Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

老親

2008-01-22 | 映画(ら行)

■「老親」(2000年・日本)

監督=槙坪夛鶴子
主演=萬田久子 草笛光子 小林桂樹 榎木孝明 岡本綾

 誰にでも老いはやってくる。自分もいつかは親の介護を考えなければならない時期がやってくることだろうし、その先自分も同じ立場に・・・。これからを考える為にも観ておこう、そう思っていた。正直なところ、もっと重い話だと思っていた。中村玉緒主演の医療もの昼ドラを見るようなのを想像していたのだ。しかし、それは間違いだった。老親を抱えた家族の成長物語として実に爽やかで元気をくれる映画だ。

 映画の前半は厳しい現実が描かれる。仕事を理由に親の面倒を押しつけてくる夫、長男の嫁であることからくる要求・非難、虐待に近い状況で育てられた過去・・・萬田久子演ずる主人公は精神的にギリギリになっていく。病院で花を切り落とす場面、葬儀の後で夫の親族に啖呵を切る場面。夫榎木孝明に特に象徴されているのだが、こういうときの男は本当に頼りなく見える。自分が同じ立場だったら・・・どういう行動がとれるだろう。小林桂樹扮する義父との生活で疲れていく主人公は、夫に離婚を請求。子供と東京で暮らし始めるが、そこへ義父がやって来る。なさそうでありそうなこの展開から、映画はグッと面白みを増してくる。奇妙な共同生活が始まり、義父は慣れない家事にも挑戦しようとする。孫に「ゆっくり成長するタイプ」と言われた義父が、次第にしっかりしていく様には、「かわいい」とさえ思えてくる。萬田久子の明るさと”ただではころばない”主人公の前向きな姿勢は、これまでの日本映画には成立しにくいキャラクターだ。公園での若者のダンスに体を揺らす義父と主人公。何とも微笑ましい場面だ。

 人間関係が円滑にいくのは、お互いが役割を担いそれをこなしていくこと。そう学ばされた気がする。また、岡本綾が演ずる孫娘の成長ぶりも印象的だ。特に介護福祉士として、施設のおばあちゃんにオムツをさせる場面は心に残る。義父が亡くなった後のファンタジックな場面も素敵。老いは誰にもやってくるが、老いもまた成長なのかな、と思った。年齢を重ねることによって学ぶことはたくさんある。そして家族も成長していくものなのだ。撮影中、槙坪監督は認知症の母親を連れてご自身も車椅子の身で演出したそうだ。そういうエピソードを聞くと、この映画に込められた愛がますます感じられる。



コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ウルトラセブンくじ | トップ | マッチポイント »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ありがとうございました♪ (メル)
2008-02-17 09:36:43
TBだけして、コメント残さず来てしまったのに(すいませんm(_ _)m)TBとコメントまで頂き、本当にどうもありがとうございました~

そう、この映画、思ったよりも重くなかったですよね。
ちゃんと1つづつ解決していってくれて、なんか気分良かったです♪
成子の持ち前のバイタリティーのお陰なのかもしれませんが、もっとドロドロしそうなところも、しゃきしゃきっと(大変な事もたくさんありましたが)解決してくれましたもんね。それぞれに成長していきましたしね。おっしゃる通り、元気がもらえました。

介護って先のことを考えても、どうなるか全然わからないので、(案外自分の方が親より先、ってことも
ありえるこの世の中だし(^^ゞ)その場その場で起こったことを1つづつ解決して行くしかないのかな~・・と思ったりしました。

takさんが記事に書いてらっしゃる、その最後のエピソードは知りませんでした。そうだったんですね~・・
私も夫の父、私の父と2人すでに亡くしてますが、二人とも介護が必要だったんですよね~。父の方は私の母が、義父の方は私たちが半分看て・・と言う状態でしたが、この映画はそんな私にもとても良い感じで残った映画でした。

またお邪魔させていただきたく、これからもどうぞよろしくお願いいたします
返信する
メルさんへ (tak)
2008-02-17 23:16:35
はじめまして。こちらこそどうぞよろしくお願いします。

介護経験者の立場だとこの映画どう見えるのでしょう?。僕が高校時代に母方の祖父が寝たきり状態だったのを思い出します。ちょくちょくした祖父の家には行きませんでしたが、足を悪くしていた叔母が世話しているのを大変そうだなぁと感じていた記憶があります。両親はまだ元気ですけどね。いつかはそういう時が来るのでしょうか。

萬田久子演ずる主人公の気丈さと明るさが、とっても素敵でしたよね。

またおいでください。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。