Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択

2021-06-28 | 映画(あ行)



◼️「「宇宙戦艦ヤマト」という時代 2202年の選択」(2020年・日本)

監督=佐藤敦紀
声の出演=小野大輔 大塚芳忠 桑島法子 山寺宏一 沢城みゆき

「2199」と「2202」を、20世紀のアポロ計画からの歴史と捉えて、ドキュメンタリーにまとめた総集編。NHKスペシャルみたいな路線を狙ったと聞いたので、サラッとストーリーだけが流れていくのかと思っていた。沢城みゆきの「報道ステーション」を思わせるナレーションに、真田さんがインタビューに答える形式で進行する。確かに通史の語り部としてこれ以上の適任はいないだろう。

もっと淡々とした作品になっていると思ったのだが、さすがにこれだけ名場面の連続を見せられると、感情が揺さぶられる。「追憶の航海」よりも、コンパクトながら綺麗にまとまっている印象。「2205」に向けていい復習になるはずだ。

あー、この場面よかった!この後で森雪が古代に小声で「バカ…」って言うんだよ(オレも言われてみたい🥲)…って、個人的にツボだったところまで思い出されて。

「2202」の後半は、まだ終わらないのかー!って絶望感と不屈の攻防戦に力がこもる。こんだけダイジェストなのに、初めて観た時と同じく手のひらに汗を握ってる。ラストの「森雪が一緒にいるからっ!」のひと言で、再び涙腺崩壊(二度目のはずだぞ、オレ😭)。

福井晴敏が再構築したヤマトが、次の「2205」でどんな展開を見せるのか。

そこで、思ったこと。ガンダムのコミックに、ブライトさんが語り部となって、3人のニュータイプを中心に宇宙世紀を振り返る「虹に乗れなかった男」という作品がある。福井晴敏がシナリオを手がけ、その後のユニコーンにつながる作品。あれをアニメにしたら、このヤマト総集編みたいに綺麗に振り返りができるだろうにな。戯言でございます。

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ナッツ

2021-06-26 | 映画(な行)






◼️「ナッツ/Nuts」(1989年・アメリカ)

監督=マーチン・リット
主演=バーブラ・ストライサンド リチャード・ドレイファス モーリン・ステイプルトン カール・マルデン

法廷映画には、裁判の仕組みや制度をサスペンスの材料や主たるテーマに据える作品もある。バーブラ・ストライサンド主演の映画「ナッツ」は、被告人の精神鑑定をめぐる人間ドラマ。罪を認識して償える精神状態なのか、いわゆる刑事責任能力が映画の主眼だ。NUTSとは精神異常の意味である。

高級コールガールの主人公クローディアは、つきまとう客に殺されそうになり、抵抗している最中に相手を殺してしまった。第一級殺人罪に問われた彼女を死刑にさせるまいと、両親は弁護士を雇い精神異常だと主張させる。「私はイカれてない!」と正当防衛を主張して法廷で暴れた彼女は、弁護士を殴ってしまう。代わりにやってきた国選弁護士アラン(リチャード・ドレイファス)が担当することになる。ギクシャクする二人の関係だが、彼女の辛い過去を知るうちに、アランはクローディアを理解して彼女の主張を手助けするようになる。果たして、彼女は全うに裁判を受けることができるのか。

他の法廷ものと違って、彼女は一人の人間として裁判を受けることができるのか?が映画のテーマである。つまり事件の詳細に踏み込むことない。本題に入るその前の段階で、法廷シーンいや映画はほぼ終わってしまうのだ。

これは自分を過剰に束縛してきたことから自由になって、一人の人間として裁判を受けられる権利のために戦う女性の物語。他の代表作のように、バーブラは華やかに歌うことも踊ることもない。髪を振り乱して泣き叫ぶ姿は、他では観られない迫力。彼女の演技者としての意気込みを感じる。カール・マルデンやモーリン・ステープルトンなど大ベテランが小さく見える名演だ。



Nuts (1987) Official Trailer - Barbara Streisand, Richard Dreyfus Movie HD


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ドゥ・ザ・ライト・シング

2021-06-20 | 映画(た行)






◼️「ドゥ・ザ・ライト・シング/Do The Right Thing」(1989年・アメリカ)

監督=スパイク・リー
主演=ダニー・アイエロ スパイク・リー ビル・ナン ジョン・タトゥーロ ジョン・サヴェージ

この映画が公開された頃、ミッキー・ロークが「ロサンゼルスで起きた暴動は、この映画が引き起こした」と発言して物議を醸したことがある。確かに映画のラストは、民族間のエゴがぶつかり合い衝撃的だ。黒人街で起きた騒ぎで、イタリア系が経営するピザ屋は襲撃され、韓国系の雑貨屋も襲われそうになる。Public Enemyが流れるこのシーンは確かに力に溢れていたし、それまでの描写から感情も掻き立てられる。ここだけを切り取ってしまえば、少なからず暴動への影響があったと言えなくもない。実際この映画は多くの人に観られたわけだし。

だが忘れてはならないのは、「ドゥ・ザ・ライト・シング」は暴力を肯定した映画ではなく、それぞれの民族への愛にあふれた映画だということ。主人公であるその日暮らしのアルバイター少年のプライベートな愛、ダニー・アイエロ演ずるピザ屋一家の愛、黒人街への思い入れ、人々の胸にある民族愛が語られる。そして街を日々見守りながら、街への愛を語るラジオのディスクジョッキー。特に心に残ったのは二つある。パラソルの下で3人のおっちゃんが黒人差別問題を口汚く語る生々しい場面。そして、ラジオのディスクジョッキーが、マジック・ジョンソンやクインシー・ジョーンズ、プリンスら各界で活躍する黒人の名を挙げながら、「あなた方のおかげで我々は明日も希望をもって生きていける」と語る場面だ。公開当時のマイノリティが置かれたアメリカの現状。それが描かれた上で聞くこれらの言葉は、とても重く響く。こうした描写や語りを抜きにしてラストだけでこの映画を評価するのは違うと思うのだ。

「これが真実(トゥルース)さ、ルース」
ラジオから聞こえるサミュエル・L・ジャクソンの言葉。

スパイク・リー監督はこの映画で、現状と民族問題の難しさ、そしてマイノリティを取り巻く真実を描こうとする。衝撃のラストの後で、キング牧師やマルコムXの暴力に関するコメントが流れて心に染みる。暴力に訴えるのは正しい方法ではないと訴えている映画。結末を考えると気持ちのいい映画ではないかもしれないけれど、もっと評価されていい映画。そして、製作された89年から、大して変わっていない今を考えてみるのもいい。

「これが真実(トゥルース)さ、ルース」
今もラジオから同じ言葉が聞こえるのかもしれない。



Do the Right Thing (1989) - Official Trailer


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シン・エヴァンゲリオン新劇場版

2021-06-16 | 映画(さ行)



◼️「シン・エヴァンゲリオン新劇場版」(2020年・日本)

監督=庵野秀明
声の出演=緒方恵美 林原めぐみ 宮村優子 坂本真綾 三石琴乃

成長物語は映画を感動に導く大きな要素の一つだ。映画の始めと終わりで主人公が全く違う表情を見せ、活躍する姿を示されると感動してしまう。これまでの「エヴァンゲリオン」にも確かに成長物語の要素はあった。シンジが押しつけられた状況を受け入れて、「自分が初号機パイロットだ」と自ら行動に出る。「逃げちゃダメだ」とつぶやき続ける。新劇場版「破」のラスト「綾波を返せ!」と叫ぶ彼はその極みだった。

しかしだ。「エヴァ」の物語はその成長の芽をことごとく潰し続ける。状況は幾度も悪化し、しかもその原因はお前だと辛い現実を突きつけられる。成長物語になるかと思えば、その数分先でシンジのまっすぐな気持ちはへし折られてしまう。そんな混沌の中でもがき続けるシンジに、僕らは、現実という壁に幾度も押しつぶされそうになった自分を重ねていた。その共感こそが「エヴァ」だった。ヘッドフォンで外界を遮断して安心するのは、僕らだって同じ。僕らもそれぞれのATフィールドを持っている。悩み苦しむシンジも、心を許せないアスカも、自分の存在がわからないレイも、僕らの分身だった。だから「エヴァンゲリオン」を成長物語として感動することは、ありそうでなかった結末だ。

しかも、完結編「シン・エヴァンゲリオン劇場版」でシンジは畏怖の象徴だった父ゲンドウと改めて対峙する。
「父親に息子のできることは、肩を叩くか、殺してやることだけよ。加持の受け売りだけど。」
ミサトさんのひと言で、ふと思い出したことがある。

以前に読んだ映画評論「映画は父を殺すためにある」で、著者である宗教家の島田裕巳氏は映画の成長物語を宗教学でいう「通過儀礼」の視点で分析していた。この本で「通過儀礼」は成人式や武家社会の元服のような儀式的なものでなく、かつてない経験、特にこれまでの自分を打ち消されるような経験をして、一歩成長することとしている。そして、アメリカ映画はこうした目線で作られたものが多いという。キリスト教的な背景で、強き父であることを求められる社会と、その父を越えるべき存在として意識する息子世代。父を越えること、自身が成長するために父を殺すこと。「スターウォーズ」はその典型だと言えるだろう。

完結編を迎えるまでにシンジが立ち向かってきたこと、この最後の試練はまさに、この父を越えるための通過儀礼と言えるのだろう。それだけにいろんな思いが交錯するラストに、僕らはテレビシリーズ以来見守ってきたシンジの、レイ、アスカの成長物語を見届けた感動を味わうことになる。

そして何より嬉しかったのは、あの荒廃した世界にも血の通った日常があって、かつてのクラスメイトたちがいて、それが描かれたこと。

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リアリティ・バイツ

2021-06-13 | 映画(ら行)






◼️「リアリティ・バイツ/Reality Bites」(1994年・アメリカ)

監督=ベン・スティラー
主演=ウィノナ・ライダー イーサン・ホーク ベン・スティラー

90年代に社会人となった世代をそういうのかよく知らないが、いわゆるジェネレーションXの青春映画。大学を卒業して直面する現実の厳しさ、誰しもが経験あることだろう。特にマスコミ就職志望のウィノナ・ライダーの役柄は、同じ年頃の自分を思い出さずにいられなかった。理想の自分と現実との差異に悩む姿は、X世代でなくとも共感するところだろう。

イーサン・ホークって苦手な男優の一人なのだが、初めて彼をいいじゃん!と思った。どうも「いまを生きる」のお坊ちゃん役が印象強すぎで、こんなワイルドなぶっとい声で歌えるのか。見直したぜ。

80年代育ちの僕にとっては、「セント・エルモズ・ファイヤー」が青春映画のバイブルなのだが、90'sには同じように支持されている映画。世代を超えて共感するポイントも確かにある。けれど、この映画を観た時点の自分から見れば、この物語の結末は
”で、これからあんたたちどうすんの?”
という半ば呆れ気味な老婆心を抱かさずにはいられなかった。もう青春映画観てキャアキャア言える年齢ではないのかな?、と当時思った。だけどこういう迷いの中にいるのが、青春なのかもな、と今思う。

閑話休題。この映画のサントラ盤が大好きで大好きで大好きで。コンピ系サントラの中でも愛聴盤のひとつ。ナックのMy Sharona'94から始まって、レニー・クラビッツ、クラウデッド・ハウス、U2。ビッグ・マウンテンのBaby, I Love Your Wayも心地よい。そしてリサ・ローブのStay (I Miss You) は切なさの極み。



Reality Bites (1994) - Official Trailer




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映画大好きポンポさん

2021-06-06 | 映画(あ行)



◼️「映画大好きポンポさん」(2021年・日本)

監督=平尾隆之
声の出演=清水尋也 小原好美 大谷凛香 大塚明夫

映画のテーマや登場人物に自分を重ねてしまった瞬間の震えるような感激。その感覚を味わえた映画は、きっとその人にとって愛着のある作品になる。映画ファンなら幾度も経験があるだろう。でもそれは自分の内なる感情であって、その様子を目にすることなんてありえない。ところが、映画製作の現場を描いたこの作品は、映像を観てビビッとくる感覚、そして「これはオレじゃないか!?」とオーバーラップする瞬間の心の動きが、見事に映像化されている。アニメだからできた表現だと思うのだ。

敏腕プロデューサーのポンポさん、その下で新人監督となるジーン、新人女優のナタリーを軸にしたこの物語。pixivに投稿された原作コミックは、映画ファンの間でも人気があるとは聞いていた。映画愛を扱ったラノベやコミックはこれまでもあったから、どうせ作者のディープな知識を詰め込んだものなんだろう、と僕は勝手に想像していた。

ところがだ。長編アニメーション作品となった本作は、その予想を遥かに超えてきた。冒頭に書いた鑑賞者の立場で刺さる場面はもちろんいい。この映画がすごいのは、制作陣、クリエイター側の立場や現場がきちんと表現されていて、しかも見ている僕らのクリエイティブマインドに火をつけるかのような熱が込められている。思ってることを表現したいという気持ちは、誰の心にも眠っている。それはアーティストの仕事だけじゃない、劇中登場する銀行員のアランだって同じ。重役相手のプレゼン場面は、映画製作場面以上に心を揺さぶってくる。

「そこに君はいるのか?」
そのひと言、シビれました。

創作するって楽しい。こういう創作魂が、世界で製作される映画やアニメの現場を支えている。昔風に言うなら活動屋のスピリット。時代が変わっても映画製作に込められた熱い思いは同じなんだ。映画は一人で作ってるんじゃない。携わる人々の映画愛がたまらない。でもコロナ禍でこういう人々が苦しい立場になっているのも事実。

日頃、アニメなんてねと敬遠している硬派な映画ファンにこそ、「ポンポさん」を観て欲しい。キャラの絵が好みじゃないとか、声優のいわゆるアニメ声が苦手だという人もいるだろうけど、この作品はそんな人を
「アニメのくせに、映画ってもんをよーくわかってんじゃねぇか!」
と言わしめる(かもしれない)力を持っている。ストーリーよりも、この作品に込められたスピリットに感激。映画っていいよな。

最後に。ポンポさんの言う上映時間の90分って大事なことだ。観る側に無理のない時間でいかに訴えたいことを表現できるか。僕も以前から同じことを思っていただけに激しく共感。長けりゃいいってもんじゃない。「パプリカ」「オルランド」「運動靴と赤い金魚」なんて90分で見事に語り倒してる大好きな映画だもの。そしてこの「映画大好きポンポさん」も然り。

今回は幸運にも試写会で観る機会に恵まれた。感謝です。元気もらいましたw




コメント (2)
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