Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

オーバー・ザ・トップ -80's Movie HIts !-

2023-10-06 | 80's Movie Hits !

◾️「オーバー・ザ・トップ/Over The Top」(1987年・アメリカ)

監督=メナヘム・ゴーラン
主演=シルベスター・スタローン デヴィッド・メンデンホール ロバート・ロジア スーザン・ブレイクリー

◾️In This Country/Robin Zander
◾️Winner Takes It All/Sammy Hager with Edward Van Halen

この映画が公開された頃、僕は硬派な映画ファンをきどった生意気な輩だったから、筋肉を見せつける派手な娯楽作はとにかく敬遠していた。結果として後追いで観ることになる。スタローンが嫌いだった訳じゃない。「ロッキー」も「ランボー」も繰り返し観てるし。じゃあなぜ本作をスルーしたかって、アームレスリングの映画と聞いて完全にナメてたからだ。帰還兵の大暴れでも捕虜奪還でもなく、刑事でも脱獄のプロでもない。リングの上の殴り合いでもない。腕相撲で2時間なんて無理だと思った。それからウン十年後。やっと観る気になった。

あの頃この映画を観てたら、その年頃のイキがった感想だったと思う。だが涙腺ユルめの父親目線で今観ると、なんか許せてしまうw。あれだけいろいろと無茶やってるのにそれでいいのか、とツッコミどころは確かに満載。だけど息子と父親の距離が縮んでいく様子がとにかく微笑ましくて。トレーラーを運転させてもらった息子が、生き生きとした表情に変わる場面とか、こっちまでニコニコしてしまう。自分も幼い頃、父親の職場でフォークリフトを動かさせてもらって、小回りが効く動きが楽しくなったことがあったっけ。
「簡単だろ?」
「何が?」
「笑うことがだよ」
この映画のへ理屈少年もやっぱり男の子なんだよな。

手紙を見つけて息子が翻意する展開はかなりベタだし、それでいて最後まで妻子を捨てた理由とやらをはっきり示してはくれない。義理の父はもはやギャングの親分だし、ほんとに幸せになれるの?と疑問だらけであるのだが、クライマックスのアームレスリング大会の場面は気づくとこっちまで力がこもる。あれ、ナメてたのに。手に汗握ってるのは更年期だから?るせー💢

後にF1番組で使われたIn This Countryはやっぱりいい曲だ。歌うのは、チープトリックのボーカル、ロビン・ザンダーである。

あれ?エンドクレジットでは、
Performed by Eddie Money
と表記されてるぞ😕❓。サントラのクレジットはチープトリックのロビン・ザンダー。大人の事情でもあるのかな。

そしてサミー・ヘイガーとエディ・ヴァン・ヘイレンがデジタルビートの上で暴れまくる名曲、Winner Takes It Allはやっぱり最高。当初エイジアのジョン・ウェットンでレコーディングしたが、プロデューサーがお気に召さなかったらしく、サミー・ヘイガーにオファーがあったのだそうである。この曲で観客をアゲまくって、決勝戦へ。なんて憎い使い方👍。







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トップガン -80's Movie Hits!-(その3)

2022-06-17 | 80's Movie Hits !

■「トップガン/Topgun」(1986年・アメリカ)

監督=トニー・スコット
主演=トム・クルーズ ケリー・マクギリス バル・キルマー アンソニー・エドワーズ

- 80's Movie Hits! - 目次はこちら

■Hot Summer Night / Miami Sound Machine
from「トップガン/Topgun」(1986年・米)

歌でアプローチして、隣の席に座ることを許されたマーヴェリック。パイロットであることを話したり 、若さ故の強気の攻めでケリー・マクギリス演ずるチャーリーを口説き落とそうとする。後で彼女が教官であることを知ることになるのだが、まだこの時にはその事実を知らない。女性トイレまで執拗に迫るマーヴェリック。 あら、あら・・・そりゃダメだろう。相棒のグースに嫌味な一言を残して彼女は店を出て行った。このバックに流れていたのが、マイアミ・サウンド・マシーンの Hot Summer Night。

キューバ生まれのアメリカ人女性グロリア・エステファンをヴォーカルに据えた ラテンミュージックグループ、マイアミ・サウンド・マシーン。Conga や Rhythm is Gonna Get You(リズムでゲット・ユー) など数々のヒット曲がある。88年には彼女を全面にフィーチャーし、グロリア・エステファン&マイアミ・サウンド・マシーンと改称。グロリアは90年3月に自動車事故で脊髄に重傷を負うが、1年後に復帰。96年のアトランタオリンピック閉会式では Reach を歌い喝采を浴びた。

Miami Sound Machine - Hot Summer Nights (Top Gun - Official Audio)


※Miami Sound Machine / Gloria Estefanの曲が流れる主な映画
1986年・「トップガン」 = Hot Summer Nights
1986年・「コブラ」 = Suave
1987年・「張り込み」 = Rhythm Is Gonna Get You
1987年・「スリーメン・アンド・ベイビー」 = Bad Boy ・ Conga
1994年・「スペシャリスト」 = All Because of You ・ Jambala
1996年・「バードケージ」 = Conga
1999年・「アナライズ・ミー」 = Conga
1999年・「私が美しくなった100の秘密」 = Conga 



■Playing With The Boys / Kenny Loggins

ケリー・マクギリスに秘密の夕食デートに招かれたマーヴェリック。約束の時間まで男子たちとビーチバレーに興じる。その場面に流れるのが、ケニー・ロギンスのPlaying With The Boys。軽快なポップナンバーで、厳しい訓練から解放されて楽しむ男たちが躍動する場面を彩っている。2021年にはオーストラリアのシンガーソングライターであるバタフライ・バウチャーとの共演で再録された。

この曲のPVでは、中年男性対中年女性のバレーボールの試合が描かれ、その真ん中でケニー・ロギンスがにこやかに歌う作品。映画で示されたバレーボールの強い印象があり、後にビーチバレーを題材にしたC・トーマス・ハウエル主演の映画「ビーチバレーに賭けた夏」でも使用されている。36年後の続編「トップガン マーヴェリック」では、パイロットたちが訓練の合間に海辺でアメフトをする場面が登場。前作へのオマージュなのだろう。



※Kenny Loggins 関連の曲が流れる主な映画  →  「フットルース」 参照

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トップガン -80's Movie Hits!-(その2)

2022-06-11 | 80's Movie Hits !

■「トップガン/Topgun」(1986年・アメリカ)

監督=トニー・スコット
主演=トム・クルーズ ケリー・マクギリス バル・キルマー アンソニー・エドワーズ

- 80's Movie Hits! - 目次はこちら

■Lead Me On / Teena Marie
from「トップガン/Topgun」(1986年・米)

カリフォルニア州ミラマー空軍基地に到着した主人公マーヴェリックと相棒のグース。アイスマンと初めて口をきき、挑発される酒場のシーン。ここで店に流れているダンサブルな曲。いかにも80年代ぽいこの曲が、ティーナ・マリーが歌う Lead Me On 。イントロのブラスセクションがとっても印象的だ。作曲、プロデュースはジョルジオ・モロダー。

ティーナ・マリーは1956年、ロサンジェルス生まれ。80年代に活躍したブルーアイドソウル(白人でR&Bを歌う)の女性シンガーである。幼い頃からブラックミュージックに興味を持ち、13歳で兄とバンドを結成。1975年にソングライターとしてモータウンと契約した。キーボードやギターも演奏していたが、79年にリック・ジェームズのバックアップでデビュー。84年の Lovergirl が全米4位の大ヒットを記録した。今でもヒップホップ系アーティストから評価が高い。2000年代に入ってからは、ヒップホップ系レーベルから作品を発表している。

Teena Marie - Lead Me On (Top Gun - Official Audio)


※Teena Marie 関連の曲が流れる主な映画
1985年・「グーニーズ」 = 14K
1986年・「トップガン」 = Lead Me On
1989年・「タップ」 = Bad Boy
1991年・「サウスセントラルLA」(未公開) = Crip Hop
2002年・「メイド・イン・マンハッタン」 = Lovergirl



■You've Lost That Lovin' Feelin'(ふられた気持ち) / The Righteous Brothers
from「トップガン/Topgun」(1986年・米)

酒場の場面。アイスマンとの不快な会話の後、気を取り直してマーヴェリックとグースは女性たちに目を向ける。カウンターにいる少し年上の魅力的な女性。マーヴェリックは「あの曲でいくぞ」とマイクを手に取る。トム・クルーズが歌でナンパする名場面だ。

公開当時この場面を初めて見て、こんなアプローチの仕方はふざけてる!失礼だろ!と思った。でも今改めてみると、あそこまでバカになれるっていい!。素直にそう思えた。店にいた軍人たちも周りを取り囲んで一緒に歌う。
ゆーぶろすとざっ、らーびんふぃーぃりん♪
歌が取り持つ一体感。トムの歌は、ケリー・マクギリスに言われるように「歌で食べていけない」(笑)。でも後に「ロック・オブ・エイジス」でカリスマロックシンガーを演ずることになるのだ。

トムがこの場面で熱唱するのは、ライチャス・ブラザースの You've Lost That Lovin' Feelin'(ふられた気持ち)。映画「トップガン」では、トムのアカペラで聴くだけでなく、映画後半ではオリジナルがジュークボックスから流れる。再発されたサントラ盤にはオリジナルを収録。1964年に初めての全米No.1ヒットとなった。ライチャス・ブラザースは、ビル・メドレーとボビー・ハットフィールドの白人男性デュオ。白人ソウルデュオ、”ブルーアイドソウル”の先駆者とも言える。名プロデューサー、フィル・スペクターが自社にひきぬき、多くのヒットを放つ。「ゴースト ニューヨークの幻」で使われた Unchained Melody もそうしたヒット曲のひとつである。60年代末にビルが脱退、解散したが、74年に再結成している。2003年に、ボビー・ハットフィールドがコカイン過剰摂取で亡くなった。You've Lost That Lovin' Feelin' は、同じブルーアイドソウルのデュオ、ホール&オーツによって80年代にカヴァーされた。

You've Lost That Lovin' Feelin'


※The Righteous Brothers 関連の曲が流れる主な映画
1983年・「ベイビー・イッツ・ユー」 = Unchained Melody
1986年・「トップガン」 = You've Lost That Lovin' Feelin'
1990年・「ゴースト ニューヨークの幻」 = Unchained Melody
1991年・「裸のガンを持つ男」 = Unchained Melody ・ Ebb Tide


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トップガン -80's Movie Hits!-(その1)

2022-06-07 | 80's Movie Hits !

■「トップガン/Topgun」(1986年・アメリカ)

監督=トニー・スコット
主演=トム・クルーズ ケリー・マクギリス バル・キルマー アンソニー・エドワーズ

- 80's Movie Hits! - 目次はこちら

80年代定番サントラとして忘れてはいけないのは、やはり「トップガン」。F-14トムキャット戦闘機のエリートパイロットを養成所を舞台にしたアクション映画であり青春映画。映画は大ヒットを記録した。日本では86年12月にお正月映画として封切られるのだが、同時にトム・クルーズがポール・ニューマンと共演した「ハスラー2」もこの月に封切。トム・クルーズ人気は一気に高まることとなる。「トップガン」の大ヒットはファッションにも影響を与え、町にはフライトジャケットMA-1を着た若者がうようよいた。2005年にはデジタルリマスター版がリバイバル公開された。

ファンには申し訳ないが、「トップガン」は悪く言えばF-14戦闘機を見せつけるために製作されたような映画。海軍士官学校を舞台にした82年の「愛と青春の旅立ち」では国防省の撮影許可が下りず、戦闘機が飛ぶ場面を撮影することができなかった。しかし「愛と~」の大ヒットで国防省が態度を一変。全面協力の下、「トップガン」は製作されたという経緯がある。故にアメリカ軍のPR映画、悪く言えばプロパガンダ映画、F-14のPV、米国人国威高揚映画といった呼び名がどうしてもこの映画にはつきまとう。人間ドラマ部分はさておき、飛行シーンは確かにド迫力。これは最大の見どころだ。

サントラを担当したのはハロルド・フォルターマイヤー。彼はジョルジオ・モロダーのブレインの一人で、キーボード奏者。彼が手掛けた「ビバリーヒルズ・コップ」の主題曲はインストロメンタルながらもチャート上位を駆けめぐった。歌ものは、ベルリンの歌った愛のテーマ Take My Breath Away が全米第1位を記録、さらにアカデミー賞も受賞した。そして”映画主題歌男”ケニー・ロギンスの Danger Zone (こちらは全米第2位)。ちなみに主題歌は多くのアーティストにオファーされ、キーが高いとか様々な理由で断られ、ケニー・ロギンスに落ち着いたと伝えられる。オファーされた一人であるブライアン・アダムスは、「戦争を賛美する映画じゃ歌わねぇ!」と断ったというエピソードも残されている。また、製作者側はブルース・スプリングスティーンの Born In The USA を使用したかったという話も。初期の予告編には、カーズのアルバム「Heratbeat City」に収められたStranger Eyesが使われていた。

トム・クルーズの代表作となっている本作だが、製作者たちが主演に起用したかったのはマシュー・モディーンだった。モディーンはこのオファーを断り、スタンリー・キューブリック監督作「フルメタル・ジャケット」に出演する。そしてトム・クルーズに出演依頼が来ることになるのだった。脇役でメグ・ライアンやティム・ロビンスも出演。


■Top Gun Anthem (トップガン 賛美の世界) / Harold Faltermeyer & Steve Stevens
from「トップガン/Topgun」(1986年・米)

タイトルバックに流れるのは、ハロルド・フォルターマイヤー作のインストロメンタル曲。サントラにはスティーブ・スティーブンスのギターがフィーチャーされているが、映画の冒頭に流れるのはストリングス系シンセで奏でられた淡々としたアレンジ。テイクオフを控えた戦闘機の様子を追う映像に、キャスト・スタッフの名が並ぶ。そして、テイクオフと共にBGMはケニー・ロギンスの Danger Zone へ。

この Top Gun Anthem は、86年のグラミー賞で最優秀ポップ・インストゥルメンタル・パフォーマンスを受賞している。映画冒頭のミグと遭遇する空中シーンでもこのメロディーが流れるし、訓練で見事に成果をあげた後「管制塔に挨拶するんだ。」とスレスレに飛行する場面にもこの曲が流れる。

スティーブ・スティーブンスは、ビリー・アイドルとのコンビで注目されたスゴ腕ギタリスト。日本では、氷室京介とのコラボレーションで話題を呼んだ。またトニー・レヴィン、テリー・ポジオと組んだユニット、ボジオ・レヴィン・スティーヴンスでは、ロックでもプログレでもなんでもこなす音楽的な幅の広さを見せつけてくれる。ソロアルバムではフラメンコの作品も発表しているとか。2006年にはフジテレビのサッカー番組のテーマ曲を書き下ろし。依頼した番組スタッフの頭には、この Top Gun Anthem があったのは間違いないだろう。

※Steve Stevens 関連の曲が流れる主な映画
1986年・「トップガン」 = Top Gun Anthem
1988年・「ビッグ」 = Rebel Yell (Billy Idol)
1988年・「D.O.A.」= Rebel Yell (Billy Idol)
1990年・「リトル★ダイナマイツ/ベイビー・トークTOO」 = Rebel Yell (Billy Idol)
1994年・「エース・ベンチュラ」 = Power Of Suggestion
1994年・「スピード」 = Speed (Billy Idol)

Harold Faltermeyer - Top Gun Anthem (Official Audio)


■Danger Zone / Kenny Loggins
from「トップガン/Topgun」(1986年・米)

発進準備をする戦闘機を見つめるタイトルバックから、テイクオフとともに流れるのは、”80年代のサントラ男”ケニー・ロギンスの Danger Zone だ。シングルカットされたこの曲は全米2位を記録する大ヒットとなった。エリート戦闘機乗りを養成する基地へ行くことになった主人公トム・クルーズ。カワサキのオートバイをかっ飛ばして滑走路に併走する道路を走る場面 や、後半正念場となった訓練場面などでも繰り返し流れる。この曲の疾走感は、戦闘機でもオートバイでも似合ってしまうから不思議。

作曲とプロデュースは、もちろん80年代洋楽好きが崇める御大ジョルジオ・モロダー。この曲は、当初REOスピードワゴン又はTOTOに歌わせたいという意向だったという。ちなみにこのサントラの多くの曲で作詞を担当した人物、トム・ホイットロックは、モロダーのスポーツカーのメカニックだったとか。縁は異なもの味なもの。

※Kenny Loggins 関連の曲が流れる主な映画  →  「フットルース」 参照

Kenny Loggins - Danger Zone (Official Video)






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プリティ・イン・ピンク - 80's Movie Hits ! -

2018-07-09 | 80's Movie Hits !

■「プリティ・イン・ピンク 恋人たちの街角/Pretty In Pink」(1986年・アメリカ)

監督=ハワード・ドイッチ
主演=モリー・リングウォルド ジョン・クライヤー アンドリュー・マッカーシー

- 80's Movie Hits! - 目次はこちら

 人生においては見るべき時期に見ておくべき映画がある。ジョン・ヒューズが監督・製作・脚本を担当した青春映画の数々は、そうした映画だと思う。80年代青春映画の中でも根強いファンが多い。

 モリー・リングウォルドのスネたような表情、ジョン・クライヤーのツッパリ頭、あの頃のイケメン代表アンドリュー・マッカーシー、あの頃の悪ガキ代表ジェームズ・スペイダー、あの頃のダメ親父の代表ハリー・ディーン・スタントン・・・僕らがそれぞれのスタアたちに抱くイメージがそのまんま反映されているような、納得がいく役柄。同じような役者で、今同じような映画を撮ろうにも、きっと彼ら以上にピッタリの役者をキャスティングすることは難しい。数多くの過去の作品達がリメイクされる現代だが、ジョン・ヒューズもののリメイクに手を出したら、きっとそれはオリジナルを損ねるものにしかなり得まい。それはあの時期だからこそ輝きを放つ要素がいっぱいにつまっているからだ。

 その要素のひとつは、何よりも、アメリカのカレッジ・ラジオでいかにも流れていそうな挿入歌たち。サイケデリック・ファーズ、ニュー・オーダー、インエクセス、OMD、スミス・・・。86年当時、音楽シーンにはホイットニー・ヒューストンが登場、チャート上位に君臨していた頃だ。そうした流行を嫌い、通を気取る子たちが「いいよね」と聴いていた(であろう)音楽が、このサントラには収められているのだ。

 今ドキの若き映画ファンたちはこの頃のジョン・ヒューズものを観てどう思うだろう。やっぱり古くさいと思うのだろうか?。所得格差が大きくなり二極化が進む・・・と言われ続けている現代ニッポン。この映画で描かれる「貧富の差と恋愛」というテーマは、近い将来きっと日本映画でも扱われるテーマなのかもしれない。でもプロムっていいよな、あんなのが日本にあったらいいのにさ・・・と思う純粋な気持ちは、世代を越えてきっと同じだと思うのだけれど。ちがうか。


 ★

1.Pretty In Pink/The Psychedelic Furs

 サイケデリック・ファーズは、ヴォーカルのリチャード・バトラー中心に結成された、イギリスのニューウェイブバンドである。80年にスティーブ・リリー・ホワイト(U2で有名ね)がプロデュースを務めたアルバム「The Psychedelic Furs」でデビュー。映画で使われた Pretty In Pink のオリジナルは、彼らの2枚目のアルバム「Talk Talk Talk」に収録されている。ヒロインを演じたモリー・リングウォルドがこの曲が好きで、タイトルチューンに選ばれ、このサントラのために再録することになったというエピソードが残っている。初期の作品はヴェルヴェット・アンダーグラウンドなどの影響を色濃く受けており、どちらかというと暗い。しかし、ジョルジオ・モロダー一家のキース・フォーシーをプロデューサーに迎えた84年の「Mirror Moves」からはポップ、ダンサブルなサウンドに変身。その後一時期解散していたが、2000年には再結成。エコー&ザ・バニーメンなどと共にツアーも行った。2006年には、リチャード・バトラーがソロ名義のアルバムをリリースしている。

 映画の冒頭。清掃車が街を走る朝、ヒロインのアンディー(モリー・リングウォルド)が身支度をしている。ストッキングを履く足をなめるように撮るカメラ。この場面に流れる Pretty In Pink の躍動感は、僕らをビートにのせてこの映画の世界に入り込ませていく。ベッドで寝ている失業中の親父を起こす娘。ヒロインの家庭環境と、貧しいながらも好きな服を器用に自作してオシャレを楽しんでいる健気なヒロイン。そうしたシチュエーションや人物像を一気に見せてしまう演出は見事。そして舞台はヒロインが「面白くない」という学校へと移ったところで、この曲は終わる。学校の休み時間にアンドリュー・マッカーシーがヒロインをデートに誘う場面で、再びこの曲がインストロメンタルで流れる。

※The Psychedelic Fursの歌が流れる80年代の主な映画
1983年・「ヴァレー・ガール」 = Love My Way
1986年・「プリティ・イン・ピンク 恋人たちの街角」 = Pretty In Pink


2.Wouldn't It Be Good/Danny Hutton Hitters

 舞台は変わって、ヒロインがバイトするレコードショップ。パンクファッションの先輩が店の飾り付けをしている。その場面に切り替わるとき、印象的なシンセのフレーズが流れる。この曲が Wouldn't It Be Good。歌は流れず、イントロのフレーズだけという不幸は使われ方ではある。ミディアムテンポのどこか哀愁を感じさせるメロディー。この曲は、ニック・カーショウ84年の大ヒット曲のカヴァーヴァージョンである。ニック・カーショウは、当時ハワード・ジョーンズやポール・ヤングとともにアイドル的な注目のされ方をしていたアーティストだ。

 元来ニック・カーショウはギター弾き。70年代にはジャズ・ファンクバンドでギタリストとして活動、83年に I Won't Let The Sun Go Down On Me でソロデビューした。チャートではふるわなかったのだが、Wouldn't It Be Good(恋はせつなく) が84年に全英4位の大ヒットを記録、一躍大注目を浴びることになる。再発された I Won't Let ~ は全英2位を記録する熱狂ぶり。ちなみに84年の The Riddle は、小泉今日子の 木枯らしに抱かれて の元ネタだと言われている名曲。


シングルヒットが低迷する時期も、ギタープレイヤーとしての彼は多くのミュージシャンに評価されていた。エルトン・ジョンはその一人で、アルバム「アイス・オン・ファイヤー」に参加、ツアーでもエルトンをサポートしている。

※Nik Kershawの歌が流れる80年代の主な映画
1985年・「ガッチャ!」 = Wouldn't It Be Good
1985年・「シャイなラブレター」 = You Might
1985年・「スラッガーズ・ワイフ」 = Human Racing
1986年・「プリティ・イン・ピンク 恋人たちの街角」 = Wouldn't It Be Good (Danny Hutton Hitters)


3.Love/John Lennon

 ダッキー(ジョン・クライヤー)がアンディーの部屋で歴史のレポートを手伝ってもらう場面。彼女への思いをうまく表現できないダッキーは、アンディーがいなくなった後、一人、部屋で歌う。それがジョン・レノンの ♪Love。オリジナルは流れず、ジョン・クライヤーのアカペラのみ。サントラにも未収録。


4.Try A Little Tenderness/Otis Redding

 ダッキーはアンディーの幼なじみ。アンディーの力になりたいとも思うが、思いは空回りしっぱなし。アンディーの父親(ハリー・ディーン・スタントン)にもその思いを伝える。離婚を経験している父親には「アンディーが受け入れるかはわからいゾ」と言われる。アンディーがバイトするレコード店に、閉店間際にやってきたダッキーは、店に流れていたオーティス・レディングに合わせて踊り狂う。ガキっぽい行動なんだけど、彼なりの表現なんだろうか。冷めた視線で見つめるアンディーと共に、印象に残る場面だ。悪い子ぶっていないで、この歌詞のように”ちょっとやさしさを試して”みればいいのにね。ダッキーのキャスティングは当初マイケル・J・フォックスにオファーされたそうだ。どちらかというと”いい子”イメージのMJFではやっぱり似合わなかっただろうね。

 店で流れるのは Try A Little Tenderness。オーティス・レディングの代表曲としてよく知られており、多くのミュージシャンに歌われている名曲だ(「プリティ・イン・ピンク」のサントラには未収録)。オーティス・レディングは60年代ソウルミュージックの代表格にして、黒人音楽が”ソウル”というジャンルで呼ばれ始めた頃の先駆的存在だ。ギターのスティーブ・クロッパー、ベースのドナルド・ダック・ダンらバックバンド、いわゆるブッカー・T&ザ・MGズとのコンビネーション振りのよさは有名。名曲 (Sittin' On) The Dock Of The Bay などスティーブ・クロッパーと共作した楽曲では、白人音楽のよさも吸収して、多くの人々に愛された。67年に飛行機事故で死去している。

※Otis Reddingの歌が流れる80年代の主な映画
1980年・「ブルース・ブラザース」 = I Can't Turn You Loose (The Blues Brothers Band)
1985年・「パニック・スクール/冒涜少年団」(劇場未公開) = I've Been Loving You
1985年・「セント・エルモス・ファイアー」 = Respect (Aretha Franklin)
1986年・「トップガン」 = (Sittin' On) The Dock Of The Bay
1986年・「プラトーン」 = (Sittin' On) The Dock Of The Bay , Respect
1986年・「プリティ・イン・ピンク 恋人たちの街角」 = Try A Little Tenderness
1987年・「ダーティ・ダンシング」 =Love Man , These Arms of Mine
1987年・「エディー・マーフィ/ロウ」 = (Sittin' On) The Dock Of The Bay , Respect
1987年・「ティンメン/事の起こりはキャデラック」(劇場未公開) = Try a Little Tenderness
1988年・「ストーミー・マンデー」 = I've Been Loving You Too Long
1988年・「エイリアン・ネイション」 = (Sittin' On) The Dock Of The Bay (Michael Bolton)
1989年・「ミステリー・トレイン」 = Pain In My Heart
1989年・「ドリーム・ドリーム」 = Dreams To Remember
1989年・「ロードハウス/孤独の街」 = These Arms of Mine
1989年・「今ひとたび」 = Love Man


5.Get To Know Ya/Jesse Johnson
6.Round, Round/Belouis Some

 アンディーはいよいよブレーン(アンドリュー・マッカーシー)と初デート。レコード店までお迎えに来たブレーン。しかし店には先述のオーティス・レディングを踊り狂った後のダッキーが。電機メーカーの御曹司と失業中の親父の娘のデート。幼なじみのダッキーとしては「行くな」と止める。
「ヤツの仲間は君のことを見下しているんだ!」
「彼は金持ちだけど、私は卑屈になりたくないの。」
ダッキーの心配をよそにアンディーはブレーンの車に乗って、パーティをやっているという友人宅へ。ダッキーは雨に打たれながら壁にもたれている。壁画が印象的な、チラシの画像ですな。壁のピエロの絵は、誰を笑っているのだろう。降り出した雨は、道化師が心で流す”道化の涙”なのかもしれない。車に向かうアンディーとブレーン。十分に着飾ってきたつもりのアンディーに、ブレーンは一言。
「着替える?」
”貧富の差”はこうした会話にも現れてくる。そしてパーティやってる邸宅に入っていく場面で流れるのが、ジェシー・ジョンソンの Get To Know Ya。さらに下着姿で踊る連中を見てアンディーが来たことを後悔する場面で、短いけれど Round, Round が流れている。

 ジェシー・ジョンソンは、モリス・デイ率いるファンクバンド、ザ・タイムのギタリストだった人物。いわゆるプリンスファミリーの一員だった訳ですな。映画「パープルレイン」では Jungle Love を演奏しているザ・タイムが登場するが、その頃がちょうど絶頂期。プリンスとモリス・デイの不仲?が原因でバンドは解散してしまう。ジェシー・ジョンソンは85年にソロデビューを果たしている。90年代にプリンスの映画「グラフィティ・ブリッジ」のためにザ・タイムが再結成されるが、そこにはジェシーの姿もあった。Belouis Someなるアーティストだが(カタカナで表記したいけど読めない・・・)、日本ではどうもこの曲くらいしか紹介されていないようだ。ネットで検索すると外国の80sものコンピ盤に、Imagination なる曲でクレジットされている。情報お持ちの方、教えて。

 映画「プリティ・イン・ピンク」では Get To Know Ya が流れた後、アンディーとブレーンが親しくなっていく場面へと続く。

※Jesse Johnson関連の曲が流れる80年代の主な映画
1984年・「パープル・レイン」 = Jungle Love , The Bird (The Time)
1985年・「ブレックファスト・クラブ」 = Heart Too Hot To Hold (Jesse Johnson & Stephanie Sprull)
1986年・「プリティ・イン・ピンク 恋人たちの街角」 = Get To Know Ya
1988年・「アクション・ジャクソン」 = Faraway Eyes (Vanity)


7.Shell Shock/New Order
8.Thieves Like Us/New Order

 ブレーン君との初めてのデートはアンディーにとって苦いものでもあった。リッチな人々の乱れたパーティで幻滅、ダッキーとは絶交される。しかし、ブレーン君と分かり合えたし、別れ間際「プロムは一緒に」と言われる。ヘッドライトの逆光の中、二人はキスを交わす。父親にきちんと報告するアンディー。そんな娘に父親は言う。「こんな話をパパしか聞いてやれなくてすまない。」・・・なんか泣けるなぁ。昔観たときにはそんなこと思わなかったのに。

 その翌日。アンディーが車で出かけるのを自転車に乗ってやって来たダッキーが切なく見る場面。ここで流れるのが、ニュー・オーダーの Shell Shock。これまたイントロしか流れないのだが、独特のシンセ音が強く印象に残る。ニュー・オーダーはこの映画に楽曲提供を依頼され、Shell Shock を用意するのだが、製作者たちは Thieves Like Us や Eligula を使いたがっていた。しかし、結局 Shell Shock は採用され、ニュー・オーダーは3曲もこの映画にクレジットされることになったのだった。

 ・・・物語のその後。アンディーは急にブレーン君に冷たくされてしまう。金持ち仲間がアンディーのことを好ましく思わないことに流されているのだ。ブレーン君も彼女の気持ちに気づいてあげられない鈍さがいかんな。大人の視線で観るとどうもこのあたりはじれったい。友人から譲ってもらったピンクのドレスを手直しするアンディー。それぞれがぞれぞれの思いを抱きながら、プロムの夜が近づいてくる。Thieves Like Us は、そんな場面に流れる。映画では歌が流れることはないが、ひたすら"Love"を連呼するこの歌。彼らの抱く愛情のゆくえは・・・。

※New Order関連の曲が流れる80年代の主な映画
1986年・「プリティ・イン・ピンク 恋人たちの街角」 = Thieves Like Us , Shell-Shock
1986年・「サムシング・ワイルド」 = Temptation
1988年・「再会の街 ブライト・ライツ・ビッグ・シティ」 = True Faith


9.If You Leave/Orchestral Manoeuvres In The Dark

何べんきいてもこのグループ名は覚えられなかったなぁ。この際だ。みんなもきちんと覚えておくれ。オーケストラル・マヌーヴァーズ・イン・ザ・ダークというんだ。クラフトワークやYMOの影響を受けてテクノポップ道を突っ走ったグループ。初期には単なるテクノポップではなく、社会性ある楽曲があることも特筆すべきところ。広島に原爆を投下した戦闘機エノラ・ゲイをテーマにした Enola Gay(エノラ・ゲイの悲劇) がそれだ。80年代半ばからはポップ路線に傾き、初期の暗さは薄れていく。アメリカのチャートにも顔を出すようになるが、本国での評価は下がっていくことにも・・・。僕はこの頃の Secret や So In Love はけっこう好きだったけど。

 実はこの映画のオリジナルのエンディングは、我々が目にする完成版とは異なるものだった。それはダッキーがアンディーの愛を勝ち取るように描写されたものだった。ところが試写で観た人々から不評を買う。みんなブレーンがアンディーと結ばれる方を望み、それにジョン・ヒューズもオリジナルの編集では、”貧しい者とリッチな者は共存できない”と観客が理解してしまうのでは、と心配した。そしてラストは変更され、再度撮影された。アンドリュー・マッカーシーは舞台で演ずる役のために、体重も落として髪も剃ったばかりだった。カツラをつけて撮影したが、他の場面と比べてアンドリューがやつれて見えるのはそのせいなんだそうである。

 ラストが変更されたことで、当初用意されたOMDの Goddess Of Love は合わなくなってしまった。そして映画のために書き下ろされたのが、この If You Leave である。本編では最も盛り上がるプロムの場面で流れる。しかし、前述のように撮影後にこの曲が書き下ろされたので、撮影中に出演者たちは実際には別な曲で踊っていた(それは「ブレックファスト・クラブ」の主題歌である Don't You (Forget About Me) だったとか)。そして If You Leave はOMDにとって最大のヒット曲となるのだった。

※OMDの曲が流れる80年代の主な映画
1986年・「高卒物語」 = We Love You
1986年・「プリティ・イン・ピンク 恋人たちの街角」 = If You Leave
1988年・「ミスター・アーサー2」 = Secret

Pretty in Pink (1986) Official Trailer - Molly Ringwald Movie




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1984 - 80's Movie Hits ! -

2015-03-06 | 80's Movie Hits !

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■Sex Crime (1984)/Eurythmics

 この映画は、ジョージ・オーウェルが1948年に書いた近未来小説「1984」を、その84年に映画化した意欲作。社会主義国と思われる国が舞台。国民は国家の下での”党員”で、思想を持つこと、日記をつけること、恋愛をすることが禁じられ、国民が(思想的に)無知であることを強要しているような社会。国家は”偉大なる兄弟(Big Brother)”が統治する徹底した管理社会。各部屋に取り付けられた双方向モニターには、指導者の画像が映り、国民を監視する。そして反政府的行動には、拷問、洗脳が施される。

 その暗い世界観を彩る音楽に起用されたのがユーリズミックスだった。このエレクトロポップデュオは、Sweet Dreams の大ヒットで知られている。初期は無機質なシンセ音で、重く暗い雰囲気の、独特の世界を作り出していた。結局、サントラとすべく製作されたアルバム「1984」から本編に数曲が使われたのみだったが、使われた曲は映画の世界観にマッチしていたように僕は思う。Julia は淡々としたシーケンスと、エフェクトが効いたヴォーカルのスローナンバーだった。当初、主題歌として作られたのが Sex Crime(1984) 。ビデオにも映画のシーンがふんだんに挿入されていたのだが、本編では使用されなかった。Sex Crime(1984) はダンサブルなエレクトロポップで、”いかにも80年代につくられた音”であるが故に監督の意向に合わなかったと伝えられている。この曲の不運はそれだけではなく、”セックスが犯罪”とされる社会を皮肉った内容だったにもかかわらず、現実社会では”性犯罪を助長する”との理由で英国では放送禁止になったと伝えられる。僕は彼らの曲の中でも Sex Crime(1984) はお気に入り。87年(だったかな?)の福岡公演では1曲目がこの曲だったなぁ。

 映画「1984」についてはこんな話もある。実は日本の一般映画館で無修正で上映されたヘア解禁映画1号。これは東京国際映画祭で上映された際、「外国人も来るのにボカシはいかがなものか?」という論議から修正なしで上映したもの。映画祭のために来日したラザフォード監督に「最初のヘア解禁映画(注)となったのですが、お気持ちはいかがですか?」という質問を浴びせたインタビューアーも。困った顔しながらも監督は”管理社会”とひっかけてうまい答えをしたらしいですが。

注・大阪万博で公開されたスウェーデン映画「私は好奇心の強い女」が日本初の無修正上映。あれは万博会場が治外法権となるため日本の規制が及ばなかったから。映画祭ではあれ、一般映画館での上映では「1984」が初めてってことになるのでしょうね。

eurythmics sex crime


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風が吹くとき - 80's Movie Hits ! -

2014-02-16 | 80's Movie Hits !

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■When The Wind Blows/David Bowie
from「風が吹くとき/When The Wind Blows」(1986年・イギリス)

監督=ジミー・T・ムラカミ

 「スノーマン」で知られるレイモンド・ブリッグスの反戦絵本を、「宇宙の七人」のジミー・T・ムラカミがアニメ化した反戦映画の秀作。「お上が助けてくれるさ・・・」と政府のマニュアルに従って作った簡易核シェルターの中で死を迎える老夫婦。次第に衰えていく様が痛々しく、核の恐怖がひしひしと伝わってくる。二人の無知を愚かだと感ずる方もあるだろうが、本当に愚かなのはこうした核戦争を引き起こしてしまう政治やイデオロギーの対立なのだ。監督は長崎の原爆で親族を亡くしている。それ故か、爆風が村を襲う場面の書き込まれた映像は、ミニチュアセットを使った実写映画よりはるかに説得力がある。日本公開時は、大きな劇場では上映されず各地のホールを巡回する方法がとられた。僕は当時熊本市在住の大学生。産業文化会館のホールで短期間上映された。

 主題歌を歌ったのはデビッド・ボウイ。日本語版の監督を担当した大島渚は、ボウイとの友情からこの仕事を引き受けたと語っている。イントロのギターが実に印象的。ボウイが関わったのは主題歌のみだが、強烈な印象を残すヘヴィーなナンバーである。音楽はピンク・フロイドのロジャー・ウォーターズが担当。ソロ作「ラジオK.A.O.S」に参加したミュージシャンが参加している。サントラには、スクイーズ、ジェネシス、ポール・ハードキャッスルも楽曲を提供している。When The Wind Blows は、ボウイのアルバムには未収録。ベスト盤や、95年に再発売されたアルバム「ネバー・レット・ミー・ダウン」にボーナストラックとして収録されている。

When The Wind Blows (Extended Mix)

 
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ゴールデン・チャイルド - 80's Movie Hits ! -

2014-02-02 | 80's Movie Hits !

■The Best Man In The World/Ann Wilson
from「ゴールデン・チャイルド/The Golden Child」(1986年・アメリカ)

監督=マイケル・リッチー
主演=エディ・マーフィー シャーロット・ルイス チャールズ・ダンス ヴィクター・ウォン
 
 千年に一度この世に善をもたらす救世主”ゴールデン・チャイルド”が邪教集団に連れ去られた。そこで「あなたしかいない」と雇われた私立探偵が、何とエディ・マーフィー!?というヒット作。チベットという異文化の地にマシンガントークのコメディアンというミスマッチに、当時流行のSFXアドベンチャー!という趣向の、いわばエディ版「インディ・ジョーンズ」ってところ。何度も「日曜洋画劇場で観たという方も多いことでしょう。チベットが舞台なんで、淀川センセイの解説がいつ本編から離れてフランク・キャプラ監督往年の名作「失はれた地平線」に行くか、ハラハラして見たものです。

 さて主題歌 The Best Man In The World を歌うのは、ハートのヴォーカル、アン・ウィルソンお姉さま。アンとナンシー姉妹のロックグループ、ご存じハートは、カナダのバンクーバーで結成して以来、長いキャリアを持つバンド。70年代にCrazy On YouやBarracudaなどの大ヒット曲があるが、その後低迷期に。84年の「フットルース」のサントラでアン姉さんがラバーボーイ(同じくバンクーバーで結成)のヴォーカル、マイク・レノと Almost Paradise をデュエットし、大ヒットした頃から再び注目される。この The Best Man In The World は、時期的には大成功作「Heart」から次作「Bad Animals」の間。実質的なアン・ウィルソンのソロデビュー作でもある。サントラはこういう普段の活動とは違うものが多々あるから楽しい。でもサウンド自体は、ハードなギターにブ厚いシンセブラスのリフが絡む、当時のハートのアレンジそのもの。そういう意味では目新しさはなかったな。しかし、この曲はアン&ナンシーは作詞のみで、作曲は「007」シリーズのスコアでお馴染みのジョン・バリー、とクレジットされているから驚き!。スコアはミシェル・コロンビエが担当している。蛇足ながら、RATTの Body Talk のPVが流れる場面もあり。HR/HMファンの方はお見逃しなく。

 映画の方は、大作のわりに今ひとつ盛り上がりに欠けた気がして、あまり好きな映画とは言えない。でもクライマックスのSFX以上の見どころは、エディをチベットへ連れて行く謎のアジア系美女シャーロット・ルイスの美しさ!。男物のシャツだけのセクシーなお姿のアクションシーン、よかったですよねぇ。「ストーリービル/秘められた街」でのセクシーな場面も忘れられないなぁ。

The Golden Child (1986) Trailer #1 | Movieclips Classic Trailers


※Ann Wilson 関連の歌が流れる主な映画 (Heart名義含む)
1984年・「フットルース」 = Almost Paradise
1986年・「ゴールデン・チャイルド」 = The Best Man In The World
1988年・「テキーラ・サンライズ」 = Surrender To Me
1999年・「ヴァージン・スーサイズ」 = Magic Man Crazy On You
2000年・「チャーリーズ・エンジェル」 = Barracuda

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恋人たちの予感 - 80's Movie Hits !-

2013-12-15 | 80's Movie Hits !

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■It Had To Be You/Harry Connick Jr.
from「恋人たちの予感/When Harry Met Sally...」(1989年・アメリカ)

監督=ロブ・ライナー
主演=メグ・ライアン ビリー・クリスタル キャリー・フィッシャー

 ハリー・コニックJr.はニューオリンズ生まれのジャズ・ピアニスト。また歌もこなせ、俳優として映画にも出演(「メンフィス・ベル」・「コピー・キャット」等)している才人。20歳のときリリースしたデビューアルバムは、音楽各誌でベストアルバムに選出される成功を収めた。彼は1967年生まれなので、僕とは同世代(しかも誕生日が同じなのだ)。「恋人たちの予感」サントラは22歳の作品というから、才能のある人は違うよね。鍵盤弾きの一人としても尊敬しちゃいます。この主題歌 It Had To Be You は、ハリー・コニックJr.がビッグバンドをバックに歌ったものと、ピアノ・トリオでの演奏がサントラに収録されている。本編のエンディングでは、フランク・シナトラのヴァージョンが流れる。この対比が映画ではとても印象的だ。サントラでは他にはジョージ・ガーシュイン(Let's Call The Whole Thing Off)、リチャード・ロジャース(I Could Write A Book)、ベニー・グッドマン(Stompin' At The Savoy)の曲もプレイしている。これらはロブ・ライナー監督自身が選曲したとか。僕はジャズはそれ程詳しい方ではないけれど、このサントラだけは愛聴盤。

 さて映画の方はメグ・ライアンの出世作となり、以後ロマンティック・コメディ主演女優の代名詞となったのは周知のことだろう。この映画は監督のロブ・ライナーが離婚の経験がそもそもの元ネタである。離婚のショックから立ち直れないハリーの姿は監督の分身だったのだ。それを脚本家ノーラ・エフロン(現在は「ユー・ガット・メール」などロマンティック・コメディには欠かせない女性監督となった)に話したことで、女性の本音も加えられた。結果性別を問わず多くの支持を集める映画として完成したのだ。ロブ・ライナーはハリーの友人役で出演もしている。チラシにも使われている紅葉の美しさも見どころのひとつ。ちなみに撮影監督は、後に「アダムズ・ファミリー」を監督することになるバリー・ソネンフェルド。

 男女間に友情は成立しうるのか?・・・これはこの映画の究極のテーマ。僕はイエスと答えたい。確かに、結婚=友情の終わりと解するならばそれは答えはノーということになる。でも夫婦となっても、何でも話し合える友人の様な夫婦ってあると思うのだ(一方で、互いに隠し事が増える夫婦もあるだろうけどね・笑)。それは友情とは言えないのかな。それに僕自身、異性の方がかえって本音で話せることがある。男同士って共通のコミュニティに属しているとか、よっぽど趣味が同じだとか、ビジネスとか、共有できる何かがないと親しい関係を保つことは難しい。だから信頼できる異性の友人は(人によっては)必要だと思うのね。皆さんもこのサントラ聴きながら、このテーマについて考えてみるのはいかが?

When Harry Met Sally... Official Trailer #1 - Billy Crystal Movie (1989) HD


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青い恋人たち -80's Movie Hits !-

2013-11-29 | 80's Movie Hits !

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■Hard To Say I'm Sorry (素直になれなくて)/Chicago

from「青い恋人たち/Summer Lovers」(1982年・アメリカ)

 

監督=ランダル・クライザー

主演=ピーター・ギャラガー ダリル・ハンナ ヴァレリー・クィネッセン

 

80年代の楽曲で、この曲程長いこと愛されているバラードって他にあるのだろうか。そう思えるほど世代を超えて多くの人に愛されている名曲Hard To Say I'm Sorry(素直になれなくて)。自動車や化粧品のCFに使用されるたびに新たなファンをつかんでいる。ブラスロックで一世を風靡したものの、その後低迷していたシカゴ。彼らにとってこの曲は起死回生の大ヒットとなった。プロデューサーにデビッド・フォスター、新メンバーにビル・チャンプリンを迎え、従来の路線からAORっぽい路線に転換したことは、70年代以来のファンには驚きだったことだろう。97年には、R&BグループAz Yetがカヴァーしてトップ10ヒットを記録している。僕がシカゴを知ったのもやはりこの曲だったし、このピアノはさんざん練習したものだ。今でも譜面なしで弾ける曲のひとつだし。

 

さて、そんな”名曲中の名曲”を使った映画。それは「青い珊瑚礁」(80)のランダル・クライザーが監督・脚本を担当した「青い恋人たち」。エーゲ海のサントリーニ島を訪れたアメリカ人カップルが、ミステリアスなフランス人女性と出会う。オレあの女(ひと)に惚れた・・・私はどうすんのよ(涙)・・・でもあの女(ひと)素敵・・・じゃ三人で抱き合いましょう・・・とまぁなんとも羨ましい三角関係の恋愛映画であった。

 

僕は「ゴールデン洋画劇場」(いかにも80年代のフジテレビ系でやりそうな映画!)でこの映画を初めて観た。「セックスと嘘とビデオテープ」のピーター・ギャラガーが、三人でベッドを共にして「もうやりすぎて疲れちゃった」という表情をすると、二人の女性は「セックスの神様よ!」と巨大なペニスの偶像を部屋に飾るという場面もある。おまけにお相手はフランス美女のヴァレリー・クィネッセンと、「スプラッシュ」(84)の人魚姫ダリル・ハンナなんだからぁ!!。十代後半だったからなぁ、友達の間では「あの男優、許せん!」というのが素直な感想だった(若気の至り)。

 

映画ではHard To Say I'm Sorryの他に、マイケル・センベロ(Summer Lovers)、ティナ・ターナー(Johnny And MaryCrazy In The Night)、スティーブン・ビショップ(If Love Takes You Away)、デペッシュ・モード(Just Can't Get Enough)、エルトン・ジョン(Take Me Down To The Ocean)が使われている。今見るとなかなか豪華な面々なのだが、当時の僕はそんなこと気づきもしなかったんだなぁ。

 

 

Chicago関連の曲が聴ける主な映画

1982年・「青い恋人たち」 =Hard To Say I'm Sorry

1983年・「セカンド・チャンス」 =Prima Donna

1990年・「デイズ・オブ・サンダー」 =Hearts In Trouble

1991年・「マイ・ガール」 =Saturday In The Park

1999年・「スリー・キングス」 =If You Leave Me Now

2000年・「リトル・ニッキー」 =Does Anyone Really Know What Time It Is?



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