Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

追悼 スタンリー・ドーネン

2019-02-24 | 映画・ビデオ

追悼、スタンリー・ドーネン監督。あなたの作品から、映画の夢と楽しさを教わりました。

中学生の頃からSW以上に繰り返し観ている「雨に唄えば」、愛とサスペンスとオシャレが共存する「シャレード」、「パリの恋人」で過ごす夢のような時間、問答無用で楽しいミュージカル「略奪された七人の花嫁」。

そして「いつも二人で」で描かれた男と女の姿。熊本の映画館で観たのは、まだ20代だったからピンとこないところもあったけれど、今の自分だったら違う気持ちになれる気がする。

ご冥福をお祈りします。素敵な映画と時間をくれてありがとう。

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マイ・インターン

2019-02-16 | 映画(ま行)

◾️「マイ・インターン/The Intern」(2015年・アメリカ)

監督=ナンシー・マイヤーズ

主演=アン・ハサウェイ ロバート・デ・ニーロ レネ・ルッソ アンダーズ・ホーム

映画に夢中になり始めた頃から現在まで、誰の出演作品を映画館で(ここ大事)最も観ているのか?と気になったことがある。数えてみたら、嫌いなはずのトム・クルーズ、永遠の憧れハリソン・フォードを抑えて、最も金を払って映画館でお目にかかっているのはロバート・デ・ニーロだった。カメオ出演を数えたのもあるけど、高校時代に「レイジング・ブル」と「ディア・ハンター」の二本立てを観るくらいに好きだったし、役作りの凄さに尊敬の念を抱いていた。「タクシードライバー」に代表されるハードなデ・ニーロを見続けたせいなのか、コメディ映画で柔和な役柄を演じ始めたある時期から主演作を積極的に観なくなった。

そんな僕だから、この「マイ・インターン」を観ようとはなかなか思えなかった。だって、退職後にアパレル会社で再雇用されるおっさん役なんて、デ・ニーロでなくてもできるだろう。そう思っていたのだ。

ところがである。「マイ・インターン」を観て自分の先入観は誤りであることを悟った。スタンダードを知った上で、自分に合ったスタイル、流儀、美学を身に付け、しかも若い世代にも慕われる"ちゃんとした大人"ベンを演ずるデ・ニーロ。やたらカッコいいのだ。自分が若い頃にこの映画を観ていたら、"感じの良い大人"として好印象を持って終わっていただろう。

自分が社会人経験を積んで思い知らされるのは、人間関係を維持することの難しさ、仕事は年齢なんて考慮してくれないこと、経験値とキャリアがなんだかんだで役に立つこと。そんな身の程を知った今の自分だから、再雇用先で信頼と親しみを勝ち得ているベンのすごさが理解できる。そして若くしてアパレル会社を率いて気持ちも仕事もパンパンになってるヒロインの、精神的な支えとなって彼女の生き方を影響を与えていく。素敵なことだ。

どんな世代が観てもそれぞれの感じ方ができる映画だろう。エンドロールを迎えた観客の背中をポンと叩いて勇気づけてくれる、そんな優しさがある。

「ハンカチは女性が涙した時に貸す為に持つものだ」って台詞が粋だよね。ほんとは身だしなみの大切さなんだけど、こういう気持ちで持ち歩くことは、人への気遣いや紳士的とはどういうはことか考えるキッカケになるのではないだろか。

ある暑い日に、ハンカチを忘れた女性がお店の紙ナプキンで汗を拭っていて、おでこに紙が張り付く無残な状態になりそうだった。僕は「よかったら」ってまだその日使ってなかったハンカチを差し出した。「マイ・インターン」を観る前にそんな行動がとれた自分を褒めてやりたい(笑)

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ファースト・マン

2019-02-14 | 映画(は行)

◾️「ファースト・マン/First Man」(2018年・アメリカ)

監督=デイミアン・チャゼル

主演=ライアン・ゴズリング クレア・フォイ ジェイソン・クラーク カイル・チャンドラー

人類初の月面着陸を成し遂げたアポロ11号。船長ニール・アームストロングを主人公にして、その成功までの道のりを描く人間ドラマ。宇宙飛行士やアポロ計画を扱った映画は数あれど、ここまで乗組員個人に迫った作品はなかった。また、宇宙開発に向き合う人々を英雄視することもなく、アポロ計画に反対する世論や議員の反応など、時代背景が丁寧に盛り込まれているところも注目すべき ポイントだ。それだけに訓練やミッション場面の緊張感はあっても、「スペース・カウボーイ」のような高揚感はまったく感じられない。徹底してクールな印象の映画だ。ライアン・ゴズリング=陰気臭い役者、と僕が思っているのも影響しているかも。

ロン・ハワード監督の「アポロ13」がエンターテイメント作品としていかに優れていたかということ、アルフォンソ・キュアロン監督の秀作「ゼロ・グラビティ」の良さは映像の魅力が大きいことを改めて思い知らされる。ドッキングやエンジン切り離しなど船外の様子は映るけれども、映像はほぼ乗組員の目線と船外の一部でしかなく、観客に体験させるような感覚を狙った演出となっている。月面着陸する場面で、映画館が無音状態(呼吸音だけ)になる。乗組員の目線と観客の僕らが重なるこの瞬間は息を飲む。

チャゼル監督の演出は、過去2作品ともそうだが、台詞に過剰に頼らない。驚くようなカメラワークでグイグイ観客を引き込んで、最後は映像で納得させる人だ。「セッション」のクールでとんでもなくカッコいい物言わぬラストシーン(大好き)も、「ラ・ラ・ランド」のやたら未練がましくてお涙頂戴なラストシーン(大嫌い)もそう。

「ファースト・マン」では、亡くなった娘が小さな棺に入れられて地中に下げられていく様子と、アームストロング船長が棺桶みたいな宇宙船のコクピットに乗せられて空に打ち上げられる対比が無言のうちに語られる。そしてアームストロング船長が月に持って行った私物。これは原作にも記述がなく、生前本人から語られてもいないそうだ。アポロ1号の失敗で仲間を失った後、ミッションに狂ったようにのめり込んでいくアームストロング船長の冷徹さが示された後だけに、ミッション前子供と話す場面と共に印象に残ることだろう。

そして、チャゼル監督らしくやっぱり物言わぬラストシーンが待っている。巧い。だけど、カッコ良すぎるよ。僕はやっぱり陰気臭いゴズリングは苦手なようだ。

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2019-02-07 | 映画(ま行)


◾️「卍」(1983年・日本)


監督=横山博人


主演=樋口可南子 高瀬春奈 原田芳雄


谷崎潤一郎の原作にある園子と光子の同性愛部分だけを切り取って、ソフトポルノ路線に仕上げた作品。園子の夫こそ登場するが、光子につきまとう綿貫は登場せず、主役二人にフォーカスしている。それだけに惹かれ合う女性二人の心理が丁寧に描かれており、原作とはかなり違うテイストだが、本作を支持する人も多い。


この映画がとにかく不思議な雰囲気なのは、登場人物3人が"ごっこ遊び"を繰り返すことだ。自分が死んだとしたら墓の前で何を話すか、と切り出した光子。墓の向こうに隠れた光子に、園子は涙しながら語る。まさにお墓まいりごっこで、冷ややかな見方をすることもできるのだけど、こういう場面があるからこそ女性心理が描けているとも思える。


"ごっこ"はこれで終わらない。光子が園子夫婦と一緒に暮らすようになると、さらにエスカレートする。眠れない光子が"狼と羊ゲーム"をやろうと言い出す。狼役の光子が羊役の園子を襲って「死んでなさい」と言った後で、園子の夫に襲いかかる。なるほど、睡眠薬を飲まされた園子の隣で夫と光子が抱き合っている様子を翻案したものだ。


そして光子が夫と関係したことが明らかになる場面は、警察を真似た"取り調べごっこ"となる。二人がかりで一人を問い詰めるこの場面はコントのようなおかしさがある。男女3人のもつれ合う関係が明らかになり、奔放な光子に翻弄されている様が描かれていく緊張感。下着にコート姿で刑事役をする高瀬春奈が妙に色っぽい。そして原作とは違う結末が待っている。


1964年版の「卍」で光子を演じた若尾文子から感じたオンナの魔性と比べると、樋口可南子の光子はまさに小悪魔。1980年代の樋口可南子の活躍はいま考えるとすごいよな。テレビの映画番組で観た「戒厳令の夜」、山田詠美原作の「ベッドタイムアイズ」、今でも"蛸となさった"場面が語り継がれる「北斎漫画」など身体を張った作品が多い中、「男はつらいよ」のヒロインもこなした人気ぶりだった。この「卍」を観ても当時の輝きが感じられる。



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天才作家の妻 40年目の真実

2019-02-05 | 映画(た行)


◾️「天才作家の妻 40年目の真実/The Wife」(2017年・アメリカ=イギリス=スウェーデン)

監督=ビョルン・ルンゲ
主演=グレン・クローズ ジョナサン・プライズ クリスチャン・スレーター

作家ジョセフと妻ジョーンの元にノーベル文学賞受賞の吉報が届いた。息子と共にストックホルムに向かう二人に、記者ナサニエルが話しかける。彼はジョセフの経歴に疑いを持っていた。ナサニエルが秘められた真実に近づこうとする中で、ジョーンは長年溜め込んでいた夫への不満が高まっていく。ノーベル賞授賞式の中、真実が明かされるのか。

かつては自ら作家を志していたジョーン。しかし女流作家に見向きもしない当時の風潮もあり、自ら作品を発表することはしなかった。 そして作家として華を咲かせずにいた夫ジョセフを影で支える役割に徹していた。彼女の役割は、ジョセフのアイディアを形にして、文章として書き上げる作家としての核の部分を担っていた。そして作品はジョセフの名で発表され、革命的な作風と世間の評価を高めていく。一方でジョセフは自作であるにもかかわらず、代表的な登場人物の名前すらポンと出てこない有様。しまいにはノーベル賞の取材を受ける際に、妻を紹介し「彼女は書かない」と言い切ってしまう。これでは怒りを抱かれても仕方あるまい。映画冒頭の一方的なセックスから始まって、ジョセフは好意的なキャラクターとしては描かれない。妻の支えに胡座をかいているいけ好かない夫。それだけにクライマックスでジョーンの感情が爆発する場面は、力強い説得力をもっている。

グレン・クローズの演技が高く評価されている。それは「妻」として、ヒロインが務めてきたいくつもの役割、様々な面を、この上映時間で見事に演じているからだ。有名作家の妻という世間的なイメージ、影のライターとしての役割、一方でうまく果たせなかった家庭内での母の役割。そもそもジョーンがジョセフの小説に手を入れ始めたのは、夫婦がお互いにないものを補い合おうという気持ちからだ。しかも彼女にはそれをやれるだけの才能があった。その気持ちは夫婦なら持ち得るものだし、自然なことだ。しかし、小説を書くということについてそのバランスが大きく崩れてしまったのだ。その一方で夫婦としての二人の様子はとても現実感がある。夫婦の意見がいかにぶつかっても、娘や息子の話になるとすぐに親の顔になる二人の様子はとても自然だ。そして夫の名誉を守ろうとするラストにも、芯の通った妻の気持ちが感じられる。映画の原題「The Wife」が示すようにまさに、妻としての様々な顔を見せてくれるのがこの映画の魅力。それにひきかえ、やたら説明くさい邦題。観客にわかりやすいタイトルということなんだろうが、タイトルでネタバレさせるのはいかがなものか。ミステリーと勘違いされたり、変な先入観を持たれかねない。

久々にみた気がするクリスチャン・スレーター。執拗に真実に迫ろうとする記者役は、かつての「インタビュー・ウィズ・バンパイヤ」を思わせてよく似合う。




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