Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

エル ELLE

2017-09-28 | 映画(あ行)


■「エル ELLE/Elle」(2016年・フランス)

監督=ポール・バーホーベン
主演=イザベル・ユペール ロラン・ラフィット アンヌ・コンシニ シャルル・ベルリング

●2016年セザール賞 作品賞・主演女優賞
●2016年ゴールデングローブ賞 外国語映画賞・女優賞(ドラマ)
●2016年全米批評家協会賞 主演女優賞

(注意・ネタバレを含む)
エロチックスリラー「エル」は、「氷の微笑」のポール・バーホーベン監督が78歳で撮った作品。
ジョージ・ミラーも
深作欣二も
ヒッチコックも70歳前後にブッとんだ映画を撮っている。
作風が丸くならずに道を極めるってこういうことか…と改めてすごいと思う。

ゲーム会社を経営する主人公ミシェルは、
自分を襲った犯人が周囲にいると疑い、真相を探し始める。
この映画、犯人探しにハラハラするだけではない。
いや、むしろ犯人なんて「あー、そうなのね」って印象で、
それよりもストーリーが進むにつれて観客に明らかになっていくミシェルの激しさこそが見どころ。

それは気性でもあり、
言動でもあり、
そして性癖でもある。
悪女と呼ぶのは違うし、
フランス映画伝統のファムファタールとも違う。

イザベル・ユペールは過去にも、偏った性癖の女性を「ピアニスト」で演じているが、
今回はさらになりふり構わなくなったようなキツい役柄だ。

最後まで観て驚くのは、
主人公ミシェルが登場する女性たちに悪く思われていないこと。
確かにミシェルは"怖い女"のイメージではあるけれど、
見方によっては社交的で、世話焼きで、自由で、仕事もバリバリで、
しがらみから解放されたカッコいい女性像でもある。
ミシェルに降りかかる男たちの偏った欲望さえも、逆に彼女の偏った性の欲望に利用しているかのよう。

こんなアグレッシブで危険なヒロインは、なかなかお目にかかれない。
そう、まさに「氷の微笑」のキャサリン・トラメル以来なんじゃないだろうか。
オスカー主演女優賞にノミネートされたのも納得できる。

映画『エル ELLE』WEB限定予告編


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ザ・マミー 呪われた砂漠の王女

2017-09-23 | 映画(さ行)

■「ザ・マミー 呪われた砂漠の王女/The Mummy」(2017年・アメリカ)

監督=アレックス・カーツマン
主演=トム・クルーズ アナベル・ウォーリス ソフィア・ブテラ ジェイク・ジョンソン ラッセル・クロウ

往年のユニバーサルホラー映画「ミイラ再生」をリブートすると言うから、どんなもんじゃい…と劇場へ。
予告編で登場する砂嵐やらド派手なスペクタクル場面は意外と少なめで、
現代に蘇ったエジプトの呪われた姫君が生身の肉体を得ようとするのを、
我らがトム・クルーズ君が阻止しようとするお話。
映画冒頭ではこっそり墓場泥棒するようなスチャラカ軍曹だったのが、
窮地に立って人間性に目覚める。
…うーむ、まさにトム映画の定石(笑)。

ミイラから姫君が再生する様子は、
「スペースバンパイヤ」や「インタビュー・ウィズ・バンパイヤ」をちょっと思い出させる。
ゾンビ映画好きなら楽しめるかもねー。
自己犠牲で世界を救う…って結末かと思いきや、
結局トム君のええかっこしいやん!とツッコミ入れたくなるラストには唖然。

でもね。
これ、ユニバーサル映画が往年の名作ホラー映画を連作でリブートする企画の第一弾。
映画冒頭、ユニバーサルのロゴが暗黒に染まる。
リブート作品は「透明人間」「フランケンシュタイン」と続くとか。
要はマーヴェル一色のアメコミ路線に対抗するってことなのか。
それぞれの映画を今回登場した秘密結社がつなぐお話になるようで、
その組織の重要人物がラッセル・クロウ扮するジキル博士!(もちろん別人格も登場)。
個人的にはマーヴェル路線よりはるかに好きな元ネタたちなので、出来はともあれ続けて欲しいな。

魔人ドラキュラ、
フランケンシュタインの怪物、
狼男
…と続くなら、是非ニッポンから我らが怪物ランドの王子様も!(笑)

トム・クルーズ、王女ミイラと対決!『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』予告編




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裏切りのサーカス

2017-09-17 | 映画(あ行)

■「裏切りのサーカス/Tinker Tailor Soldier Spy」(2011年・イギリス=フランス=ドイツ)
監督=トーマス・アルフレッドソン
主演=ゲイリー・オールドマン コリン・ファース トム・ハーディ トビー・ジョーンズ ベネディクト・カンバーバッチ

未見だった「裏切りのサーカス」やっと観た。
噂に違わぬ秀作。
これを今までスルーしていたとは、映画の神様ごめんなさいWW

マザーグースから引用された原題、
複雑な相関関係、
ミステリー要素、
そして心理戦のような展開に知的好奇心をくすぐられるし、頭を使う映画だ。
それ故に難解だという感想も多く聞かれるが、
そもそもジョン・ル・カレの原作はどれも複雑な構成のスパイ小説だし、国と国の諜報戦が単純なはずがない。
この映画は場面転換する前に次の前フリを入れていたり、
主人公のメガネは現在と回想場面では違うフレームになってたり、
複雑だけど分かり易くする工夫もみられ、むしろ良心的な作りの映画だ。
そして映像表現だけで人間関係や人物像を感じ取らせる巧さが絶妙。

「007」のように銃弾がドンパチ飛び交う派手さはない。
ここにあるのはスパイ戦の冷酷な現実、騙し騙される怖さ、
踏みにじられる個人の感情や思い、そしてそこに関わる者たちの孤独とエゴ。
映画終盤の一発の銃弾に込められた切なさはグッときた。

もぉー、今すぐ二度目を観たいっ!。
スウェーデン出身のアルフレッドソン監督は、
前作「ぼくのエリ 200歳の少女」(ハリウッドリメイク「モールス」もオススメ)も大傑作。

映画『裏切りのサーカス』予告編




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彼らが本気で編むときは、

2017-09-16 | 映画(か行)

■「彼らが本気で編むときは、」(2017年・日本)

監督=荻上直子
主演=生田斗真 桐谷健太 柿原りんか ミムラ 小池栄子

「かもめ食堂」で知られる荻上直子監督の新作「彼らが本気で編むときは、」鑑賞。
奔放な母親が家に帰ってこなくなったことから、小学生のトモは叔父トキオの元へ。
トキオおじさんはトランスジェンダーの恋人リンコと暮らしていた。
3人の生活を通じて、トモの成長が描かれる良作。

トランスジェンダーの現実について踏み込み方が足りないとか様々な意見はあるようだ。
しかし、荻上監督作品の魅力はほんのり温かい人間関係だし、この映画の主人公はあくまで小学生トモだ。
台詞の端々やエピソードにも現実の厳しさは見え隠れするし、この映画にはそれで十分。
男性から切り落とした一部が、その後どう扱われるのかにもちゃーんと触れている。
決して現実から逃げてない。
それに、悔しさや悲しさを日々耐えながらやり過ごそうと頑張ってるのは、
映画でも描かれるように男も女も大人も子供もない。
それがこの映画のテーマだし、共感を呼ぶところだ。

偏見なのは重々承知だが、
僕はキャスティングにジャニーズ枠がある映画やドラマを避ける傾向にある(但し「必殺仕事人」と「図書館戦争」は除く)。
多分、多くのアイドルな出演者の為に、作品の設定が捻じ曲げられるように感じているからだろう。
しかし、今作で難役リンコに挑んだ生田斗真クンの頑張りは、なかなかどうして立派じゃない!。
映画の終盤には母性すら感じさせる演技はお見事。
これまで避けていた彼の「人間失格」、観てみようかなw

生田斗真がトランスジェンダーの女性に『彼らが本気で編むときは、』予告編


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ゴースト・イン・ザ・シェル

2017-09-10 | 映画(か行)

◼️「ゴースト・イン・ザ・シェル/Ghost In The Shell」(2017年・アメリカ)

監督=ルパート・サンダース
主演=スカーレット・ヨハンソン ピルウ・アスベック ビートたけし ジュリエット・ビノシュ マイケル・カルメン・ピット

劇場で見逃していた「攻殻機動隊」のハリウッドリメイク、DVDで鑑賞。
コアなファンにはいろいろ受け入れられない部分はあるだろうけど、
オリジナルを損なっている印象はそれ程ない。
スカーレット・ヨハンソンの容姿で草薙素子は、最初聞いた時「?」だったけど、
義体なんだからアリ!と思えばむしろ好感。

でもオリジナルと決定的に違うのは、台詞の量。
オリジナルは、登場人物が(タチコマも含めて)とにかく喋る。
荒巻課長のぼそぼそしたしゃべりで事件が説明されるのを聞き逃せない緊張感。
劇場版の「イノセンス」では心と身体という奥深いテーマについて、それぞれのキャラが持論を喋り倒す場面も興味深く、
トグサが「いい加減に仕事の話しようぜ」とウンザリする場面には思わずニヤリとしたっけ。
そして何よりも義体への"ダイブ"は、
声優が違うキャラの顔で喋るだけのことなのに、あれ程の緊張感があるなんて。
対してこのハリウッドリメイクは全体的に寡黙な印象を受ける。
万人に受け入れられるように映像で示すせいもあるだろう。

このハリウッドリメイクには、「ブレードランナー」の影がチラつく。
中国ロケも含んだ無国籍な街並みはもちろん、自身のルーツに迫ろうとする展開なんて、
まさに記憶をめぐるレプリカントたちだ。
「攻殻機動隊」という素材を得て、
サイバーパンクの先駆である「ブレードランナー」にオマージュを捧げているようにも思えた。
でもそれは「ブレードランナー」の呪縛から、ハリウッドが逃れられないということでもある。
そういう意味では、アクションの派手さが楽しいけれど、新鮮味には欠ける映画かなぁ。
もちろん、「攻殻」や「ブレードランナー」にハマった世代だからそう思うのだろうけど。





コメント (2)
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