別れを告げて」(2012)
■助演男優賞=クリストフ・ヴァルツ
「ジャンゴ 繋がれざる者」(2012)
マカロニウエスタンへのオマージュに満ちあふれたタランティーノ監督作で、主人公ジャンゴがかすむような存在感と印象を残した名演。ウエスタンではよくある師弟関係、バディ的な男の友情をこの21世紀に再現。この役柄、個人的には「イングロリアス・バスターズ」よりも大好き。
今年の10人
アラン・リックマン「モネ・ゲーム」(2012)
板尾創路「私の奴隷になりなさい」(2012)
柄本明「許されざる者」(2013)
加藤剛「舟を編む」(2013)
ケビン・コスナー「マン・オブ・スティール」(2013)
クリストフ・ヴァルツ「ジャンゴ 繋がれざる者」(2012)
トミー・リー・ジョーンズ「リンカーン」(2012)
三国連太郎「復讐するは我にあり」(1979)
モーガン・フリーマン「オブリビオン」(2013)
ロベルト・ベニーニ「ローマでアモーレ」(2012)
■助演女優賞=ジュディ・デンチ
「007スカイフォール」(2012) 「ジェーン・エア」(2011)
ダニエル・クレイグ扮するやんちゃなボンドを見守る上司Mは、大活劇たる「007」に人間ドラマの風格を与えた。「ジェーン・エア」の家政婦頭役は貫禄だった。それにしてもジュディ・デンチがコスチュームプレイ的時代劇に出演すると、"エルロイ大おばさま"(「キャンディ・キャンディ」)と呼びたくなるのは僕だけだろか?(笑)
今年の10人
アンドレア・ライズボロー「オブリビオン」(2013)
エレン・ペイジ「ローマでアモーレ」(2012)
カティ・オウテイネン「ルアーブルの靴みがき」(2011)
ゴルシフテ・ファラハニ 「チキンとプラム」(2011)
サリー・フィールド「リンカーン」(2012)
ジェマ・アータートン「アンコール!」(2012)
ジュディ・デンチ「007スカイフォール」(2012)「ジェーン・エア」(2011)
ジュリアン・ムーア「キャリー」(2013)
ダイアン・クルーガー「マリー・アントワネットに別れを告げて」(2012)
ペネロペ・クルス「ローマでアモーレ」(2012)
■音楽賞=ヘンリー・マンシーニ
「ティファニーで朝食を」(1961)
毎年旧作からばかりセレクトしている気がするが、それは本当に映像と共に旋律が心に残る映画音楽が近頃少ないからだ。今改めて観るとムーンリバーのメロディが、数多くのヴァリエーションを施されて映像を彩っている。それをお洒落に使いこなすブレイク・エドワーズ監督のセンスも素敵。
今年の10人
梶浦由記「魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語」(2013)
ガブリエル・ヤレド「大統領の料理人」(2012)
ジョージ・ガーシュイン「パリの恋人」(1957)
ジョン・ウィリアムズ「リンカーン」(2012)
高見優「図書館戦争」(2013)
ダニー・エルフマン「ヒッチコック」(2012)
M83「オブリビオン」(2013)
久石譲「風立ちぬ」(2013)「かぐや姫の物語」(2013)
ヘンリー・マンシーニ「ティファニーで朝食を」(1961)
ロブ&エマニュエル・ドルランド「タイピスト!」(2012)
■主題歌賞=secret base 君がくれたもの / 本間芽衣子(茅野愛衣)、安城鳴子(戸松遥)、鶴見知利子(早見沙織)
「劇場版あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない」(2013)
テレビシリーズのエンディングテーマだけに、厳密には映画主題歌とは言えないかも。でもこの曲が流れた瞬間に、息が詰まる程に胸が締め付けられたのは、この作品に対して感動している純粋な気持ちに他ならない。この作品に再会できた幸福な夏の終わり。
今年の10曲
Lay Your Head Down/Sinead O'Connor「アルバート氏の人生」(2011)
Moonriver「ティファニーで朝食を」(1961)
Oblivion (feat. Susanne Sundfor) / M83「オブリビオン」(2013)
Only The Young / Journey 「ビジョン・クエスト青春の賭け」(1985)
secret base 君がくれたもの / 本間芽衣子(茅野愛衣)、安城鳴子(戸松遥)、鶴見知利子(早見沙織) 「劇場版あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない」(2013)
Skyfall / Adelle 「007 スカイフォール」(2012)
Unfinished Song / Celine Dion「アンコール!」(2012)
いのちの記憶/二階堂和美「かぐや姫の物語」(2013)
早春物語/原田知世「早春物語」(1985)
ひこうき雲/荒井由美「風立ちぬ」(2013)
■ベストアクション映画=
「ラスト・スタンド」(2013)
アーノルド・シュワルツェネガー復帰主演第1作は、派手な見せ物CGやドンパチやるだけがハリウッド映画じゃないことを、静かに示してくれるアクション映画。最近のアメリカ映画にはないヒーロー像が嬉しい。正月映画だった「007/スカイフォール」と迷ったが、スカッとするアクション映画となればこっちに軍配。
■ベストコメディ映画=
「ローマでアモーレ」(2012)
地中海の陽光を浴びたアレン先生、最近のおとなしめの作風から一転。小洒落たセックスコメディの快作をみせてくれました。恋の指南役アレック・ボールドウィン、小悪魔エレン・ペイジ、みーんな魅力的。
■ベスト恋愛映画=
「ティファニーで朝食を」(1961)
奔放な少女が窮屈と思っていた愛を受け入れるラストシーンだからこそ恋愛映画として成立している。ほんとうはホリーはまたどっかに行っちゃうかもしれないのに。それでもホリー・ゴライトリーは永遠の憧れの女性。
■ベストミステリー/サスペンス=
「アルゴ」(2012)
ド派手な映画にばかり出ている役者という印象しかなかったベン・アフレック。いやはや、おみそれしました。でっちあげ映画撮影による救出劇は、シンプルな題材なのに観ていてハラハラ。そして根底に流れるのは映画への愛情。
■ベスト人間ドラマ=
「許されざる者」(2013)
クリント・イーストウッド監督・主演の名作を同じ年の日本に翻案した意欲作。オリジナル以上に説得力を増したストーリーは、僕らに真っ正面から問いかける。悪人って何なのか。何が許されることで、何が許されないことなのか。