Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

キングダム

2019-07-27 | 映画(か行)
◾️「キングダム」(2019年・日本)
 
監督=佐藤信介
主演=山崎賢人 吉沢亮 橋本環奈 長澤まさみ 大沢たかお
 
原作は未読。おまけに中国史は大の苦手。日本人キャストの中国時代劇は日本映画史上数々の作品があるが、敬遠していて「敦煌」くらいしかまともに観ていない。しかし「キングダム」アニメ版は最初の数話を見て、ちょっと心惹かれていたので映画化に挑んでみた。
 
うーん、意外と面白い。二人の主人公を軸に、王座奪還のストレートな話になっているからだろう。「図書館戦争」でも信念と熱意ある人々のエンターテイメントを撮ってきた佐藤信介監督だけに、今回も濃厚なキャラクターたちそれぞれの個性が際立っていてなかなか楽しい。また台詞もアニメで聞いたのとほぼ同じようだし、特に喋り方はかなりアニメ寄り。特に大沢たかお演ずる大将軍は、ちょっと笑えてしまうくらいに忠実。
 
気になったのは、山崎賢人の台詞。信は荒々しい役柄だけに、王にも無礼で言葉使いが悪いのは当然なのだが、「ぜってーオレが殺してやる」「てめー、わかってんのか。あん?」とか、今どきの若者の喋りにしか聞こえないのが最後まで違和感。このところ、仗助、斉木楠雄、折木奉太郎、さらにこの信とコミックやアニメのキャラばかり続いて、等身大の役がないのが気の毒。他にいないのかな。この映画でいちばん光ってたのは吉沢亮くん。
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山﨑賢人,吉沢亮,長澤まさみ,橋本環奈,本郷奏多
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
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天気の子

2019-07-23 | 映画(た行)
◼️「天気の子」(2019年・日本)
 
監督=新海誠
声の出演=醍醐虎汰朗 森七菜 本田翼 小栗旬
 
新海誠監督の新作。正直な気持ちを言えば、僕は10代でこの作品に出会いたかった。「シング・ストリート 未来へのうた」のラストシーンでも同じことを思った。それは、僕が単に主人公二人との年齢ギャップで否定的になった訳じゃない。主人公二人に特化した展開は青春映画なら当然だし、メジャー作品として綺麗なものが多かった前作と違って、薄汚い部分までより深く都会を描くことは賞賛すべきだ。思いに従って突っ走るクライマックスの主人公を、僕は手放しで頑張れって思えなかった。周りの人々の気持ちや思いがそれぞれに胸に響いて、主人公二人に気持ちが集中できなかったのだ。もし同世代だったら、より二人をまっすぐ見据えられると思うのだ。
 
「君の名は」以上に深く掘り下げられた物語は、周囲の人物描写も説得力が増している。娘と会えない父親、就活で悩む女性、子供たちが守ろうとしたものと、大人たちが守ろうとしたもの。晴れを望む人々の思い。その現実味のある描かれ方やキャラクターの位置付け。それらが一気にぶつかり合うクライマックス。僕は感情移入のしどころを迷ってしまったのかもしれない。それは人間模様が深くなった監督の力量ゆえだ。
 
気持ちがもう一つ乗れなかった理由は、ヒロインが起こす超自然的な現象についての周囲の反応がリアルさを欠いていることだ。人間模様の深さに比べて、現実離れしたストーリーを受け入れさせるには、どうも説得力が足りないと感じる。ファンタジーじゃん、と言われればそれまでだが、緻密な人物描写との差が歴然としていたのは、僕の気持ちが盛り上がれなかった理由だ。確かに「君の名は」も超自然的な話だが、設定を受け入れるのに不思議と無理はなかった。それは最後まで二人だけに集中したストーリーだったからなのかもしれない。あ、あとスポンサー企業商品の過剰な露出にはやや冷めた。仕方ないのかもしれないけどね。
 
それにしても雨粒や流れる水の表現の緻密さには驚かされる。日本アニメ作品では、大きく水が動く時にドラマも大きく動くことがある。「千と千尋の神隠し」も「カリオストロの城」も「思い出のマーニー」も、最近なら「きみと波にのれたら」だってそうだ。「天気の子」の緻密さとクオリティは本当に素晴らしい。RADWIMPSの音楽も、単独の楽曲としての良さよりも作品との一体感が増した気がする。野田洋次郎の選ぶ言葉は、他のアーティストにない余韻がある。不思議と心に残るのだ(Aimerに提供した「蝶々結び」は特に傑作)。
 
好き嫌いと賛否もある作品だとは思う。だが、過去や伝統と現在未来の対比は心地よいし、闇を描くビターな部分に従来からの持ち味を感じるし、これだけの完成度の作品を好みだけで一蹴することは間違いだと僕は思う。



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#PrayForKyoani

2019-07-19 | Weblog
令和元年7月18日
 
突然伝えられた惨事に言葉がない。ここ十数年、自分が京アニ作品にどれだけ心を動かされてきたか、支えられてきたか、人との接点になってくれたか。日本カルチャーにとっても大きな損失。亡くなった方々のご冥福をお祈りします。被害に遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます。 #PrayForKyoani
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ふたりの5つの分かれ路

2019-07-18 | 映画(は行)
◾️「ふたりの5つの分かれ路/5X2」(2004年・フランス)
 
監督=フランソワ・オゾン
主演=ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ ステファーヌ・フレス ジェラルディン・ペラス
 
フランソワ・オゾンのフィルモグラフィを改めて見ると、男女の恋愛がテーマの作品ってない。ストーリー上の要素として恋愛はあるけど、主題とは言い難い。この「ふたりの5つの分かれ路」は、そんなオゾン作品の中で男女の関係を真正面から描いた作品だ。だがオゾン監督が、誰もが撮るような男と女の話にするはずがない。映画は5つのパートに分かれ、いきなり離婚から始まり、出産、結婚、出会いと遡っていくのだ。
 
離婚が成立した後、最後にもう一度抱き合おうとする二人。しかし、その行為はうまくいかず「やり直せないか?」のひと言も虚しく女は部屋を出ていく。
 
時間は遡り、ゲイである兄とその恋人が登場し、パートナーとの関係はいかにあるべきかという会話が続く。妻を裏切ったことはあるか?との問いに躊躇なく話を始める男。虚ろな眼でその話を聞く女。何故彼女は怒らない?子供も授かった夫婦なのに。
 
その子の出産に関するエピソードへと時間は遡る。出産を終えて、連絡も入っているのに男は病室に近づこともしない。不安なムードだけが広がる。男の行動がさらに疑問を深めていく。そして結婚当日、さらに出会いとストーリーは逆走していく。
 
オゾン作品では珍しく、セックスは男側の支配的な行為のような印象だし、クスッとさせるユーモアは感じられない。結末が分かった上で二人の出会いまで見るのは正直キツい。今まで観たオゾン作品の中で最も精神的に残酷な映画だし、僕は観ているのが辛かった。ラストの出会いの海辺があまりにも美しくて、その気持ちはさらに募る。
 
出会わなければよかったのか。人生という時間のひと時を、ただすれ違い続けてきたのか。所詮男と女は、いや、人と人はすれ違いを重ねながら生きてくもの。淡々としたムードだし、とんでもなく寂しい気持ちにさせられた。カップルの数だけ、それぞれに違う男と女の物語はある。だから面白いし、だから切ない。
ふたりの5つの分かれ路 [DVD]
ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ,ステファン・フレイス,ジェラルディーヌ・ペラス,フランソワーズ・ファビアン,アントワーヌ・シャピー
ギャガ
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新聞記者

2019-07-07 | 映画(さ行)
◾️「新聞記者」(2019年・日本)
 
監督=藤井道人
主演=シム・ウンギョン 松坂桃李 本田翼
 
もう何年もニュース番組を見てイライラしている。連日報道されているのに何も明らかにならない事件、答えにならない国会答弁、敵対心剥き出しの政治家の発言、閣議という密室でひっくり返される政府の方針。戦争で領土取り返せと言ったバカもいるが、核を持つことは憲法違反でないと言った輩が出たのも現政権の初期だったよね。何かがおかしい。ニュースを見て、読んで日々そう思う。そして政府が公平な報道とやらをマスコミに求め、モノを言えるキャスターたちはテレビから次々と姿を消している。もう危機感しか感じない。
 
そんな2019年にこの映画が製作され、参議院選挙前に全国規模で公開されたことを、心から讃えたい。近頃の政治をめぐるキーワードが散りばめられてはいるけれど、映画の基本は政治と報道をめぐるサスペンス。確かに近年騒がれた事件の裏側を感じさせるけれど、露骨な反政権映画とは思わない。でもね、こうした題材や描写がある映画が公開されることで、ピリピリする世の中自体がおかしい。それくらいに日本は歪んでしまっている。ハリウッドならもっともっと政治色の強い映画はたくさん製作されているし、スピルバーグは大統領選挙に「リンカーン」をぶつけて、どんな人物が大統領にふさわしいのか説いてさえいる。それを日本でやったら、誰かさんはきっと印象操作とか言うし、賞をとっても褒めないでしょね。
 
本当は相容れない間柄の記者と官僚それぞれの葛藤。映画はどちらかに偏ることもなく、それぞれの立場が抱えるジレンマと勇気と信念を描いていく。二人が思い悩む様子が生々しい。松坂桃李が生まれたばかりの子供を抱いて「ごめんな」と繰り返し、妻役本田翼が何も聞かずに「大丈夫だよ」と抱きしめる場面に涙がにじんだ。シム・ウンギョンの視線の熱量にも圧倒された。
 
主人公の元上司を演ずる高橋和也が死を選ぶ場面は切なさを超えて痛ましい。こんな思いをする為に、使い捨てになるために国家公務員になったんじゃないのに。スクリーンのこっち側の現実世界。近頃の事件で文書改ざんを命じられた人々が思い出されて胸が震える。そして、内閣情報調査室の上司が最後に放つひと言に、戦慄が走る。
 
若い世代に観て欲しい。監督も30代で、政治に興味がないからとオファーを何度も断ったと聞く。でもその世代だからこそ記者側にも官僚側にも偏らずに撮れた映画だと思える。あくまでこの映画はフィクション。でも紛れもない"今"が生々しく刻まれている。
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ミラクルワールド/ブッシュマン

2019-07-03 | 映画(ま行)
■「ミラクルワールド ブッシュマン/God Must Be Crazy」(1981年・南アフリカ)

監督=ジャミー・ユイス 
主演=ニカウ カポ サンドラ・プリンスロー ブライアン・オーショネシー 

80年代育ちの僕ら世代は知らぬ者のない大ヒットコメディ「ブッシュマン」(1982年の興収1位)。主役を演じたニカウさんは、日本でも大人気となり、バラエティ番組にも幾度も登場していた。あの笑顔には癒されてしまう。ニカウさんはカラハリ砂漠に住むコイサン族。彼らは俗称で「ブッシュマン」と呼ばれる。自然と共存し、所有するという観念のない平和な生活。

映画は、そんな彼らの村にセスナ機から落された1本のコーラ瓶から始まる大騒動を描く。 村に災いをもたらした悪しきものとして、コーラ瓶を地の果てに捨てに行くことになったニカウさんが、旅の途中で出会う文明社会の人々。政情不安なアフリカの地では内戦も起こっており、ニカウさんはいつしかテロリストが起こした事件にも巻き込まれてしまう。次々に起こる出来事を自然体で乗り切っていく姿に大笑い。

でもエンドクレジットを眺めながら、しあわせって何なんだろうと考えている。便利なものに囲まれていることや、僕らが考える豊かな生活って、コイサン族から見たら奇怪なものかもしれない。 

閑話休題。一部世代限定だと思うが、学校の体育館で体操座りして「砂漠の冒険」という映画を観たことはないだろうか。あれもジャミー・ユイス監督作。セスナ機が砂漠に墜落して投げ出された少年が、サソリや毒ヘビや獣に襲われながらも懸命に生き抜こうと頑張るお話だ。サソリに襲われるシーンがトラウマになったという方もおられるのでは。動物ドキュメンタリーの仕事でも知られており、自然の美しさと厳しさを深く知る監督なのだ。 

ともかく本作はカルチャーギャップコメディの良作。個人的には、語り継がれて欲しい映画のひとつ。生意気な中坊だった僕は、これを観る前には"未開の地の素朴な人々を笑いのネタにしやがって"と、快く思ってはいなかった。でも実際に観て、監督が見せたいものが理解できて、ニカウさんの笑顔と素朴なストーリーでお気に入りになった。 

なお「ブッシュマン」は差別的な意味を持つことから、続編公開時にタイトルは「コイサンマン」と改められた。DVDリリース時にこの1作目が「コイサンマン」、続編は「コイサンマン2」とされてリリースされているのでご注意を。


コイサンマン [DVD]
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コイサンマン

2019-07-02 | 映画(か行)
◾️「コイサンマン(初公開時)/コイサンマン2(DVD再発時)」(1989年・ボツワナ)
 
監督=ジャミー・ユイス
主演=ニカウ キリ キサ レナ・ファルジア ハンス・ストリドム
 
80年代組の僕らにとって「ブッシュマン」は忘れ得ぬ映画。僕も映画館で2回観た。何故か「燃えよドラゴン」のリバイバルと2本立てだったのをよーく覚えている。ブッシュマンは差別的呼称であるとのことから、この第2作が劇場公開される際に「コイサンマン」に改められた。後に1作目が「コイサンマン」に改められたので、第2作は現在「2」となっているのだ。
 
正直言うと少々がっかりした。というのは前作にあった文明批判的部分が全く消え失せて、徹底したドタバタコメディとなっていたからだ。前作が現代文明社会への皮肉とコメディとしての面白さが絶妙なバランスで成立していた映画だったことが、改めてわかった。
 
しかしこの「コイサンマン」がコメディとして面白くないか?というと、それは違う。これはきっとファミリーで楽しめる映画。ニカウさんの子供が密猟者のトラックに乗ったことに端を発して、子供を探して疾走するニカウさん、軽飛行機で遭難してしまう男女の学者、兵士のエピソードが次第にひとつの物語へ収束していくところは実に見事。そしてジャミー・ユイス監督お約束、生き生きした野生の動物たちを描くことも忘れてはいない。それらがギャグに効果的に結びついているからまた面白い。カラハリ砂漠周辺の風景も見どころのひとつだろう。
 
でもねぇ・・・やっぱりニカウさんがもっと観たい。文明人が砂漠で右往左往する面白さばかりが印象に残ってしまうのは残念だ。このシリーズは、この後香港資本で製作された続編が数本ある。グロリア・イップ共演で万里の長城をニカウさんが走るお話や、キョンシーと対決するお話もあるとか。観てみたいっ!。



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