Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

2023年7月のプレイリスト

2023-07-31 | 今日のBGM

◆2023年7月のプレイリスト
2023年7月に聴いていた愛すべき31曲

1 メフィスト(女王蜂)
アニメ「推しの子」ED曲。イントロとラストシーンが重なってくる入りのうまさは「シティーハンター」を思わせるw
2 GET SMILE(森高ランドヴァージョン)(森高千里)
オリジナルのディスコアレンジとは違うコテコテのロックアレンジ。
3 Far From Over(Steve Lukather)
最新ソロアルバムより。Toto名義よりはハードだけど、Totoぽいものではある。
4 忘れてやらない(結束バンド)
ぜんぶ天気のせいでいいよ この気まずさも倦怠感も 太陽は隠れながら知らんぷり
5 葛飾ラプソディー(影山ヒロノブ)
「こち亀」OP曲をアコースティックカバー。
6 Find A Way(feat. Incognite All Stars)(布袋寅泰)
布袋寅泰には珍しいシティポップな楽曲。
7 鱗(秦基博)
あー、カラオケ行きたい🎤
8 Cruel Summer(Bananarama)
冷めた印象の夏歌だけど、なんか好き。
9 つれなのふりや(PANTA & HAL)
初めて聴いたのは多分甲斐よしひろのラジオ番組。先輩のバンドでこの曲を演奏できたのは貴重な経験だったかも。R.I.P.。
10 朝が来る(Aimer)
カラオケ★バトルで女子高生がこの陰のある難曲を決勝で熱唱。おじさんは感動したよ😳

11 ガーネット(奥華子)
細田守監督の「時かけ」リバイバル。これ聴くだけで泣く😭
12 DISTANCE〜求め合うには遠すぎて(access)
B'zの「もう一度キスしたかった」と並んでお気に入りのミディアムエイトビート泣かせ曲。
13 北風よ(岸本加世子)
ドラマ「ムー」挿入歌。屋根の上で歌う姿は子供心にも印象的だった。いい曲。
14 友達の詩(中村中)
こんなに切ない友達の歌があるだろか。
15 Make Love Whenever You Can(さわやかメイク・ラヴ)(Arabesque)
大人になったら邦題の意味がわかるのかと当時思っていたが、今でもわからない。
16 Will You Be There (In The Morning) (Heart)
アンとナンシーの歌声がハモる快感。
17 Yesterday Yes A Day(Jane Birkin)
また憧れの星が一つ遠くに😢。飾らないのにスタイリッシュ。心に素直になることを教えたくれた大人の女性。
18 Girl In The Box(角松敏生)
アルバム「角松敏生1981〜1987」より。ベスト盤でなくバージョン違いも収録。
19 No Easy Way Out(Robert Tepper)
「ロッキー4」挿入曲。昨年の再編集版でもほぼフルで流れた。スタローンお気に入りなんだろか。
20 夜明けのマイウェイ(パル)
桃井かおりのドラマ主題歌だったよね。

21 I WANT TO BE WITH YOU(Tommy february6)
トミーの洋楽カバー好きだったな。ベイシティローラーズの代表曲の一つ。
22 モノノケダンス(電気グルーヴ)
アニメ「墓場鬼太郎」OP曲。
23 Raiders March(John Williams)
ジョン・ウィリアムズ楽曲ほど気持ちをアゲてくれる映画音楽はない。高校時代に野球の応援で演奏したな。
24 Violet Snow(結城アイラ)
癒しの一曲。
25 Ultra High(LAZY)
ウルトラマンダイナED曲。体育会系ウルトラマンだったな。
26 My Ever Changing Mood(The Style Council)
あの頃はオシャレ音楽扱いされてたっけ。
27 Cheap & Deep (ROCK'N ROLL Recording Session 2023) (斉藤和義)
バンド一発レコーディングによるアルバム。聴いてるこっちにも緊張感。硬派な選曲が気に入った。
28 Magical Mystery Tour(The Beatles)
「インディ」本編で突然使われたからびっくり。映画は69年の設定だけど、ちょっと前のリリースだよね。
29 君が見た夢の物語(ASCA)
アニメ「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿」特別編主題歌。梶浦由記作のインストテーマ曲にミステリアスな歌詞が乗る。
30 漂白(あいみょん)
どうしようもなく心が汚れた日は/あの日を思い出して洗い流す/心を優しい泡で洗い流す

31 BE THERE(B'z)
初めてB'zのライブに行ったのは忘れられない思い出なのだ。







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インディ・ジョーンズと運命のダイヤル

2023-07-29 | 映画(あ行)

◼️「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル/Indiana Jones and the Dial of Destiny」(2023年・アメリカ)

監督=ジェームズ・マンゴールド
主演=ハリソン・フォード マッツ・ミケルセン フィービー・ウォーラー・ブリッジ ジョン・リス・デイビス

ハリソン・フォードは「スターウォーズ」のハン・ソロ以来憧れの存在。インディシリーズは、第1作「レイダース/失われたアーク(聖櫃)」を映画館で観た世代なもので、前面に打ち出されたディズニー映画でござーい!とのアピールが嫌で仕方ない。どうしてタイトルに今さら"と"を付ける?、ロゴのデザインが平坦でダサくなってる、とまぁ目くじらを立てたらきりがない💢。そんな不満はあるのだけれど、ハリソン=インディの花道を見届けるのは俺たち世代の役割だ。そんな気持ちでいざ、映画館へ。

パラマウント映画のロゴマークから山の映像がオープニングになるお約束(細かくてすみません)は破られて、オールドファンをまずイラッとさせる。しかし、そこから続く第二次大戦中のエピソードが危機また危機の見せ場になっている。いかんせんこのシーンは暗いのが残念。「ハン・ソロ」も前半は暗い場面のアクションが多かったよな。ディズニー資本だとみんなこうなるのか?いかんいかん、ディズニーを頭から追い出せ。ドイツ兵に化けたインディはCGで若造り。ロンギヌスの槍というパワーワードを退けてしまうアンティキティラのダイヤルとは、どれだけすごい代物なのか?。映画のツカミとしてはまずまず。

そこから先は冒険また冒険。モロッコの迷路の様な街を走り回り、ギリシャの海にダイブ、シシリー島と世界を股にかける大活躍。決して飽きさせることはない。クライマックスはこれまたスケールの大きな話になっているけれど、壮大なSFに持って行った前作「クリスタル・スカルの王国」と比べたら格段にいい。手堅い演出と考古学者であるインディのキャラクターが活かされた展開。これまで僕が観たジェームズ・マンゴールド監督作では、信念ある頑固な男たちが感動を与えてくれた。スピルバーグのジワジワ観客を追い詰める娯楽映画の演出とは違うけれど、それぞれのキャラクターが伝わりやすい気がする。出番は少ないながら、アントニオ・バンデラスもジョン・リス・デイビスも、わずかな台詞から生き様が伝わる。

アポロ月面着陸で盛り上がる1969年が舞台。時代の変化を印象づけるためか、ビートルズの楽曲が派手に使われている。なるほどねー、でもあの曲のリリース、もうちょっと前じゃない?。あー、雑念がw。でも勇壮なレイダースマーチが上書きしてくれる。やっぱりジョン・ウィリアムズ最高。

80歳を前にした撮影当時に、ハリソン・フォードがインディを演じてくれたことに感謝。後日談としては申し分ない。役者を替えてシリーズとして存続させたい、ディズニーの思惑がにじんでる気もするが、まあそれもビジネス。オールドファンには、ラストのやり取りが嬉しかったね。


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リップスティック

2023-07-28 | 映画(ら行)

◼️「リップスティック/Lipstick」(1976年・アメリカ)

監督=ラモント・ジョンソン
主演=マーゴ・ヘミングウェイ アン・バンクロフト クリス・サランドン ペリー・キング

性暴力を扱った映画は数多く製作されている。正面に据えるテーマはそれぞれあるが、センセーショナルな場面が存在するだけに、製作側には話題性につながるものだととらえられがちなのだろう。

ジョディ・フォスターがオスカーを獲得した「告発の行方」は、直接手を下さずとも周囲で煽った人々を教唆の罪に問えるかを争う法廷劇が主たるテーマ。しかし、ピンボール台に押し倒されるシーンの話題ばかりが先行していて、主題が伝わったとの印象は薄い。東陽一監督の「ザ・レイプ」も法廷劇が大きな部分を占めているけれど、描かれるのは事件と公判とで深く傷つくヒロインの姿。女性がいたぶられる映画は、正直観ていて辛い。

それだけに最近、性暴力場面を間接的に描いた作品「プロミシング・ヤング・ウーマン」が出てきたのは注目すべき。酷い目に遭う女性を身体張って演じる場面がなくても、その行為の卑劣さは表現の仕方で十二分に伝えることはできると世に示した作品だった。

さて。レイプ裁判を前面に打ち出した70年代の作品に「リップスティック」がある。事件の被害者は、マーゴ・ヘミングウェイ演じるファッションモデル。妹の音楽教師に自宅で襲われたのだ。苦痛に耐えて裁判に臨むが、実社会でも法廷でもこうした事件をまともに取り扱わない。そんな状況に果敢に戦いを挑む女性検事とヒロイン。検事役はアン・バンクロフトが演じており、他の代表作にも劣らないカッコよさ。しかし法廷の現実は厳しい。そしてヒロインが選択したのは…。

70年代のウーマンリブ運動を経た時期に製作されただけに、社会的な問題を訴えた作品となっている。しかしこの映画を紹介する記事は、ヒロインを演じたマーゴ・ヘミングウェイの衝撃シーンに触れてばかり。伝わるべきところは他にあるはずなのに。実の妹マリエル・ヘミングウェイは本作がデビュー作である。音楽担当はミシェル・ポルナレフ。




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ツルネ つながりの一射

2023-07-26 | テレビ・アニメ


高校弓道部の青春アニメ第2シーズン。チームとしての結束、それぞれが抱える思いや悩みが絡み合っていく過程が、ライバル校のメンバーをも巻き込んでストーリーが幾重にも重なっていく。個人競技と思われがちな弓道だが、一人がみんなをリードする様子やチームのために自分ができることを探す様子が描かれて、個人の立ち直りが中心に描かれた第1シーズン以上に引き込まれる要素が強い。

緊張感が画面から伝わってくる試合シーン。的に当たる🎯と、こっちまで「よーし!」と叫びたくなる。彼らが矢を放つまでにどんよりした気持ちに襲われると、足元に澱んだものがたちこめたり、それぞれが意識を集中するポイント(?)に波紋のような描写が添えられる。心情をビジュアルに変換するうまさ。緑の葉🌿が舞い落ちる描写は、青春の表現なんだろう。とても爽やかに映る。これが薔薇🌹の花びらだったら「パタリロ !」になるよな、とつまらない想像をする私💧(失礼しました)。

第2シーズンで印象的なのは、登場人物それぞれのキャラクターが掘り下げられている事だろう。風舞高校の5人だけでない。桐先高校の貴公子愁くんの生い立ち、リッチな家庭に育った彼が弓道を通じて周囲とどう関わってきたのかが描かれる。特に人懐っこい遼平との交流で、彼を取り囲んでいた壁が取り払われていくのが印象的だ。第1シーズンで嫌われ役だったドッペル兄弟もはやけを経験して人間的な成長を見せる。そして湊や静弥、愁とは中学の先輩でもある辻峰高校の二階堂の存在が、ドラマをかき回してくる。何のために弓を引くのか、射場に立つのか。その意味を考えさせるきっかけとなる大きな存在だ。

脇役キャラも素敵な存在。風舞女子部員のいかにも京アニらしいキャラクターも相変わらずいい。男子たちを冷やかに見ているようで、理解者でもある。今期では桐先のアイドルヲタ佐瀬先輩が好き。「のりりんにこの射を捧げる!」に爆笑🤣。いやいや、好きって万事に置いて強烈な推進力になるのです。辻峰で二階堂を見守る不破、豪快な大田黒もいい存在感を示す。

OP曲はラックライフの「℃」。仲間とのつながりから感じるぬくもりが、前向きな力になっていくことを高らかに歌う。サビの四分打ちドラム🥁に、思わずヘドバンしてしまう長女と私w。なんか四分打ち好きなんよねー。変ですか?






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担え銃

2023-07-24 | 映画(な行)

◼️「担え銃/Shoulder Arms」(1918年・アメリカ)

監督=チャールズ・チャップリン
主演=チャールズ・チャップリン シドニー・チャップリン エドナ・パーヴィアンス

戦争を笑い飛ばした映画と言われたら、何を思いつくだろうか。ブラックコメディの「M★A★S★H」、ミュージカル仕立ての「素晴らしき戦争」。それらは様々な手法で戦争を笑いのオブラートに包む。でもそこには少なからず反戦への思いが込められているので、笑わせるだけでなくしんみりする何かが必ず用意されている。

しかし。喜劇王チャールズ・チャップリンが第一次世界大戦終結前の1918年に発表した「担え銃」は違う。ちゃんと笑わせてくれるのだ。

訓練風景から映画は始まる。われらがチャーリーは回れ右がうまくできない。指導されてもなかなかこなせない姿は、ドタバタで面白い。今の目線だと、この場面のような笑いは、運動オンチな人を笑いの対照にしているから不快だと言う人も出てきそう。でも、ここでこの映画を投げ出すのはもったいないぞ。

戦場に舞台を移してからは、塹壕で過ごす日々の辛さが描かれる。雨で水浸しの中で就寝する場面やチャーリーにだけ手紙が来ない場面はコメディ描写だが、自然とその映像に込められた辛さや寂しさがしみてくる。生活道具を何もかも持ってくるから身動きとれなくなり、ネズミ取りで指を挟むギャグなんて細かいけれどクスクス笑ってしまう。

チャーリーが投げたチーズが敵将校の顔に当たるギャグ。戦場で飛び交うものなんて銃弾じゃなくたっていいじゃない。さらに立木に化けたチャーリーが戦友と大活躍する後半の面白さ。この映画、爆発はあっても銃弾で相手を傷つける場面はない。それでいて戦場を表現している面白さ。そして常連エドナ・パービアンス演ずるフランス娘とのコミュニケーションも、パントマイムで演ずるサイレントだからこそ形にできるいい場面。軍服を取り替えて敵を欺くクライマックスを笑いながら、僕らはふと気付かされる。中身はおんなじ人間じゃないかって。

戦争終結前に戦争を笑い飛ばす映画を撮るという度胸に感激する。観る人を喜ばせたい一心なんだ。そしてこのスピリットが後の傑作「独裁者」につながっていく。やっぱりチャップリンは偉大だ。

それにしても配信の字幕がなんともひどい。Two of A Kindの字幕に日本語訳は「2種類」。はぁ?何言ってんの?😨。戦友の二人が並ぶ場面じゃん。「似た者同士」でしょ💢



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ブルース・リー物語

2023-07-23 | 映画(は行)

◼️「ブルース・リー物語/Bruce Lee-True Story(李小龍傅奇)」(1976年・香港)

監督=ウー・スー・ユエン(呉思遠)
主演=ホー・チョン・ドー(ブルース・リィ) シャオ・チーリン

ブルース・リーの偉業を伝える映画は数々製作されているが、「酔拳」のプロデューサー呉思遠が監督、ブルースのそっくりさんを起用してストーリー仕立てでつくられている。実際の葬儀の場面や映画の名場面を散りばめられているが、これはドキュメンタリーではないし、テレビドキュメンタリーの安っぽい再現フィルムのようなものとも違う。実際にホー・チョン・ドーは、そっくりさん達の中ではそれなりの使い手だったと聞く。ブルース・リーの迫力には程遠いが、それなりのカンフー映画として成立している。

この映画で初めて聞く死にまつわる様々な事実や噂。映画冒頭、部屋で倒れたリーのもとに救急車が駆けつけるところから始まる。そこに至った事実を追う形式で物語は綴られる。諸説ある死の理由をあれこれ再現してみせる場面も登場する。唖然としたのは、ファンとしては腹上死するブルース・リー・・・そこまでファンは見たいと思っていないぞ。また、電気仕掛けの怪しげなトレーニングマシーンの数々。機械を使ったトレーニングをしていたという話は聞くが、突きが決まるとランプが点く機械には笑いしか出てこない。そして、実は東南アジアで生きている、という噂があることを説くラスト。マジか?。早死にすることを占い師に告げられるところから、やたらドラマティックな演出になっているところも面白い。

撮影の度にブルース・リーは、悪党に絡まれる。強い男であるが故に狙われるし、挑まれる。空手とカンフーの対決、「ドラゴンへの道」撮影中のイタリアマフィアのエピソード。多くの人々に慕われるリーだが、敵もそれなりにつくってしまったということなのだろうか。それにしても、改めて思うのは、こういう伝記映画が製作されてしまうブルース・リーの偉大さ。日本人スタッフが「死亡遊戯」の未公開フィルムでつくりあげた「ブルース・リーin G.O.D. 死亡的遊戯」ってのもあったよなぁ。あれは「死亡遊戯」の全貌を見る上で意義があるけれど、この「ブルース・リー物語」はブレイクしてから死を迎えるまでの彼の足跡を辿る上では観る価値はあろう。



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君たちはどう生きるか

2023-07-21 | 映画(か行)

◼️「君たちはどう生きるか」(2023年・日本)

監督=宮崎駿

さあて何を書こう。レビュー書くのに本当に困っている。他に観たい映画があったのだが、「君たちは…」があまりにも情報がないもので落ち着かなくなって結局仲良しと一緒に映画館へ出かけた。僕みたいな輩を公開1週目に動員できたのは、宣伝なしの効果かもしれないぞw。にしても、うまく感想を書けるかな。何から書いていいやら。ともかく思いつくままに。

お話の外形だけを捉えるならば、異世界に行った少年が冒険を通じて成長するというもので、「千と千尋の神隠し」と同じようなフォーマットだと言える。しかしそこだけでこの映画を捉えてしまうと明らかに物足りない。だって千尋が経験する出来事や出会う人々に比べたら、「君たちは…」は派手さもないしキャラクターたちもどこか地味だ。しかも関係性を理解するのに十分な時間と挿話が観客に与えられずにお話は進行する。

確かに映像はすごい。特に冒頭の火災シーン。火の粉が飛んでくる様子や、それが建物に引火しないように捕虫網みたいなもので集めてる様子など、緊迫感と主人公の昂る感情と戦時中の厳しさが一体となる場面だ。幼い頃に戦争の被害や疎開を経験している宮崎駿だからできる表現かも、と思うと劇場で観てよかったと思えた。

そこから先も、ところどころに過去のジブリ作品を思わせる描写を挟みつつ、アニメだからできる表現や迫力が確かに面白い。過去作へのオマージュとの感想をたくさん見かけるけれど、決して露骨に狙ってはいないように思える。単に宮崎駿はこういう絵や展開が好きなだけだろう。歴代おばあちゃんキャラが揃い踏みしたのかと錯覚したし。寝る時に魔除けに置けるように、商品化を希望しますw。

それにしても、何故このタイトルなんだろう。北米公開が決まったそうだが、タイトルは「少年とサギ」。なんで日本人にはこのタイトルを突きつけるのだ。誰もがこのタイトルで、新作は宮崎駿翁のお説教映画に違いないと思っただろう。劇中出てくる吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」。主人公に母が用意してくれていた本だ。戦前に書かれたものだし、宮崎駿少年もきっと読んでいたに違いないし、ここからインスパイアされてこの映画が製作されているのは間違いない。

数年前にベストセラーになった漫画版で読んでいる。確かに主人公の少年はどちらも片親の男子中学生で、経験と失敗から人間関係を学んで成長するストーリーは共通だ。そのテーマは現在にも通ずるものだし、うちの子供が今小学生だったら朝読書に持っていきなさいと渡していたかもしれない。じゃあ、宮崎駿翁もこの本の主人公が人間関係を学ぶ姿勢を、得意のファンタジーの形にすることで観客に触れて欲しいとでも思ったのだろうか。いや、だったらもっと堅苦しくて、多くの人がイメージした説教くさい映画になっていたに違いない。

この映画の何に僕が悶々としているのか。宮崎駿監督作につきものだったものがほぼないからだ。それは空への憧れを感じさせる飛行(又は浮遊)シーン。飛行機のパーツは出てくるけれど。あとは多くの感想にあるように、主人公の心の動きが見えないところかな。叔母を「お母さん」と呼べるようになるまでの葛藤があるはずなのに、そこが感じられない。「思い出のマーニー」のラスト、やっと「おばちゃん」と呼ばなくなる場面につながる、ジーンとくる感じを期待していたんだけれど、宮崎駿監督にはとっては、それも作品に散りばめるジブリ的な要素の一つに過ぎなかったのかもな。

藪のトンネルをくぐり始めるところで「トトロ」をイメージした人は多かったと思うのだけど、僕はひねくれているのか「海辺のカフカ」を思い浮かべてしまった。でも他の映画友達はこの作品を観て村上春樹の最新作が頭に浮かんだと言う。思考回路が似ているのかもしれないw。




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ホテル

2023-07-19 | 映画(は行)

◾️「ホテル/Kleinhoff Hotel」(1977年・イタリア=モナコ)

監督=カルロ・リッツアーニ
主演=コリンヌ・クレリー ブルース・ロビンソン カーチャ・ルーベ

コリンヌ・クレリーという女優は、あの「O嬢の物語」でブレイクしただけに露出の多い出演作がどうしても多い。「007/ムーンレイカー」でボンドガールとして抜擢されるくらいだから美貌は申し分ないのだけれど、もっと演技で注目されてよい人だと個人的には思っている。1977年にイタリアで撮られたこの映画は、コリンヌ・クレリーの官能シーンが見どころの作品なのは間違いない。しかし全編を通じてこの人妻の行動と心情をカメラはひたすら追い続けるだけに、彼女の演技をじっくりと見つめることができる作品でもある。

飛行機に乗り遅れたことで、一泊だけのつもりで泊まったホテル。隣室からふと聞こえてきたのは反政府活動をしている男性の声。部屋の境に閉められたドアがあるのだが、彼女はその上部にある隙間から隣の様子を伺う。次第に明らかになる男性の素性。単なる興味本位だったはずが気づけば男性をつけ回す彼女。活動家とのいざこざから一人泣き崩れる男性の部屋に、彼女はついに入っていく。

イタリアは、当時政治的にたいへん不安定な時代。この映画が製作された翌年にはテロ集団に元首相が殺害される事件が起こったそうだ。この映画の中でも、地下鉄に活動家たちが現れる場面や、バーに警察が押し入り、連行した女性を裸にして取り調べをする場面も出てくる。隣室の男性を慕う女が薬物に溺れる理由を説くように、みんな何かにすがりついて世の中から逃れたかった。隣室の男性は、コリンヌと抱き合うことに溺れていきながら、少しずつ弱い自分をさらけ出していく。活動のために葬ったはずの本名で呼ばれることを望み、乳房に顔を押し当ててしがみつく。そして黙ってホテルを立ち去るラストの彼女。無言のラストは、なんとも言えない無常感。

官能シーン目当てで見始めたことは否定しないけど、カメラワークがあまりにも見事で引き込まれてしまった。隣室を覗き見るわずかな隙間から、部屋の様子を映して、立ち去る彼女をカメラは長回しのワンカットで見送る。素晴らしいラストシーンだった。




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彼女とTGV

2023-07-17 | 映画(か行)

◼️「彼女とTGV/La femme et le TGV」(2016年・スイス)

監督=ティモ・ヴォン・グンテン
主演=ジェーン・バーキン ルシアン・ギニャール ジル・チューディ

ジェーン・バーキンの訃報を昨夜目にした。今年は本当に辛い訃報ばかりだ。子供の頃から憧れて、いろんな影響を受けてきた大人たちが次々旅立たれていく。ジェーン・バーキンもその一人。銀幕での美しいお姿も、セルジュと創り出した音楽も、心に残るものばかりだ。飾らないのにスタイリッシュで、心に素直な発言と行動がカッコよくて。

セルジュの言葉遊びが美しい名曲。


「スローガン」「ガラスの墓標」も「太陽が知っている」も好き。だけど、個人的に印象深かったのが幼い娘の友人男子に恋をする「カンフー・マスター!」。年齢を重ねてもときめきを忘れないヒロイン像を素敵だなと思った。

ショートフィルム「彼女とTGV」は、スイスの田舎にポツンと建つ家の窓から、毎日特急列車に手を振る女性の物語。ある日、列車の運転手からお礼の手紙が届く。そこから手紙を通じて始まったやりとりは、彼女を生き生きとさせる。クロワッサンとトリュフが評判だった彼女のパン屋は安売り店に客を奪われている。彼女の誕生日に久々に息子がやって来るが、投げかけられたのは高齢者施設への入所を促す言葉。その日を境に毎日手を振っていた列車が通らなくなる。

実話に基づくお話とのこと。わずか30分の映像の中に喜怒哀楽と人情、老いと社会の変化、美しい風景と人間模様が詰め込まれている。トリュフチョコが詰められた小箱のように、小さいけれどスイートな幸せとビターな切なさが並んでいる。一瞬しか映らない街の人々までもが愛しくて感じられる。花に水をやる男性も、毎朝枕を叩く女性も、郵便配達人も。店の前に迷惑駐車するシトロエンの主が、罪滅ぼしにトリュフを買い求めにやって来る。そのトリュフをバレエを練習する女性に渡す様子がカーテンに影絵のように映す演出が粋でオシャレ。

クライマックスのチューリッヒ駅。ほっこりするラストシーン。ラッセ・ハルストレム監督の「ショコラ」はファンタジーだったけど、現実世界にも同じような人情物語がある。幸せな気持ちをくれる30分。ジェーン、晩年にこんな素敵な婆さんを演じてくれてありがとう。

セルジュ・ゲンスブールの名曲「手切れ」を、ジェーンはセルジュ追悼コンサートで歌った。手切れなんて冷たい邦題だが、直訳は「私はさよならを言うためにここに来た」。僕は昨夜この曲を久しぶりに聴いた。自分の葬式で流したいと密かに思っている曲でもある。

R.I.P.




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時をかける少女

2023-07-15 | 映画(た行)

◼️「時をかける少女」(2006年・日本)

監督=細田守
声の出演=仲里依紗 石田卓也 板倉光隆 原沙知絵

細田守監督の「サマーウォーズ」と「時をかける少女」はフェバリット夏映画だ。2023年夏にFilmarksが記念日上映と称してリバイバルしてくれたのはとても嬉しい。劇場で観ていなかった「時かけ」。7月13日(ナイスの日)ではないけれど、映画館で鑑賞。

奥華子の主題歌を聴くだけで泣きそうになるくらい大好きな「時かけ」。でも、実は初公開された頃、観るのを敬遠していた。筒井康隆の原作SFジュブナイルにも、大林宣彦監督の実写映画化にも並々ならぬ思い入れがあるもので、その後の度重なる映像化に疑問を感じていた。アニメで、メインビジュアルにはいかにも活発そうな少女が描かれている。これが「時かけ」?。線の細いヒロイン芳山和子、土曜日の実験室、ラベンダーの香りこそが「時かけ」というお堅い先入観を持つ僕ら世代。僕もその類だ。

(余談ですが、長女との会話)
🧑🏻「入浴剤何入れる?」
😏「"土曜日の実験室"」
🧑🏻「あー、はいはい。ラベンダー🪻ね」
"ラベンダー=時かけ"の図式は定着している(恥)。

冒頭、男子二人とキャッチボールするショートヘアーのヒロイン真琴。原作同様の進行で真琴がタイムリープ能力を持ってしまう。真琴はその能力を、不都合な出来事をリセットしたり、楽しい時間を延長するために使う。トム・クルーズのタイムリープ映画「オール…(略)」みたいに、同じ場面を繰り返すから、二度目はうまくこなす。不意打ちのテストも好成績、調理実習の失敗も、ふざけた男子の巻き添えを喰らうことも回避。その度に大口開けて高笑い。英国製タイムリープ映画「アバウト…(略)」で彼女とのイチャイチャを繰り返す場面みたいに、本人は楽しくて仕方ない。

※(略)について
なんで時間旅行(跳躍)映画って長いタイトルが多いのだらう。

あー、オリジナルの芳山和子ならこんなことはしないぞ。真琴はこの出来事を美術館に勤める独身の"魔女おばさん"に相談。するとおばさんは言う。
「真琴がいい目みてる分、悪い目をみてる人がいるんじゃないの?」
真琴は次第に自分が周囲に与えている影響に気づき始める。遊び仲間の千昭から
「俺と付き合えば?」
と言われたことから逃れようとして、事態はますますこじれてしまう。

この辺りから僕の冷めた目線は誤りだったと気付かされた。真琴のタイムリープでなくても、自分がしでかしたことで周りを不快にしてしまったり、人間関係がこじれてしまうことは、日常よくあること。真琴が置かれた状況は特殊なことなのに、僕らは自然と共感してしまっている。あの時やり直せていれば。それは誰もが思い描く気持ち。その普遍性が青春映画としての魅力につながっている。前半、能力を使う場面が楽しかったはずが、「真琴!今使うな!」と心で叫んでいる自分がいたりする。

理科室の黒板に書かれた
Time waits for no one.
歳月は人を待たず。
月日は過ぎ去っていくから、機会を失いがち。だから自分から走っていかなくちゃ。そしてクライマックスで、魔女おばさんが真琴に言う。
「待ち合わせに遅れてきた人がいたら、走って迎えに行くのがあなたでしょ」
そうなんだ。自分から走って行かなくちゃ。そして真琴が走って行った先で告げられるのが名台詞。
「未来で待ってる」
時は待ってくれない。でも待ってくれる人がいる😭

僕の感涙ポイントだった一つは、魔女おばさんが「私もずっと待ってる人がいる」と言う場面。その場面で棚に飾られているのは、二人の男子に挟まれた女子高生の写真と紫色の花。ラベンダー…?あっ!😳そこで魔女おばさんが原作の主人公芳山和子だと確信するのだ。

「実はこれからやることが決まったんだ」
真琴が何をしようとしているのか詳しくは語られない。でもそれは未来の千昭が願っていることのはず。僕が思うに…いや、それは鑑賞者それぞれが思うことでいい。

奥華子が歌う主題歌ガーネットの歌詞が心に突き刺さる。もう聴くだけで涙腺が緩む🥲。今回スクリーンで鑑賞する機会に恵まれ、感激したその夜。いつものように風呂で長女が熱唱しているのが聴こえてきた。よりによってガーネットだ。ラベンダー🪻の入浴剤入れたせいだな。
🧑🏻あなたと過ごしーたひーびぃをー♪
いつもよりエコーが深く響くのは、映画の感動という余韻があるからなんだろか。




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