Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

9月のBGM

2013-09-30 | 音楽
2013年9月に聴いていた愛すべき音楽たち。

■I Robot/The Alan Parsons Project
アラン・パーソンズ・プロジェクトは、「ベストヒットU.S.A」が大分で放送開始された高校3年以来(笑)、リスペクトするグループのひとつ。今回リリースされたのは、セカンドアルバムのリマスター盤にボーナストラックが付いたレガシー・エディション。音の緻密さが今どきのギター中心のロック/ポップスと違って聴きごたえがある。時代を越えるロックの名盤。メロディが美しいSome other time、パット・ベネターもカヴァーしたDon't Let It Showなどバラード曲も印象的。
アイ・ロボット・レガシー・エディション

■こわれもの/YES
9月の連休にNHK-FMで放送された「今日は一日プログレ三昧3」。いやー、久々にラジオの前から離れられなんない有意義な時間だった。音楽ファンの中でも特にめんどくさい(笑)プログレファンが、同時にTwitterで番組を語り合い、Dream Theaterがプログレと呼べるのかで大論争。プログレ(ちょっと)好きな僕にはとっても楽しかった!。番組最後には、あの栗コーダーカルテットがプログレの名曲を演奏するライブまで!。リコーダーで奏でられる脱力感と選曲、アレンジの思い入れにわくわくした。そして僕は長男ルークとアニメ「ジョジョの奇妙な冒険」を見ながら、エンディングで流れるRoundaboutがいかに名曲なのか、YESがいかにスゴいバンドなのかを語り倒すのだった(笑)。
こわれもの

■トライアングラー/坂本真綾
来月から再放送が始まる「マクロス・フロンティア」。初代マクロスはリアルタイム世代だけに、ランカ・リーが「私の彼はパイロット」を歌ったり、真理たんの楽曲が受け継がれてるのが嬉しいね。本作でも菅野よう子のいい仕事が随所で聴けるが、主題歌「トライアングラー」が特に好き。アニソンの派手さと恋愛ソングの切なさと作品のテーマとが結晶となっている。
トライアングラー

■WINDING ROAD/綾香×コブクロ
9月は友達と本気カラオケに行った。悪ノリで課題曲を”この曲の冒頭のハモリをキメること”とした。決行日前の数日、通勤中に聴き続けておりました(恥)。僕は小渕さんのパート担当。よっしゃー、それなりにハモれるようになったぞ。でも男女デュエットだったら、ピーボ・ブライスンなりきりの「A Whole New World」と、鈴木聖美と鈴木雅之の「夜明けのスターライト」がお得意です。はい。
ayaka's History 2006-2009

■悲しいね/渡辺美里
んで、何故かふと聴きたくなったのがみさっちゃんの「悲しいね」。You Tubeで見たKeiko+哲ちゃんの動画も素晴らしかった。この曲って、どこかTM Networkの名曲「humansystem」を思わせる。みさっちゃんはカラオケでも一時期よく歌ってた。いちばんお得意はサマータイムブルース。今度カラオケ行ったら「悲しいね」歌うぞぉー!(宣言)。
美里うたGolden BEST

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ハーフ・ア・チャンス

2013-09-27 | 映画(は行)

■「ハーフ・ア・チャンス/1 Chance Sur 2」(1998年・フランス)

監督=パトリス・ルコント
主演=ヴァネッサ・パラディ アラン・ドロン ジャン・ポール・ベルモント

 公開当時、フランス本国では「タイタニック」をしのぐ大ヒットとなったとか。うんうん、そりゃわかるよ。僕もこっちが断然スキ!(つーか比べるのがどうかしてるけどね)。アラン・ドロンとジャン・ポール・ベルモント共演!というだけでも楽しい。往年のファンには「ボルサリーノ」の記憶がよみがえるのだろうか?(僕は未見)。二人が渋い演技合戦なのかと思ったら、実に楽しそうに演じている。これを二十歳のアイドルが引っかき回すのだから、面白いじゃない!。

 車泥棒のパラディは死んだ母親が残したカセットで、父親と思われる男性2人の存在を知る。娘と名乗る小娘の突然の来訪にとまどう初老の男二人。ドロンはレストランを経営しているが、昔は荒稼ぎした泥棒。警報機を突破する練習するところなんざぁ、署名の練習する「太陽がいっぱい」を思い出させるじゃない。ベルモントはカーディーラーをしているが、昔は外人部隊で活躍した軍人。縄ばしごでヘリコプターに登るクライマックス(スタントなし!)は「華麗なる大泥棒」あたりの活劇と重なって見えてくる。パラディが盗んだ車にマフィアがらみの大金が積まれていたことから、騒ぎに発展。二人は昔取った杵柄で大活躍をする・・・てなお話だ。

 ルコント映画というと人生の悲哀だの男女の機微だの、そうしたテーマと思われがち。だけど、実はコメディ路線から始まった人だけに、「ハーフ・ア・チャンス」はユーモアのある徹底したエンターテイメントに仕上がっている。結末は予想を全く裏切らないのでやや拍子抜けするけれど、万人に受け入れられやすい映画となると、そういうことになるのかなぁ。ヴァネッサ・パラディはとんでもないジャジャ馬役だけど魅力的。

(2003年筆)

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ランボー - 80's Movie Hits! -

2013-09-26 | 80's Movie Hits !


■It's A Long Road/Dan Hill
from「ランボー/First Blood」(1982年・アメリカ)

監督=テッド・コッチェフ
主演=シルベスター・スタローン リチャード・クレンナ

 「ランボー」シリーズのメインテーマとなるこの曲 It's A Long Road の旋律、一度は聴いたことがあるだろう。作曲は御大ジェリー・ゴールドスミス。哀感漂うメロディは、祖国に戻っても孤独なベトナム帰還兵たちの哀しみを見事に表現していた。プロデュースとアレンジは、Totoのデビッド・ペイチが担当。歌っているのはカナダのシンガー・ソングライター、ダン・ヒル。グラミー賞候補に挙がったこともあるとか。14才から作曲活動を始め、17才でカリフォルニアへ。75年にデビュー、78年の Sometimes When We Touch(ふれあい) がビルボードで3位を記録した。87年に6位まで上昇したバラード Can't We Try(とまどい) も名曲だ。こちらも是非ご一聴を。

 ベトナム帰還兵ジョン・ランボーは、流れ者としてある町へやって来る。だが帰還兵の彼を誰も受け入れようとせず、警察も彼を厄介者扱い。浮浪罪で逮捕し、人間扱いを全くしない。ついに怒りが爆発。山林に逃げ込んだ彼は追っ手を次々とかわしていく。説得にやって来た元上官トラウトマン大佐に、彼は涙ながらに訴える。スタローンが泣き崩れる映画は多くない。この傷だらけのヒーローは、我々にベトナム帰還兵の社会復帰問題を痛烈に訴えた。ただのアクション映画ではないのだ。続編「ランボー/怒りの脱出」でもMIA(戦闘中行方不明者)の問題を取りあげ、国の冷たい仕打ちに怒りをぶつけた。”俺たちが国を愛したように、国も俺たちを愛して欲しい”。ラストの台詞は強く残った。

 僕らの世代は、この頃のスタローン作品はたいてい観ている。少し後の世代だと、シュワちゃんがアクションスターの代名詞のようになるのだろう。でも僕らにとってスタローンは単に筋肉に物を言わせ、SFXで見せ場をつくるスターではなくて、今よりも数段”映画人”だったと思うのだ。そりゃあ監督作には失敗作もある。僕らが心底”スタローンすげぇ!”と思っていた頃の映画は、やはりどこか違う。「ランボー」の1作目はそんな映画の1本だと思うのだ。やはりスタローンは、日本のCMで”ハムの人”になる前がよかったよね・・・と言ってたが、「エクスペンダブルス」からの大活躍は80年代を知る僕らにはお涙もん。


※Dan Hillの曲が聴ける主な映画
1978年・「年上の女」 = ♪Sometimes When We Touch
1982年・「ランボー」 = ♪It's A Long Road




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スター80

2013-09-25 | 映画(さ行)

■「スター80/Star80」(1983年・アメリカ)

●1984年ボストン批評家協会賞 主演男優賞

監督=ボブ・フォッシー
主演=マリエル・ヘミングウェイ エリック・ロバーツ クリフ・ロバートソン

 実際に起ったプレイメイト殺害事件を題材にした人間ドラマ。ショウビズ界の裏側を描くことはボブ・フォッシー監督の得意とするところだ。ダスティン・ホフマンの熱演が忘れられない「レニー・ブルース」も、ショウビズ界に没頭するが為に身を持ち崩すロイ・シャイダーが印象的だった「オール・ザット・ジャズ」もそうだ。センセーショナルな話題や華やかなミュージカル場面だけがそれらの魅力ではない。ショウビズの世界で生きる人間たちの姿がきちんと描かれていることが人間ドラマとしての魅力になっているのだ。この「スター80」も然り。プレイメイト・オブ・ザ・イヤーに選ばれたドロシー・ストラットン殺害事件を題材にしているのだが、そうした話題性だけでなく、ここに描かれる登場人物たちの心情が見事に描かれているのが本作の魅力であろう。

 バンクーバーの田舎から出てきた18歳が成長し、悩み、苦しむ姿を、マリエル・ヘミングウェイが大熱演。まずは彼女あっての映画だ。この撮影の為に豊胸手術をしたというエピソードが当時報道されていたのを覚えている。劇中見られる彼女のヌードも実に美しい。これを見るためだけでも、この映画に対価を支払う価値は十分だ。彼女の夫ポール・スナイダーを演ずるのは「暴走機関車」のエリック・ロバーツ。彼女を見いだした男という役柄で憎まれ役でもあるのだが、次第に狂気に陥る演技は真に迫った熱演。ゴールデングローブ賞にもノミネートされた。「プレイボーイ」誌トップのヒュー・ヘフナーはクリフ・ロバートソンが演じている。”プレイボ-イ・マンション”の華やかな様子が描かれているのも興味深い。

 時代背景となる70年代後半のヒット曲が流れるのも音楽ファンとしては嬉しい。ポールが派手な車に乗りながらガンガン流しているのが、ロッド・スチュワートの Do You Think I'm Sexy。他にもビリー・ジョエルの Big Shot や Stilleto(恋の切れ味)、ダンスホールでは Just The Way You Are も流れている。

(2005年筆)

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美しいひと

2013-09-24 | 映画(あ行)

■「美しいひと/La Belle Personne」(2008年・フランス)

監督=クリストフ・オノレ
主演=レア・セドゥ ルイ・ガレル グレゴワール・ルプランス・ラング

 「ミッション・インポッシブル ゴースト・プロトコル」の美しき殺し屋役以来、ずーっと気になる存在のフランス女優レア・セドゥ。「マリー・アントワネットに別れを告げて」は地元の映画館にかかって、すぐに観た。ちょっとふてくされた様な表情と、時折見せる素敵な笑顔のギャップが魅力的なんだよねー。んで、彼女の旧作を観ようと思い立ち、出世作となった「美しいひと」を選んだ。日本ではフランス映画祭で上映された後、劇場では未公開。ビデオスルーとなってDVDレンタル店の棚に並んでいる作品。

 母親の死後、パリのリセ(高等学校)に転校してきた主人公ジュニー。従兄弟のマチアスに紹介された友人たちが好意を示してくるが、彼女は最も大人しくて誠実そうなオットーと付き合うようになる。そんな彼女に興味を抱いた男性がもう一人。同僚や女生徒とも交際しているプレイボーイ、イタリア語教師ヌムールだ。彼はジュニーに近寄るようになり、その存在を知ったオットーは・・・。

 この映画は古典文学「クレーヴの奥方」を現代のリセに舞台を変えて翻案したもの。当時のサルコジ大統領が選挙戦の最中の発言、「クレーヴの奥方を学校で教えるのは意味がない。若者は古典を読んでも役に立たない」に対する反論として製作された映画なんだとか。そういえばフランス文学の「危険な関係」も数々の翻案がある。青春映画に翻案した「クルーエル・インテンションズ」(99)もあるくらいだから、監督の反論はごもっとも。時代を超えた普遍的なテーマってあるはずだもの。「クレーヴの奥方」は夫のために愛する人を拒むお話。恋の相手とこれから先も続いていくかどうか不安になる高校生の気持ちに、原作に描かれる貞節や貴族の社会的な体面を置き換えて製作されている。それ故にどこか曖昧な結末に感じはする。盗まれた肖像画を写真に置き換えたり、ラブレターのエピソードに性の問題を絡めたり、原作の要素をうまく舞台に合わせて置き換える工夫もある。僕は原作は未読だが、幾度も映画化されたものだけにちょっと興味が出てきた。他の映画化作品にも触れてみたい。

 ヌムール先生がジュニーに好意をさりげなく示すのが、授業で扱う教材というのがニクい演出。恋心を歌ったイタリアのポップスの歌詞を彼女に音読させて訳させる。愛の言葉を彼女から聞いてみたいという下心が見え見えで、おまけにそれを聞きながらニタニタ笑ってるんだから・・・本当にされたらちょっと気味悪い?(笑)。でもその男心はすっごく共感。ただ、映画全体から見るとジュニーが二人の男性の間で心が揺れる様子がどうもつかみづらいのも事実。オットーの身に起こる悲劇にも感情を激しく表さないだけに、どうも淡々とした印象はぬぐえない。それでも、この映画で注目されたレア・セドゥ嬢、いいね。暗い役柄だけど、アップになる場面で唇の端に笑みが浮かぶ表情がなんとも魅力的。久しぶりにフランス女優に惚れたかも。


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恋におちたシェイクスピア

2013-09-23 | 映画(か行)

■「恋におちたシェイクスピア/Shakespeare In Love」(1998年・アメリカ)

●1998年アカデミー賞 作品賞・主演女優賞・助演女優賞・脚本賞・音楽賞・美術賞・衣裳デザイン賞
●1999年ベルリン国際映画祭 銀熊賞
●1998年NY批評家協会賞 脚本賞
●1998年ゴールデン・グローブ賞 作品賞・主演女優賞・脚本賞

監督=ジョン・マッデン
主演=グウィネス・パルトロウ ジョセフ・ファインズ ジェフリー・ラッシュ

 「ロミオとジュリエット」誕生秘話を、ここまで面白くデッチあげたのには感心。脚本がとにかくよくできている。シェイクスピアとヴァイオラの身分違いの恋だけでも観客の心はドキドキする。ところがひとつの舞台が作り上げられていく過程で、さらに観客は映画に引き込まれていく。役者集め、資金繰り、女性の役は少年が演じていたこと等ハラハラするエピソードが散りばめられている。そして迎える初演の場面は、もう目が離せない。都合がよすぎると思えるところもあるけれど、まあそこはハリウッド映画だからよしとして。コスチュームプレイが苦手な観客にも、恋する二人を中心にしたわかりやすい展開で飽きさせないことだろう。衣装や美術にしてもハリウッド映画だからなし得る豪華さ。エンターテイメントたる映画としもてよくできているのだけれど、実はイギリス演劇界出身の監督が”ほらね、舞台って素晴らしいだろう?”と賛美している映画だとも思えた。これがSFX大作の花火上げまくってるハリウッドで製作されて、ヒットしたことがまた面白いじゃない。

 ベッドで朝を迎えた二人の会話を始めとして、随所に「ロミオとジュリエット」の台詞が盛り込まれているのが実に楽しい。シェイクスピア映画を「ロミオとジュリエット」くらい観ていればパロディなんだとわかるだろうから、楽しめるはず。でもそれさえ知らなければ、”あぁ二人の会話引用したのか”くらいしか思わないだろうから、ある意味予備知識はいるかもね。でも改めて思うのはシェイクスピアの台詞の美しさ。グウィネス・パルトロウ出演作は今まであまり観ていないけれど、この映画の生き生きとした彼女は素晴らしい。劇中劇があるだけに演じる側としても面白い役だったろう。女王を演じたジュディ・デンチ(彼女は30年前にフランコ・ゼフィレッリの舞台でジュリエットを演じていた)、ジェフリー・ラッシュら脇役の芸達者ぶりも見どころ。ベン・アフレックの何か勘違いしている売れっ子役者ぶりも楽しい。ああお腹いっぱい。

(2003年筆)

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コーラス

2013-09-22 | 映画(か行)

■「コーラス/Les Choristes」(2004年・フランス)

●2004年セザール賞 音楽賞・音響賞

監督=クリストフ・バラティエ
主演=ジェラール・ジュニョ フランソワ・ベルレアン ジャン・バディスト・モニエ ジャック・ペラン

 問題児ばかりが集まる寄宿学校”池の底”にやって来た元音楽教師マチュー。そこは”やられたらやりかえせ”を合い言葉に、厳しい懲罰を科す指導が行われていた。マチューはその人柄で生徒をなつかせようとするが、校長や同僚はそんな彼に冷ややかな視線を送っていた。彼は生徒に合唱を指導し始め、それがきっかけでマチューは生徒達の心をつかんでいった。さらに問題児の一人が歌の才能を開花することに。しかし校長の横暴、相次ぐ事件で彼は・・・。

 この映画は「春の凱歌」というフランス映画のクラシックを題材にしたそうだ。新たに寄宿学校に赴任してきた先生が人気を獲得し、生徒達を束縛から解放する・・・、さらに校長先生に代表される大人の俗物ぶりも含めて、この「コーラス」は同じくフランス映画のクラシック「新学期操行ゼロ」(ジャン・ヴィゴ監督・1933年)へのオマージュでもあるのではないだろうか。ただ「新学期操行ゼロ」と違って体制への反抗をするのは先生なんだけどね。マチュー先生を演ずるジェラール・ジュニョは、主演・監督した「バティニョールおじさん」でユダヤ人迫害へ立ち向かう男を演じた。そのイメージはこの映画にも引き継がれ、強い信念を持つ心優しき教師を見事に演じている。少年の母親に淡い恋心を抱く場面は人間味があふれていて心に残る。欲を言えば少年たちが一部のワルを除いてちょっと大人しすぎ。校長の娘に興味を抱くところなんか、もうちょっと膨らましてもよかったのでは。

 「音楽は混乱を調和に導くもの」。これはフランコ・ゼフィレッリ監督の「トスカニ-ニ」を観たときに心に残った台詞だ。音楽を通じて築かれた人と人の絆はとても強い。これは音楽が持つ偉大な力だ。音楽を通じて人が成長していく様は観ていて実に爽快。ジャン・バディスト・モニエ君の天使の歌声も感動を与えてくれる。プロデューサーでもあるジャック・ペランが「ニューシネマ・パラダイス」のトトを彷彿とさせるいい役柄で登場。実は監督のクリストフ・バラディエは甥、ペランの息子も子役で出演している。

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アルバート氏の人生

2013-09-21 | 映画(あ行)

■「アルバート氏の人生/Albert Nobbs」(2011年・アイルランド)

●2011年東京国際映画祭 最優秀女優賞

監督=ロドリゴ・ガルシア
主演=グレン・クローズ ミア・ワシコウスカ アーロン・ジョンソン ジャネット・マクティア

 19世紀のアイルランド。生きていくために自分を男性だと偽ってきたひとりの女性を主人公にした物語。そもそもはブロードウェイの舞台劇で、主役を演じていたグレン・クローズが自ら脚本、プロデュース、主演そして主題歌の作詞も手がけた。グレン・クローズというと、僕ら世代には「危険な情事」の鬼気迫るヒロインや「ガープの世界」の風変わりな母親、「白と黒のナイフ」の知的な弁護士役など、多彩な役柄に成りきる凄みがイメージされる。年齢を経た今こういう作品で難役を素晴らしい演技でこなし、銀幕のこちら側にいる僕らを感動させてくれるのは実に嬉しい。

 主人公アルバート・ノッブスはダブリンのホテルに勤務するウェイターで、その気配りのできる仕事ぶりに周囲から信頼を得ていた。しかしアルバートには秘密があった。生活のため、職に就くために男性だと偽っていたのだ。ある日、ホテルの壁の塗装のために職人ヒューバートがやってくる。相部屋で一夜を過ごすことになったアルバートは、彼に素性を知られてしまう。二人は困難な時代に女性が生きていく方法と夢を語り合うようになり、アルバートはいつか自分の店を持ちたいという夢を実現しようとさせる。ヒューバートが別な女性と一緒に"結婚"しているように世間にみせて暮らしていたことから、アルバートは自分もそうしたいと考えるようになり、メイドのヘレンにいつしか恋心にも似た思いを抱くようになっていく。しかしヘレンはボイラー技士と名乗って転がり込んできた若者ジョーに夢中になっていた。アルバートの運命の歯車が大きく動き出そうとしていた・・・。

 自分らしく生きるとはどういうことなのか。この映画は性を偽って生きた女性の物語だが、この映画を通じてもたらされる感動はいつしかアルバートでなく自分の生き方についても考えさせられる。自分を抑え込んだり、演じながら日々を生きることは、チフスな流行する貧しい19世紀ダブリンの場末だろうが21世紀の日本だろうが実は誰しもが抱えていること。自分をさらけ出すようなSNS上ですら誰かから見られていることから別な自分を演出してみたり、仕事という場で私生活とは違う自分(というより役割)を演じてしまう。それは自分が"楽"でいられる自分とは違うものだったりしてはいないだろうか。ヒューバートと女性の服を着て人の少ない海辺を駆ける場面、アルバートの解放された表情はこの映画の中でも目に焼き付く場面だ。仮装パーティの場面で医師に「アルバート、君も私も自分自身に仮装している」という場面は実に痛い響き。それだけに映画のラストで医師が真実を知る場面は胸に迫る。

 グレン・クローズの名演はオスカーにもノミネートされたが、最終的にはメリル・ストリープが演じたサッチャー首相が受賞することになったようだ。この映画にまつわる銀幕の外側の出来事なら、映画会社が気にしてばかりいるオスカーの結果よりも、僕らはこの物語の映画化に情熱を注いだグレン・クローズについてもっと知るべきだろう。ミア・ワシコウスカも恋心と良心の間で揺れるメイド役で、まさにこの映画の可憐な華。また、アイルランド出身者のキャスティングも嬉しい。ダブリンの労働者ソウルバンドを描いた「コミットメンツ」でバックシンガーを演じたブローナー・ギャラガー、「マイ・レフト・フット」のお母さんブレンダ・フリッカー、エンドロールで流れる子守歌のような美しい響きの主題歌はシンニード・オコーナー。


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黒い十人の女

2013-09-21 | 映画(か行)

■「黒い十人の女」(1961年・日本)

監督=市川崑
主演=岸恵子 山本富士子 宮城まり子 船越英二

 船越英二扮する主人公は特別いい男でもない。テレビプロデューサーという華やかな世界のに身を置いて、のんべんだらりと仕事をやってる男だ。だが女性にとにかく優しい。「僕を利用できるなら利用しなさい。」と女性たちに言う彼は、自分の立場を誇示しているようでもあり、親切な男でもある。しかしそれは彼が女性に取り入る手口なのだ。彼をとりまく女たちは、彼の力で仕事をもらったり就職した女性たち。劇中「誰にでも優しいってことは、誰にも優しくないってことよ。」と山本富士子が言う。うーん、そうかもな。結局9人の女と手を切るために偽装殺人を企てるのだ。身から出た錆・・・でもここまでは男としてどっか羨ましく思いながら観ていた。映画のクライマックス。仕事と人間関係を奪われた主人公は涙する。男って弱い生き物だ。仕事があるから自由があるようなところ、あるもんね。でもその人間関係も仕事あってのつながりでもあるのに。

 ・・・と男の話ばかりに終始してしまったが、豪華な女優陣の何とも魅力的なこと。美しき妻山本富士子、あやうげな女優岸恵子、印刷屋の未亡人宮城まり子、CFガールの中村玉緒、それに岸田今日子らそうそうたるメンバー。「8人の女たち」と比べるつもりはないけど、この男と女の人間模様、現代社会への風刺、どこかフィルムノワールを思わせる作風は、フランス映画を観るようだ。物陰から次々と女たちが出てきて、夜道で山本富士子を追いかける冒頭から、何が起こるのかワクワクしてしまう。妻に問いつめられて「実は今日もね・・・」と次から次へ告白する無神経さにも呆れる。このあたりはおかしくて仕方ない(でもそんな主人公を見て我が身を振り返る輩もおるのでは)。ともかくこれは秀作だ。繰り返し観たい。2002年には、市川監督の手で2時間ドラマとしてリメイクもされたとか。そっちはどんな出来だったのでしょうね。

(2004年筆)

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三四郎

2013-09-20 | 読書
高校時代だったか。

母が「私の理想のタイプは漱石の三四郎なのよ。」と言っていた。

どんな人物なのか、その頃から気にはなっていたのだが、
当時はなかなか腰を据えて読む機会がなかった。
その言葉を発した母の年齢よりも上になった今。
三四郎に向かい合うことにした。

新しい学問に大志を抱き上京する心意気、
能動的な友人や先生たちについていくタイプ、
女性には今ひとつ度胸がない、
ちょっと生真面目な印象・・・。
なんだ、社交的なうちの父とは違うタイプなんだ。

しかし読み終わる頃には変わってきた。
友人たちの巻き起こす騒動に巻き込まれる人の良さ、
なかなか自分の気持ちを表現できない不器用さ、
故郷の親を大切に思う気持ち、
ちょっとした人の言動を気にする小心さ。

年をとってもどこか子供じみた行動をとるうちの父親にも、
どこか当てはまるところばかりが心に残るのだ。

母にとっての父。

実はそれほどハズレでもなかったんじゃないのかな。
そう思った。

三四郎 (新潮文庫)三四郎 (新潮文庫)
夏目 漱石

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