Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

破局

2024-07-18 | 映画(は行)


◾️「破局/Rupture」(1961年・フランス)

監督=ジャン・ピエール・カリエール ピエール・エテックス
主演=ピエール・エテックス

フランスのマルチアーティスト、ピエール・エテックス。僕はよく知らなかったが、コメディアンとしてだけでなく、グラフィックデザイナーなど様々な才能を発揮した人物。近頃、往年のフィルムが修復されて、日本でもレトロスペクティヴが催され、本邦初公開作品もあったとか。ジャック・タチともつながりがあると聞き、興味があった。「ル・アーブルの靴みがき」でお医者さん演じてた方なのか。

本作は12分の短編で一切台詞はない。別れの手紙を書くために悪戦苦闘する男の姿を追うだけの映画だ。ペン先、インク壺など文具に弄ばれているようなギャグの応酬はクスクス笑えるのだが、これが次々に繰り出されるから、ずーっと面白い。

物事がうまくいかない時って、次々に失敗をやらかす。切手のギャグなんて、実際やらかしても不思議じゃない。手紙一枚のために部屋が散らかっていく様子が面白い。「ミラクルワールド/ブッシュマン」のクライマックスで、ド緊張した動物学者の男性が告白する場面を思い出した。彼女から送られてきた、破った写真を送りつける別れの手紙。これに復讐してやろうとする動機から、女性の目線に気づかない鈍感さまで、多くの方が共感できる小市民の笑い。

車の間を縫うように歩き回るオープニングから、なんかワクワクさせられた。そしてこっちまで声をあげてしまいそうなラストシーン!🤣



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暴力教室

2024-07-14 | 映画(は行)


◾️「暴力教室/Blackboard Jungle」(1955年・アメリカ)

監督=リチャード・ブルックス
主演=グレン・フォード アン・フランシス シドニー・ポワチエ ビック・モロー

両親の影響でいわゆるオールディーズをあれこれ聴いていたもので、Rock Around The Clockが使われた映画として本作の存在は知っていた。


One Two Three O'clock
Four O'clock Rock♪

実際に観るのは今回が初めて。不良の巣窟のような高校で働くことになった新任教師が、学ぶ姿勢のない生徒たちにいかに接するかを悩みながらも、次第に信頼を勝ち取っていく姿を描いた作品。

音楽から知ったせいで、不良少年のロケンロール映画だと勝手な先入観を持っていた。とんでもない。扱うテーマは実に重い。映画冒頭には、現場の問題を世間に知って欲しい…めいた内容のテロップが流れる。50年代のアメリカでは社会問題となっていたことがうかがえる。

「暴力教室」とのセンセーショナルな邦題がつけられたのも理解できる。女性教師への強姦未遂から始まって、路地裏で主人公がストリートギャングに囲まれ、彼の家庭への嫌がらせ。公開当時の日本でも国会議員が内容を問題視して、上映制限や禁止を働きかける事態が起こったと聞く。当時としては衝撃的な映画だったのだろう。僕は「3年B組金八先生」第2期の"腐ったミカンの方程式"をリアルタイムで見ている80年代青春組。大人たちが騒いでたのをよーく覚えている。似たような騒ぎだったんだろう。90-00年代なら「バトル・ロワイヤル」で大人たちが騒いでた様子を思い浮かべたらいいかも。

グレン・フォード演ずる新任教師が、黙って睨みつける生徒たちの間を通って通勤する場面のうすら寒い怖さ。数学教師が嫌がらせを受ける絶望感や、夫の浮気との嘘を信じて精神を弱らせていく妻の姿は、痛々しくて辛い場面ではある。

そうした重苦しい流れを変えてくれるのは、逃げない主人公の姿。ジャックと豆の木のアニメーションを見せて、それをテーマに授業をする場面では、ジャックの貧困、大男とジャックの立場の違い、大男を殺して幸せを掴むことの賛否、と様々な意見を引き出す。ものの見方、立場や人種の違いを考えさせるきっかけにする試みだ。僕も映画をネタに世間を考える授業をやったことあるもので、この場面はグッときた。そしてそんな主人公の行動が少しずつ周囲の先生方も変えていく。

教室でナイフを抜いて暴れる生徒と向き合うクライマックス。ついに主人公はこれまでの怒りを口にする。他の生徒たちとの間に芽生えていた信頼が感じられるこの場面、なかなか感動的だ。しかしながら、この映画は生徒たちの身の上、彼らが非行に走る原因に深く立ち入らない。第二次大戦の影をチラつかせる程度だ。学校で起きている社会問題を世に示す映画ではあったが、そこはちょっと保守的な映画と受け取れなくもない。教室で暴れる生徒を抑え込んだのは星条旗だったし。それでも、黒人生徒(シドニー・ポワチエ)との交流がしんみりとした感動をくれる。

妻役のアン・フランシス。見たことあるよなー、と思ったら「禁断の惑星」のヒロインなのか。








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フェリックスとローラ

2024-07-05 | 映画(は行)


◾️「フェリックスとローラ/Felix Et Lola」(2000年・フランス)

監督=パトリス・ルコント
主演=シャルロット・ゲンスブール フィリップ・トレトン アラン・バシュング

移動遊園地で働くフェリックス。ある日、悲しげな表情をした女性ローラがやって来る。気になった彼は彼女に声をかけ、ここで働かないかと持ちかける。意外にも彼女はその申し出を受け入れてくれ、少しずつ二人の距離は近づいていく。ローラは突然いなくなったり、戻ってきたと思ったら遊園地を訪れる中年男性を嫌がって泣いていたり。素性がわからないローラをひたすら信じるフェリックス。そんなフェリックスにローラは尋ねた。
「愛のためなら死ねる?」

男から女への一方的な思いが描かれることは、他のパトリス・ルコント作品にも通ずる一面。本作が特殊なのは、女の素性がほぼわからないことだ。悲しげな顔をする彼女に尋ねられなかったのか、単にお人好しなのか、訳ありな人間と接してきたからなのか。シャルロット・ゲンスブール演ずるローラは、映画前半はとてもミステリアスな女性に映る。こんな濃いアイメイクのシャルロットは他の映画では見たことない。

夜の遊園地に再び現れて、バンパーカーに座って煙草を吸う場面は、逆光の月明かりに煙が揺れていて美しい絵になっている。
「もう閉まっちゃったの?乗りたいのに。」
とか心配かけといてふざけたことを言うローラ、応じるフェリックス。
オーティス・レディングのI've Been Lovin' You(愛しすぎて)を流しながら踊る二人。それを見守る仲間たち。うわっ、この場面好き♡

ローラの表情から気持ちが読み取れないもどかしさが、映画を通じたポイントになっている。ルコント先生が上手いのはシャルロットの横顔を狙ったショットを多用していることだ。表情真っ正面から映さない。だからフェリックスだけでなく、観ている僕らも彼女が何を考えてるのか惑わされてしまう。

そもそもシャルロットって、独特な横顔のラインが魅力的。「なまいきシャルロット」の頃に発売された写真集を持っているのだが(フレンチロリータに弱くてすみません💦)、その中でも目立つのはやっぱり横顔の写真。ルコント監督もその横顔の魅力を、うまく引き出している。さすがだ。

証明写真のボックスに入るローラに、フェリックスが表情で気持ちを教えて、と頼む印象的な場面がある。機械から出てきた写真は後ろ向き。ローラの何かを隠したい気持ち、決めきれない気持ちを表すと同時に、それを見て揺れ動くフェリックスの気持ちまで無言で示す。



(以下、結末に触れています)


そして映画の最後、ローラは虚言症であることをフェリックスに告げる。そのために振り回されて、殺人まで考えたフェリックス。結果はさておき、彼はローラの弱さと寂しさを受け止める。

前半のミステリアスな描写から一転。なーんだ、普通の女の子だったんじゃねーか。ちょっと肩透かしを喰らったような、予想と違う映画の結末かもしれない。でも、悲しそうにしていたら優しくしてもらえるかもしれない、嘘を並べることで誰かが構ってくれるかもしれない、という気持ちは誰もが思う弱さでもある。同情を買いたいわけじゃないけど、誰かに振り向いて欲しい。ラストに本当の自分について語り始めたローラと、それをうなづいて聞くフェリックスに、不思議な安堵感を感じた。




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劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく!Re:

2024-06-11 | 映画(は行)


◾️「劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく!Re:」(2024年・日本)

監督=斎藤圭一郎
声の出演=青山吉能 鈴代紗弓 水野朔 長谷川育美

10年前。当時の上司がアニメ「けいおん!」大好き(ムギちゃん推し)で、グッズ発売日に休暇をとって買い漁っていた。その様子を微笑ましく見ていた当時の僕(唯ちゃん推し)であった。それから10年経った本日。故あって入れたはずの午後休み使って「ぼっち・ざ・ろっく!Re:」🎸✨初日に参戦。
きゃほー😆
あの時の上司と同じカテゴリの人間になった自分を自覚した💧

「ぼっち・ざ・ろっく」は、ここ数年でどハマりしたアニメの一つ。その理由はアニメのレビュー(こちら)をご覧いただくとして、本作はその総集編前編。「どうしてバンドをやるのか」に対するメンバーそれぞれの思いを主軸に置いた編集になっている。シリーズ中盤に登場する名エピソードの、虹夏がひとりに問いかける場面からこの劇場版は始まる。

放送順にダイジェストにするのかと思っていたら大間違い。この総集編の編集では「なぜ」が貫かれているから、ひとりの"ちやほやされたい"も、リョウ先輩の"嘘くさい歌詞の曲やりたくない"も際立ってくる。バンドの運営方針やらグッズ決めるエピソードも楽しかったけれど、楽曲のバックでサラッと日常風景にしたところもナイス。そこが許せないと言う人は、「あなたが私のマスターか」をバッサリ切り落とすFateの劇場版に怒りを向けてくださいww

本作は物語の振り返りも大事だけど、なんてったって音楽に没頭できる時間であることが素敵。映画館の大音響で聴く「ギターと孤独と青い星」に身体がじっとしてられない。テレビでは流れなかった楽曲も登場するし、新曲によるオープニングには新規カット!?が見え隠れ。

僕は廣井きくりさんが好きで、かっちょいい路上ライブ場面がお気に入り。「目の前にいるのは敵じゃないよ」のひと言に、テレビの前で泣いてしまった。今回もわかっちゃいるのにまた同じ場面で泣きそうになる。あの言葉響くのよ。バンドやってた頃の自分にも、今の自分にも🥹。そして、虹夏のタイトル回収の名台詞。あーそうだ。君のロックをやればいい。その言葉は、スクリーンのこっち側の僕らにも向けられているんだよ。またウルウルきてるよ、いい歳こいたおっさんがさ(恥)🥲

脚本の吉田恵里香さんは、朝ドラ「虎と翼」も手がけている。ヒロインを取り巻く人々が、彼女を才能開花に向かわせる素敵な存在で、脇のキャラクターまでとても大事にしてると見る度に思う。本作も然り。

入場者特典のミニ色紙は虹夏でした。えーと、わたくし虹夏推しです(嬉)。やっぱり10年前の上司と同じカテゴリに属してるな、オレ🤭

後編も楽しみだっ!♪🎸⚡️アジカン楽曲「Re:Re:」をタイトルに持ってくるセンスも好き。




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ハート・オブ・ジャスティス

2024-05-29 | 映画(は行)


◾️「ハート・オブ・ジャスティス/The Heart Of Justice」(1992年・アメリカ)

監督=ブルーノ・バレット
主演=エリック・ストルツ ジェニファー・コネリー デニス・ホッパー

人気作家が銃撃される事件が起こり、撃った犯人エリオットはその場で自殺。彼が地元名士の息子であることから、世間やマスコミの注目を浴びることになる。報道記事で受賞して自信満々の若手記者デビッドは、死んだ作家の作品がその一家の隠されたスキャンダルを描いた作品だったとの疑念を抱く。デビッドは、エリオットの美しい姉エマに接近を試みる。

多くの感想にあるように、大人の美貌を発揮し始めたジェニファー・コネリーを愛でるための作品。黒い下着姿でデビッドに迫る場面(のみ)が最大の見どころ。90年代のジェニファーは、お色気路線まっしぐらだった時代。セクシーな役が続くのを見ながら、彼女はハリウッドに搾取されてる!とファンとしてはヤキモキしたものでございます😣

記者を演じるエリック・ストルツは、80年代育ちには「恋しくて」で好感度高い俳優だが、本作の彼はとにかく不快。調子に乗ってて上司に強気に出るわ、彼女を見下して召使のように扱うわ、同僚にも常に高飛車な態度をとるわ。観ている僕らも、あいつ痛い目に遭えばいいのにと思ってしまう。ほーら、言わんこっちゃないと予想通りの結末を迎える。正直、彼をめぐる筋立ては大して面白くもない。

「ドン・ジョンソン気取りだ」って台詞に時代を感じる。80年代はテレビ「マイアミバイス」で大人気だったよな。

本作で殺される作家を演じたのはデニス・ホッパー。往年のホラー映画俳優ビンセント・プライスも出演。遺作とされる「シザーハンズ」の翌年だから、テレビムービーとして製作された本作が最後の出演作なんだろか。




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ハンガー

2024-05-10 | 映画(は行)


◾️「ハンガー/The Hunger」(1983年・イギリス)

監督=トニー・スコット
主演=カトリーヌ・ドヌーブ デビッド・ボウイ スーザン・サランドン

ミリアムは不老不死の吸血鬼。それぞれの時代に気に入った相手を見つけては、長く続く命を授けて恋人にしていた。現在の相手はイギリス人の美男子ジョン。ミリアムから授けられた命が若い姿を維持できるものだと信じていたジョンは、老化を感じ始めていた。そこに美しい医師サラが現れる。彼女は老化現象を研究しており、世間でも注目され始めていた。サラに興味を示すミリアム、嫉妬と急速な老化で焦りを感じるジョンは、サラの病院を訪れる。

「トップガン」など数々の大ヒット作で知られるトニー・スコット監督のデビュー作である。派手な作品のイメージとは違う作風に驚く。淡々としているのに緊張感が途切れない独特のムード、暗い部屋に差し込む光。映像に映し出される陰影の印象は、兄リドリー・スコット監督作を思わせる。ヨーロッパ資本の映画だし、他の監督作の明るいイメージとは全く違う。トニー・スコット監督の原点、兄リドリーの影響を感じさせる作品として興味深い。

その一方でロックバンドのパフォーマンスや、吸血鬼に魅入られた者たちの末路を描く特撮には、後のトニー・スコットらしい80年代的な派手さも見える。オープニングで流れるのはBela Lugosi is Dead。ドラキュラ俳優で知られるベラ・ルゴシの死を歌う曲を選曲するなんて、ちょっと意味深ではないか。



カトリーヌ・ドヌーブ、デビッド・ボウイ、スーザン・サランドンという美男美女の三角関係は最大の見どころ。スーザン・サランドンとドヌーブのベッドシーンがとにかく美しい。老化現象を気にし始めたボウイは、家を訪れる女性に毎回ポラロイド写真を撮ってもらう。その老化進行の速さ。身体が朽ちても意識は死ねない苦しさが観ていて辛い。一室に並んだ棺にゾッとする。

不老不死であるミリアムの孤独がそれぞれの時代にパートナーを求めた。そんな愛の映画と言う一面もある。しかし、80年代らしい特殊メイクによるビジュアル重視のホラー演出が強く印象に残り、そんな味わいは後半吹っ飛んでしまうのはちと残念。 





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変な家

2024-05-06 | 映画(は行)


◾️「変な家」(2024年・日本)

監督=石川淳一
主演=間宮祥太朗 佐藤二朗 川栄李奈 瀧本美織

仕事がら、建物の平面図を眺めながらあーだこーだ言うことが多い。ミステリー小説読みながら、相関関係や部屋の位置関係をメモしてみたりもする。それだけにこの「変な家」が話題になった時にはちょっと気になって、長男が読んでいたコミカライズを借りて読んだ。カメラ片手にズカズカと入り込んでくる主人公の行動を快くは思わないけれど、だんだんと闇に近づくにつれて、先を知りたいと思わせてくるのは確かに面白い。

ツッコミどころは満載。簡単に人を信じ過ぎだろ、近所のおばちゃんがわざわざ写真撮らないでしょ、不動産屋の管理物件にどうやって入り込んだの。本家ってパワーワード出てきたから金田一耕助ものぽくなるぞ…と思ったら、おじいちゃん石坂浩二やん。仏壇からすきま風、隠し通路、あーあ、「八つ墓村」っぽくなって来たよ。お母ちゃん、隠してるもの簡単に見つかりすぎ。妾にひどい仕打ち…って「犬神家の一族」やん。片渕家の問題なのに村中巻き込む怨念ってどうなんよ。佐藤二朗、どうして本家に上がり込んでるの。そこを離れてから語ろうよ。

だんだんと間取りのミステリーから離れて、本家のパートでは平面図の外側に線を引いて何かあると思うんですよって、話が飛躍。平面図見ながら、何のための空間なのかを読み取るミス・マープルものみたいな感じが好きだったのに、結局旧家の怨念めいた日本映画にありがちな落としどころに収まってしまったのはちと物足りない。本家の人々を駆り立てる呪縛の怖さも、説得力が欲しい。

もともとウケ狙いの動画制作から始まる話なんだから、のぞき見程度の興味だったはずの主人公の行動が、人助けにシフトする気持ちの動きが感じられないのがいちばんの難点かも。これからも僕が守りますって、川栄李奈ちゃんに言ってやれよ、と映画館の暗闇で焦ったく思うおいさんである。

…と不満ばかりを並べてしまった。だが秀逸なのはラストシーン。斉藤由貴のひと言とその視線の先にあるもの。これ、マジもんじゃねぇかよっ!😨




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パリで一緒に

2024-04-20 | 映画(は行)


◾️「パリで一緒に/Paris - When It Sizzles」(1963年・アメリカ)

監督=リチャード・クワイン
主演=オードリー・ヘプバーン ウィリアム・ホールデン トニー・カーティス

ローマの休日」以降のオードリー主演作で観たことがないのはあと数本。そのうちの一つが本作「パリで一緒に」だった。観るチャンスはなくもなかったけど、敬遠してたんだろうな。だって、ウィリアム・ホールデンが何故か苦手なんだもの。

いろんな名作にあれこれ出演してるし、カッコいい西部劇もあるし、名優だとは認めてるんだけど、昔から印象に残っている主演作は、とにかく体たらくか女たらし。コテコテのメロドラマのイメージ。僕がクラシックかぶれの若造だった頃から、その印象は変わらない。僕のホールデンのイメージは「戦場にかける橋」よりも「慕情」、「ワイルドバンチ」よりも「サンセット大通り」、「第十七捕虜収容所」よりも「ピクニック」。印象が悪い最大の原因は、「タワーリング・インフェルノ」の憎まれ役よりも「麗しのサブリナ」のプレイボーイの次男役。結構観てるなww

さて、本作「パリで一緒に」はどうかと言うと、僕が期待する(?)嫌いなウィリアム・ホールデンが堪能できる映画だった😩。新作映画のシナリオがいっこうに進まない脚本家。悩んでる訳ではなく、単に仕事そっちのけで遊んでいるだけ。タイピストを雇ってプロデューサーとのアポイントまでに書き上げようとする顛末を描いた作品だ。雇われたタイピストがオードリー・ヘプバーン。こちらは誰もが期待する笑顔もファッションも素敵な役柄で、ズケズケとものを言い、脚本にケチをつける。しかし彼女から聞いた話や、彼女自身のイメージから、発想は膨らんでいき、脚本は進み始める。その間にも脚本家氏はタイピストに不意打ちのキス、話のノリで抱きしめる。あー、やっぱり嫌いなホールデンだよ😠

二人が編み出したストーリーは、劇中劇として二人が演ずるロマンティックコメディとして進行する。せっかくパリが舞台なのに、いかにもセットに見える作り物感漂うカフェテリアの舞台が用意される。それは二人の空想。しかし、話が進んでいくに従って、その舞台はだんだん見応えのある風景に変わっていく。ほほー、ホテルの一室からカメラが出ないと思ってたら、なかなかゴージャスな映像になっていく。結末はまぁお約束のラブ展開なのだが、どうも納得いかず。オードリーは期待通りに素敵なんだけど、最後まで嫌いなホールデンだった。

原語をきちんと聴きながら丁寧に鑑賞したら言葉選びがきっと面白いんだろうと思った。英語がもっと得意だったらなぁー😣。音楽も衣装もゴージャスな映画なのに、今ひとつ気持ちがあがらない作品でした。

 ◇

あれ?こんな二人が出てくる映画、他にあったよな。何だっけ…と考えて思い出した。

借金に追われる小説家が、期限までに新作を仕上げるために速記者を雇うラブコメ。ロブ・ライナー監督の「あなたにも書ける恋愛小説」だ!。あれも二人が書く小説の内容を二人が演じる劇中劇が登場する。そっかー、あれは「パリで一緒に」へのオマージュだったのかもな。そう思ったら、「パリで一緒に」がちょっとだけ素敵な映画に見えてきたw






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BMXアドベンチャー

2024-03-27 | 映画(は行)


◾️「BMXアドベンチャー/BMX Bandits」(1983年・オーストラリア)

監督=ブライアン・トレンチャード・スミス
主演=ニコール・キッドマン ジェームズ・ラグトン アンジェロ・タンジェロ

16歳のニコール・キッドマンが見たかったのもあるけれど、この映画をセレクトした理由はもう一つある。80年代洋楽好きの友達と呑んでいて、この映画の話になり、こんなことを言っていたからだ。
👩🏻「「トップガン」のMighty Wingsに似た曲がずーっと流れるのよ。盗作じゃないのかしら(笑)」
Mighty Wingsはチープトリックが演奏した楽曲。「トップガン」はこの3年後なので、ジョルジオ・モロダーに盗作疑惑!?かつての香港映画にありがちだった無断使用!?ともかく気になって、「BMXアドベンチャー」に挑んでみた。ティーンエイジャーのニコール見たかったし(結局そこかい)♡

あー、なるほど。Mighty Wingsのイントロに出てくる🎸Fm→E♭→D♭→E♭→Fm ってコード進行と確かに似てる。結論、まあよくあるコード進行でもあるってことだろう。そこでふと思った。自分が高校時代に書いたオリジナルに全く同じ進行が出てくる…💧

当時人気が高まっていたBMX。主人公の二人P.J.とグースは日々乗り回して楽しんでいたが、専用の競技場はなく、街中で走り回る彼らを迷惑に思う人々がいた。ニコールが演ずるのは、BMX用自転車を買うためにバイトしていたジュディ。3人は行動を共にするようになる。専用コースを作るために資金を集めようとしていた矢先、ギャングが隠していた大量のトランシーバーを見つけた。これを売りさばこうとしたことからギャング一味に追われることに。

3人が大人を出し抜く活躍と疾走するBMXが見どころ。見る人が見れば乗りこなす技術や迫力は伝わるのだろう。そこをボーっと見てしまうと、単なる追いかけっこになってしまう。冒頭で話題にした例の曲をバックに描かれるチェイスシーン。ジャンプするたびに、シンセの効果音が響くのはいかにも80年代。まだ携帯もない時代だから、でっかいトランシーバーは今の若い子にはどう映るのだろうw

われらがニコールが演ずるジュディは、凛として気の強い女の子。この頃からハッキリものを言う役柄だったのか、と大人になってからのイメージと重なる。「ネバーエンディング・ストーリー」と二本立てで上映された。大作の添え物感はあるものの、そのお年頃で観たならばきっと響くところはあるに違いない。





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パイレーツ・ムービー

2024-01-19 | 映画(は行)

◾️「パイレーツ・ムービー/The Pirate Movie」(1983年・オーストラリア)

監督=ケン・アナキン
主演=クリスティ・マクニコル クリストファー・アトキンズ テッド・ハミルトン

「リトル・ダーリング」(1980)でクリスティ・マクニコルのファンになった僕は、続く主演作「さよならジョージア」、「泣かないで」(隠れた名作)、「白いロマンス」と地元映画館で新作が上映されたら足を運んだ。「パイレーツ・ムービー」はその時期の主演作で、映画雑誌ではちょくちょく紹介されていたが、日本での公開は製作からしばらく経った時期だったし、地元映画館での上映もなかった。最近レンタルDVDで見つけたもので、今回が初鑑賞。

オープニングタイトルは古い映画を思わせる海賊船のバトルシーン。ヴィレッジピープルやジンギスカンを思わせる暑苦しい歌声(若い方はわからないですよね😅)で、いかにもディスコな楽曲が流れる。これだけでもう80年代初頭の空気が漂う。冴えないメガネっ子メーベルは、海賊ショーに出演しているイケメン男子フレデリックからセイリングに誘われる。しかし彼の取り巻き女子たちにのけ者にされてしまう。ボートで追いかけるが転覆。浜辺に打ち上げられた彼女は夢を見る…。それは、彼女は英国統治下の浜辺の町を舞台に、軍人の末娘メーベルが海賊に育てられたイケメン男子と恋をするお話。

…とまあ、最初から夢オチですと宣言する潔さ。そのせいか、少々無茶な展開も呆気にとられている間にどんどん進行していく。

海辺で二人は出会いました♡
好きよ!お父さんに会って!♡
僕は海賊船から来ました🏴‍☠️
海賊だと!?交際は認めないぞ!💢
大人たちの対立もあって二人は敵味方に🤺
それでも恋の炎は…🔥

あー、はいはい😓

ミュージカル仕立てだが、誰もがイメージするゴージャスなミュージカル音楽とは違う。流れる楽曲の中には、いかにも80年代AOR寄りなアレンジで二人の恋心を歌いあげるものもある。クリストファー・アトキンズ君がHow Can I Live Without Her ?と切なく歌うラブバラードは、エアサプライの「さよならロンリーラブ」の雰囲気(若い方はわからないですよね😅)。われらがクリスティはそもそも音楽活動もしてたし、「さよならジョージア」でも歌ってたから、ミュージカルはお手のもの。デュエットを含む3曲を披露。クライマックスはハッピーエンドを高らかに歌い上げ、キャストみんなでダンス。この曲もちょっとABBAっぽい雰囲気(若い方は…😅)。お気楽もいいとこの軽いミュージカル。

「鯨の骨で作ったコルセットに縛られる女の生き方は嫌よ!」と下着見せながら力説するクリスティ。こういう勝気な女の子が似合うんだよな。クリストファー・アトキンズ君はあの「青い珊瑚礁」の後だけに、ふんどし姿もよく似合うww。

んで最初に示した露骨な夢オチは、これ以上ない、お気楽なハッピーエンドになるのです。この映画の堅苦しくない空気、あの頃リアルタイムで観てたら、硬派な映画ファンを気取り始めてた当時の僕は毛嫌いしただろな。今観ると、これも時代だよなと微笑ましく思える。歳とると寛容になるのかも。何にしても、僕らのクリスティに再会できた100分でした😊。「レイダース」と「スターウォーズ」のパロディは余計だと思うが、これも時代かww。




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