■「007カジノ・ロワイヤル/Casino Royal」(2006年・イギリス=アメリカ)
●2007年英国アカデミー賞 音響賞・オレンジライジングスター賞
監督=マーティン・キャンベル
主演=ダニエル・クレイグ エヴァ・グリーン マッツ・ミケルセン
6代目ジェームズ・ボンドにダニエル・クレイグを迎えたシリーズ最新作。お正月に007映画が上映されるのって嬉しいよなぁ。「ゴールデンアイ」以来かな?。そして何よりも「リビング・デイライツ」以来となる"Ian Fleming's James Bond"の文字が嬉しい。原作に基づく007ということだ。「カジノ・ロワイヤル」はイアン・フレミングの小説で、ジェームズ・ボンドが初めて登場したもの。本家イオンプロがその映画化権を取得できなかった。67年にデビッド・ニーブンやピーター・セラーズら複数のボンドが登場するコメディとして一度映画化されている。今回の「カジノ・ロワイヤル」はボンドが00要員となった頃を描く、まさに原点回帰。派手なオモチャがよく似合うピアース・ブロスナンもあれはあれでよかった。でも今回のダニエル・クレイグも悪くない。確かに数十年前ならきっとスペクターの悪役をやってたような容貌だ。「ロシアより愛をこめて」のロバート・ショウをどっか思わせるし、公開前からふさわしくないと批判が多かったのも事実。でも、このストーリーだしこれぐらいワイルドなボンドでよかったとも思う。これからはクールでプレイボーイなスパイとして活躍してくれることだろう。
オールドファンとしてディティールの点で惜しむべきは、ジェームズ・ボンドの基本的設定を描くのには時代性がちょっとね・・・。例えばボンド愛用の銃は当初小型のベレッタだったが、「ドクターノオ」でワルサーPPKにMに変えさせられる。だが今回の映画ではワルサーの最新型。それにテロリストに資金や武器で支援する悪役ル・シッフル、まぁ趣味とはいえカジノで稼ぐ悪党って現代的ではないようにも思える。今なら金を手にする手段は原作の頃とは違ってもっとたくさんあるはずだし。
しかしこの映画はとにかく人間ジェームズ・ボンドの若き日を描くことに主眼が置かれている。だから脚本には人間をきちんと描写できるポール・ハギス(「ミリオンダラー・ベイビー」)を器用しているのだ。女性のためにあっさりと辞表を書いたり、殺しを目の当たりにしてショックを受けたヒロインをシャワー室で抱きしめたり・・・トレイシーと結婚する「女王陛下の007」以上に”恋するボンド”そのお相手であるエヴァ・グリーンはまさにボンドにとっての運命の女役で魅力的。単なる添え物ではないヒロイン像と存在感。上映時間が進むにつれてボンドはだんだんとかっこよくなっていく。そしてラストシーン。スーツ姿でライフルを手に颯爽と現れるボンド。その場面で、多くの007ファンは「スターウォーズ エピソードlll シスの復讐」でダースベイダーの呼吸音が場内に響いたときのような感動を味わったことだろう。僕もその一人だ。そしてもちろん、エンドクレジットに”James Bond Will Return”の文字があることを確認して椅子を離れたのだった。
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TBありがとうございました。
>その場面で、多くの007ファンは「スターウォーズ エピソードlll シスの復讐」でダースベイダーの呼吸音が場内に響いたときのような感動を味わったことだろう。
007ファンではないのですが、なんとなくわかるような気がします。
ファン以外も楽しめるすばらしい映画でした。
唯一の不満はちょっと長かったことですかね。
どうしても新ボンド1作目、00要員となった最初のエピソード・・・とどうしても気負いがある映画だから長尺になっていますよね。次回からはまた娯楽路線になっちゃうのかな。
「My Name Is Bond. James Bond.」
の一言が聞けるのに往年のファンは涙するのです。はい。