Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

2月のBGM

2014-02-28 | 音楽
2014年2月に聴いていた愛すべき音楽たち。

■Vulture Culture & Stereotomy/The Alan Parsons Project
Vulture Culture Stereotomy
アラン・パーソンズ・プロジェクトが80年代にリリースした捨て曲なしの名盤「Vulture Culture」。ジャケットのデザインが好きだった。輸入盤のレアトラック付きで再リリース盤。収録曲ではDays Are Numbers (The Traveler)が好き。ロールシャッハテストの絵柄が印象的な「Stereotomy」はハードな楽曲が多いが、バラードの名曲Limelightは代表曲のひとつ。APPのインストロメンタル曲はテレビ番組のBGMなどでもよく使われるが、Where's The Walrus?は、地下鉄サリン事件の後、ワイドショーでやたら使われていたのを思い出す。

■Echoes : The Best Of Pink Floyd/Pink Floyd
エコーズ~啓示 ザ・ベスト・オブ・ピンク・フロイド
今期のフィギュアスケートは羽生クンのゲイリー・ムーアを始め、使用曲がなにかと話題だった。アシュレイ・ワグナーが取りあげたのがなんとプログレッシヴ・ロック、Shine On You Crazy Diamond。こういう場面で使われると、プログレ(ちょっと)好きは心が躍る。
2枚組のベストアルバムは新旧取り混ぜたセレクトだが、アルバムの収録順のイメージが強い人には向かないかもしれない。古くからのファンが嫌うギルモア主導の「鬱」「対」の楽曲も僕はけっこう好き。

■Greatest Hits/Shakatak
シャカタク・グレイテスト・ヒッツ
通勤BGMとして今月はよく聴いたー。誰だよ、80年代のバブル臭がするとかいうのは。それにしてもカッコいい。演奏したいー!高校3年の時に、ブラバン40数名をバックにNightbirdsをキーボードで弾いたことがある。あれはほんっとに快感だった。あれがなかったら大学時代にキーボード弾きになんぞならなかったかも。Invitation弾きたい!

Shakatak - Invitation Live HD


■Lady Miss Warp/野宮真貴
Lady Miss Warp
ピチカート・ファイヴから脱退後、最初にリリースした野宮真貴ソロアルバム。楽曲を提供したのは、マッキー、スピッツの草野正宗、トライセラトップスほか。加藤和彦の「気分を出してもう一度」(CKB共演)やサディスティックミカバンドの「塀までひとっとび」カヴァーもあり。まさにヴァラエティという名にふさわしい。

■ヒャダインのカカカタ☆カタオモイ/ヒャダイン
ヒャダインのカカカタ☆カタオモイ-C
うちのレイア姫、ついに念願のiPod nanoを手にした。彼女の脳天気な細胞は、商品名と大好きなアニメ「日常」のキャラ"東雲なの"の記憶を連結させてしまった。OPテーマだったヒャダインの「カカカタ☆カタオモイ」を入れてくれーと言ってきたよ。しゃーねー、iTunesでダウンロードするか。けっこう好きです、この曲♪

【PV】 ヒャダインのカカカタ☆カタオモイ-C 【ヒャダイン】

PVの麻生夏子さん、きゃわいい。

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ラッシュ プライドと友情

2014-02-23 | 映画(ら行)

■「ラッシュ プライドと友情/Rush」(2013年・アメリカ)

●2013年英国アカデミー賞 編集賞

監督=ロン・ハワード
主演=クリス・ヘムズワース ダニエル・ブリュール オリヴィア・ワイルド アレクサンドラ・マリア・ララ

 1970年代後半。少年だった僕らはスーパーカーに夢中だった。テレビで特集番組があれば欠かさず見て、エンジン音が収録されたレコードを友だちの家で聴き、近所で外国車のショーがあれば親に連れて行けとせがみ、池沢さとしの「サーキットの狼」に夢中になり、学校の図書館でモーターカースポーツの本を繰り返し借りた。大分オスカーで上映されたドキュメンタリー映画「ポール・ポジション」(78)は、確か友だちと一緒に観て大興奮したっけ。

 77~78年のF1グランプリを記録したイタリア映画。ジェームズ・ハント、ニキ・ラウダ、マリオ・アンドレッティにカルロス・ロイテマンら名ドライバーたち。フェラーリやマクラーレンはもちろん、僕のお気に入りだったジョン・プレイヤー・スペシャル仕様の真っ黒なロータス、6輪タイレル。迫力あるレース場面はもちろん、76年西ドイツグランプリでのニキ・ラウダのクラッシュシーンも映し出された。誰しもが生還はできないだろうと思ったラウダ、奇跡の復活劇。その執念と勇姿にニキ・ラウダは僕らの間でヒーロー視された。その後、横浜タイヤのCMでハンドルを握るラウダの姿に感激したもんだ。前置きが長くて申し訳ない。

 映画館で予告編を初めて観たときはちょっと驚いた。ニキ・ラウダの復活劇がハリウッドで感動作として映画化されてしまうのか。僕ら世代のヒーローが安っぽく描かれはしないのか?。しかも映画会社のコピーが「あなたの生涯の1本を塗り替える。」と大上段で来やがった!。正直に言う。僕は、日本題にサブタイトルがついて、かつ、コピーが大げさな映画宣伝は信じないことにしている(笑)。だから最初は観るつもりはほぼなかった。しかしだ。ジワジワと気になってきた。だって、少年時代に好きだった頃のF1の映画だぞ。「ポール・ポジション」のチラシにもあるフェラーリが走る勇姿が見られるんだぞ。結局、映画館に来てしまった。

 小中学生の頃のように「車が見たい!」という欲望に完璧に応えてくれた。ありがとう、ロン・ハワード!。トップを争う熾烈な争いはド迫力だし、撮影はさぞかし工夫と苦労をしたんだろうな、と思う。それがちゃんとハイスピードでブッ飛ばしてるんだから。小学生のときに観た実写版「サーキットの狼」(77)とは比べものにならない!(比べるなっ)。あれはサーキットでスーパーカーが徐行運転する映画だったもん!(笑)。スタート最前列にいるハントとラウダの後ろには、ちゃんとロータスもタイレルもいる。順位を示す縦長の電光掲示板もそのまま。クラッシュシーンまで再現してくれるこだわりに、男子として感激。「グッバイ、レーニン!」のダニエル・ブリュールはニキ・ラウダのしゃべり方まで徹底して研究したなりきり演技。

 しかし、人間ドラマの方はなぜだろう、どうも物足りなさを感じてしまう。ハントとラウダは確かに好対照の性格だ。しかしサブタイトルにあるような"友情"を感じさせるエピソードは、事故後のラウダの容姿を悪く言った記者をボコボコにする場面くらいしか印象に残らない。F3からF1へと活躍の舞台を移す展開は物語をさらっと流してるようにしか感じられなかった。確かにそこに時間は費やせないのだろうけど。しかし、細部においてはサーキットの舞台だけでなく、"あの頃"を再現する数々の仕掛けがうまい。ハントの妻スージーが心を移す相手がエリザベス・テイラーと別れたリチャード・バートン(初めて知りました)というエピソードもそのひとつ。ロン・ハワードは監督作「アポロ13」で、「ビートルズが解散しちゃったよ」という子供のひと言で映画で描かれる時代を納得させた。こういう細部が観客を取り込む巧さなんだよね。でも全般的にはどうも引き込まれず。

 ともあれ、レースの映画は難しい。ヘルメットに包まれた顔では銀幕スタアは見栄えしないから、それ以外の部分でやたらええかっこしいになる(例えば「デイズ・オブ・サンダー」)。派手な見せ物としてレースを描くとロックをBGMとして過剰に流してしまう(例えば「ドリブン」)。人間ドラマを重視するとちょっと地味になる(例えば「栄光のル・マン」)。そういう意味では「ラッシュ」は、職人監督ロン・ハワードによってそれなりに手堅くまとめられてるようにも思えるのだが。 




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もうひとりのシェイクスピア

2014-02-22 | 映画(ま行)

■「もうひとりのシェイクスピア/Anonymous」(2011年・イギリス=ドイツ)

監督=ローランド・エメリッヒ
主演=リス・アイファンズ ヴァネッサ・レッドグレーブ ジョエリー・リチャードソン デヴィッド・シュリース

 歴史上シェイクスピアとされる人物は本当に戯曲を書いた人物ではない、という説がある。よく目にする肖像画に描かれたストラトフォード出身の男が本物だとする”ストラトフォード派”と、別人が作者である、またはグループで書かれたとするのが”反ストラトフォード派”の対立である。実際商人の子供だったストラトフォードの男は、一連の作品に登場するイタリアの都市を訪れた記録もなく、その生涯であれだけのボキャブラリーを駆使できた人とは到底思えない。それに直筆とされる原稿は遺されておらず、あれだけの文豪でありながら遺言に作品のことは触れられていないというのだ。”反ストラトフォード派”の説の中でも有力とされるのが、映画「もうひとりのシェイクスピア」で語られるオックスフォード伯がシェイクスピアだとする説。そんな歴史と文学史を覆すようなスリリングな物語と聞いて、これは観たいと思った文系男子の僕。しかし、一抹の不安があった。それは「インディペンデンス・デイ」などド派手な映画ばかりを撮っている、あのローランド・エメリッヒが監督であるということだ。

 華麗に歴史絵巻が始まるかと思いきや、現代の劇場で男がシェイクスピアの偉大さについて語るところから始まる。そしてチューダー朝、エリザベス1世の御代に舞台は変わる。当時人気だった舞台劇は、単に物語を観るだけでなく、世間への風刺や批判など意見表明の場でもあった。その舞台を観ていた貴族オックスフォード伯舞台の脚本家ベンを招き、自分が書いた芝居を上演するように依頼する。決して伯爵が書いたと真実を明かしてはならない。上演された芝居「ヘンリー5世」は市民に絶賛され、喝采の中、役者の一人ウィリアム・シェイクスピアが「自分が脚本家だ」と舞台に現れた。オックスフォード伯の妻は宰相ウィリアム・セシルの娘だったこともあり、身分を明かす訳にはいかなかったのだ。オックスオフォード伯はかつてエリザベス女王と愛し合った仲であったが、セシルの手によって引き裂かれた過去をもっていた。しかしその理由は、単に娘の夫というだけではないもっと深い、因縁めいたものがあったのだ。ヴァージンクィーンであるエリザベス1世には世継ぎがいない。息子の代になった宰相ロバート・セシルは、女王が最も嫌うスコットランド、スチュワート朝のジェームズをイングランド王に就けようと画策。チューダー朝の血筋を尊重すべきと主張する一派と対立していた。市民の力でこれを阻止したいと考えたオックスフォード伯は舞台に「リチャード3世」をかける。舞台で演じられる暴君は宰相セシルのイメージそのもので、市民は政治への不満からヒートアップしていく。暴徒と化した市民や反宰相派は宮殿へ向けて蜂起するが・・・。

 元世界史の授業担当だった僕は、チューダー朝の授業が大好きだった。ヘンリー8世を中心としたドロドロとした人間関係や、周辺諸国とのドラマティックなせめぎ合いを話ながら、次の単元に行きたくないと内心思っていたもん(汗)。この映画が楽しくないはずがない。文学と女王への熱い思いを抱えたオックスフォード伯エドワードが、次々と明らかになる登場人物の関係に翻弄されながらも意志を貫く姿がとても心に残る。インクに汚れた指先が、彼の文学への熱い気持ちをわかりやすく示してくれる。心配していたエメリッヒの演出だが、やっぱり観客をノセるのが上手いんだろう、まったく飽きさせることはなく銀幕の前の僕らを歴史の目撃者にさせてくれる。そして作品の原稿を脚本家ベンが追っ手から必死に守るクライマックスも見どころのひとつ。ひとつの説だし、映画の物語は史実通りではないのだろうけれど、こうした人々がいたからこそ、シェイクスピア作品は読み継がれている。若き日のエリザベスを演じたのは、ヴァネッサ・レッドグレーヴの実の娘ジョエリー・リチャードソン。

 2013年の最後に映画館で観たのだが、素敵な映画館納めでありました。

映画『もうひとりのシェイクスピア』予告編


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ポストマン・ブルース

2014-02-17 | 映画(は行)

■「ポストマン・ブルース」(1997年・日本)

監督=サブ
主演=堤真一 堀部圭亮 遠山景織子 大杉漣

 最初やくざがつめた指が転がったり、重苦しい雰囲気の中で主人公が現金書留の封を切って金を使ったりと笑うに笑えない雰囲気で、これって何を狙っているの?と少しうざったく思っていたのだが、大杉漣扮する殺し屋ジョーが登場してから事態は一変。俄然映画は面白くなってきた。殺し屋選手権の場面(リオンさん、”ウィ”には大笑い)や”殺しは音楽。リズムが大事”といった台詞にグイグイ引き込まれてしまった。

 この映画の登場人物は脇役まで含めて一途な人たちばかりだ。主人公は自分がとんでもない状況に追い込まれていると知る間のないまま、クライマックスに突入するのだが、それに疑問さえ抱かずに銃撃された後も小夜子のいる病院に向かおうとする。彼を麻薬の運び屋と勘違いする刑事たちも職務に忠実なだけなんだろうし、ヤクザの友人も、殺し屋ジョーも魚屋のおっさんもみんなそうだ。特に殺し屋ジョーは男の哀愁が感じられて実に印象的なキャラクターだ。子供の頃殺し屋ごっこで一番ヘタだったとか、その水鉄砲を持って涙にくれるとか、人物の造形がよくできている。このキャラを主役に据えて一本撮って欲しいな(それって「レオン」のノリだ・笑)。

 現代人は自分のことで精一杯。それが故に周囲が見えなくなる。小夜子の手紙もそんな社会の中で消えていくはずのものだった。ところがちょっとした出来事で一途な人々の線が交わり始め、とんでもない事態になりはしたが、そこには確かに心の交流があった。人間ってやっぱり面白い。

 この映画はよくできたエンターテイメントだ。巻き込まれ型サスペンスでもあるけれど、主人公が全くそれを認知していないというのが面白い。それに警察のアタフタする様は、「遊びの時間は終わらない」を思い出させる楽しさ。小夜子と主人公を軸にしたラブストーリーも少ない台詞の中でよく描かれている。小夜子はガンに冒されており、もうこの先長くはない。二人のデート場面で、殺し屋に扮した主人公が「お前の中の殺し屋を殺してやる」と言って玩具のピストルを撃つ。小夜子は「殺して!」と叫んで天を仰ぐ。その「殺して!」は生きていても仕方ない自分に対してでもある。主人公はそんな彼女を抱きしめ「明日迎えに行く」と言う・・・。いい場面だ。いや~、泣かされたよ。ホント。

(2002年筆)




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風が吹くとき - 80's Movie Hits ! -

2014-02-16 | 80's Movie Hits !

- 80's Movie Hits! - 目次はこちら

■When The Wind Blows/David Bowie
from「風が吹くとき/When The Wind Blows」(1986年・イギリス)

監督=ジミー・T・ムラカミ

 「スノーマン」で知られるレイモンド・ブリッグスの反戦絵本を、「宇宙の七人」のジミー・T・ムラカミがアニメ化した反戦映画の秀作。「お上が助けてくれるさ・・・」と政府のマニュアルに従って作った簡易核シェルターの中で死を迎える老夫婦。次第に衰えていく様が痛々しく、核の恐怖がひしひしと伝わってくる。二人の無知を愚かだと感ずる方もあるだろうが、本当に愚かなのはこうした核戦争を引き起こしてしまう政治やイデオロギーの対立なのだ。監督は長崎の原爆で親族を亡くしている。それ故か、爆風が村を襲う場面の書き込まれた映像は、ミニチュアセットを使った実写映画よりはるかに説得力がある。日本公開時は、大きな劇場では上映されず各地のホールを巡回する方法がとられた。僕は当時熊本市在住の大学生。産業文化会館のホールで短期間上映された。

 主題歌を歌ったのはデビッド・ボウイ。日本語版の監督を担当した大島渚は、ボウイとの友情からこの仕事を引き受けたと語っている。イントロのギターが実に印象的。ボウイが関わったのは主題歌のみだが、強烈な印象を残すヘヴィーなナンバーである。音楽はピンク・フロイドのロジャー・ウォーターズが担当。ソロ作「ラジオK.A.O.S」に参加したミュージシャンが参加している。サントラには、スクイーズ、ジェネシス、ポール・ハードキャッスルも楽曲を提供している。When The Wind Blows は、ボウイのアルバムには未収録。ベスト盤や、95年に再発売されたアルバム「ネバー・レット・ミー・ダウン」にボーナストラックとして収録されている。

When The Wind Blows (Extended Mix)

 
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鑑定士と顔のない依頼人

2014-02-15 | 映画(か行)

■「鑑定士と顔のない依頼人/La Migliore Offerta (The Best Offer)」(2013年・イタリア)

●2013年ヨーロッパ映画賞 音楽賞

監督=ジュゼッペ・トルナトーレ
主演=ジェフリー・ラッシュ シルヴィア・フークス ジム・スタージェス ドナルド・サザーランド

 ジュゼッペ・トルナトーレ監督の映画が好きだ、と書くのは恐れ多い。それは僕が監督作の多くを観ていなくって、これが3本目だからだ。だが観た2本、「ニューシネマパラダイス」と「海の上のピアニスト」には他の映画では味わうことができないような感動があった。どちらも一度きりしか観ていないが、心に強烈に残っている場面があり、それを思い出してじーんとしてしまうことだってできる。それを純粋に好きだと言うことをお許し願いたい。世間の評判がよくって、あのトルナトーレの監督作。「鑑定士と顔のない依頼人」は僕にとってハズレ作であるはずがない。期待は裏切られなかった。美しくて、切なくて、生き方について考えさせられて、しかもミステリーじみた展開にグイグイ引き込まれた。

 主人公ヴァージルは絶大な信頼を得ているスゴ腕のオークション鑑定士。私生活はとにかく人間嫌い。交友範囲は画家のビリーや修理屋ロバートなど限られた人だけだ。常に手袋を着用し、食事も気に入ったレストランでとり、自分専用の食器を用意させる潔癖さ。そして、オークションにかかる絵画の中から特に気に入った女性の肖像画を、ビリーを使って落札し密かにコレクションしていた。厳重にロックされた隠し部屋に収められたコレクションの美女達に囲まれて、ヴァージルは一人の時間を過ごす。そんな彼の元に親が遺したコレクションやアンティーク家具の鑑定を依頼する電話が入る。依頼人の若い女性クレアは、まったく彼の前に姿を見せない。クレアの振る舞いや言動に、仕事や生活のペースを乱される彼は再三腹を立てる。だが他者と関わらずに孤独に生きているクレアに、ヴァージルは次第に心を許すようになっていく。一方、クレアの屋敷から機械仕掛けのアンティークの部品とおぼしきものを見つけたヴァージルは、その名品を再現したいと思うようになる。謎の多い依頼人クレアへの興味や個人的なヴァージルの思いは、次第に恋心のように募っていく・・・。

 「虜(とりこ)になる」ってこういうことなんだろう。年とってから女性を知ると狂うとよく言うけれど、ヴァージルがたどる運命はまさにそれ。「自分を偽っている人は嫌い」というクレアのひと言で、若く見せるために髪を染めていたのをきっぱりと止めてしまう場面。自分の考えだけを貫いて、周囲もそんな自分に合わせてくれる人生だったヴァージルにとって、このひと言は彼が社会に対して作っていた壁を崩し始めた。突然彼女が姿を消す場面、ヴァージルが狼狽(うろた)える様子はまさに「虜」になったものの醜態。映画の結末を知った上で物語を反芻すると、屋敷の鍵を渡されたとき既に彼は虜になる運命だったとも思える。クレアの愛を手にしたと思ったヴァージルに起こる悲劇的な結末。ヴァージル・コレクションの女性像たちは、彼が虜にしたものでもあり、彼が虜になったものでもある。

 ヴァージルが堕ちていった虚構に塗り固められたストーリーの中で、彼が最後まで信じたのは「どんなことがあっても愛している」というクレアの言葉と、彼女が語ったプラハの思い出。歯車に囲まれた装飾があるプラハの店で、ヴァージルが一人誰かを待つような切なくて、空虚なラストシーン。それは企てられた物語の歯車に彼が巻き込まれたことを示すものでもあり、孤独に生きている彼と社会との関係を示すものでもある。とにかく随所に思わせぶりな場面やエピソードが散りばめられていて、それらは後への伏線となっている。ミステリー仕立ての映画だけに、いろんな方々の評では「先が読めた」という言葉をよく見かける。先が読めた自分がすごくって、そんなミステリー慣れした自分を騙せない映画は今ひとつだ、と読める評もやたら目につく。でもね、それは間違っている。「ユージュアル・サスペクツ」みたいに、観客を騙す目的のエンターテイメントとは違うのだ。「鑑定士と顔のない依頼人」は愛の映画。しかも偏った愛情の果てを描いた映画だと思うのだ。でも、誰もヴァージルを笑えない。彼が集めた女性画は、誰もがハマる何かの象徴。例えば、パソコンの中に隠しフォルダ作って、女の子の画像を貯めてるヤツと何の変わりもないじゃない。誰かに夢中になることで、それまでの自分が考えられない行動をとったり、乱れたりすること。この映画のヴァージルの姿は、客席でこの物語を見守る僕らも心のどこかでもっている闇の部分なのだから。



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映画授業顛末記2009

2014-02-11 | 映画・ビデオ
 2009年まで私が働いていた専門学校で、資格試験などに挑む卒業までの後期授業期間中、選択科目でやっていた試み。この授業の趣旨は「ヴァーチャル社会見学」。とかく自分が好むもの以外には目を向けない今ドキの学生たちに、映画を通じて視野を広げてもらおうというものです。方法は、映画を観てレポートを書くだけ。もちろん、観る前に解説はします。内容の簡単な紹介、扱われているテーマ、どういうところを観て欲しいか、エトセトラ。対象となるのは、18歳から22歳位の男女学生。

 作品を選ぶにあたっては、テーマ、舞台となる国、製作国に徹底的にこだわっております。また、自主規制として、暴力的でないこと、裸が出ないこと、異なる国の映画を選ぶこと、現代ハリウッドのエンターテイメント作品は選ばないなどを設けました(一部禁を破ったりはしましたが)。この課題レポートを書く作業は、自分が観た映像とそこから感じたことを文章に構成する作業。読書感想文と違って引用するものがないだけに、日頃使わない頭を使うようです。 映画を観た後で自分の考えをまとめてみるという作業は、彼らには初めての経験。実はいい訓練になるのかも。

以下は2009年に実施した授業の顛末。彼らのハートには何が残ったのでしょう。


■第1講・銃社会について考える・・・の巻/「ボウリング・フォー・コロンバイン」(2002年・カナダ)

監督=マイケル・ムーア
出演=マイケル・ムーア マリリン・マンソン チャールトン・ヘストン

【解説】いきなりドキュメンタリー映画からスタート!。初回は、何よりもハリウッドエンターテイメントに毒された彼らの映画のイメージを覆すことが必要。銃社会アメリカの暗く厳しい現実をこれでもかと見せつけながら、映画としての面白さ、見せ方の面白さでまったく飽きさせない。学生たちもスゲえ・・・と圧倒された様子。観ることを放棄して寝ちゃったのはほとんどいなかったかも。「マリリン・マンソンが一番まともなことを言ってたのに感動した」と口にした男子学生は、Rock Is Deadを口ずさんでおりました。名曲What A Wonderful Worldの皮肉な使い方が実に見事。わかってくれたかなぁ。

【学生の感想】
●人間、誰もが強い心と弱い心を持っている。心が折れた時、弱い心が人間を支配する。その時手元に銃があれば、犯罪という考えに陥るのはおかしいがわからなくもない。だからこそ規制があるのだ。一方で、映画の中でも核は規制があるから使えないと言っていた。規制があるから使えないという考えになること自体がおかしいと思った。使っちゃいけないものなのだから。
●友人に聞いたのですが、コロンバイン高校での銃乱射事件のことで、日本では「銃社会をなくせばいい」という意見が一般的だったそうです。それに対し、アメリカでは「あの時別の人が銃を持っていれば犯人を殺せたのに」という考え方をするそうです。私は理解に苦しみました。

●敵っていうのは結局自分なんだと私は思います。他人は自分の鏡っていうように、目に映る敵や恐怖は自分自身だとなぜ気づかないのでしょう。自衛のために銃を持っていてそれを使う。その理屈はわかるけど、自分の身を守るために誰かを殺してよいというのはおかしいと私は思います。Kマートで銃や弾を売らなくなったように、お互い譲歩することが大切なのに。


■第2講・イスラム世界の映画を観る・・・の巻/「運動靴と赤い金魚」(1997年・イラン)

監督=マジッド・マジディ 
主演=ミル・ファロク・ハシェミアン バハレ・セッデキ

【解説】これまでの映画授業でも登場したイラン映画の秀作。 特に男子学生からの人気が高いんですよね、これ。失敗を親に隠して一生懸命になんとかしようと思った経験が、彼らにはきっとある。だから共感するのでしょう。国が違っても兄妹愛は変わらない。貧富の差がこんなにあるのか、と驚いたという感想も多く見られました。イスラム世界の現実を知る上でも、興味深い映画だったようです。

【学生の感想】
●妹の靴をなくしてしまったアリの絶望感や深い後悔の思いがひしひしと伝わってきました。ザーラは自分の靴をなくしたのに、謝りもしない兄の言うことを聞き、母親にも父親にも靴のことを言おうとしませんでした。その時のザーラの気持ちや、また妹に迷惑をかけているアリの気持ちを思うと、深く感動させられました。

●映画を観て、兄弟が欲しくなりました。最後のシーンで、靴はボロボロで足には痛々しいまめができていました。そこに赤い金魚が集まって、まるでアリの頑張った足に「お疲れ様」と言っているようでした。これまで観た映画とは違う雰囲気が気に入りました。もう一度観たいと思える映画です。

●イランという国の経済事情を考えたら、映画の質はきっと他の国より劣るだろうと思っていた自分が恥ずかしいです。裕福な人々、貧しい人々、貧しくても前向きに生活している家族愛や兄妹愛に感動しました。CGなどの技術を使って映画をつくるのがすごいことではなく、何を相手に伝えることができるかが、すごい映画だということをを改めて思いました。


■第3講・歴史映画を観る・・・の巻/「ラスト・エンペラー」(1987年・イタリア=イギリス=中国)

監督=ベルナルド・ベルトリッチ 
主演=ジョン・ローン ピーター・オトゥール 坂本龍一

【解説】僕は世界史の授業も担当しておりまして、授業でもいろいろな歴史映画をエピソードとして紹介したのです。映画授業を選択した学生たちから、歴史ものが観たい!とやたらリクエストがありました。じゃぁ・・・2時間半の超大作で、彼らが苦手な清朝末期から現代中国までをみてもらおう!と選びました。学生たちはベルトリッチ監督のことも、ジョン・ローンが当時いかに人気があったかも知りません。教室の固い椅子で2時間半は辛かったでしょうね・・・ゴメンゴメン。でも歴史ものって長尺なのが当たり前だもん。裸がでない・・・を条件にしていたけれど、シーツ越しにいちゃいちゃしてる場面が登場します。ちょいと禁を破ってしまいました。音楽と芸術的なオープニングは、何度みてもいいですね。

【学生の感想】
●すごい映画だと思ったと同時に、とても切なく悲しい映画だなとも思いました。時代に飲み込まれて生きていかなくてはいけなかったのはたいへん辛いことだと思います。私には、この映画に出てくる人は誰一人として幸せではないように思えました。ものすごいスピードで社会や価値観が変化していくことに驚きました。

●中国史の勉強で出てきた紫禁城や宦官が出てきたのは嬉しく思いました。宦官が皇帝に絶対服従でたいへんな仕事なんだと思いました。溥儀が溥傑に皇帝であることを証明するために、宦官にインクを飲ませる場面には驚きました。

●溥儀の人生を映画を通じて学んで、勉強になりました。私は誰からも拘束されずに、自分のやりたいことを見つけ、それに向かって頑張っていくような人生を送っていきたいと思うようになりました。


■第4講・ぼくらのしあわせとかれらのしあわせ・・・の巻/「コイサンマン(ミラクルワールド ブッシュマン)」(1981年・南アフリカ)

監督=ジャミー・ユイス 
主演=ニカウ サンドラ・プリンスロー

【解説】アフリカ代表として僕ら世代は知らぬ者のない大ヒットコメディを。カラハリ砂漠に住むコイサン族。自然と共存し、所有するという観念のない生活。ある日セスナ機から落された1本のコーラ瓶。これが彼らの平和な生活を乱すことに・・・。ニカウさんの笑顔と素朴なストーリーが心に残るはず。なお「ブッシュマン」は俗称で差別的な意味を持つことから、続編公開時にタイトルは「コイサンマン」と改められた。

【学生の感想】
●私たちは便利な生活をしていますが、便利すぎて過剰な所有欲をもったり、物を大切にする心を忘れていることがよくわかりました。コメディで笑えるところもたくさんありましたが、笑いの中にも考えさせられることが多い映画だったと思います。ものを大切にしようと思うようになりました。

●この映画を観て何よりも驚いたのが、ステップ気候(と思われる)の尋常ではない乾燥具合です。地面に葉を並べてわずかな朝露を溜めたり、植物や果実の水分をしぼって飲んだり、たくましく生きている姿に圧倒されました。

●私が送る生活の中での「しあわせ」って、いったい何だろうなと考えさせられました。いろいろな価値観に触れて見つけていくのもよいことだなぁと感じました。


■第5講・戦争と平和について考える・・・の巻/「さよなら子供たち」(1987年・フランス)

監督=ルイ・マル 
主演=ガスパール・マネス ラファエル・フェジト フランシーヌ・ラセット

【解説】平和について考える・・・これはこのシリーズを通じて繰り返しやって来ました。戦場そのものを描いたもの、戦争に巻き込まれた悲喜劇を描いたもの、東西冷戦・・・。学生たちはそれぞれ真剣に考えてくれた気がします。今回の「さよなら子供たち」はホロコーストの悲劇を間接的に描いたもの。日常に戦争がいかに悲しい影響をもたらすのか、それを考えて欲しいという気持ちでセレクトしました。

【学生の感想】
●20年以上前の映画だったけど、全然古さを感じなかったです。淡々と物語が進んでいくのに、なぜか心はずっとハラハラしていて、ドキドキしながら観ていました。多感な少年のぴりぴりした感じや、心がずっとモヤモヤしている感じがとてもリアルに伝わってきて、とてもよかったです。二人が離れる時の顔がずっと忘れられません。まだ話したいこと、したいことがたくさんあるよ・・・というようなあの顔。どっかの誰かの勝手で子供たちにああいう表情をさせてはいけないんです。ジュリアンの最後の涙が本当に綺麗で、私も涙が止まりませんでした。

●ユダヤ人虐殺シーンを使われていないのに、戦争の悲惨さが心に伝わってくる映画でした。最後の別れのシーンが悲しかったです。何もできない無力さが伝わってきました。

●いつ捕まって殺されるか、毎日おびえながら生きていくのは辛いだろうと感じました。この映画のおかげで改めて戦争をしてはいけないということを考えさせられました。


■第6講・高齢化社会について考える・・・の巻/「老親」(2000年・日本)

監督=槙坪夛鶴子 
主演=萬田久子 草笛光子 小林桂樹

【解説】人はいくつになっても成長できる。高齢者介護の現実を描く前半は、けっこう厳しい現実が描かれる。一方で義父と心を通わせる後半 はとてもすがすがしい印象すら受ける。正直、もっと重たい話だと思っていたが、これは家族の成長物語としてとても元気をくれる映画だ。 現実を考えつつ、前向きな人生について考えさせてくれる。今回選んだ9本のうち、学生の人気投票では堂々の2位。 女子学生は見終わって口々にこう言った。「やっぱり長男の嫁は嫌よね!」「でも彼氏長男なんよ」・・・。ちなみに、僕の高校時代の同窓生が脚本を書いてます。

【学生の感想】
●老いは誰にでも訪れますが、どんなときでも人は周りに支えられて生きているのだと思います。特に年をとると周りの人に手を借りなければならないこともありますが、面倒を誰かにみてもらうのが当たり前だという考えは誤りです。面倒をみてもらう立場になっても、感謝の言葉は忘れないでいようと思いました。

●映画の前半は「何でこんなに人まかせにするんだろう」と思いながら観ていました。「嫁いだ嫁は親が四人で、旦那は二人のまま」と言っていたのが印象的でした。自分の親のことや自分の老後のことを考えさせられました。今私は祖母と同居しています。今は元気ですが、もし介護が必要になったら積極的に支えていきたいです。

●義父も主人公も成長し、お互いに認め合って楽しく生活する姿に、みていて和やかな気持ちになりました。83歳になって自分のことが自分でできるようになり、見違えるほど表情が生き生きしてきたと感じました。孫娘も立派に成長し、介護福祉士になろうと決断したことは、よい人間関係を築けたからだと思いました。男性目線でこの物語をみたらどうなるだろう・・・とも思いました。


■第7講・一冊の本が運命を変える・・・の巻/「小さな中国のお針子」(2002年・フランス)

監督=ダイ・シージエ 
主演=ジョウ・シュン リウ・イエ チェン・クン

【解説】シリーズ半ばで恋愛映画をみせるのをお約束にしているのですが、ただ愛だ恋だをみせても仕方ない。 文化大革命という時代背景、一冊の本が人生を変えること、帰り来ぬ青春・・・いろんな要素が加わってくるだけに、単なるロマコメ観るのとは大違い。フランス資本の中国映画というのもちょっと異質ですよね。自分たちと同じ年頃の若者が、当時の中国ではどういう生き方をしていたのか、それを知る上でも興味深い。糞尿を運ぶ場面が痛々しいですが、最後まであれが泥だと信じていた学生もいました・・・。美しい山間部の風景とバイオリンの音色が心に残る映画です。

【学生の感想】
●たった一冊の本が一人の人間の生き方を変える。その力強さに感動しました。本や映画が世界を大きく変えることはないけれど、一人の世界を変える。実はそれって何よりもすごいことなんじゃないかと思います。村が沈んでいくシーンはとても切なかったです。もう絶対に戻らない青春。青春って酸っぱいけれどずっとずっと残り続ける。遠くなればなるほど輝きが増すものかな、とこの映画を観て思いました。これからも私は、私を変えてくれるような本や映画に出会いたい。またそれらに反応できる心をずっともっていたいです。

●一冊の本との出会いによって、運命を大きく変えていくお針子の姿がいちばん印象に残りました。私も幼児期から本をいろいろ読む中で、自分では経験できないような事を学んできました。本で知った世界で感動を覚え、自分自身変えたと言ったお針子の気持ちがわかるような気がします。


■第8講・人間の残酷さについて考える・・・の巻/「エレファント・マン」(1980年・イギリス=アメリカ)

監督=デヴィッド・リンチ 
主演=ジョン・ハート アンソニー・ホプキンス アン・バンクロフト

【解説】もうすぐ社会人となる彼らは、これまでの学生生活で「いじめ」が何かと騒がれた世代です。社会人になる前に人と人との関わり方について、ちょっと考えてもらっては・・・と思い選びました。見せ物にされた奇形の男に関わる人々の言動を通じて、自分自身もこれまでに誰かを傷つけたことがなかっただろうか?と、学生たちに問いかけた上で観てもらいました。日頃やんちゃな男子学生も、半ば反省文的なレポートを提出してきました。デビッド・リンチ監督の悪趣味なところを今の僕らは知っていますが、この映画はそこを抜きに観ることができる感動作。

【学生の感想】
●ここまで考えさせられる映画を、今まで観たことがありませんでした。障害をもっているだけで見せ物にされている姿をみて、僕は「いじめ」を連想しました。中学時代にいじめられている人がいて、僕は見て見ぬふりをしてしまいました。今日この映画を観て、昔の自分もひどいことをしていたんだと気づきました。誰だって人から嫌われることを望んでいる訳ではない。そのことを忘れず、よい事と悪い事をきちんと考えていこうと思いました。そして自分の意思で接していきたいと思いました。

●とても悲しく切なくなりました。またそれと同時に怖いとも感じました。ジョンという人間を物のように扱って、人としてみない。そういう周りの人間に恐怖を感じました。私も誰かを好奇の目で見てしまったり、周りと同調したことがあったかもしれません。それって凄く残酷。何よりも酷いことだと気づきました。そういう時って、自分とは違うのだと排除して見ていた気がします。


■第9講・夢は叶えるもの そしてそれを支えてくれる人々・・・の巻/「リトル・ダンサー」(2000年・イギリス)

監督=スティーブン・ダルドリー 主演=ジェイミー・ベル ジュリー・ウォルターズ ゲイリー・ルイス

【解説】最終回は夢と希望を与えてくれる秀作を!。これはさすがに観たことがある学生もいました。「この映画好きです」「最後がこれでよかった」「何度みてもあの場面で泣くんです」。 僕もこの映画には思い入れがあるもんで、映画館の帰り道にサントラ買っただの、いろんな話をしてしまいました。
今回の人気投票では当然の第1位。これをみせたかった僕の真意は、周りへの「感謝」なのね。彼らは専門学校というところで、自分の目標に向かって頑張ってきた。成し遂げた者もいればそうでない者もいる。でもここまでの自分を支えてくれたのは、この映画のスト破りをしたお父さんみたいな両親だったり、バレエの先生みたいな恩師だったり。そこを振り返って欲しかったのでした。英国不良ロック満載の映画だったから隣のクラスにはご迷惑をかけました。ご容赦を!(笑)。

【学生の感想】
●ビリーがバレエをやっているときにはすべてを忘れることができると言っていました。私もスポーツをしているときには、そのことだけに懸命になり楽しむことができます。やはり趣味をもつこと、打ち込めることをもつことは大事だと思います。社会人になっても、何か目標を定めてそれに突き進むことができたらなと思っています。頑張ります。

●自分がこの学校に入学するときにお金を払ってくれた父と母、就職試験に不合格だったときに慰めてくれたり励ましてくれた友人の存在が、これまでの僕を支えてくれていました。夢を叶えるためにはたくさんの人の支えがありました。それをこの最後の授業で確認することができてよかったです。

●何度観ても泣いてしまいます。お父さんに自分の気持ちをダンスでぶつけて、そのことが伝わる。そのお父さんはビリーの為にスト破りをする。お父さんの心が痛いほど伝わってきて泣いてしまいます。息子の将来の為に。才能を伸ばしてやる為に。別れのバスでお兄さんが「寂しい」というシーンは涙ものです。お兄さんが気持ちを伝えるタイミングが絶妙なんです。バレエの先生の娘との恋とも呼べない掛け合いも好きです。「そんなことしなくっても君が好きだよ」という台詞が心に残ります。

●世間一般の価値観に立ち向かいながら、自分の夢に真剣に取り組む主人公の姿に感動しました。女子で野球選手を目指して頑張っている人を見て衝撃を受けたことがあります。自分も価値観にとらわれていたんだなと思いました。

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劇場版TIGER & BUNNY - the beginning -

2014-02-10 | 映画(た行)

■「劇場版TIGER AND BUNNY - the beginning -」(2012年・日本)

監督=米たにヨシトモ
主演=平田広明 森田成一 寿美菜子 楠大典

 劇場版第2作が公開された「TIGER & BUNNY」。テレビシリーズを全く見ていないし、予備知識皆無なのだが挑戦してみた。なるほど、テレビ版の第1話と第2話に新カットを追加して作られた劇場版だけに、初心者でも無理なく観ることができた。超能力をもつ"NEXT"と呼ばれる人々が現れた未来社会。その能力を世のため人のために使おうと、企業をスポンサーにしたヒーローが日々街を守るために活躍していた。テレビではヒーローたちの活躍し、犯罪者を捕らえる様子を生中継する番組が人気を博していた。熱血が売りのベテラン、ワイルドタイガーはある日スポンサーからヒーロー事業からの撤退を言い渡され、新たなスポンサーとなった会社から、生意気な口をきく新人バーナビーとコンビを組むことを要求される。ヒーローとして活躍する目的もやり方も異なる二人の関係はぎくしゃくしてとにかくうまくいかない。そこへ街の正義のシンボルである像を奪った連続強盗が現れ、彼らに出動要請が・・・。

 警察以外にこういうヒーローたちが犯罪に立ち向かっている未来社会。本作で見られる未来社会は華やかで繁栄した都市文化だ。だが、公安以外にこうしたヒーローたちが犯罪に立ち向かわねばならない状況というのは、ちょっと恐ろしい。それだけ犯罪が凶悪化、特に超能力を持つ者が関わるだけに普通の対処では解決できない。だが公安がそうした超能力者を抱えるだけの力がないのだろう、企業がスポンサーとなってヒーローたちの活動を支えているというのが基本設定。だから企業広告だらけのコスチュームになっているし、企業にとっては社会貢献であり宣伝だから、番組で目立つことやキメ台詞まで要求される。それがさらにエンターテイメントの役割まで負わされているなんて、なかなか風刺の効いた未来観。そのうち現実社会でも、官庁や団体がゆるキャラ事業を抱えきれなくなって、いろんなスポンサーがつき始めるようなことが起こっちゃうかもしれない、とつまらないことまで考える。それにしてもヒーローがさんざん暴れた後の再建費用って・・・いかんいかん、金銭をリアルに考えると恐ろしいね、これ。

 いわゆるバディムービーとしての面白さがこの作品の魅力なんだろうが、劇場版第1作で描かれたエピソードでは、バディものの面白さはまだまだ伝わらない。本作はあくまでイントロダクションにすぎない。それから”雇われの身”だからこそ、ワイルドタイガーが会社に要求される様々な事項や亡き妻への思いは、このアニメのメインターゲットである若者よりもオジサン世代こそグッとくる部分かも。

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サブウェイ・パニック

2014-02-09 | 映画(さ行)

■「サブウェイ・パニック/The Taking Of Pelham 1 2 3」(1974年・アメリカ)

監督=ジョセフ・サージャント
主演=ウォルター・マッソー ロバート・ショウ マーティン・バルサム ヘクター・エリゾンド

 小学校高学年から中学にかけて、父親が映画番組を見るのを隣でなーんとなく見ていた。「フレンチコネクション」みたいな1970年代の渋いサスペンス映画は、父の好みで繰り返し見ていた。あの頃テレビの映画番組では、チャールズ・ブロンソンやらバート・レイノルズ、スティーブ・マックイーン、「黒いシャフト」「クレオパトラ危機突破」など黒人向けアクション映画まで見る機会はいくらでもあった。「サブウェイ・パニック」もそんな中で初めて見た。鼻ひげにメガネ、同じコートに帽子を着た4人組が地下鉄を乗っ取って人質をとり、身代金を要求するサスペンス映画だ。そこだけは強烈に覚えていた。だが、地下鉄車内の犯人たちと公安局警部補ガーバーのやりとりが暗い画面の中で延々と続く印象だけが残り、決して面白い映画だとはあの頃思えなかった。子供だったしね。その頃の親父の年齢を上回った今、改めて見直してみた。

 クエンティン・タランティーノ監督作「レザボア・ドッグス」で、登場人物のギャングたちはお互いを色の名前で呼び合っていた。その元ネタとされるのがこの映画である。「サブウェイ・パニック」の4人組は、それぞれミスター・ブルー、グリーン、グレイ、ブラウン。個性を消すための犯行手口なのだが、中坊だった僕には「ロシアより愛をこめて」のかっこいいロバート・ショウはどの人?と不満だったと思われる。今観るとそれぞれの個性は際立っている。特に冷酷で何をやらかすかわからないメンバー、元々お人好しだから余計なことを言うメンバーが含まれている。それ故に警察側と犯人グループの単なる追いかけっこではない、二重三重のハラハラ、ドキドキがある。地下鉄側でも、ガーバー警部補と他の職員たちのやりとりは決して意見は一致していないし、身代金が届くまでの緊張感。面白い。

 緊張感の隙間、随所に散りばめられたユーモアがいい味付けになっている。地下鉄で眠り続けてる乗客、列車が止まるように念ずる女性、東京からやってきた怪しげなニッポン人。でも何よりもウォルター・マッソーが出演しているという雰囲気だけで、ちょっとした台詞が粋な響きになる。硬軟使い分けることができる役者だな、と改めて思う。「お大事に」のひと言と最高のラストシーン。あの眼がたまらない。この場面だけはさすがの中坊も覚えていたが、ドラマティックに思えなかったんだろうな。今観ると台詞に頼らない演技、演出のよさがわかるね。そして追い詰められたロバート・ショウの最期。変な特殊技術なんかに頼らない巧さがある。

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ヌイグルマーZ

2014-02-05 | 映画(な行)

■「ヌイグルマーZ」(2013年・日本)

監督=井口昇
主演=中川翔子 武田梨奈 市道真央 猫ひろし

 年が明けてから、いろんなままならぬ状況に鬱憤が溜まっていた。今映画館で観られる映画で、もっとも気分転換(現実逃避?)できる映画って何だろ?と考えた僕は、よりによってニッポンおバカ映画の巨匠井口昇監督、中川翔子主演「ヌイグルマーZ」をセレクトしてしまった。原作の大槻ケンヂは同い年なので密かに応援しているし、もちろんしょこたんの実力や嗜好を昔から認めている僕だ。このセレクトに間違いはない。ただ「片腕マシンガール」や「電人ザボーガー」など、ブッ飛んだ作風の井口監督作品は初めて観る。そこが唯一の不安要素だった。

 なんだ、これは。一般映画とはどこかテイストの違うチープな感じ、それでもいい大人たちが知恵と愛情と情熱だけで、真剣に映画作りという遊びを楽しんでる感じがひしひしと伝わってくる。猫ひろしの変な悪役、学芸会以下の脇役の女子たち、数は多いが顔にペイントだけの即席ゾンビ、しょこたんお召しのどピンクロリータファッション…その作風を最初はやや冷めてみていた僕だが、だんだんとその世界に引きずり込まれてきた。終いにはお子様に見せられないおバカなギャグ(おっぱい光線、赤ちゃんテロリストetc)に苦笑しながらも、それを気持ちよいと感じ始めた。あれ程やりすぎだと感じた庵野秀明監督の実写版「キューティーハニー」が、これと比べたらまともな映画に思えてくる。

 主人公の夢子は、何をやってもうまくいかない空想好きな女性。両親が亡くなったことから、母娘で暮らす姉の家に転がり込んだ。夢子はかつて女子ながらヒーローに憧れていたが、ロリータファッションに自分の色を見つけ出したという過去がある。一方、綿状生命体のエイリアンが母なる星の危機から逃れて、クマのぬいぐるみの中に隠れていた。夢子らが住む街を突然襲ったゾンビの群れ。姉はその襲撃で命を落とし、遺された娘を守るため、夢子はぬいぐるみ戦士ヌイグルマーとして戦うことになる・・・。

 世間と違う好みや嗜好を持つことは悪いことではない。しかしそれ故に友達ができず、周囲に溶け込めなかった主人公が目的を見いだして活躍するところがこの映画の魅力。それは原作者大槻ケンヂ、井口昇監督、それに中川翔子自身の姿でもある。得意なことで誰かの役に立つことができるならそれは素敵なことじゃないか。今までテレビ番組でネタとしか扱われなかったしょこたんのヌンチャクさばきだが、改めてその見事さに惚れ惚れ。もともと空手少女だった武田梨奈のキレのあるアクションにも好きだから貫いている心意気を感じる。そして何よりもエンドクレジットで原作者大槻ケンヂが歌う主題歌「シネマタイズ」。しょせんは虚構である映画やその製作者たちの姿を、現実を生きる自分たちと対比させた見事な歌詞に感激。誰しもいろんな"黒歴史"あってこそ、今を生きている。それが何だっていいじゃない。それが今の僕らを支えているのだから。

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