■「ブリッジ・オブ・スパイ/Bridge of Spies」(2015年・アメリカ)
●2015年アカデミー賞 助演男優賞
●2015年全米批評家協会賞 助演男優賞
●2015年NY批評家協会賞 助演男優賞
監督=スティーブン・スピルバーグ
主演=トム・ハンクス マーク・ライランス エイミー・ライアン スコット・シェパード
4年前の大統領選挙の時。
スピルバーグはあの地味な映画「リンカーン」を撮った。
相次ぐバッシングが政治的、人種的に国家を二分するに至り、みんながウンザリしたあの時に、
どういう人物が大統領にふさわしいかを「リンカーン」を通じて示してみせた。
再び大統領選挙が翌年に迫る2015年に製作されたのが、この「ブリッジ・オブ・スパイ」。
派手なエンターテイメント作品が目立つフィルモグラフィーの中で、
本作は「シンドラーのリスト」に代表されるシリアス路線の一本と言えるだろう。
冷戦の最中で、ソビエトのスパイを裁く法廷で被告の人権を守り、
逆にアメリカ兵が同じ立場になった時に交換の手段にできると主張した実在の弁護士が主人公。
敵国スパイの弁護をしたことで、反感を買い、
また捕虜交換の交渉では国のバックアップをもらえず自らの信念で立ち向かう物語に、緊張感が全編を覆う。
スパイを扱った「ミュンヘン」程の悲壮感はなく、手堅い仕上がり。
ベルリンに急ピッチで壁が作られる緊迫した様子にしても、アメリカの偵察機U-2機撃墜シーンにしても、
ラストの捕虜受け渡しの場面にしてもスピルバーグ演出は台詞に頼らず、見せ方が上手い。
この映画で心に残るのは、主人公の敵味方を超えた人権意識と、"不屈の男"振り。
「これが君の贈り物だよ」というクライマックスはぐっときますな。
だーれかさんの人種や移民バッシング発言が国家を二分した2016年のアメリカで、
この映画が訴えた人権意識がどれだけ届いたかはわからない。
だけど、これだけは言える。
世の中のお父ちゃんは、この弁護士さんだけでなく、みーんな人知れず頑張ってるんだよ。うん。
映画『ブリッジ・オブ・スパイ』予告A(120秒)
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