Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

君の膵臓をたべたい

2020-05-31 | 映画(か行)



◾️「君の膵臓をたべたい」(2018年・日本)

監督=牛嶋新一郎

声の出演=高杉真宙 Lynn  和久井映見


実写版も(蛇足な現代パートは別にして)悪くないと思ったが、このアニメ化はもっといい。いや、すごくいい。ストーリーに没頭できる分かりやすさが加わったことで、タイトルに込められた意味が際立ってくる。


「君の膵臓をたべたい」という言葉がストーリー上で持つ意味は、驚くほど最初にきちんと提示される。桜良が何を思っていたのかがまるで謎解きミステリーのようだった実写版。このアニメ版では共病文庫を再び手にするクライマックスがそこにあたる。他人が自分をどう思っているのか想像するのが趣味とか言いながら、ネガティブな想像しかできない「僕」。桜良が書き遺した文章で、本当にどう考えていたのかを知る答え合わせ。そして、最後に彼が送ったメッセージとの呼応。これは実写版よりも鮮烈でハッとさせられる。答え合わせで二人の答えが一致するのだ。これは実写版ではなかった演出だけに涙腺直撃。


死ぬ前に最後だから…という彼女の自由な行動。でもその明るさの裏にある不安で仕方ない気持ちとのギャップも、アニメだからこそ落差が際立っている。明るかった笑い声の後、ベッドでもらす囁くような本心。「奔放な女子に振り回される男子」という構図は、実はアニメ好きには最も共感しやすいポイントだとも思える(涼宮ハルヒを心底愛する僕の私見です・笑)。「星の王子さま」をイメージした描写も印象的。そもそもアニメ化向きの題材だったのではなかろうか。いやはや、思わぬ良作でございました。


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黒執事

2020-05-29 | 映画(か行)



◾️「黒執事」(2013年・日本)


監督=大谷健太郎 さとうけいいち

主演=水嶋ヒロ 剛力彩芽 優香 山本美月


原作は未読なので、ファンにとってどれだけ改悪になってるのかはわからない。特に剛力彩芽が出演すると設定やキャラクターがひん曲げられるのはよくあることなので、本作もきっとファンには不評なんだろう。


水嶋ヒロが楽しそうに演ずる不気味なキャラクター、独特な世界観、「マトリックス」を思わせるアクション場面はそれなりに面白いとは思った。でもそれらはどこか物足りなさがある。例えば、密室でのアクションを華麗にこなして、何事もなかったかのように殺された男たちが座っている。スタイリッシュだな、と思ったけどその美しい後始末を誰も見つけない。山本美月がメイド姿で演じるアクションも素敵な要素なのに、それまでのドジっ子メイドからの変貌がメガネ外すだけ。実はウィッグで本当の姿隠してました、とか見た目から変貌を遂げればもっと盛り上がったろうに。クライマックスにしても、大舞台を用意しながらも小さくまとまって、ちょっと残念。岸谷五朗の存在なんかよく分からないし、優香の入浴シーン短いし(こら)。


公開当時、この映画のメイキングがテレビで放送されていた。地方のフィルムコミッションがどんな撮影支援をやっているのか、ロケ地はどう選ばれたのか。生息地であるひいき目もあるけど、その様子はとても面白かった。オレは徹夜で撮影に付き合えねえよなと思ったけれど、映画の現場を支える人々の思いとアイディアが形になっていくプロセスはとても面白かった。CGで増築されたJR小倉駅、今は閉園したスペースワールドなどが登場。


エンドロールで流れる主題歌Through the agesを歌うのはガブリエル・アプリン。重厚感のある好みのバラードだなと思ったら、絢香の作詞作曲だったのか。納得。

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カンフー・ヨガ

2020-05-25 | 映画(か行)



◾️「カンフー・ヨガ/功夫瑜珈(Kung Fu Yoga)」(2017年・中国=インド)


監督=スタンリー・トン

主演=ジャッキー・チェン アーリフ・リー ソーヌー・スード ディーシャ・パターニ エリック・ツァン


ジャッキー・チェン演ずる考古学者が、チベットの雪山で行方不明になった古代マガダ国の財宝をめぐる騒動に巻き込まれるアドベンチャームービー。「インディ・ジョーンズみたい」というセリフも出てくる通り、まさに中華版インディ・ジョーンズ。美女、カーアクション、インドの大道芸を使ったコミカルな場面などなど見せ場の連続。中国、インドからドバイにも舞台を移し、ゴージャスな活劇に仕上がっている。


だけど、「レッドブロンクス」に代表される他のスタンリー・トン監督作を念頭に観ると、物足りなさも残る。確かに楽しいエンターテインメントなんだけど、観ている僕らまでもが緊張してしまうような、スタントマンでもギリギリのアクションはない。そりゃジャッキーもいい年齢だし、それでもこれだけのアクションをこなすことに感激する。でも他の作品にある独創的な見せ場とは違う。万人受けにアレンジしたような映画に落ち着いた。そんな物足りなさはインド映画の力がカバーしてくれる。みんなニコニコ踊ればハッピーなラストに、すべてを許せてしまう気持ちになれる。


タイトルにあるくらいだからヨガの見せ場が用意されているのかと期待したが、それは肩透かし。別に「片腕カンフー対空飛ぶギロチン」の手が伸びるヨガ使いとまでは言わないけれど、なんか凄さを感じさせるところが欲しかったかも。一方、迫ってくるコブラを蛇拳であしらう場面や、型の説明を加えながら戦うクライマックスには、五獣の拳とかやってた若きジャッキーが思い出されて嬉しくなる。物足りないけど、最後は許せてしまう娯楽作でした。


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オルランド

2020-05-16 | 映画(あ行)

■ 「オルランド/Orland」(1992年・イギリス=ロシア=イタリア=フランス=オランダ)

監督=サリー・ポッター
主演=ティルダ・スウィントン シャーロット・バランドレイ ヒースコート・ウィリアムズ ロテール・ブリュートー

人間が本当に自由であるとはどういうことなのか。この映画はそれを考えさせてくれる。主人公は「決して老いてはならない」という遺言を受け、時空を超え、16世紀から20世紀まで生き続け、男でもあり女でもある。数々のエピソードを通じて、主人公オルランドは僕らに、人がものを考え行動する上で、それを束縛する様々なものを時代背景と共に見せてくれる。

ロシア特使の娘サーシャとの恋では民族と身分。その恋に破れた後、イギリス大使として訪れたオリエントでは、国(または人が属する何らかのソサエティ)の対立が引き起こす人間性の喪失。そして女性となったオルランドが、社交界で経験する性差別。「ただの言葉遊び」と言いながら結婚しない女性を見下す男たちの醜さ。男子を産まないと相続できない社会。やがて愛を知ったオルランド。しかしその男性についていく生き方を選ばずに、彼の子供を抱いて戦場をさまよう。

描かれるエピソードは、素直な感情や考えを縛る要素として語られる。そしてオルランドは波乱万丈の年月を経て、美しいひとりの人間としてラストシーンを迎える。

原作はヴァージニア・ウルフ。レズビアンだった彼女が恋人に宛てた、イギリスで最も美しい恋文と言われる小説だとか。生きて人を愛するのに男も女もない。時に中性的な魅力を発揮するティルダ・スウィントンの演技はもちろん素晴らしい。それだけでなくポッター監督はさらにちょっとした悪戯なを施した。遺言をするエリザベス1世役は男性が演じており、ラスト近くに声高らかに歌うと天使は、ゲイである歌手ジミー・ソマーヴィルを起用しているのだ。

映画冒頭の16世紀は、男性が女性的に振る舞うことを美としていたとも聞く。この映画が公開された頃までは、性的マイノリティに偏見も多かった時代。今の目線でこの映画を観ると、どう感じられるだろうか。

それにしてもこの映画がすごいのは、これだけのテーマと物語をわずか90分で描ききっていること。映画って長いなら長いなりのテーマと物語が必要だと思う。この映画を観て以来、僕はそのバランスが気になるようになった。

Orlando (1992) Theatrical Trailer


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不機嫌な果実

2020-05-13 | 映画(は行)

◾️「不機嫌な果実」(1997年・日本)


監督=成瀬活雄

主演=南果歩 鈴木一真 根津甚八 美木良介 鷲尾いさ子


林真理子の原作が単行本化されたのが1996年。翌年に石田ゆり子主演、最近も栗山千明主演でテレビドラマが制作されている。日頃(民放の)ドラマを真剣に見ない僕だが、どちらも真剣に見ている。南果歩主演の松竹映画版は未見。やっと気が向いて挑んでみた。


思えば、テレビドラマはどちらも登場する男女みんなに説得力があった。音楽評論家役岡本健一のカッコよさ、石田ゆり子が男性の間をよろめくどうしようもない気持ち。目隠しプレイなんて今でも覚えてる。渡辺いっけいも内藤剛志も納得の仕事だった。栗山千明版も、高梨臨の裏切り、嫌な男っぷり全開の稲垣吾郎、脇役だけど存在感あった橋本マナミも、それぞれにいい仕事だった。


比べちゃいけないとは思うが、この劇場版は物足りないというか、これじゃない感が最後まで続く。2時間の尺では語りきれない話だとも思えるが、とにかく登場人物それぞれのキャラクターが薄い。麻也子の最初の不倫相手は根津甚八。申し訳ないんだけど、こんなカッコ悪い根津さん初めて見た。マザコン亭主は美木良介。いやこの旦那はいい人すぎ。特別悪いことしてないじゃん。そして麻也子が夢中になる相手が鈴木一真。これが最悪なキャラ。遠慮もなしに麻也子の自宅に電話してきて、いざ部屋に行ったら逆光に全裸でお出迎え。

「ハッピーバースデイ、麻也子♡」

うぎゃー!なんやこれ!そんなもん、いらん!それをにこやかに見つめる麻也子の気持ちがわからん。とにかく男どもに危険な魅力が感じられないのだ。


映画版独自の登場人物として登場するのが、鷲尾いさ子演ずるキリコ。何事にも束縛されない生き方の女性像を示してくれる。結局いろんなものに束縛されている麻也子に、違う生き方を示すキーパーソンだ。でもせっかくのキリコのキャラクターが、麻也子の生き方を揺るがすこともなく、最後まで合点がいかず。鈴木一真とのラブシーンは、二人ともニコニコして楽しそうな印象。でも、ドラマ版で岡本健一に溺れていく石田ゆり子を見た後では、同じお話とは思えない。南果歩がせっかく露出多めで頑張っているのに残念。道を外れて愛してしまう、どうしようもない、でも抑えられない感情を演じられない人ではないと思うのだけど。






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視線のエロス

2020-05-11 | 映画(さ行)



◾️「視線のエロス/La Femme Defendue」(1997年・フランス)

監督=フィリップ・アレル
主演=イザベル・カレ フィリップ・アレル

上映時間すべてが主観ショットのみの擬似不倫体験。お話は出会いから別れまで、というシンプルなもの。主人公の建築家フランソワは、ミュリエルという女性と出会う。妻子あるフランソワだが彼女に迫り、ついにその一線を越えてしまう。次第にミュリエルの独占欲に火がついていき、関係は次第にこじれていく。

主人公の姿が見られるのは鏡に映る場面だけ。挑戦的な撮影法は確かに面白い。今ならスマートフォンで映画撮れる時代だから、似たような手法だともっと生々しいんだろうか。ミュリエル役のイザベル・カレは透明感のある綺麗な女優さん。オドレイ・トトゥ共演作くらいしか観たことないな。

女性を愛でる幸せって確かにある。それだけの100分超なら確かに眼福。しかしこの映画は徹底的にフランソワの目線で、最初から最後までを映し出す冷酷な映画。出会って、口説いて、断られて。でも執拗に迫って、裸見るだけと納得させて、その後…というのが前半。アダルトビデオで似た企画がありそうなものだが、後半は一転して、僕らはフランソワの視線と一体になることから心が離れていく。奥さんと寝てるベッドで私を抱きなさい、と迫られる場面。同じイザベル・カレの姿を見ている映像なのに、そこに感ずるのは前半とは全く違う感情。

観終わって、どっと疲れたのだけはよーく覚えているのです。この映画を観て、教訓と捉えるかどうかは貴方次第ww
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映画館でオードリーを。

2020-05-10 | 映画・ビデオ
思えばこのブログの初回記事は、オードリー・ヘプバーン展に行ったものだったな。


往年の映画スタアで、主演作の多くを映画館で観ているのは、誰よりもオードリー・ヘプバーン。中学生3年、「ローマの休日」を大分のシネマ5で観て以来、遺作の「オールウェイズ」までスクリーンで観る機会に恵まれたのは素敵な巡り合わせ。

昭和60年代の熊本には、クラシック映画専門館シネラックス熊本があった。オードリー・ヘプバーン主演作の多くを映画館で観ているのは、こういう映画館の存在も大きい。









#写真を貼って映画館行ったつもりになろう
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愛を弾く女

2020-05-05 | 映画(あ行)




◾️「愛を弾く女/Un Coeuren Hiver」(1992年・フランス)



監督=クロード・ソーテ


主演=エマニュエル・ベアール ダニエル・オートゥイユ アンドレ・デュソリエ


この映画を初めて観た後、すごく切なくなって数日その気持ちを引きずった。最後の方でつまんないこと書くけど、気にしないでください。
主人公ステファンはバイオリンを作る職人で、ビジネスの相棒であるマキシムと楽器工房を営んでいた。ある日マキシムに恋人がいると打ち明けられる。お相手は若い気鋭のバイオリン奏者カミラ。ステファンはレコーディングを控えた彼女の楽器の調整をし、演奏を控えめに見守る。カミラは次第にステファンが気になり始め、彼がいないとうまく演奏できないとまで言い出す。レコーディングの最終日を控えた夜、カミラはマキシムに気持ちを打ち明ける。静かにきしみ始める三人模様の行方は…。
ステファンがとにかく煮えきらない男で、イライラしたという感想をもった方も多いだろう。議論をしても自分への自信のなさからか、「意欲はあるが、熱意がない」と一歩も二歩も引いてしまう。カミラに迫られる重要な場面でも、「君を愛していない」と拒絶するステファン。その言葉の裏にある彼の思いは、とても曖昧に描かれるので想像するしかない。確かに愛情を感じているのに、彼女を傷つけるような嘘。カミラのこれからの活躍を思うと、しがない職人である自分を卑下してしまうのだろう。恐れと言ってもいいのかもしれない。それは彼女と対等だと思えない気持ちだろうし、相棒とその彼女というトライアングルを崩してしまうことでもある。
カミラは公私ともにうまくやっていた男二人の関係に割って入ってきた存在。相棒の彼女という興味が、その演奏や魅力を知るにつれ、うまく感情を出せない自分と比較してしまったのかも。それでもカミラは彼に言う。
「感情のない人間に音楽は愛せないわ」
この映画で最も響いた台詞だ。演奏で感情を爆発できるカミラと、感情を表に出す勇気をもてないステファン。男と女のすれ違い。切ない。
ステファンと同じような立場になったことが、実は一度だけある。でも僕は鈍感だったから相手が自分をそれ程思っていたりはしないだろうと思っていた。今思うとそれは自分への自信のなさだ。結果として僕は彼女を遠ざけてしまった。それから数年経って、この映画を観たとき、エンドロールを眺めながら涙がにじんだ。あの時、この映画のエマニュエル・ベアールのような気持ちでいたのかな。もっと上手に言葉をかけられたんじゃないのかな。
今回改めて映画を観て、登場人物それぞれの気持ちを考えさせられた。フランス映画の人間模様にジーンときちゃうなんて、オレも歳とったのかなぁ。くすん。


Un coeur en hiver (1992) Trailer


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映画すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ

2020-05-01 | 映画(さ行)





◾️「映画すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」(2019年・日本)

監督=まんきゅう
声の出演=井ノ原快彦 本上まなみ

san-xのキャラクターものは長女が好きなもんだから、それなりに目にする機会がある。でもすみっコぐらしはキャラクターが多いのもあり、なかなか興味をそそられなかった。そこへこの劇場版だ。やたらと世間の評価は高い。女性の友達はもちろん、サンリオ関係のお仕事している男性の友達までオススメだと言う。どんなもんだろう…と配信で観ることにした。

キャラクターが多いのがまず気になっていたのだが、丁寧に一人ずつ紹介するプレタイトルでその不安は払拭される。ネガティブではないけどそれ程ポジティブでもないゆるーい感じと、それぞれのキャラがなぜ世間のメジャーな存在でないのかが語られて、見始めて数分でなんか愛おしくなる。まあ、そもそもきゃわゆいもの好きなおっさんなんで。はい。

地下室で見つけた絵本の世界に入り込んでしまうすみっコたち。そこで出会った小さなヒヨコの家や仲間を探そうとするお話。童話の世界に入り込んだすみっコたちが、それぞれの世界であたふたする様子は愛らしいが、慣れてくるとちょっとダレてくる。

しかし、ヒヨコの素性に迫る後半から切なさが高まってくる。お子ちゃま用に製作されている映画だけど、それだけに台詞に頼らない強さがある。クライマックスの切ない脱出劇、その後の結末。ラストはほっこりとした気持ちにさせる。これが子供を映画館に連れて行った大人たちの涙を誘ったのか。わかるなぁ。ギスギスした気持ちになりがちな毎日だけに、わかってくれる誰かのありがたさがキュンとくるんだよなぁ。エンディングで流れる原田知世の歌にも癒される。



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