Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

RBG 最強の85才

2021-02-21 | 映画(あ行)


◼️「RBG 最強の85才/RBG」(2018年・アメリカ)

監督=ベッツィ・ウェスト、ジュリー・コーエン
出演=ルース・ベイダー・ギンズバーグ ビル・クリントン バラク・オバマ

性差別撤廃やマイノリティの権利拡大に尽くし、アメリカ最高裁判事として長年活躍してきた女性ルース・ベイダー・ギンズバーグのドキュメンタリー。彼女の若き日々を描いた映画「ビリーブ 未来への大逆転」を観て、その信念を貫く姿に感動しただけに、このドキュメンタリーは観たかった作品。生息地の映画館では、親切にも「ビリーブ」と二本立て上映もあったのだが行けず。そこにEテレのドキュメンタリー番組が、2週連続前後編で放送。ありがとうNHK。

法曹界に女性はいらないという風潮のあった時代。いくら優秀でも弁護士事務所に雇ってもらえなかったルース。大学で講義をする仕事はあっても、裁判にかかわることはできずにいた。女性が二級市民のような扱いを受けていた厳しい時代。女性の地位向上につながる訴訟に携わることで、世の中を変えていくことはできないかと常々考えていた。やがて、女性軍人に支払われない手当、男性のひとり親に支払われない給付の裁判を経て、彼女の裁判や意見が社会に影響を与えていく様子が語られる。ここまでは映画でも出てきた話だ。

その先このドキュメンタリーで語られるのは、クリントン政権の下で史上二人目の女性最高裁判事となるまでの道のり、そしてルース本人の人柄について。これは、単なるサクセスストーリーではなくて、アメリカの現代史に深く関わる内容でもある。最高裁判事となった後、リベラル派の立場で述べてきた彼女の意見は、やがて若い世代にも共感を呼び、ポップアイコン化する程の支持を集める。これも功績と人柄あってのこと。こうした存在、日本では考えつかない。

「議論で相手に勝とうと思ったら怒鳴ってはいけない。相手が歩み寄ろうとしなくなるからだ。」
「差別なんかないと思ってる判事たちに、幼稚園の先生のように話して聞かせた。」
メモしときたい言葉もたくさん。学ぶことがたくさんある。

お互いを認め合った夫婦の姿も感動的だ。男女差別が厳しかった時代にルースを支えた夫。映画「ビリーブ」ではアーミー・ハマーが好演していたが、ご本人の飛び抜けたユーモアある話術も、内気な妻を売り込んだ行動力も素晴らしい。

2020年にルース逝去。それもあっての今回のテレビ放送なんだろう。彼女のスピリットは語り継がれ、受け継がれる。



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笑う蛙

2021-02-18 | 映画(わ行)

◼️「笑う蛙」(2002年・日本)

監督=平山秀幸
主演=長塚京三 大塚寧々 國村隼 南果歩

会社の金を横領して逃亡中の主人公は、身を隠そうと妻の実家が所有する別荘に行くが、そこで妻とバッタリ。自首を勧められるが、離婚届にサインすることを条件に1週間だけ納戸に匿ってもらうことになる。次々に訪れる人々と妻との会話。親族だけでなく、夫の浮気相手や、夫の行方を追う警察もやって来る。そして妻の恋人も現れる。主人公は二人の情事を壁一枚を隔てて聞くことになり、再び妻への思いが高まっていく。

狭い舞台で静かに進む物語。そこで描かれるのはちょっとおかしな人間模様と人生の悲喜劇。年齢を重ねてからの方が、身に染みて楽しめる映画かもしれない。

主人公を演ずる長塚京三は、昔からテンパってドギマギする表情が上手い人。会社の飲み会後に、部下の女性にドキッとすること言われるサントリーのCM好きだったな(古い…年齢バレそう💧)。ここでも男の単純さ、意思の弱さが見事。大塚寧々の演技は淡々としているけれど、むしろ彼女のキャラクターあってのこの妻役かと思う。脇役には雪村いづみ、ミッキー・カーティス、國村隼、南果歩、きたろうと芸達者を揃えているのが飽きさせないうまさ。シリアスな話なのかと思いきや、映画の後半はジワジワと可笑しさが増していく。

雨が降ってきたので洗濯物を取り込もうと納戸から出てきた夫の目の前に、妻の恋人が現れる場面は、サスペンスとコメディが融和したような名場面。恋人との情事を夫が覗き見している場面では、妻が夫に聞かせる為にベッドでわざと大きな声をあげる。緊張感とニヤリとする可笑しさが同居する場面が随所にあって好感。

ラストの大塚寧々が見せるしたたかさ。ネタバレ防止のために詳しくは書かないが、実は夫を思っての言動ともとれるだけに、その微妙な感じが、不思議な余韻を残す。そして最後にナレーションで語られるその後の出来事。映画館ではあちこちから笑い声が聞こえていた。



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火口のふたり

2021-02-14 | 映画(か行)

◼️「火口のふたり」(2018年・日本)

監督=荒井晴彦
主演=柄本佑 瀧内公美

男女が惹かれ合った時のどうしようもない感じ。あの雰囲気が描かれる映画は嫌いではない。2019年のキネ旬1位「火口のふたり」。ひたすら交わって、食べて、寝てを繰り返すだけの映画。確かにその通りだ。でもそれ以上の何かキュンとくる何かが僕の中に残った。

荒井晴彦監督作や脚本の映画も、昔からたくさん観てる訳ではない。でも改めてフィルモグラフィーを見てみると、そういえばなんとも言えない男と女のドラマに胸が苦しくなった映画がいくつかある。例えば僕が20歳前後で観た「恋人たちの時刻」と「ひとひらの雪」(どちらも脚本担当)。エロ目的で観に行ったのに胸に残ったのは、切なさと恋愛に走った大人たちのなんとも言えない言動。お堅いお坊ちゃんだったつもりはないが、恋愛に走った大人って、どうしようもねえなと思った。でも、今ならわかる気がする。そういう立場になれば誰だって何も見えなくなるものなんだ。

ほぼ二人芝居の「火口のふたり」もそう。結婚を間近に控えた直子とそのいとこである賢司。二人はかつて激しく愛し合った仲。一晩だけあの頃に戻ってみない?と直子が言ったことから賢司も気持ちに火がつき、結婚相手が戻ってくるまでの五日間を一緒に過ごす。その数日間を淡々と刻んだ映画である。多くの人が言うように、食べて、セックスして、寝てを繰り返す映画。それが売りのはずなのに、激しいプレイもなく、性に溺れていく感じもない。関係は微妙な危うさがあるけれど、同じ時間を過ごしているどこにでもある男女の姿。

正直なところ、観る前は「愛のコリーダ」が頭にあった。5日間を過ごした男女が道ならぬ愛の果てに心中でもするんではなかろうか、と思っていた。ところが、映画は二人の様子をひたすら追い続ける。どれだけお互いを理解でき、身も心も許し合える存在なのかに二人が気づく5日間が映される。腹痛でお尻を押さえてトイレに駆け込む直子のカッコ悪い姿、久しぶりのセックスで腫れたペニスを濡れタオルで冷やす賢司のカッコ悪さ。それはお互いになら見せられるカッコ悪さ。一緒にいることの心地よさが「身体の言い分」という言葉で表現されるけど、それって肌が合うってことなんだ。「身体の言い分」って生々しいけど素敵な言葉の選び方のように思えた。

エンドクレジットで流れる不思議な歌。「とても気持ちいい」という言葉だけが高らかに繰り返し歌われて、笑っちゃいそうになった。でも、結局二人でいて心も身体もとても気持ちいいと思えるのは大切なこと。世界がどうなろうとも。全裸がこんなに出てきて、お互いの股間をまさぐるような場面が続く映画なのに、悶々とせず、どこか晴れやかな気持ちで終わりを迎えられるって不思議な感覚。万人にお勧めはしないけれど、決して嫌いではないかな。



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シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション

2021-02-12 | 映画(さ行)

◼️「シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション/Nicky Larson Et Le Parfum de Cupidon」(2018年・フランス)

監督=フィリップ・ラショー
主演=フィリップ・ラショー エロディ・フォンタン タレク・ブダリ

いやもう、「シティーハンター」愛に満ちていて多少の難は許せてしまう。原作の軽いけどプチハードボイルドな感じが好きだっただけに、フランス実写版はブラックでちょっとお下品なコメディ要素を過剰に感じてしまう。冒頭の手術室の格闘にしても、アニメでおなじみの黒い鳥がボカシ代わりに使われる。あの向こうで揺れてるのかと思うと笑っちゃうんだけど、ちょっとくどい。

惚れ薬効果がある香水争奪戦というストーリーも、荒唐無稽だけど、愛の国おフランスらしいと思えばオッケーかな。香水の効果で相手に魅せられてしまう場面、音楽で分かりやすく演出するクドさがクセになる。80年代末から90年代のセックスシンボルだったパメラ・アンダーソンを、セクシー女優役にキャスティング。彼女に会う場面では、恋する高揚感を表現するのに「ラ・ブーム2」の主題歌だった「Your Eyes(恋する瞳)」が使われている。「シティーハンター」は90年代にフランスで放送されていたらしいから、当時夢中になった世代には、このへんがツボだったんだろうな。

ともかく、ジャッキー・チェン主演版の映画化作品よりは好き。固定された主観ショットだけのアクション場面は、アイディア賞をあげますw。

お約束のGet Wild、👍。アニメではよく見るすご腕の射撃とか形勢逆転のお膳立てとか、キザなカッコよさが欲しかったな。吹替は山寺宏一が主役を演ずる。アニメでは、その他大勢の役で毎週名前がクレジットされてた人だけに、ちょっと嬉しい。今回の事件を依頼する老人役は、「コーラス」「幸せはシャソニア劇場から」の名演技が忘れ難いジェラール・ジュニョ。



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ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q

2021-02-10 | 映画(あ行)

■「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」(2012年・日本)

総監督=庵野秀明 監督=摩砂雪 鶴巻和哉
声の出演=緒方恵美 林原めぐみ 宮村優子 坂本真綾

新劇場版第3作「Q」は、冒頭から僕らを突き放す。いきなり隻眼となったアスカとマリが大気圏に突入しながら、何かを回収するミッションを遂行する場面から始まる。そこに説明は全くない。鑑賞者たる僕らは、目覚めたシンジと同じく、あの後何が起こったのかを全く知らされないまま、物語についていく他はない。そして少しずつ今の状況が明らかになっていき、渚カヲルの導きでシンジに真実が告げられる。

テレビシリーズからは全く違う展開に、ただただ戸惑う95分。情報量がやたら多く、全体像を理解する余裕がなくて、「破」を復習した上で再度観た。エヴァとゲンドウ、そして綾波レイの秘密にまつわる、冬月からシンジへの説明は、テレビシリーズと違って意外とあっさり。これだけ一気に聞かされてしまうと、そこ衝撃ポイントだったのになぁー、ともったいなく感じてしまう。

ディストピアをこれだけ見せつけられて、さらに続きって、普段の僕ならもういいやって思うところなんだが、ここまで来たら見届けずにはいられなくなってきた。公開されたら観てやるよ「シン・エヴァンゲリオン劇場版」。タイトルの最後にくっついてる音楽記号のリピートマークが気になる…。



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ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破

2021-02-08 | 映画(あ行)


■「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」(2009年・日本)

総監督=庵野秀明 監督=摩砂雪 鶴巻和哉
声の出演=緒方恵美 林原めぐみ 宮村優子 坂本真綾

新訳「エヴァ」たる新劇場版第2作「破」。見終わって思ったのは、「エヴァ」ってこんなにわかりやすかったっけ?ということ。アスカ(テレビシリーズと名前を変える理由は何?)が登場し、新キャラも登場する。この劇場版はシンジ、レイ、アスカの微妙な三角関係がかなり強調されているのが印象的だ。自信満々だったアスカが一人では何もできないと心が揺らぐエピソード、レイが碇司令とシンジの仲をとりもとうとするエピソード、そしてシンジが逃げ腰から再び立ち向かおうとする成長物語が加わって、主人公3人の心の変化が主要なテーマになっている。女子二人が料理に目覚める場面のラブコメ感。かなり一般に受け入れられる改変だ。

これまで難解とされた「エヴァ」を2時間のエンターテイメントに仕立て直した。それは成功かと思う。しかしそれ故に、オリジナルのもつミステリアスな物語の展開と終末感にあふれた世界観が、やや薄味になっているのは仕方ないのかもしれない。「エヴァ」はこんなに笑ってみられる話ではないはずだ。

と思っていたら映画後半不穏な空気が漂ってくる。アスカが人と関わるのが心地よいとミサトと会話するちょっとキュンとする場面(プラグスーツ見えすぎじゃない?ってきゃわいい)直後だけに、その落差に驚く。月面で微笑むカヲル君も不気味。そして、「翼をください」が流れる怒涛のクライマックス。シンジの思いが、初号機を別次元へと覚醒させていく。シンジが自分自身にまとっていたフィールドから突き抜けた瞬間が描かれる映画としてのカタルシス。まさに「破」。しかしそれは同時にとんでもない事態を引き起こす。えっ、終わるの!?と思ったら、えっ!えーっ!?

テレビシリーズをグレードアップしたリブートだと信じた「序」からの期待は、見事に裏切られる。これも文字通りの「破」。それにしても、これだけダークな展開と混沌とした謎だけが待ってるのに、エンターテイメントとしてしっかり面白い。これまでこのシリーズをどこか冷めた目で見ていたけれど、クライマックスで手に汗握ったのは、テレビシリーズも含めてこれが初めてかもしれない。これがいちばん好きかも。

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 予告編


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ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序

2021-02-07 | 映画(あ行)

◼️「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」(2007年・日本)

監督=庵野秀明
声の出演=緒方恵美 林原めぐみ 三石琴乃 宮村優子

「ヱ」とか「ヲ」とか変えちゃって何がしたいの?と思って新劇場版は映画館で観ることはなかった。今だからできる技術使った表現方法で撮ったリブート版が作りたかっただけ?

確かに新劇場版第1作「序」は、テレビシリーズにほぼ準拠した内容。第三東京市にシンジが呼ばれたその日、彼は使徒と呼ばれる謎の生命体に遭遇、父が働く組織NERVの基地に着くが早いか、見たこともない汎用人型決戦兵器たる人造人間エヴァンゲリオンに乗って使徒と戦えと命じられる。父から愛情を受けた記憶もなく、周りに命じられるままに逆らわずに生きてきた少年は、想像もしなかった試練に巻き込まれる。セカンドインパクトと呼ばれる出来事で何が起こったのか。重圧と認められない悲しみから、エヴァに乗りたくないと言うシンジ。しかし再び使徒が襲来し、NERVの基地も危機に陥いることに。テレビシリーズの前半の、「ヤシマ作戦」までを再構築した内容である。

「序」で印象的なのは、父ゲンドウから認められないシンジの悔しさと寂しさ、満たされない気持ちが全編を通じて描かれていること。一方で綾波レイは父ゲンドウと直に会話し、父を悪く言うシンジには平手打ち。ゲンドウの割れたメガネを大事そうに持つ彼女に対するシンジの複雑な気持ち。それでも現実に立ち向かい、少しだけシンジが成長する姿がいい。

レイの元に駆けつけるゲンドウの回想シーンとラストのシンジの行動。劇場版だと二つが重なるのが分かりやすい。ヤシマ作戦前後は名セリフも出てくるいいエピソードなのだが、「序」では意外にあっさりしているのがちと残念。

僕らは巨大ロボットアニメで育ったけれど、動力や繰り出す兵器の威力、活躍を支える組織や施設など背景については深く考えることもなかった。マジンガーZは光子力ってので動くんだすげえな。そんな程度。庵野秀明監督は大規模な作戦を決行するには現実的にどのような動きをするものかを、明確に示してくれる。ヤシマ作戦の為に日本全国の電力を一箇所に集中させる過程を、物資や設備、それを支える発電所の様子などを克明に描いていく。それは大作戦であること、それをシンジが最前線で担うという重さでもあるけれど、どれだけ多くの人々が関わって 世の中動いているのかを示してくれることでもある。「シン・ゴジラ」はそのさらなる発展形で、政治の場まで含めて危機に立ち向かう現実を示したのだな。

そしてラストシーン。渚カヲルは「また三番目」「会えるのが楽しみだよ、碇シンジ君」と意味深な言葉を残す。このミステリアスな感じがエヴァだよねー、と思うが、「序」で感じたリブートとしての安心感は、この後の「破」「Q」で、幻だったと気付かされるのだ。



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スパイ・ゲーム

2021-02-04 | 映画(さ行)





◾️「スパイ・ゲーム/Spy Game」(2001年・アメリカ)

監督=トニー・スコット
主演=ロバート・レッドフォード ブラッド・ピット キャサリン・マコーマック

ロバート・レッドフォードとブラッド・ピット。新旧美男スターの顔合わせだけど、顔見せだけに終わる映画ではなかろうな?、と劇場へ。「リバー・ランズ・スルー・イット」では、監督と役者という関係だった二人。おすぎ氏が「綺麗な男のコよねー。若い頃のロバート・レッドフォードにどこか似ているし。」と述べていたのを思い出す。その二人が肩を並べての共演だ。

レッドフォードがCIA局員として最後の日を迎えるが、そこへ昔の部下が中国で処刑寸前だという知らせが。これを知力とアイディアで助けようとするお話。トニー・スコット監督は、レッドフォードの「コンドル」がお気に入りと聞いたことがある。あれは追いかけっこやドンパチばかりのスパイものとはひと味違う映画だっただけに、この作品もちょっと意識しているのだろうか。

知的サスペンスってところが最大の見どころで、従来のトニー・スコット作品のド派手なイメージとは印象が違う。しかし、アクションを売りにしたこれまでの映画と同様に、カメラだけは止まらない。ひたすら動き続ける。レッドフォードの指示で、特殊部隊が突入する場面などは、アクションシーンとして当然の迫力。特に印象的だったのは、屋上で二人が議論を戦わせる場面。普通なら会話をじっくり構えて撮るところだが、これが揺れ動く空撮。「お前がヘマをやっても助けない」と言い渡す場面もあるくらいだから、仕事や人間関係の不安定さが表現されていたのかな、とも思った。

欲を言えば、私財を使ってまで救出作戦を展開させるし、「助けない」という言葉を覆すあたり、二人は果たしてそこまで深い人間関係だったのだろうか?とやや疑問に思った。

部屋から電話するだけで、組織を的確に動かすレッドフォードの役柄をすごいと思う。けれど視点を変えれば、アメリカという国はそれだけ強い組織力を持つのだ、という世界への発信とも受け止められる。折しも、この映画が公開されたのは、2001年9月の同時多発テロの2ヶ月後。そしてこの後、ハリウッドは戦争映画を量産するようになる。



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