Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

2022年8月のプレイリスト

2022-08-31 | 音楽

◆2022年8月のプレイリスト◆
8月に聴いていた愛すべき31曲

1 Woman Like Me (Chaka Kahn)
2 一億の夜を越えて (オフコース)
オフコースのロック路線好きなんです
3 観覧車 (甲斐バンド)
歌詞がしみるのよ
4 Take It Away (Paul McCartney)
5 自由へ道連れ(私立恵比寿中学)
椎名林檎トリビュート盤収録のカバー曲。
6 Divine Emotion (Narada Michael Walden)
80年代ダンスチューンが増えるとストレスが溜まってきてる証拠です
7 Century's End (Donald Fagen)
映画「ブライトライツ、ビッグシティ」サントラはほんっとに名盤
8 I'm Afraid of Americans (David Bowie)
9 ドバイ (クレイジーケンバンド)
10 Have You Never Been Mellow (そよ風の誘惑)(Olivia Newton John)
訃報を聞いて、世界中でどのくらいの人がオリビアを聴いているのだろう😭

11 My Desire〜冬を越えて〜 (Sing Like Talking)
J・ポーカロに捧げられた楽曲。随所に光るTOTOぽいアレンジ🥁✨🎸✨
12 お願いマッスル〜from CrosSing (オーイシマサヨシ)
アニソンのカバー企画CrosSingから。オーイシ君、この曲好きだと番組で言ってただけに、カバー絶品です♪
13 エレメンタリオで会いましょう! (BLILLIANT4(相坂優歌・黒沢ともよ・三上枝織・津田美波))
14 たいやきやいた (爆風スランプ)
15 Anne of Cleves (Rick Wakeman)
名盤「ヘンリー8世と6人の妻」より
16 マイアミ午前5時 (松田聖子)
いかにも80年代なキーボードリフがボーカルのすき間を埋めるのが好き
17 Carry On Wayward Son (Kansas)
18 Rock And Roll Love Letter (Bay City Rollers)
19 Pink Spark (中村有里)
20 Fame (Irene Cara)
エアロフォンのレパートリーにしたいのだ🎷

21 The Eye Of The Tiger (Survivor)
22 Waiting For Your Love (Toto)
23 潮騒の時(The Sound of Waves)(崎谷健次郎)
収録アルバム「ambivalence」は名盤。僕には夏BGMにマストの楽曲。
24 電話線(矢野顕子)
25 Kiss From A Rose (Seal)
26 YONA YONA DANCE (和田アキ子)
和田アキ子はカラオケ十八番。娘に「次はこれを覚えて歌え」言われた🎤
27 宝島 (T-SQUARE)
28 夏の林檎 (Kalafina)
夏の夕暮れに聴くとしみる😌
29 愛を語るより口づけをかわそう (WANDS)
30 Dive Into Your Body (TM Network)
この日You Tubeで89年のCarolツアーのライブがフル配信。鍵盤弾きの血がうずくw

31 Get Wild (TM Network)
そして8月最終日。Get Wild退勤で、勝手に一日の終わりを演出するのである😝








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水を抱く女

2022-08-29 | 映画(ま行)





◼️「水を抱く女/Undine」(2020年・ドイツ)

監督=クリスティアン・ベッツォルト
主演=パウラ・ベーア フランツ・ロゴフスキ マリアム・ザリー

水の精霊ウンディーネの神話を元にした、ファンタジックなラブ・ストーリー。映画はいきなり別れ話を始める男女から始まる。女はを「アタシを裏切ったら殺す」と言い放つ。彼女の名はウンディーネ。彼女は水槽のそばでダイバーの男性と知り合い、愛し合うようになる。しかし元カレが別の女性と一緒にいるところを目撃してから、彼女の心と人間関係が揺らぎ始める。

淡々とした雰囲気の映画だが、映像で語りかけてくる演出が印象的な作品だ。潜水作業中に現れる巨大なナマズや湖中の様子。ポスターにも使われている肩越しの視線、元カレのヨハネスへの復讐シーン、そしてクライマックスの潜水シーン。それらに際立った台詞はないのだが、引き込まれる魅力がある。

ウンディーネが都市の歴史について解説をするベルリン。かつて分け隔てられていた街だ。違いを超えて一つになった街の中に、惹かれあった二人を隔てる現実がある。ラストシーンの水面から男女を見上げるカットは、触れ合えない隔たりを見つめるウンディーネの視線なのだ。

ダイバーの彼氏が心肺蘇生するために、ビージーズのStayin' Aliveを歌いながら胸を押す場面が好き。





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ロッキーVSドラゴ ROCKY IV

2022-08-27 | 映画(ら行)


◼️「ロッキーVSドラゴ ROCKY IV/Rocky IV:Rocky vs Dorago」(2021年・アメリカ)

監督=シルベスター・スタローン
主演=シルベスター・スタローン ドルフ・ラングレン カール・ウェザース タリア・シャイア

「ロッキー4」本編に使われたシーンやカット、台詞にシルベスター・スタローンは不満があった。コロナ禍でできた時間で再構築に挑んだ作品。本国では2021年に限定公開され、配信なしとの触れ込みで日本では劇場公開となった。

「ロッキー4」は初公開時に、熊本市の電気館で観た。あの頃、米国国威高揚映画だの、レーガン大統領が賛辞を送っただの、プロパガンダ映画だの散々言われていたのを覚えている。そう受け取られる描写が入ったのも、きっと時代の空気だったのだろう。

人間ドラマ重視で観るならば、圧倒的に「ロッキーVSドラゴ」が優れている。「ロッキー4」は、とにかく"東対西、国対国"の話に持っていこうとする流れが明らかにある。国旗に彩られたグローブが激突するオープニングに、なんて挑発的!とドン引きしたのを覚えている。エキシビジョンマッチに参戦したいと言い出すアポロに、ロッキーは「自分自身との戦いじゃないのか」と言うが、オリジナルだと「ソビエトに思い知らせてやらないと」めいた台詞が目立つ。

試合前の控室でもそんな事を言ってるのだが、今回の再編集ではアポロのそうした対立をあおる台詞は記者会見シーンに絞られている。それだけにリングに向かう前に「試合が終わればわかるさ」とのアポロのひと言は、自分のファイターとしての生き様や考えが理解できるさ、と受け取ることができる。こんなに印象が変わるとは。ドラゴの妻ブリジット・ニールセンの台詞がかなりカットされていることも同様。

また、この二つの試合に向けられる登場人物それぞれの思いが、再編集版では色濃く出ている。ロッキーがドラゴ戦を決心するまでの追加シーンもいい。特にアポロの葬儀シーンは別アングルから撮られた全く違う台詞になっており、オリジナルと違ってロッキーは嗚咽を抑えられない。また、アポロのトレーナー役トニー・バートンの弔辞が加わっている。これがロシアでトレーニングを始める場面でのロッキーとの会話への前置きになっているから、「お前が意志を受け継ぐ」との言葉がズシリと重い。

オリジナルに出てくるロボットは、潔くスパッとカット。一方で、No Easy Way Outが流れるほぼMTV的な演出はそのまま。ラストにビル・コンティのオーケストラスコアが少しだけ付け加えられているのと、ロッキーたちが試合会場を去る後ろ姿が付け加えられたのはいい余韻が感じられた。

この映画のキーワード、Changeが強く心に残る。オリジナルでは対ソビエト色が濃厚だったので、いい事言ってるよな!と思ったけれど薄味に感じられた。アポロとの会話でもChangeがキーワードだったとも気付かされる。ウクライナ侵攻があって製作された映画ではないけれど、「2000万人が殺し合うよりマシだ!」のメッセージが今心に響く。映画館で観られてよかった。



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バニー・レークは行方不明

2022-08-23 | 映画(は行)


◼️「バニー・レークは行方不明/Bunny Lake Is Missing」(1965年・アメリカ)

監督=オットー・プレミンジャー
主演=ローレンス・オリヴィエ キャロル・リンレー ケア・デュリア ノエル・カワード

シングルマザーの主人公アンは引越しの間保育園に娘バニーを預けたが、迎えに行くと姿がない。兄スティーブンが駆けつけ、園の関係者に尋ねるが誰もバニーを見ていない。警察の捜索が始まり、入園の記録がないこと、アンには妄想癖があり架空の友人をバニーと呼んでいたことなど次々に新たな事実が浮かび上がり、捜査官はバニーの存在自体を疑い始める。引退した園の責任者、その日に辞めた園の職員、しつこくアンに付きまとう家主など怪しげな人物も現れて、事件は複雑な様相へ。バニーはどこへ行ったのか?

なるほど。同じく娘が行方不明になるジョディ・フォスター主演の「フライト・プラン」って、これがやりたかったのか。映画のルーツやつながりを感じると、長く映画ファンやってきてよかったと思える。まあ、勝手に関連づけすることもあるけど。「フライト・プラン」との決定的な違いは娘の姿を観客に見せないことだ。「お一人で乗ったじゃないですか」といくらアテンダントが言ったとしても、観客は子供と一緒にいるジョディを最初に観ているんだもの。説得力がない。ところが「バニーレイク」で観客に与えられるのは、捜索をする警察が持つ情報と大差ない。だからアンを取り巻く人々と同じくバニーの不在を疑ってしまう。だから引き込まれる。

ソール・バスがデザインを手がけたタイトルバックがいい。紙を破るとクレジットが表示される趣向なのだが、本編を貫く情報のチラ見せを予感させているようだ。冒頭示されるのは、揺れるブランコとそばに落ちているおもちゃ一つ。子供の存在を示しているようだが、決して子供の姿はない。イギリスに引っ越したばかりで不安なアンを、さらに不安にさせることが続く。でも不安になるのは観客も同じなのだ。

クライマックスで結末が示される場面。何が起こったのか戸惑ってしまい、僕らはひたすら映像を追いかけるしかできない。その裏側にある心理に気づく時に、怖さと切なさが入り乱れる不思議な感覚になる。

60年代の英国バンド、ゾンビーズの楽曲が使用されているが、これも何かの示唆があるのかな。ゾンビーズって、「ふたりのシーズン」と日本語カバー「好きさ好きさ好きさ」の原曲くらいしか知らないからなぁ。「2001年宇宙の旅」以外でケア・デュリアを観るのは初めてかも。

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キングダム2 遥かなる大地へ

2022-08-21 | 映画(か行)


◼️「キングダム2 遥かなる大地へ」(2022年・日本)

監督=佐藤信介
主演=山崎賢人 吉沢亮 橋本環奈 清野菜名

前作もなかなかの出来だったが、第2作はダイナミックなアクションが楽しめる娯楽作となっていた。1作目の時は、山崎賢人くんの喋りが今どきヤンキーにしか聞こえなくて、今ひとつ乗り切れないところもあった。どうも慣れてきたのか(笑)、2作目で王の危機を救いに現れた時は妙な安心感がw。

今回は魏の侵攻に後手に回った秦軍が、既に占領されている丘の陣を奪うべく無謀とも思える攻撃をしかける戦場を描く。ちょっとくどい?と思えるくらいに丁寧な戦況の説明もあり、どのくらい秦軍が窮地に立っているのかが誰にもわかりやすい。それだけにその状況を覆さんと戦い続ける信たちの活躍から目が離せない。

2作目の主軸となるのは信を中心とした成長物語だ。誰よりも強くなって武功をあげると躍起になっている信が、戦場でいかにして戦うのかを知恵として学び、また将としていかに戦を動かすのかを個性的な上官や将軍たちから学んでいく様子が面白い。特に暗殺を学んで育つ一族の娘との出会いは重要な意味を持つ。そして見せ場が二重三重に畳み掛けてくる。

佐藤信介監督作は「図書館戦争」もそうだが、派手な見せ場がありながらも、個である主人公の成長物語と、公である政治的なストーリーの展開のバランスがいい。「キングダム」という題材に出会ったことでその手腕とスタイルの進化が楽しみだ。コロナ禍で大勢のエキストラを使うことも中国でのロケもできない中、大群衆シーンはCGによる合成で完成させたと聞く。僕は違和感なくすんなり映画に入り込めた。

役者陣も個性的なメンバーが原作のイメージを壊さずにいい仕事をしている。今回も大沢たかお演ずる王騎将軍、いいところで登場。アニメ版に寄せたあの喋りで信に語りかける貫禄。復讐に燃える娘を演ずる清野菜名の思い詰めた眼差し。弱々しい伍長には、「カメラを止めるな!」監督役の濱津隆之が好演。来年の続編が楽しみ。

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夕ぐれ族

2022-08-19 | 映画(や行)


■「夕ぐれ族」(1984年・日本)

監督=曽根中生
主演=春やすこ 松本ちえこ 蟹江恵三 山本奈津子 竹中直人

1982年。愛人が欲しい男性に女性を斡旋する愛人バンク「夕ぐれ族」が世間を騒がせた。翌年、会社が売春を斡旋していたとして女社長は逮捕され、実刑判決を受けた。そんな事件をタイムリーに映画化した作品。当時にっかつは、三越事件をベースにした「女帝」など実際の事件を扱ったロマンポルノ作品が製作されていた。今じゃ考えられない即応性。

当時僕は中高生だったが、性にまつわる事件が世間を騒がせたことはなんとなく覚えている。その映画化ということよりも、滑舌のいい漫才で人気があった春やすこが主演…!!という驚き。野村誠一が撮ったグラビアでは、テレビで見るのとは違うどこかアンニュイな表情も見せる春やすこにドキッ!とした当時の僕。この映画に少なからず興味はあったのだけど(高校生です)、配信の時代になった今やっと観ることができた。

愛人バンクの女社長を演ずるのは松本ちえこ。テレビであっけらかんと「クラブ活動みたいなもんですよー」と言い放つ。その恋人で仕掛人が蟹江敬三。男優陣は他にもなぎら健壱、岸辺一徳、竹中直人と豪華なメンバー。特に竹中直人は、ベットイン前にブルース・リーの真似したり、コントを見てるように軽い。男女が初めて会った時の合言葉。
「釜山港へ帰れ」
「ラブイズオーバー」
当時のヒット曲のタイトル。笑えるww

お目当ての春やすこは、蟹江敬三を取り巻く女性の一人で、彼に相手にされない腹いせに愛人バンクに登録する女子大生。関西弁で捲し立てるセリフ回しは、漫才のイメージ通りだが、蟹江敬三にからみつくと口調がガラッと変わる。テレビでは見られないオンナが感じられる。こんなんだったのね♡

彼女の父親は、大阪から東京に出張する時に愛人バンクを利用する。事件が報道されて、娘と鉢合わせするラスト。カメラが左右にパンして、元の位置に戻るとお父さんいる…というカメラワーク。お互いがどう愛人バンクに関係しているのか尋ねずに、「大阪帰るんやろ。送ったる」と声をかける場面は、おかしいんだけどどこか情を感じられて好感。

「マルサの女」の本田俊之が担当した音楽がカッコいい。登録しにくるバージン女子が大好きだった山本奈津子。ストーリー上重要な役割。映画全体としては、事件のツボも押さえつつ、ロマンポルノとしてしっかり成立している楽しい作品でした。

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グレイテスト・ショーマン

2022-08-15 | 映画(か行)





◼️「グレイテスト・ショーマン/The Greatest Showman」(2017年・アメリカ)

監督=マイケル・グレイシー
主演=ヒュー・ジャックマン ザック・エフロン ミシェル・ウィリアムズ レベッカ・ファーガソン

えーと、別にミュージカル嫌いじゃないし、ヒュー・ジャックマンが苦手でもないのだけれど、この映画に関する世間の盛り上がりをちょっと冷めた目で見てた。だって、僕は「スターウォーズ」より「雨に唄えば」を繰り返し観て、ボブ・フォッシー監督作に夢中になってた偏った嗜好がある。今どきのミュージカル映画に気持ちがノレるのかが疑問だった。やっと観る気になり、配信で鑑賞。

確かに悪くない。何よりも映画としてのテンポがいい。画面展開がストーリーの展開につながる編集も工夫されているし、誰にもわかりやすい場面作りができているのは好印象。

だけど…ちょっと興行師としてのバーナムを美化しすぎてない?バーナム氏はショーとして観客を感動させたかったというよりも、珍しいものを見せたかったのが先でしょ?多分「ナイトメア・アリー」を観た後だから特にそう思うのかもしれないけど、動機は見世物小屋と何にも変わらないはず。映画のテンポの良さに乗せられて興行師としてのダーティな部分はスルーされている。それだけに「私たちに居場所をくれた」という髭の歌姫や小人症の男性の言葉を、どうもそのまま受け止めきれない。この場面でバーナム氏も、同じように同志や擬似家族のように今は思ってるとかなんとか言ったらまだ納得できたのかも。

いかん。今どきのミュージカル映画を厳しい目で見てしまう自分がいる💧

されど、この映画が素晴らしいのは何よりも音楽。足を踏み鳴らしたくなるオープニングから、心を掴んでくる。重厚なコーラスと現代的なリズムアレンジも受け入れやすい要素の一つだろう。対照的に歌い上げるバラードが、レベッカ・ファーガソン演ずる歌姫が歌うNever Enough。ザック・エフロンとゼンデイヤが障壁が立ちはだかる恋に身を焦がすRewrite The Starsの場面は、サーカスの舞台を駆使した演出が美しい。

そして様々な媒介で使われたThis Is Me。この時代にこの映画が製作されたのは、多様性を認め合う大切さを訴えたかったからに他ならない。それを象徴する力強い楽曲だ。映画の主眼はあくまでもそこにある。僕みたいにバーナム氏の美談とか言うのは天邪鬼?でも音楽は素直に楽しんだよw。少なくとも"ラ出会い始まる陰気なミュージカル映画"より楽曲は好み。





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愛のメモリー

2022-08-13 | 映画(あ行)

◼️「愛のメモリー/Obsession」(1976年・アメリカ)

監督=ブライアン・デ・パルマ
主演=クリフ・ロバートソン ジュヌヴィエーブ・ビジョルド ジョン・リスゴウ ワンダ・ブラックマン

ブライアン・デ・パルマ監督初期の作品。幸せなホームパーティの夜に、愛する妻子を誘拐事件で失った主人公マイケルは、失意の日々を送っていた。数年後、事業のパートナーであるロバートと商談で訪れたフィレンツェの教会で、彼は亡き妻エリザベスにそっくりの女性サンドラに出会う。滞在を延長したマイケルはサンドラに近づき結婚を申し込む。その出会いがもたらすのは幸福なのか、それとも。

詳しくは触れないが、ヒッチコック好きのデ・パルマが「めまい」を狙ったのは間違いない。またサンドラがマイケルの自宅で妻子の肖像画を見上げる場面は「レベッカ」を思わせもするし、手にする凶器や組み合う姿は「ダイヤルMを廻せ!」、冒頭のパーティ場面で給仕が拳銃を隠し持っているのをチラッと見せるのは「汚名」あたりを意識しているのかも。

肝心のストーリーは主人公の思い詰めた気持ち(原題にあるobsession:頭から離れないこと、強迫観念、妄想)グイグイ引っ張られるのだが、ところどころ合点がいかないと感じるところも。地味ながらもデ・パルマらしさを随所に感じられる作風は楽しい。

ラストに出てくる、二人の周りを回り続けるカメラワーク。他の情報がない分だけ、お互いの思いがぶつかり合う二人の姿だけに観客が集中できる効果がある。デ・パルマ監督は後に「キャリー」でこのカメラワークを登場させる。あの場面は画面の二人に観客の意識を集中させることで、次に起こる出来事をよりショッキングにする仕掛けの一つだった。そっちを先に観ている僕は、「愛のメモリー」でカメラが回り始めた瞬間、何か次に起こるのかも…!?と過剰な期待をしてしまったのでしたw



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グレート・ボールズ・オブ・ファイヤー

2022-08-10 | 映画(か行)





◼️「グレート・ボールズ・オブ・ファイヤー/Great Balls of Fire」(1989年・アメリカ)

監督=ジム・マクブライド
主演=デニス・クエイド ウィノナ・ライダー アレック・ボールドウィン リサ・ブロント

この映画のタイトルになっているグレート・ボールズ・オブ・ファイヤー(邦題は火の玉ロック)は古いロックを知らない人でも聴いたことがあるかも。「トップガン」でトム君の相棒グース(アンソニー・エドワーズ)がピアノ弾きながら歌ってたあの曲だ。「トップガン マーヴェリック」では、その息子を演ずるマイルズ・テイラーが同じくこの曲をピアノを弾きながら歌う。アップライトピアノの上にちょこんと座ってた坊ちゃんが成長して…(泣)とハートに訴える場面だった。

本題。この映画はそのグレート・ボールズ・オブ・ファイヤーを大ヒットさせた1950年代のロック歌手ジェリー・リー・ルイスの伝記映画である。1986年にはロックの殿堂入りを果たしたアーティスト。現在もロック、ポップアーティストの伝記映画は次々に製作されているが、この映画が製作される直前にはリッチー・バレンスの伝記映画「ラ・バンバ」がヒットしているから、その勢いで製作された作品でもあるのだろう。

この映画が珍しいのは本人がまだまだ活躍している中で製作されていること。86年の殿堂入りもあってキャリアを一区切りする意味もあったのだろう。しかしジェリー本人はその後、カントリーに活躍の場を移し、カバーも含めたヒットを生んで現在に至る。20代から始まるロック歌手時代は、彼にとっては半生でもないのだ。そういう意味では中途半端だし、この映画だけでしかジェリー・リー・ルイスを知らなければ、"過去の人"としか思えないのではなかろうか。

3番目の妻となる従兄弟の娘とのロマンスと、彼女が13歳(!)だったことから起きる大スキャンダルがストーリーの主軸になっている。破天荒な言動による出来事だし、そのスキャンダルで世間の評価を大きく落としてしまった人でもある。この映画が残念なのは、人気の凋落があったが"今でも彼はどこかで歌い続けている"と地味に締め括られていること。そこにアーティストとしての闘志や折れない心を見たのなら、「アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル」並みに不敵な笑顔を見せてピアノを弾き続ける、不屈の彼を見たかった気もする。

エルヴィス・プレスリー人気絶頂の時代に、その真似でなく新たな演奏と歌唱のスタイルを生み出し、宗教観に根ざしたお堅い世間の風潮に負けなかったジェリーの姿はこの映画最大の魅力。火の玉ロックがいかに当時の若者を熱狂させたかがよーくわかる。

デニス・クエイドが型破りなジェリーをノリノリで演ずる。「さよならジョージア」の冴えないカントリー歌手役も良かったけれど、ピアノのプレイも再現しなきゃならないから、演ずる上での練習や準備もさんざんやったんだろう。幼い妻を演ずるのはウィノナ・ライダー。「ビートルジュース」の翌年の出演作で、恋と現実に戸惑う役をコミカルに演じてみせる。

チャック・ベリーやプレスリーも登場。音楽家ファンとしてこの映画が楽しいのは、黒人専用の酒場で演奏されるブルースのピアノ運指を真似て、ジェリー独特のピアノ演奏ができあがっていく様子。これが映画の冒頭からだからワクワクさせられる。ステージでピアノに火を放ったという逸話があり、映画でもその場面が登場するするが、本人は否定してるんですと。





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5月の花嫁学校

2022-08-07 | 映画(か行)

◼️「5月の花嫁学校/La bonne épouse」(2020年・フランス)

監督=マルタン・プロヴォ
主演=ジュリエット・ビノシュ ヨランド・モロー ノエミ・ルヴォウスキー エドゥアール・ベア

時は1967年。フランスのアルザス地方にある家政学校にも新入生がやって来た。嫁入り前の女性をいわゆる良妻賢母に育てる教育をやっている学校だ。ところが経営者である夫が突然亡くなってしまい、後を引き継いだ妻で校長のポートレットは窮地に立たされる。そこに手を差し伸べてくれたのは銀行家の男性。彼はポートレットのかつての恋人だった。折しもパリではいわゆる五月革命が勃発。学生も含めた彼女たちは、次第に行動を変えていく。

本編を観るまで、なんで邦題は「五月」なんだろ?と不思議に思っていた。フランスで自由、平等、性の解放を訴えた五月革命が時代背景となる物語だからだ。フランス語の原題は「良き妻」、英題は「良き妻になるには」。そこに時代背景を加味したかったんだろうけど、ちょっと伝わりにくい。この五月革命を経て、映画に登場するような家政学校は姿を消したというから、いかに女性が抑圧されていたのか。ズボンを履くだけでも悩むヒロインや、女学生たちの置かれた状況にも、その様子を知ることができる。ともあれ、こうした時代を経て今のフランスがあるのは間違いない。

ジュリエット・ビノシュがこうしたコメディ色の強い生き生きとした役柄を演じてるのは珍しい。シリアスな表情してる映画が昔から多いだけに、ほぼミュージカルになっちゃうラストには驚く。マルタン・プロヴォ監督の「セラフィーヌの庭」で名演技だったヨランド・モローは、愛嬌のある役柄で素敵。

全体としては楽しく観られる女性讃歌。そして、フランスにおける1967年について知ることは、ちょっとだけ僕らの視野を広げてくれる。



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