Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

男性・女性

2024-07-12 | 映画(た行)


◾️「男性・女性/Musculin Feminin」(1966年・フランス)

監督=ジャン・リュック・ゴダール
主演=ジャン・ピエール・レオ シャンタル・ゴヤ 

勝手ながらアイコンに使用している画像。出典はこの映画、ジャン・リュック・ゴダール監督の「男性・女性」。ジャン・ピエール・レオのキョトンとした表情がいい。社会人になってすぐの時期にトリュフォーの「大人は判ってくれない」を観て、それ以来、ジャン・ピエール・レオが演ずるどの役にも、やり場のない日常の不満を抱え込んでるように見えて、どこかで自分を重ねていた。「男性・女性」のチラシのデザインは、円い画像を中心に単色の黄色で彩られたシンプルなデザイン。それが気に入って、以来アイコンとして勝手に使い続けている。

さて。映画「男性・女性」は、政治好きゴダールが若者へのインタビューを織り交ぜながら、当時の若者の姿と時代の空気をフィルムに閉じ込めた作品だ。ベトナム反戦や政治や広く世の中に反抗的な態度をとりながら、一方で恋と日常を楽しむ。そんな"マルクスとコカコーラの子供たち"の姿を追う。兵役帰りの主人公ポールと、新人歌手のマドレーヌの恋。

すぐに自分の哲学や信念を大声で唱え始めるポール。マドレーヌを口説く場面も自分本位で強引で観ていてイライラする。もっとイライラするのはゴダールの演出。やっぱり相性が悪いのだろうか。あまりの長回しと、街頭生録りによる環境音混じりのセリフが、なんか焦ったい。

世論調査だというインタビューも、個人的な質問から政治的な立場や考えを「知らない」「答えられない」と言われながらも、しつこく問いかけ続ける。女の子を口説く場面も似たようなやり取りが延々続く。まぁこの監督こそ観客がどう思おうと自分を貫く人だから。しかし、突然突き放すような空虚なラストシーンを押し付けてくる。会話ばかりでストーリーが進んでいなかったように感じていたから、これには驚かされる。

ヒロイン、シャンタル・ゴヤが歌うシャンソンと、ファッションがキュート。自分をほっといて友達とこそこそ話す彼女に苛立ったポール。そんな彼の頬にキス。素敵な場面だ。

政治色の強さがあって、確かにめんどくさい映画だが、そこを耐えれば(笑)ちょっとめんどくさいやつらの青春映画として観ることもできるかと。



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007/ゴールデンアイ

2024-05-13 | 映画(た行)


◾️「007/ゴールデンアイ/Goldeneye」(1995年・イギリス)

監督=マーティン・キャンベル
主演=ピアース・ブロスナン ショーン・ビーン イザベラ・スコルプコ ファムケ・ヤンセン

80年代のテレビ番組「探偵レミントン・スティール」で人気があったピアース・ブロスナン。90年前後にはタバコ(Speak LARKってヤツね・懐)のCMで、まさにスパイ映画のような役柄を演じていたのをよーく覚えている。そして5代目ジェームズ・ボンドを襲名することになる。



ピアース=ボンド第1作「ゴールデンアイ」は、時代の変化が色濃く反映された作品となった。1991年のソビエト崩壊後、最初に製作された007作品なので、国家間の露骨な東西対立が描かれる訳ではない。旧ソ連が開発していた武装人工衛星をめぐる、ロシアの犯罪組織ヤヌスの陰謀が物語の主軸だが、ボンドを追いつめる別な悪役が登場する二重構造。敵味方と単純に二分できない筋書きは、複雑な世界情勢の反映でもある。

007映画の華である女性キャストは、ロシアの秘密宇宙基地のプログラマーであるナターリャ。演じるイザベラ・スコルプコは東欧出身。ロシアの女性と親密になる展開は「ロシアより愛をこめて」や「私を愛したスパイ」があるが、それは任務を帯びた敵味方だった。本作ではロシアの一般女性で、ボンドが彼女の窮地を救う王子様の様に描かれるのは面白い。

しかし。ボンドの職場MI6も様変わり。新任の上司Mは女性となる。ジュディ・デンチはこれが初登場で、ダニエル・クレイグ主演作まで続くことになる。上司はボンドを「冷戦の遺物」と呼び、秘書マネーペニーにセクハラ呼ばわりされる始末。ボンドの肩身が狭くなる時代が来るなんて。公開当時、オールドファンはこうしたやり取りに唖然としたに違いない。

されど、マネーペニーは、
「誘いをかけるばっかりはセクハラ。そうでないならちゃんと行動で示して」
と言ってる訳で、決して拒絶しているのではないのだな、と再鑑賞して今さらながら気づいた私。初見からウン十年経ったけど、その間に、マネーペニーのこの台詞に似たようなことを、自分も言われたこともあったよな、なかったような。映画で気付かされること、あるよね(汗)。

本題に戻ります。

ピアース・ブロスナンのボンドは、スマートだし、アクション場面も派手でカッコいい。冒頭のダムからのダイブは印象的だ。ましてや飛び立つセスナ機を追いかけて飛び乗るなんて、戦車で追跡して街を破壊するなんて、歴代ボンドの誰もやってない。でも、何故だろう。これまでの先達ボンドに感じていたヒーローとしての余裕や危険な香りとはどこか違う。マシンガンをぶっ放しながら失踪するアクション場面はスリリングだけど、それがジェームズ・ボンドでなくてもいい気がした。従来のゴージャスなスパイ映画から、仕事熱心なエージェントが活躍するアクション映画にシフトした印象。










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ちひろさん

2024-04-29 | 映画(た行)


◾️「ちひろさん」(2023年・日本)

監督=今泉力哉
主演=有村架純 風吹ジュン 豊嶋花 リリー・フランキー

海沿いの街のお弁当屋さんで働いているちひろさんを中心に、彼女をとりまく人々が少しずつ変わっていく姿を描いた好編。ネトフリで配信が始まって以来好評を目にしていて、そんないい話を一部だけのものにするなんて…映像コンテンツは商品だけどみんなが観られてナンボじゃないのか、とちょっとイラついていた。DVDで観られるようになり、めったに新作を借りない僕が迷わずセレクト。

不思議な魅力をもった作品。
「ちひろさんなら大丈夫。あなたなら何処にいても孤独を手放さずにいられるから」
クライマックス、風吹ジュンのひと言が心にしみる。その意味を考えさせられる。誰にも干渉されず、自分の居場所があって、自ら他人に深入りはしない。でも他人と関わることを拒絶してるわけでもなく、むしろサラッと人をつなぐ役割を果たしてくれる。

ここで使うべき言葉とは違うかもしれないが。ちひろさんは人たらしの一面がある。愛想が良くて、人を悪く言わない、人の話を聞いてくれる。決して周囲のご機嫌とりでも、人づきあいが上手でもない。それでもクライマックスの屋上シーンのように周囲の人をつないでしまう。

その一方で自分の孤独を抱えている。不安だってないわけじゃないだろう。でも自分で自分の機嫌をとれる人なんだろう。ストレスが溜まったらラーメンを食べ、海を眺める。人恋しくなったら、女友達に寄り添って、異性との愛を求めないけれど欲しくなったらそれを隠さない。甘え上手なところもある。

そんなちひろさんの過去は、"店長"リリー・フランキーから少しだけ語られる。そのわずかな言葉と、ボロボロの靴を履いたリクルートスーツ姿の彼女がビルの屋上に佇む映像は何よりも雄弁だ。必要とされる存在だと感じられないことの辛さと、形はどうあれ必要だと思ってもらえることの大切さ。劇中登場する2つの面接シーンに涙してしまった。コロナ禍の数年間に、人との距離感やつながりを考えさせられただけに、本作や「PERFECT DAYS」が多くの人の心に染みるのだろう。

食事のシーンも、家族や人とのつながり、自分を養い元気づけること、誰かを思うことにつながっていて、映画化にあたりよく練られた演出だと思った。美味いもんなら誰と食べようと一人で食べようと美味いはず。でも家族との食事がプレッシャーでしかない女子高校生オカジが、マコト少年が世界一と言う母ちゃんの焼きそばを食べる場面。こっちまでもらい泣きしてしまった。マコト少年の花束のエピソードもよかった🥹

多くの人と同様に「あまちゃん」で有村架純を知ったのだけど、女優としての彼女を僕は甘く見ていた。この映画でみせるいろんな表情と芝居に感動した。近頃の日本映画の重たそうなムードから僕はどうも敬遠しがち。不勉強だなと痛感。






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デュエット

2024-04-18 | 映画(た行)


◾️「デュエット/Duets」(2000年・アメリカ)

監督=ブルース・パルトロウ
主演=マリア・ベロ ポール・ジアマッティ グゥィネス・パルトロウ ヒューイ・ルイス アンドレ・ブラウアー

「デュエット」は、カラオケ大会に集まる6人の男女を追った群像劇。賞金目当てのカラオケハスラーであるリッキーに元妻が亡くなったと電話が入る。葬儀場で初対面した実の娘リブを遠ざけるリッキーだが、2人は行動を共にするようになる。セールスで出張続きのトッドは、家庭に嫌気がさして旅に出る。その道中で知り合った黒人レジー。彼は脱獄囚で追われていた。そして恋人を寝取られて自暴自棄のビリーは、酒場で知り合ったカラオケハスラー、スージーと成り行きで行動を共にすることになる。6人は高額賞金がかかったカラオケ大会に向かう。

音楽で結ばれる絆は深い。人をつなぐもう一つの言語とまで言うとオーバーかもしれないけれど、大なり小なり音楽を通じて関わった人々は、長い付き合いだったり、強い印象を受けていることが多い。僕もそう感じている。この映画の中でも、ギクシャクしていた関係が歌を挟んで変わっていく。

リッキーは「娘を紹介させてくれ」とリブをステージに上げ、スモーキー・ロビンソンのCrusin'を一緒に歌う。リブにとっては亡くなった母がよく歌っていた思い出の曲。トッドとレジーは、オーティス・レディングのTry A Little Tenderness。警察の目を逃れようとするハラハラと音楽の快感が同居する名場面。この2曲の見事なハーモニーは映画の中でも注目すべき圧巻のステージ。音楽好きなら、これを目的に観ても損はない。

自暴自棄になって、騒ぎを起こすトッドが痛々しい。貯まったマイレージでホテルに泊まりたいという願いが叶えられないことがきっかけで、トッドはレジーの銃で大暴れ。その彼をレジーが叱る場面がいい。
「中流家庭なんて牢獄だ」
「ほんとの牢獄を知りもしないくせに」
それでもレジーが最後までトッドを見捨てない姿はこの映画の感動ポイントだ。

実は映画に先行してサントラ盤を購入して聴いていた。グウィネス・パルトロウが歌うキム・カーンズのBette Davis Eyes、映画冒頭でヒューイ・ルイスが歌うジョー・コッカーのFeelin' Alrlghtが好き。ポール・ジアマッティはトッド・ラングレンのHello It's Meを歌って激しく踊る。切なさが好きな曲だけに笑いのネタにされる場面なのはちと残念かなー。マリア・ベロが歌うボニー・レイットのI Can't Make You Love Meもなかなか。



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デューン 砂の惑星PART2

2024-03-22 | 映画(た行)


◾️「デューン 砂の惑星PART2/Dune:Part Two」(2024年・アメリカ=カナダ)

監督=ドゥニ・ヴィルヌーヴ
主演=ティモシー・シャラメ レベッカ・ファーガソン ゼンデイヤ ハビエル・バルデム クリストファー・ウォーケン

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による「砂の惑星」第2作。4年前の前作は、この複雑で壮大な復讐劇の登場人物たちと舞台を示し、断片的なイメージをチラつかせて2作目への期待が高める意味では、申し分のない完成度の作品だった。本作は、砂漠の民フレメンと合流した主人公ポール・アトレイデスが、父の仇であるハルコンネン家の面々に立ち向かうパートである。デビッド・リンチ監督版ではスティングが演じた残忍で危険なフェイドが登場し、ポールとの一騎打ちがクライマックスに登場する。

フレメンの民が信じる救世主伝説にポールと母ジェシカがうまくフィットして、少しずつ民の信頼を勝ち取っていく。アトレイデス家の生き残りがフレメンの伝説にうまく乗っかって利用しているとも言えるのだけど、一つ一つ試練をポールが乗り越えていく様子は成長物語のようでもあり、観客の気持ちも盛り上がる要素になっている。

キャストが豪華なアメリカ映画はあれこれあるけれど、単に人気者を使ったのでなく、役柄にマッチしたキャスティングがいい。映画の格を高めることに貢献している。ヴェール越しの顔しか見えないのに存在感あるシャーロット・ランプリング。ミステリアスな眼差しのレア・セドゥ。クリストファー・ウォーケンが演ずる皇帝は、貫禄だけでない人間的な弱さも感じられる。

それにしても圧巻なのはVFX。前作でも魅力的だったオーニソプターだけでなく、巨大な採掘機械や飛行物体、襲いかかる砂虫、大群衆…。金がかかった贅沢なこの映像を大スクリーンで楽しまないのはもったいない。

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作は難解なイメージがあるけれど、観客の理解が追いつかないものをチラつかせて映画に引き込んでくれる作風は、本作でも発揮されている。復讐を遂げた先の第3作は、宇宙を巻き込む戦乱へと発展。ポールはもはやチャニィへの愛を口にする一人の男ではなく、さらに多くの人々の生死を左右する存在へと変わっていく。その行く末はポールが見たイメージ通りなのか?今から続きが気になる。




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DOGMAN ドッグマン

2024-03-18 | 映画(た行)


◾️「DOGMAN ドッグマン/Dogman」(2023年・フランス=アメリカ)

監督=リュック・ベッソン
主演=ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ クリストファー・デナム マリサ・ベレンソン マイケル・ガーザ

リュック・ベッソン監督による新たなダークヒーロー(他の表現ないのかな)。好き嫌いは分かれるが、問答無用の荒唐無稽さが際立った「LUCY/ルーシー」よりも、こちらの方が個人的には好み。

警察の検問で止められたトラック。運転席には傷を負った女装の男、荷台には数十匹の犬。警察署で精神科医の質問を受けながら、彼は生い立ちについて話し始める。

暴力的な父親に虐待されて犬小屋で育った少年。父親の銃撃で身体が不自由になったが、犬と意思疎通できるようになった彼を、飼い犬たちが手足となって支えてくれる。やがて彼は社会の裏側で活躍する"ドッグマン"となった。犬たちの活躍が面白い。撮影や編集、工夫したんだろうな。

虐げられた環境からダークヒーローとなっていく過程に、「ジョーカー」を重ねる方もいるかもしれない。申し訳ないけれど、徹底した悪に染まっていく様子を讃えるようなあんな映画(大嫌いなんです💢)と一括りにされては困る。「ドッグマン」の主人公は、富の再分配として犯罪に手を染めてはいくけれど、決して世の中を否定するようなヴィランではない。職を探して車椅子で店を訪ね、懸命に自分と犬の穏やかな生活を築こうとしているだけの地道な男だ。

主人公がかつて置かれた厳しい環境と生い立ちは、主人公の語りとともに回想形式で見せていく構成。主人公の過去を少しずつ紐解いていくことで、現在の彼を際立たせてくれる。対して、こんなに酷かったんです→悪に染まって当然よね?と、ヒネリのない時系列で観客に有無を言わせない「ジョーカー」の強引さとは雲泥の差。さすがベッソン。

ドラァグクィーンとしてキャバレーのステージに立つ場面は、音楽好きには楽しい。EurythmicsのSweet Dreamsが流れ始めて、口パクで昔の歌手を女装パフォーマンスするアーティストたちが現れる。アニー・レノックスはもちろん、コーンブラが印象的なマドンナのステージ衣装や、ど派手なシェールの衣装を着たおネエさんたちw。

そこで初舞台を踏む主人公が演じるのはエディット・ピアフ。口パクではあるけれど熱演。晩年のピアフは立つのもやっとだったのに、ステージで歌った。この場面の主人公の姿に重なる。これ、ピアフへのオマージュだよね、きっと。ピアフの曲はエンドクレジットでも流れる。クリストファー・ノーランが「インセプション」で使ったあの曲。ベッソンが俺も使いたかったんだぜ、と言ってる気がしてちょっと嬉しい。

マリリン・モンローのI Wanna Be Loved By You(愛されたいの)を歌いながら化粧する場面から、怒涛のクライマックスへ。十字架の下で犬に囲まれるラストシーン。宗教への傾倒を口にする父や兄から酷い目に遭い続けた主人公は、神さえ信じられなかったに違いない。でも最期に神にも愛されたかったという気持ち現れなのだろう。「ルーシー」には映画愛を感じるオマージュがあったが、本作では音楽の使い方にこだわりを感じる。




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007/カジノ・ロワイヤル

2024-02-10 | 映画(た行)


◾️「007/カジノ・ロワイヤル/Casino Royal」(1967年・イギリス)

監督=ジョン・ヒューストン ケン・ヒューズ ロバート・パリッシュ ジョセフ・マクグラス ヴァル・ゲスト
主演=デビッド・ニーブン ピーター・セラーズ ウルスラ・アンドレス ウディ・アレン

イアン・フレミングの原作「カジノ・ロワイヤル」の映画化作品。ダニエル・クレイグ版とは全く違う、大スケール、オールスターキャストのコメディ映画である。製作上の様々な問題があって出来上がった異様な産物。原作リスペクトとは程遠い映画だが、当時フレミング自身はこの映画化をどう思っていたのだろう、と想像してしまう。フレミング自身は、ジェームズ・ボンドはデビッド・ニーブンをイメージしていたと聞くので、その点についてだけは異論はなかったのかな。

確かに異様な作品なのだが、製作から長らく経った今観ると、その後の米国製プレイボーイスパイ映画や、「オースティン・パワーズ」に代表されるスパイコメディの先駆けとも言えるだけに、そのハチャメチャぶりを楽しんでしまう。

オシャレなデザインのタイトルバックにパート・バカラックの音楽。80年代のクイズ番組「世界まるごとHow Much」の最後に流れるプレゼントクイズのBGM、これだったよね!軽快なハーブ・アルパートのトランペット🎺に心が躍る80年代育ち😆w。挿入歌は名曲The Look Of Love(恋の面影)。いい曲だ。ライオンが出てくる場面では、「野生のエルザ」主題曲が流れるおふざけも。デボラ・カーが出る場面では突然悲しげなメロディに変わる。これ彼女がらみの映画主題曲?自信ないけど、修道女になる場面が出てくるから「黒水仙」なのかな。

ストーリーの軸となるのは、カジノで悪事の資金調達をするルシッフルの企てを阻止するために、独自のバカラ必勝法を持つイブリンにジェームズ・ボンドを名乗らせて対決させるお話。しかしそこに辿り着くまでに、引退したボンド卿を復帰させるための紆余曲折、女だらけの屋敷でのどんちゃん騒ぎ、マネーぺニーの娘による新007スカウト。そして実業家となったヴェスパー・リンドを使ってイブリンを仲間にし、ボンド卿の娘まで登場する。ストーリーをちゃんと追うと回りくどい展開にイライラすること必至だが、カラフルな色彩感覚と、今の誰?と目が離せないカメオ出演と遊び心を超越した悪ふざけで飽きないから不思議。

ボンド引退後に後継者がボンドを名乗っているから、複数のボンドがいるという設定。その一人で、ボンドの甥ジミー・ボンドを演ずるのはわれらがウディ・アレン先生。これがアレンらしいコンプレックスの塊で、笑わせてくれる。ウルスラ・アンドレスは「ドクター・ノオ」とは違って妖艶な役柄、ルシッフルはオーソン・ウェルズが貫禄を示す。イブリンを誘惑する美女ミス・フトモモはジャクリーン・ビセット♡。他にもシャルル・ボワイエ、ピーター・オトゥール、ジャン・ポール・ベルモンドなどなどチョイ役なのに豪華絢爛。ベルリンのオークション場面に出てくる男性は、「ロシアより愛をこめて」に出てくるチェスの人やんw。突然現れるフランケンシュタインの怪物。演じているのは後のダースヴェイダー、デビッド・プラウズw。

スパイ養成学校がドイツ映画「カリガリ博士」みたいな雰囲気だったり、共産圏の人物が出てくると照明が赤くなったり、クライマックスは空飛ぶ円盤まで登場して、まさに混沌。観る人を選ぶ映画だとは思うが、2時間のカオスを楽しもう。




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天使の詩

2024-01-25 | 映画(た行)


◾️「天使の詩/Incompreso」(1965年・イタリア)

監督=ルイジ・コメンチーニ
主演=アンソニー・クエイル ステファーノ・コングランデ シモーネ・ジャンノッツィ ジョン・シャープ

家族でテレビを見るのは楽しいけれど、それが映画だったらきっと思い出になる。

これはわが妹の弁なのだが、いい文句なのでちょくちょく使わせてもらっている。お正月に家族で映画をテレビで観たことは多々あったけれど、特に記憶に残っているのはフランコ・ゼフィレッリ監督の「チャンプ」を観たこと。妹と親父がグスグス泣いてティッシュ箱の奪い合いになったっけ。今でも家族で映画が話題になる時、親父殿を泣かす最高の映画として名前が挙がる。

さて。今回観たのは親父泣かせの父子もの。イタリア映画「天使の詩」である。

病弱な弟をもつ少年アンドレア。映画冒頭、悲痛な面持ちで外交官の父親が帰宅して、アンドレアは母を亡くしたことが示される。父は幼い弟に母が死んだことを黙っておくようにアンドレアに言う。大人のことがわかってきたけれど、まだまだ子供のお年頃。アンドレアは母を失った悲しみに暮れる一方で、自分の行動で弟の病状が悪化すると大人たちから煙たがられる。父は弟ばかりをかわいがる。そんな折にウィルおじさんが訪れる。おじさんは子供が嫌いだと言うが、アンドレアの行動から彼の孤独を感じ取っていた。

イタリア語の原題は「誤解」。子供の気持ちに真正面から向き合っていたら、アンドレアは寂しい思いをしなくてすんだのかもしれない。一人書斎で亡き妻の声が録音されたテープを聴く寂しさもわかるけれど、子供に母の死を伝えて、家族のこれからに3人で向き合うことはできなかったのかなとも思えた。アンドレアがテープに残された母の声を聴く場面、それを父が独り占めしたと言う台詞も心に残る。

負傷したアンドレアが、母の肖像画が飾られた居間に寝かせてと願った気持ち。観客だけには明示されるが、父は気づいていたのだろうか。無言のラストシーンが切ない。






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ドラゴン怒りの鉄拳

2024-01-08 | 映画(た行)

◾️「ドラゴン怒りの鉄拳/Fist Of Fury」(1972年・香港)

監督=ロー・ウェイ
主演=ブルース・リー ノラ・ミャオ ロバート・ベイカー ジェームズ・ティエン

高校時代に地上波で観たのが最初。あの頃はアクションや復讐劇だけを楽しんでいたけれど、改めて観ると時代背景や人間ドラマも興味深い。

突然亡くなった師匠の葬儀のために精武館に戻ってきた主人公チェン。虹口道場の嫌がらせに怒ったチェンは単身乗り込んで仕返しをする。しかしこれが精武館の仲間を窮地に陥れることになってしまう。師匠が毒殺されたことを知ったチェンは、身を隠しながら虹口道場に復讐を決行する。

清朝末期の中国は、租借地を認めたり、各国の勢力圏があって、まさに列強に食いものにされていた"中国分割"の時代。舞台となるのは上海の日本人租界。租界とは警察権がその国がによって掌握されている場所だけに、日本人に逆らうことが難しい。映画の中でも警察署長が精武館と日本武術の虹口道場の対立の板挟みになる様子が描かれる。そうした時代だけに、中国を支配する外国人に対する怒りはくすぶり続けていた。

そんな背景を考えると、外国人たちが一斉に銃口を向けるラストシーンに込められた悲しみは一層深くなる。怒りと絶望が無言で表現された、もはや伝説的な名場面。ブルースの死後製作された「死亡遊戯」でも引用されているだけに、そのインパクトがいかに大きなものだったか。

多くのカンフースターの中でも、ブルース・リーのアクションはやはり別格。華麗なヌンチャクさばきは何度観ても惚れ惚れする。ロー・ウェイ監督による続編、多くのリメイクも製作された時代を超えてその凄さが語り継がれる作品。クライマックスの日本庭園での死闘は、「キル・ビルvol.1」のラストに影響与えてるのかも。

袴の履き方が前後逆だったり、ソーラン節でお座敷ストリップ…とおかしな日本描写が出てくる。日本文化に対する理解が進んでいない時代の作品。




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007/美しき獲物たち

2023-12-13 | 映画(た行)


◼️「007/美しき獲物たち/A View To A Kill」(1985年・イギリス)

監督=ジョン・グレン
主演=ロジャー・ムーア クリストファー・ウォーケン タニア・ロバーツ グレイス・ジョーンズ

リアルタイム世代としてはいろいろ思い入れのある映画。個人的な好みとして喜ばしいポイントがいくつもあった。まずは悪役がクリストファー・ウォーケンであること😆。「ディア・ハンター」に感激した者としても嬉しかった。また、オスカー受賞歴がある華のある俳優の出演は、渋いキャスティングが多かったこれまでとは違う。一方でグレイス・ジョーンズをキャスティングしたのは、時代を焼き付ける上でも重要な要素。

そして主題歌がデュランデュラン!😆😆。実力派が並ぶ歴代歌手は素晴らしいが、やっぱり英国産が欲しい。そこに純英国産、流行りのニューロマンティック路線。ボンド映画ぽさと当時の電子音が融合する大好きな主題歌だ。ベースのジョン・テイラーが映画好きだったから実現したと聞くとますます嬉しい。そもそもバンド名は「バーバレラ」由来、ヒッチコック映画由来の楽曲もあるくらいだし。

しかしながら。正直なところ、作品自体は歴代ボンド映画の中でもあまり好みではない。理由はいろいろある。ベッドシーン以外はスタントマンと揶揄されたロジャー・ムーアは相変わらずだったし、タニヤ・ロバーツは「ポパイ」のオリーブ級に悲鳴あげてるだけの存在にしか見えなくて。それでもエッフェル塔での立ち回りも、サンフランシスコの派手なカーチェイスも、ラストのゴールデンゲートブリッジの格闘場面も、娯楽映画としては一級品。今回改めて観ても手に汗握る。え?今は更年期だから?るせー💢

どちらかというとハード路線の007が好き。冒頭のビーチボーイズが流れるアクション場面は楽しいけれど、そこで笑いは欲しくない。でも、この冒頭の軽いツカミがロジャー時代らしさでもある。プレタイトルの場面はストーリーの導入に使われることが多いけれど、本筋が始まる前に派手に見せつけるこの演出は、後の多くのエンターテイメント作品や、現在の「ミッション:インポッシブル」にも受け継がれているとも言えはしないか。ロジャー=ボンド時代は、後の娯楽映画のフォーマットを形造る役割を果たしていたのかもしれない。

公開当時、ロジャー・ムーアはもうボンド役者としては年齢が高すぎる、若いおねいちゃんたちがなびく役は観客が納得できない、めいた意見もあった。あの頃は僕もそう思っていた一人でもある。

しかしだ。撮影当時のロジャー・ムーアの年齢を知って考えを改めた。だってもうすぐその年齢に自分がなっちゃうんだもの!😨。ハードなアクションに挑むトム・クルーズは活動写真屋(古い言い方ですみません)として尊敬するが、いやいや、本作のロジャー・ムーアだって(背景が合成だと分かっていても)できる限りのことをやっているじゃない!少なくとも、ボンド役者が観客の夢を壊さないように頑張ってるじゃない!そう思うと「美しき獲物たち」がちょっと愛しくなってきたのでしたw。

最後にひと言。脇役にドルフ・ラングレン発見!(嬉)




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