Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

ブリッジ・オブ・スパイ

2017-01-24 | 映画(は行)

■「ブリッジ・オブ・スパイ/Bridge of Spies」(2015年・アメリカ)

●2015年アカデミー賞 助演男優賞
●2015年全米批評家協会賞 助演男優賞
●2015年NY批評家協会賞 助演男優賞

監督=スティーブン・スピルバーグ
主演=トム・ハンクス マーク・ライランス エイミー・ライアン スコット・シェパード

4年前の大統領選挙の時。
スピルバーグはあの地味な映画「リンカーン」を撮った。
相次ぐバッシングが政治的、人種的に国家を二分するに至り、みんながウンザリしたあの時に、
どういう人物が大統領にふさわしいかを「リンカーン」を通じて示してみせた。

再び大統領選挙が翌年に迫る2015年に製作されたのが、この「ブリッジ・オブ・スパイ」。
派手なエンターテイメント作品が目立つフィルモグラフィーの中で、
本作は「シンドラーのリスト」に代表されるシリアス路線の一本と言えるだろう。
冷戦の最中で、ソビエトのスパイを裁く法廷で被告の人権を守り、
逆にアメリカ兵が同じ立場になった時に交換の手段にできると主張した実在の弁護士が主人公。
敵国スパイの弁護をしたことで、反感を買い、
また捕虜交換の交渉では国のバックアップをもらえず自らの信念で立ち向かう物語に、緊張感が全編を覆う。

スパイを扱った「ミュンヘン」程の悲壮感はなく、手堅い仕上がり。
ベルリンに急ピッチで壁が作られる緊迫した様子にしても、アメリカの偵察機U-2機撃墜シーンにしても、
ラストの捕虜受け渡しの場面にしてもスピルバーグ演出は台詞に頼らず、見せ方が上手い。

この映画で心に残るのは、主人公の敵味方を超えた人権意識と、"不屈の男"振り。
「これが君の贈り物だよ」というクライマックスはぐっときますな。

だーれかさんの人種や移民バッシング発言が国家を二分した2016年のアメリカで、
この映画が訴えた人権意識がどれだけ届いたかはわからない。
だけど、これだけは言える。
世の中のお父ちゃんは、この弁護士さんだけでなく、みーんな人知れず頑張ってるんだよ。うん。

映画『ブリッジ・オブ・スパイ』予告A(120秒)


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シング・ストリート 未来へのうた

2017-01-21 | 映画(さ行)

■「シング・ストリート 未来へのうた」(2015年・アイルランド=イギリス=アメリカ)

監督=ジョン・カーニー
主演=フェルディア・ウォルシュ・ピーロ ルーシー・ボーイントン マリア・ドイル・ケネディ エイダン・ギレン

ジョン・カーニー監督の「ONCE ダブリンの街角で」「はじまりのうた」はどちらも愛して止まない映画。
監督の新作は、1985年を舞台に高校男子がバンドを始める青春映画だ。

聴く音楽によって影響されちゃってオリジナル曲が似てきたり、ファッション真似たりする様子が、
同じ時代に生きてきて自分も音楽活動してただけに「わかるなぁー♪」と嬉しくなってくる。
彼らのバンド最初のオリジナル曲"モデルの謎"は、duranduranの"Girls on film(グラビアの美少女)"が元ネタ?。
親の喧嘩が聞こえなくなるように兄貴の部屋でManeaterを聴く場面が好き。
大学中退して家でゴロゴロしてる兄貴が、主人公に音楽指南してくれる。
大好きなロックムービーには必ずこういう存在がいる。主人公に音楽面だけでなく、生き方でも啓示を与えてくれる素敵な存在だ。

思えばあの頃、好きな音楽が自分の世界をグイグイ広げてくれた。
そして好きな音楽が増えるきっかけには必ず誰かがいた。
毎週オススメ音楽を配信してくれる便利な現在とは違って、音楽は人と確実につながっていたと思うのだ。
それを思い出させてくれる。
だから僕らは、音楽配信を一人で楽しむんじゃなくて、誰かと語り合わなきゃいけない。あ、本編には関係ないね。

前2作と比べるとなーんか物足りない。
音楽の力や素晴らしさ、主人公の成長は確かによいのだけれど、話に深みが足りない気がする。
離婚直前の両親やメンバーの家族はもっと出てきて欲しかったかも。
それに、あの年頃ならバンド内での横恋慕みたいなこともあるだろに。
そういう意味では、J・J・エイブラムス監督の「スーパーエイト」は良くできた映画だったよな。

イギリスを目指すラストの二人を冷静な目で見てしまう自分。あー、10代でこの映画を観たかった。
でもこの映画は、あの頃の自分を思い出させてくれる。

僕と不思議と波長があって、国語の成績が良くて、センスが良い同じ学年の女のコに、
「ねぇ、歌詞書いて欲しいんだけど」
と切り出したあの春の日を。

劇中、音楽通の兄貴のひと言。
「彼氏はジェネシス聴いてたのか?そいつは大したヤツじゃねぇよ。フィル・コリンズ聴くようなヤツは女にモテない」

わっ、わるかったな!ジェネシスファンで!(泣)

『シング・ストリート 未来へのうた』予告編


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この世界の片隅に

2017-01-15 | 映画(か行)


「あの花」や宮崎駿の「風立ちぬ」が世に出た時に、こういう話は何もアニメでは やらんでも…と多くの人が言った。
高畑勲の「かぐや姫の物語」が世に出た時に、アニメだからこういうことができたと言った。

実写でも「この世界の片隅に」を映像化することはできただろう。
しかし、アニメだからこそ伝わる情緒や激しさ、再現できる風景がこの作品にはあるし、
僕らは登場人物たちに身近な人のような思い入れを抱くことができる。

それだけに、この人たちが生きる戦争の悲惨さを思い知ることになる。
そして何よりも、悲惨な現実や実写では目を背けたくなるような描写をも僕らは受け入れることができる。
それはアニメだったから。

「火垂るの墓」がキツくて観られない…という人にもこの作品はきっと心に届くはず。
厳しい現実はあるけれど、それでも日常はある。ちょっとしたファンタジー要素と、
こうの史代の温かみのあるキャラクターたち。

ボイスキャストも素晴らしい仕事。
クラウドファンディングで製作費が集められたという事実も、現実世界も捨てたもんじゃないな、って気持ちにさせる。
責められるべきは、出演者の事務所トラブルばかりを報道して、作品に触れようともしなかったマスコミだろう。

キネ旬1位は納得です。

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tak's Movie Awards 2016

2017-01-07 | tak's Movie Awards
毎年、その年に観た新旧問わずすべての映画からベスト作品を選出する個人的awardをやってきました。しかしながら、リアルワールドでの様々な事情から、2016年はこれまでのように映画館通いができませんでした。このアワードは僕が映画ファンを公言した1980年から、毎年選出してきた個人的映画賞なのですが、2016年は僕の映画生活史上、最も鑑賞本数の少ない年となりました。

それでもなんとか喰らいついた新作と近作から選出をしました。なーんとか2017年はいろいろ観たい。
という訳で、ベスト10は今年はやりません。あしからず。



■作品賞=「ブルックリン」(ジョン・クローリー/2015年・アイルランド=イギリス=カナダ)
■アニメーション作品賞=「君の名は。」(新海誠/2016年・日本)

□監督賞=イングマル・ベルイマン「野いちご」(1957年・スウェーデン)「叫びとささやき」(1972年・スウェーデン)

□主演男優賞=ロマン・デュリス「彼は秘密の女ともだち」(2014年・フランス)
□主演女優賞=シアーシャ・ローナン「ブルックリン」(2015年・アイルランド=イギリス=カナダ)

□助演男優賞=ドニー・イェン「ローグ・ワン スターウォーズ・ストーリー」(2016年・アメリカ)
□助演女優賞=ルーニー・マーラ「キャロル」(2015年・イギリス=アメリカ=フランス)

□音楽賞=エンニオ・モリコーネ「ヘイトフル・エイト」(2015年・アメリカ)


社会人になりたての時、いろんな人生の決断をした時の不安だった"あの頃"の自分に再会できる素敵な作品。それが「ブルックリン」。
その不安な気持ちを抱いていたのは僕も同じ。観た後でジワジワとくる映画でした。

主演女優賞は「キャロル」のケイト・ブランシェットと悩んだけど、結局シアーシャの瞳の輝きに負けました。

ヨーロッパ映画好き要素を残したくて、主演男優賞はおフランス映画で。

助演男優賞、本音は野村萬斎にあげたい。モーションキャプチャーでゴジラを演じたんだもの。
もちろんドニーも素晴らしかった。

アニメは「聲の形」を見逃したのが残念だったけど、
なんだかんだ言っても「君の名は。」は秀作。それは誰もが認めてること。

映画館に行けない日々に、鑑賞眼を落とすまいと旧作をDVDで観た。
そんな旧作に敬意を表して、監督賞は北欧の巨匠ベルイマンに。
ウディ・アレンのルーツはここにあったのだ、と心底納得。

2017年は、もうちょっと映画館に行きたい。
今年もよろしくお願いします。

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コメント (4)
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