
◼️「シビル・ウォー アメリカ最後の日/Civil War」(2024年・アメリカ)
監督=アレックス・ガーランド
主演=キルステン・ダンスト ケイリー・スピーニー ワグネル・モウラ スティーブン・ヘンダーソン
アメリカ大統領選の度に、支持政党や人種をめぐる対立や分断が極めて激しくなる。海を挟んだわが国にいても心配になるくらいだ。そんな大統領選の年に向けて映画人も様々な作品を発表してきた。2024年に製作されたのは「エクス・マキナ」のアレックス・ガーランド監督による本作。アメリカで内戦が勃発する物語だ。選挙対立もヒートアップする中、11月の一般投票前に日本公開された。アメリカ社会の分断が深刻に伝えられる中、話題性もタイミングも絶妙だったと言えるだろう。外国映画不振と言われる中でそれなりにヒットしたようだし。
ワシントン陥落との情勢も聞かれる中、大統領に歴史的なインタビューを目論んだジャーナリストのジョエルと女性写真家リー。リーの師匠とも言える老ジャーナリストのサミーと父のフィルムカメラを手にしたジェシーと共に、彼らは一路ワシントンを目指す。
道中で様々な危機に直面するのだが、中でも強烈な印象を残すのが、死体の山を前に赤いサングラスの兵士が銃をブッ放す場面。
「どこの種類のアメリカだ?」
国内で対立する州の出身だけでなく、アジア出身というだけで銃弾が飛ぶ。個人の好みだけの問題でだ。対立が人を狂わせる。
クライマックスは戦場カメラマンが最前線に立つ過酷な現場。銃弾が飛び交うあの場所に、武装もなくカメラだけを持って飛び込む。ジョエルが戦場を前にして興奮する気持ちを口にする映画前半。その気持ちが憑依したかのように、ジェシーが自ら最前線に飛び込んでいくのが映画後半。これはジェシーの成長物語とも言える。クライマックスで彼女が向き合った被写体は、エンドクレジットで浮かび上がってくる。死体を前に笑う人々。分断がもたらす恐ろしさ。
キルステン・ダンストが修羅場をくぐり抜けてきたカメラマンを見事に演じる。疲れ果てた表情と厳しい口調の中に見せる優しさ。吸血鬼映画の子役時代から注目してきた僕ら世代には、キルステンの力演も見どころ。彼女が言うひと言が心に残る。
戦場で生き延びて写真を撮ることで、政府に訴えているつもりだった彼女。
「こんなことはやめなさい、って。」
報道の力。それが無力となる戦争という狂気。
映画として惜しいのは、こんな激しい対立が生まれた背景を示してくれないこと。テキサスとカリフォルニアが組んでるという設定からも、二大政党の政治的対立が原因ということではなさそうだ。でもエンドクレジットを見ながら思った。こじれるだけこじれたこの場面では、もう理屈じゃないんだろうなって。
ワシントン陥落との情勢も聞かれる中、大統領に歴史的なインタビューを目論んだジャーナリストのジョエルと女性写真家リー。リーの師匠とも言える老ジャーナリストのサミーと父のフィルムカメラを手にしたジェシーと共に、彼らは一路ワシントンを目指す。
道中で様々な危機に直面するのだが、中でも強烈な印象を残すのが、死体の山を前に赤いサングラスの兵士が銃をブッ放す場面。
「どこの種類のアメリカだ?」
国内で対立する州の出身だけでなく、アジア出身というだけで銃弾が飛ぶ。個人の好みだけの問題でだ。対立が人を狂わせる。
クライマックスは戦場カメラマンが最前線に立つ過酷な現場。銃弾が飛び交うあの場所に、武装もなくカメラだけを持って飛び込む。ジョエルが戦場を前にして興奮する気持ちを口にする映画前半。その気持ちが憑依したかのように、ジェシーが自ら最前線に飛び込んでいくのが映画後半。これはジェシーの成長物語とも言える。クライマックスで彼女が向き合った被写体は、エンドクレジットで浮かび上がってくる。死体を前に笑う人々。分断がもたらす恐ろしさ。
キルステン・ダンストが修羅場をくぐり抜けてきたカメラマンを見事に演じる。疲れ果てた表情と厳しい口調の中に見せる優しさ。吸血鬼映画の子役時代から注目してきた僕ら世代には、キルステンの力演も見どころ。彼女が言うひと言が心に残る。
戦場で生き延びて写真を撮ることで、政府に訴えているつもりだった彼女。
「こんなことはやめなさい、って。」
報道の力。それが無力となる戦争という狂気。
映画として惜しいのは、こんな激しい対立が生まれた背景を示してくれないこと。テキサスとカリフォルニアが組んでるという設定からも、二大政党の政治的対立が原因ということではなさそうだ。でもエンドクレジットを見ながら思った。こじれるだけこじれたこの場面では、もう理屈じゃないんだろうなって。