Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

6月のBGM

2012-06-30 | 音楽
2012年6月に聴いていた愛すべき音楽たち。

■しょこたん☆かばー4-2 しょこロック編/中川翔子
毎回選曲が素晴らしい、しょこたん部長のカバー集。今回はアイドルポップスとロックのカバー。レベッカの「フレンズ」、相川七瀬の「恋心」、ZONEの「白い花」などなど。この選曲なら、もうtakお兄さんは買っちゃうよ(笑い)。「けいおん!」のDon't Say Lazyも収録。欲を言えば男性ヴォーカルの曲にも挑んで欲しかったかも。
しょこたん☆かばー4-2~しょこロック編~(DVD付)

■february & heavenly/tommy february and heavenly
僕のロックアイドルの一人川瀬智子(the brilliant green)のソロプロジェクト、ダブルクレジットとなる待望の新作。特にfebruaryは久々だったので嬉しい!あ、眼鏡属性は・・・(しつこい)。
FEBRUARY & HEAVENLY(初回盤限定盤)(DVD付)

■君の顔が好きだ/斉藤和義
出勤中に斉藤和義を聴いていたある日、この曲のピアノが気になって仕方なくなった。昼休みにiPhoneのピアノアプリで、この曲と「月影」を耳コピー。一気にコードをメモ書き。こういう曲をさらっと弾けたらかっちょいいよなぁ。「月影」をピアノ弾き語りでやってみようと思案中。
歌うたい15 SINGLES BEST 1993~2007

■The Collection(若き緑の日々)/Simon & Garfunkel
中学3年にダスティン・ホフマンの「卒業」を観た雨の日。その数日後に、僕はS&Gのレコードを手にしていた。それ以来、ポール・サイモンは僕の最も愛する詩人。
先日、高校時代に作詞していたノートを見たら、恋人に「私のポール・サイモンになって」と言われる歌うたいの物語が記されていた。うわー、今読むと恥ずかしいけど、好きな人と感動を共有することがハッピーなことだと信じてたんだろうな。その気持ちは今でもぜんっぜん変わってない!・・・とウディ・アレン映画を観て再認識した6月でした。はい。
若き緑の日々

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ガラスの墓標

2012-06-28 | 映画(か行)

■「ガラスの墓標/Cannabis」(1969年・フランス)

監督=ピエール・コラルニック
主演=セルジュ・ゲンスブール ジェーン・バーキン ポール・ニコラス クルト・ユルゲンス

 セルジュはやっぱりセルジュだった。役名もセルジュであったのだが、それでよかったのだ。だってこれがたとえ本名のリュシアンだとしても僕は納得できなかったろう。パブリックイメージのままのセルジュがこの映画の中にいる。それだけで存在感があるし、しかもエロ親父ぶり全開。この映画が製作された69年といえば、♪69 Annee Erotique(’69年はエロの年) という持ち歌が示す通り、ジェーン・バーキンとのアツアツぶりが世間で大きな話題となった年。この映画でも二人はカラんでくれる。セルジュはほとんどマグロ状態(まぁ手傷を負っている役だから仕方ないけど)で、手のひらでジェーンを愛撫する。かと思えば、服を脱いだジェーンに回れだの、そばに来いだの黙って指示を出し、上気した頬のジェーンを抱き寄せる・・・。何やってんのさ、あんたら。私生活もこうなのかぁと思わざるを得ないよねぇ。

 ・・・と羨ましい場面も満載(だってこの頃のジェーンかわいいんだもの!)なのだが、お話は殺し屋セルジュが依頼されたフランスのマフィア壊滅を基軸に、セルジュと外交官の娘ジェーン、セルジュの相棒ポールの奇妙な三角関係を描く。ポールはセルジュの殺しのパートナーなのだが、これがもう同性愛の匂いプンプン。ジェーンの為に足を洗おうとするセルジュを、ポールは組織にチクる。組織はセルジュを殺せと言う。逃げる二人、追うポール。ラストのカーチェイスは見どころだ。ポールを撃てないセルジュ、そして結末は・・・。フィルム・ノワールと言うよりも、破滅へとひた走るニューシネマのようないい雰囲気。それだけでグイグイ引っ張る演出で、ツッコミどころは多々あるけれど、その雰囲気で一気に最後までみせてしまう不思議な魅力の映画。警部役には「情事」のガブリエル・フェレゼッティ。音楽ももちろんセルジュ。


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tokyo. sora

2012-06-21 | 映画(た行)

■「tokyo. sora」
(市川 寛/2001年・日本)

主演=板谷由夏 井川遙 本上まなみ

 「爽健美茶」やともさかりえの「キリンレモン」、本上まなみの”GOAください”などなどのCFを手がけた、市川寛の映画監督デビュー作。CFでみせた淡いトーンの穏やかな雰囲気が全編をやさしく包む。東京で暮らす6人の女性の姿をカメラは淡々と追い続けるのだが、これが決して飽きさせることはない。小説家志望、美容師見習い、売れないモデル、美大生、台湾からの留学生、喫茶店でバイトするコ。東京の空の下で、6人それぞれがそれぞれ悩み、ささやかな喜びを感じる姿に、観客は我が身を重ねたり、涙したり。女のコはみんな健気に頑張っている。

 僕が社会人一年生の頃。たいした事もできなくて、仕事も順調とは言い難く、自分が社会人生活に思い描いていたこととのギャップを感じてふさぎ気味だった時期がある。そのときに「魔女の宅急便」を観て(不覚にも)泣いてしまったんだよね。空飛ぶことしかできない魔女キキに、”これだけ”しかできない自分を重ねてしまったから。この「tokyo. sora」に出てくる6人の女のコたちは、25才のキキなのだと思う。ティッシュ配りしかできないモデル、カットさせてもらえない見習い美容師、「半分」の自分を認めて開き直ろうとする小説家志望・・・。キツいけど、誰もが自分の”これだけ”を大事にして生きているんだ。

 そして彼女たちに関わった男性たちも、次第に行動を変えていく。喫茶店マスターの長塚圭史は「おいしいコーヒー飲みにいこうか」と言い出すし、編集者の西島秀俊はヨーコの「半分」を埋めてやろうとする(結局拒まれるけど・ここ切なかったね)。

 僕の知人にも、一人暮らしして仕事に頑張っている女のコがいる。ときどき彼女は句読点少な目、改行なし制限字数目一杯の”グチ”メール(笑)をよこしてくる。ストレス溜まってるんだろうけど、僕はテキストデータで応援するくらいしかできない。この映画を観ていて、そのコのことを思った。映画館を出て、空にふと目がいった。同じ空の下で健気に頑張っている人たちと自分に対して、僕は小さな声で「がんばろね」と呟いてみた。

 ★

この文章を書いたのは2002年。センセイと呼ばれる職業に就いてた頃。都会の片隅で健気に頑張ってるこの映画の女の子たちは、そのまま自分が送り出した学生たちの姿、社会人になったばかりの頃の自分と重なって見えたもんです。”これだけ”を大事に生きているのは、今の僕も同じ。この映画は、柔らかくて優しい雰囲気に楽しむのがいいかもね。登場人物の中にはビターな結末もあるけれど、みんな頑張ってるんだよね、とそっと応援してくれる映画であることは間違いない。

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僕の彼女を紹介します

2012-06-14 | 映画(は行)

■「僕の彼女を紹介します/Windstruck」
(2004年・韓国)

監督=クァク・ジェヨン
主演=チョン・ジヒョン チャン・ヒョク キム・テウ

 日本を席巻した韓流。TVドラマに憧れたオバ様たちがつくったブームだから、従来韓国映画を観ていた層がこのブームの中心となったかというと、明らかに違うと常々思っていた。僕は初日初回に行ってきたが、明らかに韓流だから来ましたという人々もいたようだった。だってね、ラストのオチに僕は笑い転げそうになったのだけど、周りはクスリともしないのさ。明らかにTVでしか韓国ものを楽しんでいない証拠!。もちろん僕は韓流に乗っていった訳ではないですよん。お目当てはチョン・ジヒョン!。彼女の表情を見ているだけで、もうほんとうに幸せ。やっぱ彼女になら振り回されてもいいや(爆)。

 この「僕カノ」(略すのは嫌いだけど長いからそう呼びます)には、「猟奇的な彼女」ほどの衝撃と感動は正直言ってない。「猟奇的~」のヒロインのキャラがさらに増幅されたような設定のせい。増幅されたが為に「猟奇的~」以上に現実離れしたお話になっている。「猟奇的~」も確かに現実離れだが、まだ登場人物の設定が身近に感じられる分感動も大きかったように思うのだ。それにお姫様と王子様の劇中劇だって「またか」と思わざるを得ない。都合がいい部分やこの場面は無理にいらんだろうと思えるものもあるし・・・。 でも「僕カノ」は決してダメな映画じゃぁない。人を愛し続けることの純粋さが貫かれているのがいい。多くの観客はヒロインに感情移入しちゃうのだろうけど、僕は死してなお思い続ける男性の方に惹かれた。話は違うが初期「Xファイル」のエピソードにこんなのがある。身の回りで起る超常現象に悩む女性がいた。ところがその現象は明らかに彼女を守っている。モルダーとスカリーはその謎に挑むのだが、彼女を愛したある男性の霊魂が引き起こしていた・・・というお話。僕はこエピソードがお気に入りで、死んでもこんなことができるなら成仏せんでもいい!と心底思うことがある。「僕カノ」では49日で成仏するけれど、この映画の風のエピソードはまさにこれ!なのね。

 監督は多くの映画に影響を受けてきた、とインタビューで答えていた。やたらハトが飛ぶからジョン・ウー?とか思ったりもした。「僕カノ」でやたらみられるのは登場人物の周りをカメラがクルクル回るカメラワーク。これはブライアン・デ・パルマが得意とする手法。「僕カノ」では特にヒロインの部屋を風が吹き抜ける様を、部屋全体をみせながら見事に表現していた。監督がエンドロールの曲を作詞・作曲したり、お気に入りの音楽を集めたりとそっちも楽しい。やっぱり ♪Tears (X Japan) はいかにも泣かせます!って感じでちょっとヤボったくもあり。それが流れるクライマックス。ちょっとクサいなぁ・・・と思いながら観ていた僕。しかし「猟奇的~」同様伏線の張り方が実にうまいので、チョン・ジヒョンのある台詞の後、一気に僕の涙腺は弛んだのでした(泣)。ともかく、デートムービーとしてはぜったい楽しめる映画だ。観るべし!。



この文章を書いたのは2004年。あの頃は韓流をブームと思っていたけど、今のように様々な分野で人気が定着するとは思ってなかった気がするな。チョン・ジヒョンは今でも大好きな女優さん。この映画ではX Japanの楽曲が使われたけど、それまで日本文化を禁止していただけにこれは当時大きな変化だったんだよね。


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ミッドナイト・イン・パリ

2012-06-11 | 映画(ま行)

■「ミッドナイト・イン・パリ/Midnight In Paris」(2011年・アメリカ)

●2011年アカデミー賞 脚本賞
●2011年ゴールデングローブ賞 脚本賞

監督=ウディ・アレン
主演=オーウェン・ウィルソン レイチェル・マクアダムス マリオン・コティヤール キャシー・ベイツ

中学生のとき「スリーパー」を観て以来、ウディ・アレンのファンであり続けている僕(なんておマセな)。初期のナンセンスコメディから、「アニー・ホール」からの快進撃、80年代後半からのベルイマン調のシリアス劇、監督業に徹してからの円熟期、私生活のスキャンダル、オスカー受賞の夜にクラブでクラリネット吹いてる自由な生き様・・・。それぞれの時代の作品によさがあるけれど、一貫してウディ先生は僕らに男と女について考えさせてくれる。それは自身の体験に基づく自省も込められているからか唸らされてしまう。だが、それでいて楽しくて美しくて、素敵なのがウディ・アレン映画。もちろん、観る人によって好きずきはあるだろうけど。マーチン・スコセッシとともにニューヨークにこだわる映画作家と言われ続けていたが、ニューヨークを去ってからウディ大先生はヨーロッパを舞台に作品を発表する。スカーレット・ヨハンソンを主役に据えた「マッチポイント」は確かに面白かったし、「それでも恋するバルセロナ」は恋愛について考えさせられる秀作だった。だがどこか借り物のスタイルのようなものを感じていたのも事実。オスカー脚本賞を受賞した新作「ミッドナイト・イン・パリ」は違う。随所にかつてのウディ・アレン映画の雰囲気を感じさせてくれるのだ。

冒頭のパリの風景を綴る数分間の映像がまず素晴らしい。名所を撮る見物風の視点かと思いきや、その場面は意外と長く続き雨に濡れたパリの町並みが映し出される。それはニューヨークの風景をラプソディ・イン・ブルーをバックに映し出す「マンハッタン」の再現だ。だがそれで終わらない。雨に濡れたパリを美しいと観客に納得させて、それが主人公が美しいと感じる価値観だという展開。それを婚約者やその家族が理解してくれないけれど、スクリーンのこちら側は既に彼の味方になっている。しかもラストシーンそれが見事に呼応する。上手いよなぁ。

オーウェン・ウィルソンが演ずる主人公は、ウディ・アレンが乗り移ったようだ。これまでも様々な男優がウディ的な役柄を演じてきたが、「シャンハイヌーン」あたりのイメージからは想像できない快演。女性が好きだけどそれ以上に自分の価値観が大事で、スノッブな男が嫌いだけど彼らが語るうんちくは自分自身嫌いではない。「アニー・ホール」の主人公アルビーを思い出させるじゃない。そして男と女についてちょっと考えさせられる映画。経験豊富なウディ大先生は作品ごとに様々な恋愛観を示してくれる。今回は婚約者に自分の価値観を認めてもらえない主人公が、最後の最後にそんな相手に巡り会えるかがこの映画のクライマックス。タイムスリップした1920年代で多くの芸術家が恋したアドリアナ(マリオン・コティヤール)に恋をする。しかも相思相愛で自分の小説に感動してくれてる。でも生きるべき場所が違う二人が結ばれることはない・・・その切なさ。感動を共有することは一緒に生きていく上で大事なことだと常々思っているけど、本当にそういう相手に巡り会うことは難しい。それでも人生は捨てたもんじゃない、とウディ先生は説く。雨に濡れて歩く二人。なんてロマンティックな!。そしてノスタルジーに浸るだけでなく、人生は前を向いて歩め、と僕らにメッセージを示してくれる。豪華なキャストも楽しいが、「ミッション・インポッシブル4」の冷酷な殺し屋だったレア・セドゥーをキャスティングしたのもナイス。役柄のギャップからか笑顔がとんでもなく魅力的。

主人公が憧れる1920年代のパリ。タイムスリップした先で数々の芸術家が実名で登場するのが楽しい。フィッツジェラルド、ピカソ、ダリ、ブニュエル、ドネ・・・その名を知らずにこの映画を観るのは、面白さも半減してしまうかも。そういう意味ではロマンチストな文系男子向けの映画かもしれない。もちろん僕は大好きです!

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追悼 レイ・ブラッドベリ

2012-06-09 | その他のつぶやき
追悼 レイ・ブラッドベリさま。

小学校高学年でジュール・ベルヌ、H・G・ウェルズを読んで育った少年は、
あなたの「火星年代記」と「華氏451」に夢中な大人になりました。

Fahrenheit 451 1966


映画ファンとしては
あなたが脚本を手がけたジョン・ヒューストン監督の「白鯨」も忘れがたい。

華氏451度 (ハヤカワ文庫 NV 106) 火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)

ご冥福をお祈りします。
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メガネ属性?

2012-06-08 | その他のつぶやき
残業しようかなぁと思ったがどうも体調今ひとつのため帰宅した火曜日。
途中でついついふらっと中古CD店へ。

おぉ!
Tommy februaryとheavenlyの同時クレジットの新譜が!
まだ買ってなかったんだよ。即ゲット。

the brilliant greenをこよなく愛する僕にとって、Tommyはアイドルなんです!。
・・・え?
tommy februaryファンはメガネ属性あり?


そう言えば、センセイと呼ばれるお仕事していた頃。
職場に女性自衛官のポスターが貼ってあったのさ。
航空自衛隊の紺色の制服に、なぜかメガネのおねいさん。
ある学生がそれをにたにたしながら見ていた。
彼は僕のところに来てこう言った。
「センセイ、これズルいっすね。」
オレなら同意してくれると思ったのだろうか。

長門。オレはメガネ属性ない・・・ぞ。
涼宮ハルヒの憂鬱フィギュアセット北高HR02 長門有希単品
「そう・・」

先日とある場所のカウンター越しに黒縁眼鏡が妙に似合う時東ぁみ風のおねいさんを見かけた。

そんな記憶が残ってるのって、やっぱり属性ありなのか?


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幸せへのキセキ

2012-06-03 | 映画(さ行)

■「幸せへのキセキ/We Bought A Zoo」(2011年・アメリカ)

監督=キャメロン・クロウ
主演=マット・デイモン スカーレット・ヨハンソン トーマス・ヘイデン・チャーチ パトリック・フュジット

キャメロン・クロウ監督は大好きな監督。どこかビリー・ワイルダー監督を思わせる優しい作風、センスのよい音楽の使い方。新作の「幸せへのキセキ」は実話を基にした家族再生の物語。単なるお涙頂戴の話ならキャメロン・クロウでなくてもいいはず。どんな映画になるのだろうと期待と不安が交錯する気持ちを抱えて劇場へ足を運んだ。突撃取材で人気を博してきたジャーナリストであるベンジャミン・ミー(マット・デイモン)は、最愛の妻を亡くしてしまう。二人の子供とともに心機一転出直そうと、郊外の一軒家を購入する。その家は閉園中の動物園の中にあり、購入の条件は動物園を経営すること。飼育員たちはド素人のベンジャミンをいつまで続くかわからないと心配し、ベンジャミンの兄(トーマス・ヘイデン・チャーチ)も無謀だと反対する。飼育員のケリー(スカーレット・ヨハンソン)は次第にベンジャミンの人柄に少しずつ信頼するようになっていく。だが、資金難や役所の検査など数々のハードルが控えていた。やがて彼の資金は底をつくのだが・・・。上っ面のストーリーだけ追えば、この映画は"奇跡"の成功実話の物語だ。だかこの映画で重要なのは、動物園開業というハッピーエンドな結末ではなくて、そこに至るプロセスなのだ。

実話の映画化ということで美談として描かれるのは仕方ない。そりゃ普通、ライターを辞めて動物園の経営に手を出したりはしないだろう。だが、この映画が訴えているのはそういう"奇跡"的な転職の成功ではない。これは家族再生の"軌跡"を描く物語。妻を失って自分も子供も自暴自棄になっている中、息子と父親がお互いを理解していく過程が描かれる。都会から田舎の動物園に引っ越したことを息子は満足してくれないし、父親の思いも理解しようとしない。一方で、現実から逃避して不気味なイラストばかり書くようなふさぎこんだ息子の気持ちを、父親も理解できていないのだった。二人がお互いの思いを叫び合う場面は実に生々しい。そして「ゴメン」と言えない二人が、死にかけている虎の檻の前で初めて他人の気持ちや意見を受け入れる素直さを示す場面はとても素敵だ。それらは、決して一般の僕らにとって手の届かない出来事ではない。だから共感することができる。

この映画の主人公ベンジャミンは、自分を見ているようでイライラするから息子にはキツく接してしまう反面、まだ幼い娘の話にはきちんと向き合っている。この時期の少年の心は微妙だ。自分自身もよくわからない苛立ちを感じていたし、それを親に告げようなどとは決して思わなかった。そんな僕自身も今は二人の子を持つ父親。あの頃実は話を聞いて欲しかったという気持ちと、今子供の話に向き合わないとと思う気持ちが、この映画を観ていて心に湧いてくる。ベンジャミンが「20秒だけ恥をかく勇気をもて。」と息子にアドバイスする台詞がよかった。それは彼自身の信条であり、受け継がれてきた言葉だとわかるラスト。そして息子はその言葉通りに、リリー(エル・ファニング)に思いを告げる。雨が降る中、窓越しに抱き合う場面はなーんか素敵だ。窓越しに思いを告げるなんて、まるでビリー・ワイルダーの「昼下がりの情事」のラストシーンみたい。さすがキャメロン・クロウ監督。そしてベンジャミンの懸命な姿を見てきたケリーの気持ちにも変化が・・・。ちょっと太ったマット・デイモン演ずる主人公が賭ける人生の冒険に、最初は「無謀」と思いながら観ていたのだが、彼の頑張りを周囲がだんだん理解していく"軌跡"が観ていて実に気持ちよい。こんな後味がよい映画は久しぶり。感動作だからと敬遠しないで、世のお父さんたちにこそ、この映画を観て欲しいと思うのだ。

幸せへのキセキ
↑キャメロン・クロウ監督作はサントラも魅力。音楽はアイスランド出身のロックバンド、シガー・ロスのフロントマンであるヨンシーが手がけた。

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ダース・ヴェイダーとルーク(4才)

2012-06-02 | 読書
僕は一男一女の子供をもつ父親だ。家族ネタをこのブログで書くときは、大好きな「スターウォーズ」の4人の名前を使っている。配偶者はアミダラ、長男はルーク、長女はレイア、そして僕はアナキン。そんな僕だから、この絵本「ダース・ヴェイダーとルーク(4才)」の話を聞いたときには、必然的に「読まねば」という気持ちになった。

この絵本は「スターウォーズ」を愛する人のための本。映画の場面や小ネタが1ページ1ページに散りばめられて、思わずクスッとしてしまうことがいっぱい。帝国軍を率いるヴェイダー卿が、4歳の子供の相手もしなければならない父親だったらという設定。同盟軍のヘルメットを被って自転車で疾走するルークを追いかけたり、デススターのゴミ置き場(EP4に登場)やクラウドシティ(EP5に登場)など危険なところで遊ぶルークを「危ないからやめなさい」と追いかける。「ヨーダってすごいんでしょ」との質問や、ダースモールの絵を描いたら「悪いヤツみたいだ」と言われて困ったり。子煩悩な父親の一面もチラリとみせる。1ページで完結する微笑ましいひとコマはシリーズを深く愛する者ほど、愛を感じずにはいられないだろう。

もしあなたが、父子愛でホロリとくるような感動をこの本に求めるなら、それは期待しない方がいい。宮西達也の「おとうさんはウルトラマン」「パパはウルトラセブン ママだってウルトラセブン」とは違うのだ。魔夜峰央の「親バカ日誌」のように「あるある!」と笑い転げて共感できるものでもない。”映画愛(SW愛)>家族愛”の絵本。

うちのルーク・スカイウォーカー(13歳)も「スターウォーズ」を愛する少年の一人。ミディクロリアン値(EP1参照)もきっと高いに違いない。彼は昨夜僕の部屋にやってきてこの絵本を見つけると、すかさず手に取り、ページをめくって小さな笑い声をあげていた。ちょっと偏りがあるけども、父と子の共通の話題があるというのは佳きことかな。

ダース・ヴェイダーとルーク(4才)ダース・ヴェイダーとルーク(4才)ジェフリー・ブラウン 富永 晶子

辰巳出版 2012-05-28
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↓文中に登場したのはこちら
親バカ日誌 (JETS COMICS (280)) おとうさんはウルトラマン パパはウルトラセブン・ママだってウルトラセブン

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