Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

天国でまた会おう

2021-03-30 | 映画(た行)





◼️「天国でまた会おう/Au revoir la-haut」(2017年・フランス)

監督=アルベール・デュポンテル
主演=ナウエル・ペレ・ビスカヤー アルベール・デュポンテル ロラン・ラフィット

第一次世界大戦の終わりが近づいていたヨーロッパ。戦場で生き埋めにされそうになったアルベールは、エドゥアールに救われる。しかしエドゥアールは重傷を負い言葉を発することができなくなる。二人はパリに戻るが、帰還兵には大した仕事もなく生活に苦労していた。そんな時に、戦没者を悼む像を建てる話が持ち上がり、製作できる者を募集していた。エドゥアールは得意の画才を活かしてコンペに勝ち、製作費を手に入れたら逃げようとアルベールに持ちかける。エドゥアールの通訳となる少女を巻き込み、彼らは大掛かりな詐欺を実行しようとする。

「長い話になりますよ」と警察の取り調べでアルベールが語り始めるところから映画は始まるが、独特の映像美とテンポのよい展開で飽きさせない。西部戦線で塹壕の暗闇から煙草の煙と共に上官が現れる場面や、エドゥアールがその才能を発揮して様々なマスクを披露する場面は特に印象的だ。また人間模様もこの映画の見どころだ。戦争犯罪が埋もれてしまう憎っくき上官は、エドゥアールの姉と結婚してるし、二人がカモにするのは結果的にエドゥアールの父親。その父親が死んだはずの息子の存在にいつ気づくのかがハラハラさせるポイントだけに、クライマックスがグッとくる。

ラストはハッピーエンドなんだけど、そこにたどり着くまでにアルベールがいろいろ仕出かしたことは不問なの?と思うとちとモヤモヤするが、これはこれでいいのかな。


映画『天国でまた会おう』予告編


コメント (2)
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王妃マルゴ

2021-03-27 | 映画(あ行)





◼️「王妃マルゴ/La Reine Margot」(1994年・フランス)

監督=パトリス・シェロー
主演=イザベル・アジャーニ ヴァンサン・ペレーズ ダニエル・オートゥイユ ジャン・ユーグ・アングラード

16世紀のフランス。ユグノーと呼ばれたプロテスタントとカトリックの宗教対立が激しさを増していた時代。国王の妹であるマルゴとプロテスタントの指導者であるナバラ王アンリの政略結婚により事態を収拾しようとした。映画はその婚礼から始まる。婚礼に列席するため、多くのプロテスタントが街に溢れていた。国王が頼りにしていたコリニー提督が何者に襲われる事件が起き、それは数万の人々を巻き込むサン・バルテルミの虐殺事件へと発展し、ナバラ王アンリは捕らえられ改宗を迫られる。しかしアンリやプロテスタントの貴公子ラモールを陥れようとする国王の母后の策が思わぬ事態を招くことに。

イギリス史ならまだしも、中世フランス史は世界史の授業でも馴染みがないパートだ。この映画で描かれる対立の構図や利害関係をきちんと理解するには、ちょっと予習が必要かも。僕も再生ボタンを押す前に、ユグノー戦争からナントの勅令までのフランス史を復習した。世界史の授業で使う資料集は映画鑑賞にとても役に立つ。皆さまも是非お手元に。

血塗られた宗教対立の歴史を描いたこの映画は、その歴史的事実がいかに悲惨なものだったかをこれでもかと鑑賞者に叩きつける。虐殺事件の翌日道の端に絶え間なく続く死体、その死体が集められて穴に埋められる様子、切り裂かれる皮膚から飛び散る血しぶき。信条が違うことが、こんなにも憎しみを生むものなのか。その悲惨さを思い知らさせる。

そしてラストは、ギロチンで死刑となった愛人の遺体を前に佇む王妃。現実なら目を背ける光景なのに、美しい絵画を見ているかのように心に焼き付けられるのだ。

全体的に暗い場面が多いし、男たちが国王を除いてみんな黒っぽい装束。何が起こっているのか分かりづらい面もある。だがそれだけに、イザベル・アジャーニの白い肌と、凛とした表情が映るだけで空気が変わる。仮面をつけて男漁りをする場面や、プロテスタントの貴公子を手当てしながら白い衣装が血で染まる様子までもが美しい。



Queen Margot Official Trailer (2014) HD


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未来のミライ

2021-03-16 | 映画(ま行)





◾️「未来のミライ」(2018年・日本)

監督=細田守
声の出演=上白石萌歌 黒木華 星野源 麻生久美子

細田守監督作でこんなに期待を裏切られたのは初めて。「時かけ」と「サマーウォーズ」は愛してやまない作品だし、世間で評価の厳しい「おおかみこども…」はファンタジーなのにキツい現実の部分を逃げずに描いているのは個人的にはかなり好きだった。「バケモノ」は観てなくて、本作に挑んだのだけど、感じたのは最初から最後まで違和感だった。

妹が生まれて主人公くんちゃんが、親の愛情を奪われたと感じて癇癪を起こす様子がこれでもかと描かれる。子育て経験者目線だと、ここはかなりリアルを感じる部分。「あー、言われたよな、こんなこと。」と思いながら観ていた。くんちゃん側の理屈と親側の気持ちそれぞれに気づきが与えられる話ではあるのだけれど、それぞれのエピソードがどうも浅いと感じる。東京駅の迷子の場面では、不安な子供の気持ちが凝った映像で表現されているけれど、家族の中での自分の立ち位置をくんちゃんが理解する流れは納得はあっても新たなこっちの気持ちを揺さぶるような感動とは程遠く感じるのだ。

違和感の原因は声の演出と台詞にあるのではなかろうか。多くの人も感想に挙げているが、くんちゃんの声がもう少し上の分別ある年齢の男の子を感じさせるからだ。落ち着きさえある。さらに周囲の人々も含めて台詞に選ばれる言葉がいちいち堅い。例えば母親がくんちゃんとアルバムを見ながら「ひいじいじは戦時中にね、徴兵されてね」とか説明する場面。とても5歳児に話しかけている会話とは思えないのだ。

そりゃ文節を区切ってひと言ひと言しゃべるような現実的な台詞で全編やってたら、上映時間がいくらあっても足りないけれど、こんな喋りの会話じゃ分かってもらえるとは思えない。タイトルロールとして登場する、未来のミライちゃんは、各挿話でくんちゃんをナビゲートしてくれる存在でいて欲しかった。あまりにも出番が少ない。それはかなり残念。

ひいじいじが登場するエピソードは、馬やバイクに乗る疾走感があって素敵だったし、家族のつながりを強く感じさせていい場面。

ほぼ文句ばっかり言ったけれど、最後にもう一つ言わせて。子育て経験者の目線で最も違和感があったのは、あの段差の多すぎる家!階段とリビングに隣接した段差のある空間に、ベビー用の柵も置かずミライちゃんを置いておく無神経さ。あの階段だらけの家じゃ、くんちゃんは中庭に何度も落ちてアザだらけになってても不思議はない。冒頭登場するおばあちゃんが「建築家と暮らすとこんな家に住むことになるのね」とボソッと言うけれど、おばあちゃん、あなたの言う通り。小さい子供には危なっかしくて、見ちゃいられなかったよ。

と言う訳で、最後までファンタジーに気持ちを振ることができませんでした。失礼いたしましたw



映画『未来のミライ』予告編


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プリンス サイン・オブ・ザ・タイムス

2021-03-10 | 映画(は行)


◼️「プリンス サイン・オブ・ザ・タイムス/Prince : Sign O' The Times」(1987年・アメリカ)

監督=プリンス
出演=プリンス シーラ・E シーナ・イーストン

80年代は映画に活躍の場を広げたアーティストがたくさんいた時代。スティング、マドンナ、フィル・コリンズ。もちろんマイケル・ジャクソンも。われらがプリンス殿下もその一人だが、単に出演しただけではない。「パープルレイン」ではアカデミー賞歌曲賞を獲得、「アンダー・ザ・チェリームーン」では監督も兼任。本業もしっかりこなしながら、独自の世界を描いてみせた。だけど殿下のいちばんの魅力は、演奏している時のステージアクションや演出のカッコよさだと思うのだ。

映画「サイン・オブ・ザ・タイムス」は、ヨーロッパ公演を記録した作品。アルバムジャケットを再現したステージセット、時折寸劇(コントじゃねえぞ)を挟む演出が心憎い。「パープルレイン」でも激しいプレイが見られたが、「サイン・オブ…」では、ギター弾きながらスライディングしたり、趣味の悪いデザインのギターをかき鳴らす姿にとにかく惚れ惚れする。

I Could Never Take The Place Of Your Manは、この映画で聴くことのできるバージョンがいちばん好き。当時の彼女だったシーナ・イーストンも登場。バックバンドでは、シーラEがドラムセットに陣取って、素晴らしいプレイを見せてくれる。80年代最後にプリンス殿下の九州公演があった時に行っておくんだったなぁ。そんな大昔のモヤモヤした気持ちはこの映画を観るとふっ飛ぶ。

映像作品では「グラフィティ・ブリッジ」を観たことないので、挑んでみたい。

(蛇足ですが)
ブルーノート福岡でシーラEのライブを見たことがある。ステージ向かって右の最前列の席で、コーラスのおねいさんと会話できて、セットリストがチラ見できるくらいの距離。ブルーノートでは、ラテンパーカッション奏者としての出演が多かったシーラEが、その回は珍しくロックミュージシャンとしてのライブ。80年代のヒット曲満載のステージだった。ティンバレスを叩きながら歌う勇姿を目の前で見られてもう感激。屈強な警備員のおにいさんに付き添われてステージを降りるシーラEは、目の前にいた僕に、ネーム入りのドラムスティックを2本手渡してくれたのでした。リムショットの傷も生々しいそのスティック、家宝でございます。

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cfガール

2021-03-09 | 映画(さ行)


◼️「cfガール」(1989年・日本)

監督=橋本以蔵
主演=世良公則 高岡早紀 中村久美 我王銀次 岡田真澄

世良公則の主演作でなんとなく繰り返し観ているのがこの「cfガール」。世間では評価も高くないのだが、何故か繰り返し観ていた時期がある。これがデビュー作だった高岡早紀がお目当てだったのは認める。当時僕は社会人になりたての頃であれこれ迷っていたから、自信に満ちた主人公の姿がカッコよく思えたんだろうか。

主人公はCMディレクター爽太郎。世間で認められているもののクライアントの要望を無視して問題を起こすこともしばしば。映画冒頭で、彼はクビを宣告される。そこへ元カノの洋子が現れ、新たな仕事を持ちかける。爽太郎はかつての仲間を集めて、CM製作を開始。浜辺で踊る姿を見かけた少女をスカウトした。ところがその少女をめぐって何者かから圧力がかけられ始めた。

当時Vシネマでアクションもこなしていた世良公則を主役にしたんだから、銃を持たせないのはもったいないのか、部屋で殺し屋を迎え撃つようなお遊びシーンが挿入される。これ必要?と思うけれども、カッコよきゃいいか。

追っ手から逃れるためにカナダをCMロケ地を選び、雄大な風景をバックに自転車に乗る少女を撮るクライマックス。そのしごとごうまくいったか、少女の祖父である業界大物との関係はどうなったのか、何も明らかにならないまま映画は幕を降す。ま、カッコよきゃいいか。

主役を支えるのは、当時靴のCMで高岡早紀と共演していた岡田真澄、我王銀次、そして少女の祖父に三船敏郎。浜辺でバレエを踊る早紀ちゃんが美しい。主題歌「抱きしめてくれ」はもちろん世良公則。

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悪魔のような女

2021-03-04 | 映画(あ行)


◼️「悪魔のような女/Diabolique」(1996年・アメリカ)

監督=ジェレマイア・S・チェチック
主演=シャロン・ストーン イザベル・アジャーニ キャシー・ベイツ チャズ・パルミンテリ

アンリ・ジュルジュ・クルーゾー監督のサスペンススリラーの傑作をハリウッドリメイク。私立学校を経営するパワハラ夫ガイ殺害を計画したのは、妻ミアと夫の愛人である同僚教師ニコル。薬物を混ぜた酒を飲ませて溺死させた後、学校のプールに遺体を沈めた。しかしプールの水が抜かれると遺体は消えていた。遺体はどこへ?夫は生きているのか?不安になる妻と気丈に立ち振る舞う愛人。そこに私立探偵の女性シャーリーが現れる。

オリジナルは随分前に観ていて、モノクロのシャープな映像と戦慄のクライマックスが強く印象に残っていた。リメイクたる本作の魅力は何よりもキャスティングだろう。ニコル役はシャロン・ストーン、ミア役はイザベル・アジャーニ。

どちらも魅力的な役柄なのだが、その対比は演技だけでなくファッションでも印象づけている。男子校で教鞭とってるとは思えない派手な服装に豹柄のブラジャーのシャロン・ストーンに感じるのは揺るがない自信。一方、心臓病を患う元尼僧役のイザベル・アジャーニは、白のナイトウェアや露出の少ない黒っぽい服装で、大人しさや気弱な印象を与えている。そんな二人だが、ストーリーが進むにつれて気持ちが揺らいでいく様子がスリリング。こういう役者を活かしたキャラクターづくりは、ハリウッドリメイクの上手さだ。

探偵役のキャシー・ベイツも、決めるところでビシッと決めるかっこよさ。ラストシーンは完全に二人を喰ってる。彼女のゆったりとした服装は、見た目よりも楽であることを選ぶ年齢であることや、身体の線を出さない事情があることをきちんと納得させてくれる。いかにも悪党ヅラのチャズ・パルミンテリと言い、役者の使い方は確かにうまい。しかし、オリジナル版で感じた"スリラー"映画と呼べる程のおどろおどろしさはこのリメイクには乏しいのがちと残念。

学校のPRビデオを撮る為に雇われた二人組が出てくる。生徒たちに演出の指示をする黒縁メガネの男性は、後に映画監督となるJ・J・エイブラムス。

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