Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

2023年10月のプレイリスト

2023-10-31 | 今日のBGM

◆2023年10月のプレイリスト
2023年10月に聴いていた愛すべき31曲

1 DIGNITY(Ado)
B'zが楽曲提供した「沈黙の艦隊」主題歌。いかにも松本孝弘なフレーズが随所に。
2 レーザーショック(PANTA)
伊藤銀次によるカーズっぽいアレンジ。
3 Sugar Doughnuts(水樹奈々)
気づかないはずがない/そこら中Loveでいっぱい
4 RIDE ON TIME(大橋純子)
上手い人は何を歌っても上手い。アレンジはほぼオリジナルなのに、ソウルフルな印象。
5 MOTHER NATURE'S SON(GLAY)
ビートルズのカバー。
6 オトナブルー(新しい学校のリーダーズ)
歌謡曲テイストがなんか好き。
7 灰色の街(松田優作)
映画「ヨコハマBJブルース」鑑賞。
8 Mela ! (緑黄色社会)
今どきヒット曲を聴く父親に、長女が「何があった?」って視線を投げている😟
9 From Russia With Love(Matt Monro)
「007/ロシアより愛をこめて」4Kレストア版鑑賞。やっぱり名作😆
10 ハートはお手上げ(鈴木愛理)
アニメ「かぐや様は告らせたい」ED曲。

11 マシュ・ケ・ナダ(由紀さおり&ピンク・マルティーニ)
イージーリスニング育ちの過去があるので、こういうのたまに聴きたくなる。
12 あゝ無情(JUJU)
アン・ルイスのカバー。私も十八番です🎤
13 Stop! In The Name Of Love(globe)
デジタルビートにシュープリームスの名曲が乗る。
14 Joe Le Taxi(夢見るジョー)(Vanessa Paradis)
憂いのあるシンセ音にチャチャチャのリズム、そして舌足らずなボーカル。フレンチロリータに弱いオレ。
15 Daydream Believer(原田知世)
新作アルバム収録、モンキーズのカバー。
16 喝采-思い出のライト-(谷村新司)
79年リリースのソロアルバムより。訃報を聴いて選んだのはこの曲。最後の歌詞がしみる。
Today、Tomorrow、そしてSunset/ありがとう、さようなら
17 Lowdown(Boz Scaggs)
初めて聴いたボズのアルバムは「Silk Degrees」だった。
18 La Guerre des Boutons(わんぱくマーチ)(Jose Berghmans)
映画「わんぱく戦争」鑑賞。いーざーゆーけや、なーかまたーちー♪
19 ff(フォルティシモ)(大友康平)
ハウンドドッグ楽曲を歌うセルフカバーアルバムより。イントロのシンセも間奏のキーボードソロも練習したっけ🎹
20 ギターと孤独と青い惑星(結束バンド)
季節の変わり目の服は何着りゃいいんだろ/春と秋どこいっちゃったんだよ

21 Eat You Up(素敵なハイエナジーボーイ)(Angie Gold)
80年代ディスコチューンを聴き始めたらストレスが溜まっている証拠🤪
22 ミラクル・ガイ(謝花義哲)
林哲司作曲、ジャッキー・チェン映画の挿入歌。名曲だよな。
23 Foolish War(白井貴子&The Crazy Boys)
アルバム「FLOWER POWER」のアナログ盤が再リリースされるとか。80年代が語り継がれるのは嬉しい。
24 Butterfly Effector(TRUE)
元気が欲しくなったらおつるさんのアニソンを聴く。
25 Fast Track(Four of A Kind)
本田雅人🎷と塩谷哲🎹。このバンド初めて聴いた。カッコいい🤩
26 Get Back(Billy Preston)
この人が弾くピアノはほんっとカッコいいのよ。
27 I BELIEVE(華原朋美)
昔から思ってたけど、これを宇都宮隆のボーカルで聴いてみたい。
28 The Summertime Killer(Luis Bacalov)
オリビア・ハッセーがきゃわゆい映画「サマータイム・キラー」鑑賞。音楽はタランティーノが自作に引用した。
29 とまどい→レシピ(みかくにんぐッ!(夜ノ森小紅(照井春佳)/夜ノ森紅緒(松井恵理子)/三峰真白(吉田有里))
アニメ「未確認で進行形」OP曲。お気に入りなのだ。
30 Sweetest Music(竹内まりや)
TOTOメンバー、ジェイ・グレイドン、デビッド・フォスターが参加したアルバムからのシングル。

31 Devotion(TM Network)
連日報道される紛争という危機的な報。
地球は今震えてる/僕らも同じ 目の前の不安に









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サマータイム・キラー

2023-10-30 | キル・ビルのルーツを探せ!

◼️「サマータイム・キラー/The Summertime Killer」(1973年・フランス=イタリア=スペイン)

監督=アントニオ・イサシ
主演=クリストファー・ミッチャム オリビア・ハッセー カール・マルデン クローディーヌ・オージェ

久しぶりの 「キル・ビルのルーツを探せ!」 カテゴリのレビュー。今回は「サマータイム・キラー」。「キル・ビルvol.2」のクライマックスが迫るあたり、ビルの居所を聞き出したヒロインが、車を走らせ、日本刀を背に部屋に乗り込む場面で、本作の音楽が使われており、サントラにも収録されている。「キル・ビル」は復讐への遠い道程の物語。その結末が迫る場面で、この映画の曲が使われた意図とは。毎度、勝手な考察をしておりまふ。お目汚し失礼。

主人公レイは、幼い頃に父親がマフィアの手で殺されるのを目撃した。成長した彼は次々に父の仇を殺害し、残る一人アルフレディを追って彼のワイン工場があるポルトガルへ。レイはアルフレディの秘書兼愛人に接触し、彼が隙を見せそうな居場所を突き止める。そこへマフィアに雇われた刑事カイリーが現れ、レイは狙撃に失敗してしまう。その場を逃げ切ったレイは、フランスにいるアルフレディの娘を誘拐して彼を追い詰めようと企む。

主人公を演ずるのはクリス・ミッチャム。綺麗なブロンドの髪に、父ロバートを思わせるタレ目の甘いマスク。颯爽とバイクで疾走する姿はかっちょいい。特にクローディヌ・オージェ(ボンドガール女優を見つけると嬉しくなる私⤴️)演ずる秘書が運転するポルシェに、バイクで執拗に迫るカーチェイス(バイクでナンパ?)場面は印象的だ。ヘアピンカーブをショートカットしながら、幾度も前に現れるしつこさに最後はクローディヌ姐さんも参ってしまう。

しかし多くの方がこの映画をセレクトしてるのは、アルフレディの娘を演じたオリビア・ハッセーがお目当てに違いない。DVDの特典映像には、この映画の愛のテーマLike A Playに、この映画のオリビアの映像が散りばめられた動画が収録されている。こればっかり見てる人いるかも!と思える程に可憐♡、きゃわゆい♡。主人公レイは彼女を誘拐、監禁しておきながら、だんだんと好きになっていく。彼女も親元離れた寄宿学校の生活に孤独感を募らせている。二人の距離が少しずつ縮まっていく様子がいい。ビターな結末で、映画としてはクライムアクションだが、青春映画のような後味が残るのはこの二人の魅力あってこそ。

(以下、「キル・ビルvol.2」のネタバレを含みます・注意)

さて。タランティーノ監督が「キル・ビル」で貫いた復讐というテーマ。特にvol.2は、復讐物語が主であるマカロニウエスタンの影響が強い。引用される音楽やオマージュも冷酷な復讐ものを連想させる。トランペットのメロディが次に何が起こるのかドキドキさせてくれるのだ。

ところが、いざ仇を目の前にしてヒロインの心は平穏ではいられない。それはかつて愛した男、殺しの師匠でありながら、復讐の相手であるビルへの複雑な思い。そして二人の間に生まれた子供が、ヒロインの目の前に現れるという思わぬ展開が待っているのだ。

引用された「サマータイム・キラー」の楽曲は、16ビートを刻むハイハットとアルペジオのフレーズがいかにも全体のムードを高めてくれそうなもの。しかし、この曲が鳴り止んだ瞬間、目の前に現れた娘の姿に、ヒロインの高まったテンションは一気に下降する。「サマータイム・キラー」では、主人公レイは親の仇であるアルフレディを前にして、その娘の言葉を思い出して撃つのをためらってしまい、窮地に陥いる展開がある。

vol.1からさんざんマカロニウエスタン楽曲を使って復讐ムードを盛り上げておきながら、土壇場でエッ!?という展開。「サマータイム・キラー」を使ったのは、単にジワジワ盛り上がる楽曲の良さもさることながら、元ネタ映画を知る人に次の展開を匂わせる楽屋落ちみたいなつもりだったのかもしれない。

…というこじつけ考察でございました。お目汚しの長文、失礼しました。それにしてもオリビア・ハッセー、きゃわゆい♡



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007/ロシアより愛をこめて 4Kレストア版

2023-10-28 | 映画(た行)

◼️「007/ロシアより愛をこめて 4Kレストア版」(1963年・イギリス)

監督=テレンス・ヤング
主演=ショーン・コネリー ロバート・ショウ ダニエラ・ビアンキ ロッテ・レニア

007シリーズ10作品を4Kレストア版で公開する60周年上映企画。ジェームズ・ボンドこそ男子の理想と刷り込まれて育った僕にとっては見逃せない機会🤩。どれを観るべきか悩ましかった。3連休の最終日にやっとありつけた😆。選んだのはシリーズ第2作「007/ロシアより愛をこめて」。

007/ロシアより愛をこめて - Some Like It Hot

007/ロシアより愛をこめて - Some Like It Hot

◼️「007/ロシアより愛をこめて」「007危機一発」(1963年・イギリス)監督=テレンス・ヤング主演=ショーン・コネリーロバート・ショウダニエラ・ビアンキロッ...

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小学生の頃から何度観てるかわからないし、吹替版で台詞を丸暗記している場面すらある。それでもこれを観たのは時間の都合と、ショーン・コネリーの(正規の)ボンド映画をスクリーンで観たことがなかったから。以前に「自分に影響を与えた好きな映画のオールタイムベスト10を選べ」との難問を突きつけられて、自分の嗜好を語る上では外せない作品としてセレクトしたこともある。スクリーンで味わいたくって😆。

初公開時に「007危機一発」との邦題がついたのもうなづける。まさに危機また危機。Mに応援を求めてもことごとく阻止するロバート・ショー。ひたひたと彼の魔手がボンドに迫っていくのが、改めて観てもスリリング。吹替版育ちなもので、ロッテ・レニアの巻き舌の喋りが耳に残った。トルコでの協力者ケリムを演じたペドロ・アルメンダリス、他の映画で観たことがないのだが、笑顔がいいおっさんだ。

何よりも若きショーン・コネリーをスクリーンで堪能できたのが嬉しい。クライマックスの大活躍はカッコいいし、紳士的な振る舞いも素敵だ。そしてダニエラ・ビアンキ。彼女を大スクリーンで拝めたのも幸せ。親父殿がビデオで観ながら一時停止ボタンを押しまくったベッドイン直前の場面。映画館の暗闇で思わずニヤつく。組織に使われただけの存在ではあるが、最後の最後で自分の意思を持つ。

やっぱり本作が好きだと再認識した2時間でございました。

レストア版上映の予告編

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キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン

2023-10-25 | 映画(か行)

◼️「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン/Killers Of The Flowermoon」(2023年・アメリカ)

監督=マーチン・スコセッシ
主演=レオナルド・ディカプリオ ロバート・デ・ニーロ リリー・グラッドストーン ジェシー・プレモンス

マーチン・スコセッシ監督が描くアメリカの黒い歴史劇。「ギャング・オブ・ニューヨーク」ではアイルランド系移民とイギリス系の対立と抗争を描いた血生臭い物語だった。その映画で先に新大陸に来たから"ネイティブ"と名乗っていた白人が、先住民であるネイティブアメリカンに何をしてきたのかを描いたのが本作「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」である。

オイルマネーという富を得た先住民オセージ族。白人たちはその財産から恩恵を受けようと町に集まり、そして財産を奪おうと近づいていく。部族の娘に言い寄る者が現れ、やがて相次ぐ殺人が起こる。部族の協力者として信頼を得ていたヘイル。その甥アーネスト、彼と親しくなる部族の娘モリー。連続する不可解な死に、ついにFBIが動き始める。

ヘイルを演じたロバート・デ・ニーロのしたたかな黒幕ぶり。世間的には先住民のよき理解者でありながら、合法的な手段で財産を狙う。一方で汚い仕事を町のゴロツキに依頼して、着実に事を進めていく怖さ。そのヘイルに利用される甥アーネストを演ずるのがレオナルド・ディカプリオ。汚れ仕事を依頼して、事の重大さや叔父の真の狙いがわかる立場であったのだろうが、妻の親族が一人また一人姿を消す中で、適当にはぐらかすダメ男ぶり。クライマックスで妻に投げかけられた問いに、まともに答えることもできない。叔父の言いなりであったが、妻への愛だけは別だと本人は思っていたのだろうか。しかし彼らには先住民を見下す差別的な意識が確実にあったし、白人社会全体もそうだった。KKKのやり方は気に入らないとヘイルが言う場面があるが、先住民を利用したいだけの彼だ。自分たちとは違う民族を見下していることに何の違いもない。

歴史に埋もれ、忘れ去られそうなこうした愚かな出来事。しかしこうした過去があったことを映画は語り継ぐことができる。史実と違って脚色があるのは百も承知だが、実話に基づくことを謳うだけでも大きな意義がある。

前作「アイリッシュマン」同様3時間超の大作だが、決して飽きさせることはない。むしろ配信で観たらここまで物語に没入することはできない。Apple資本で製作されてるから配信されるのは間違いないが、時間が許すなら劇場で味わって欲しい。配信のみになるところを、パラマウント社が劇場でかけるべきと主張してくれたと聞く。本当に感謝。

音楽担当は、ザ・バンドのメンバーで、2023年に亡くなったロビー・ロバートソン。スコセッシ監督がザ・バンドのドキュメンタリー映画を撮り、長く続く縁ある人物だ。またロビー・ロバートソン自身はカナダ人とインディアンの混血であることを明かしており、先住民の伝統音楽を伝承することにも努めていた。本作ではその手腕も発揮されている。




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SHE SAID/シー・セッド その名を暴け

2023-10-23 | 映画(さ行)

◼️「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け/She Said」(2022年・アメリカ)

監督=マリア・シュラーダー
主演=キャリー・マリガン ゾーイ・カザン パトリシア・クラークソン アンドレ・ブラウアー

ハリウッドの大物プロデューサーによる性暴力を報道したニューヨークタイムズ。担当した記者2人の姿を描いた力作。

報道の現場を描いた作品は、取材への圧力や様々な障害、記者や会社が信念を曲げずに報道までたどり着けるかがとてもスリリング。ウォーターゲート事件を扱った「大統領の陰謀」にしても、ベトナム戦争の戦況を記した文書をめぐる「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」にしても、報道に関わる人々の強さと、闇に葬られそうな社会悪を許さない信念が心に残る作品だった。

本作もそうした報道機関のドラマである。劇伴を極端に少なくして、淡々と進めていく語り口は「大統領の陰謀」を思わせもする。けれどあくまで政府が相手だったのに対して、事件の被害者たちがいる。今まで泣き寝入りを強いられてきた性暴力をめぐる事件を暴く過程で、報道する側の人間ドラマだけでなく、自分の身に起きた出来事を報道される被害者の姿を丹念に追っていることが大きな違いだ。そこには信念と怒り、葛藤と不安が入り混じる人間ドラマがある。

関係者にアプローチするゾーイ・カザンのしぶとさ。出産後の鬱を経て職場復帰をするキャリー・マリガン。社会悪に挑むタフな仕事をしているけれど、仕事と家庭に向き合う彼女たちの私生活こそ想像を超えたタフな日々だ。

ワインスタインが被害者たちに何をしてきたのか。この映画ではホテルの廊下をゆっくりとカメラが進む映像に会話のやり取りを重ねた映像で表現する。そこに被害者たちの告白が添えられるだけで、十分に恐怖を感じる。行為の卑劣さを女優に身体を張って演じさせてきた、かつての映画界のありようさえ問われているようにも感じられる。先日観たアニメ「パーフェクト・ブルー」、レイプシーンをヒロインに演じさせる場面で、「ジョディなんとかもやってたじゃない」と軽く言い放った男性を思い出す。今思えば、「告発の行方」でジョディ・フォスターにあそこまで演じさせない方法はなかったのか、とすら考えてしまう。

「全部90年代の話だ。なぜ昔の話を聞く?。その後も多くの過ちを犯している」
そんな関係者のひと言にゾッとした。

それにしてもこの邦題、なんとかならんか。誰の名を暴くんよ。変なサブタイトルは、いらん世話です。



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わんぱく戦争

2023-10-21 | 映画(わ行)

◼️「わんぱく戦争/Guerre Des Boutons」(1961年・フランス)

監督=イヴ・ロベール
主演=アンドレ・トレトン アントワーヌ・ラルチーグ ジャン・リシャール

中学生の頃に手にした雑誌付録の名作映画を紹介する冊子。最後のページで紹介されていて、妙に気になっていたフランス映画が「わんぱく戦争」。2021年にデジタルリマスター版でリバイバル公開され、やっと配信でありつけた。感謝😌

冒頭タイトルバックに流れるのはきっと耳にしたことのある「わんぱくマーチ」。
いーざーゆーけや、なーかまたーちー
めざすはあーのおかー♪
日本語の歌詞がつけられてNHK「みんなのうた」でも親しまれ、90年代にはビールのCMでも使われた。

隣り合う村の少年たちが連日繰り返す喧嘩。お互いの村を罵り合う。「このフニャチン!」と言われて、悪口だとわかるが意味がわからない少年たち。大人に言って反応を見る場面が笑える🤣

捕虜として捕らえた隣村の少年にナイフを突きつける。着ている服のボタンを全部切り落として釈放、ボタンを奪い合う戦争に発展する。大将のルブラックも同じ目に遭うが、母に言われたひと言で妙案を思いつく。

観ているこっち側は、少年のあどけなさを微笑ましく思い、一方で何でそこまで?と大人目線で顔をしかめる。しかし。少年たちの抗争を眺めながら、これは単にお子様の映画じゃないぞ、と思い始めた。

誰が大将として指揮を取るのか、みんなからお金を集めようと意見が出て仲間割れ。これは共和政だぞ、そんな共和政なら王政で結構だ。あー、なるほど。フランス革命という歴史があるからこういうやりとりになるんだな。そのあたりから、この映画は少年や村の大人たちを通じて、現代社会や戦争を風刺しているのだと気付かされる。

子供たちが口にする政治の話だけでなく、ボタン戦争はスイッチ押すだけで核弾頭が飛んでいく核戦争を遠回しに仄めかしている。そして少年たちの抗争がエスカレート。一方が馬やロバを借りてきて騎馬隊で攻め込んだら、相手の大将は父親のトラクターで少年たちが作った秘密基地をぶっ壊す。やられたらそれ以上にやり返す。もはやただの喧嘩ではなくなっていく。これはまさに戦争そのもの。

本作とは違ってもっとシリアスな話だが、筒井康隆のジュブナイル短編「三丁目が戦争です」を思い出した。子供の喧嘩に親が出て、本当の戦争になるストーリー。しかし、「わんぱく戦争」はあくまでもほんわかしたムードを貫く。大人たちも対立し始める場面が出てくるけれど、これは唖然とする結末になる。大人なんて子供と何も変わらない。笑わせながらも、訴えていることはかなり手厳しい。

シナリオは反戦映画の大傑作「禁じられた遊び」のフランソワ・ボワイエと監督の共作。戦場が描かれないのに、子供たちの微笑ましい姿とのんびりした村の風景しか出てこないのに、そこに小さいけれど確かな戦争がある。それは人間の相容れない寂しさ。

度々騒ぎを起こすルブラックは、大人たちにとって手を焼く存在になっていく。寄宿舎制の学校に行かされるのを嫌がる台詞が幾度も出てくる。フランス映画の名作「コーラス」にも問題児が集められた厳しい寄宿舎制の学校が出てくるが、入校するまでには本作で描かれたような経緯があるのだなと納得。映画のラスト、ルブラックに思わぬ出会いが待っている。それはほっこりさせてくれる最高の結末だし、風刺映画としての視点でも、人と人はわかり合えるのだと希望を与えてくれる🥲。

この映画、男児のヌードが出てくることばかりが紹介されがち。その場面は本編のほんのちょっとだし、単に微笑ましい光景にしか見えない。受け取り方はあるとは思うけれど、そのシーンだけに目くじらを立てて、この傑作とそのメッセージを避けてしまうのはもったいない。



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ワイト島1970/輝かしきロックの残像

2023-10-19 | 映画(わ行)

◼️「ワイト島1970/輝かしきロックの残像/Message To Love: Isle Of Wight Music Festival 1970」(1995年・イギリス=アメリカ)

監督=マーレイ・ラーナー

「フェンスを壊すな!」
チケットなしに会場周辺に来ているヒッピーたちに、主催者側が呼びかける悲痛な叫びが耳に残る。音楽フェスの記録映画だが、フェスにやって来る人々の様子が生々しく描かれているのが印象的だ。

ウッドストックをしのぐ規模のロックフェスを追ったドキュメンタリー映画で、ジミ・ヘンドリックスのラストステージが収録されている貴重品。他にも見どころはたくさんある。マイルス・デイビスがキース・ジャレットとチック・コリアを率いて登場したり、エマーソン・レイク&パーマーのデビューステージがあったり。レナード・コーエン、ジョニ・ミッチェル。ドアーズのThe Endや、ムーディ・ブルースのNights In White Satin (サテンの夜)など、演奏する映像を初めて見るものもあって興味深い映画だった。

クラシックロックは時折ブームが訪れる。それらは名曲の掘り起こしでビジネスのひとつ。見直されるのはいいことだし、若いリスナーが増えるのはいいこと。しかしそれらの曲は、まだロックがビジネスではなかった時代の産物。彼らのスピリットにも是非触れて欲しいところ。




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冒険者たち

2023-10-18 | 映画(は行)


◼️「冒険者たち/Les Aventuriers」(1967年・フランス)

監督=ロベール・アンリコ
主演=アラン・ドロン リノ・ヴァンチュラ ジョアンナ・シムカス

アラン・ドロンは飛行機乗り、リノ・ヴァンチュラはカーエンジニア、ジョアンナ・シムカスはアーティスト。それぞれの夢を持ちながら破れた3人は、アフリカの海に沈んだまま見つかっていない財宝の話を耳にする。それぞれの理想を実現するために、お宝を探し当てようとする。映画前半は彼らに起こった出来事がテンポよく、というかダイジェストかと思うくらいの編集で示される。

もともとジョゼ・ジョバンニの原作はノワール調のお話らしいが、この映画はフランス映画独特の男2人+女1人の素敵な三角関係が心に残って、青春映画としてカテゴライズされることもしばしば。

ヒロインのレティシアに恋している2人だが、彼女をめぐって激しく争うこともない。理想的?かどうかは疑問だが、良好な関係であることは間違いない。こうした三角関係が出てくるフランス映画は、ヒロインを退場させがち(ネタバレ?💦)。「突然炎のごとく」にしても、パトリス・ルコントの「イヴァンヌの香り」(めちゃくちゃ好き♡)にしても。呆然として遺されるのは男二人。

でも、「冒険者たち」はちょっと違う。彼女がいなくなった後の二人の姿がきちんと示される。彼らにとってレティシアがどれだけ大切な存在だったのかが、最後の最後まで描かれるのだ。クライマックスで悪党どもが要塞島にやって来て銃撃戦になっても、それが見せ場だと思えない。それすらレティシアに対する思いを込めた最期の台詞に導くための通過点なエピソードに過ぎない。普通なら虚無感でいっぱいになるはずのラストシーンだが、レティシアの記憶が男たちにもスクリーンのこっち側の僕らにも、美しい残像として残されるのだ。それを未練と言うなかれ。

そして、ジョアンナ・シムカスの面影はフランソワ・ド・ルーべの美しい音楽と共にある。





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栄光の彼方に

2023-10-16 | 映画(あ行)


◼️「栄光の彼方に/All The Right Moves」(1983年・アメリカ)

監督=マイケル・チャップマン
主演=トム・クルーズ リー・トンプソン クリス・ペン クレイグ・T・ネルソン

日本では劇場未公開のトム・クルーズ主演作。地味なのだが生真面目な作風なだけに、他の主演作とは違うええカッコしいでないトム君が意外と好印象だった。

貧しい鉄鋼の町から出て行きたいと願う若者たち。しかしフットボールで活躍して大学への奨学金を得るとか、スカウトされるとかでもなければ、将来は地元の鉄工所で働くというレールが敷かれたような町。主人公は活躍できるようフィールドでの戦いを続ける。しかし大一番で失敗してしまう。果たして彼の将来はどうなるのか。

現実がよく出ている映画だと思った。親の経済力だけでは大学に行けないので、進学したいなら奨学金を手にするしかない。リー・トンプソン演ずるヒロインは、そこに向かって地道に頑張ってる女の子。トム君も大人を黙らせる大活躍をするどころか、対立したはずの大人からのアドバイスで、将来を見出そうとする。田舎町にはよくあるお話でしかない。「卒業白書」や「カクテル」の派手なトム君をイメージしたら、確かに地味な印象。ビデオスルーだったのもわからなくはない。しかし現実味がある作風だけに、納得させられたり、現状から飛び出したい気持ちに共感できる映画。

この手の映画って、主人公を慕って応援してしくれるヒロインは町に残る決断をしちゃいがちで、主人公との扱いの差をすっごく感じてしまう(最近なら「カセットテープ・ダイアリーズ」とか)。二人の将来を暗示させるようなラストを期待しちゃったんだけどな。リー・トンプソンとトム君のラブシーンあり。監督マイケル・チャップマンは、「タクシードライバー」など有名作で撮影を担当した人物。この映画では「スピード」のヤン・デボンが撮影を担当している。



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ボーダーライン

2023-10-14 | 映画(は行)

◼️「ボーダーライン/Sicario」(2015年・アメリカ)

監督=ドゥニ・ヴィルヌーヴ
主演=エミリー・ブラント ジョシュ・ブローリン ベニチオ・デル・トロ ジョン・バーンサル

観ていてしんどかった。確かにハラハラする展開だし、事の重大さは理解できる。だけどひたすら死体と銃声だらけの上映時間は耐えるしかなかった。これをエンターテイメントなアクション映画だと楽しむのは、僕にはどうも向いてないようだ。ラストにヒロインが言われるように、僕も小さな町に行くべきなんだろう。狼にはなれそうもない。

メキシコとアメリカの国境を挟んだ黒社会の怖さとその根の深いヤバさ。僕ら映画ファンは、スティーブン・ソダーバーグ監督の「トラフィック」やリドリー・スコット監督の「悪の法則」で知っている。本作ではその最前線で向き合う人々の姿が描かれる。

あの長いタイトルのトム君映画みたいにエミリー・ブラントのカッコよさを観られるアクション映画だと信じて見始めたけれど、正義感から作戦に志願した彼女が目にする現実と衝撃的な裏事情。ヒロインと同じ情報量で僕らはそれらを見ることになる。与える情報を限定することで観客を引き込んで、主人公を客観視する目線を与えてくれないのは他のヴィルヌーヴ監督作でも同じ。その語り口は本作でも冴えている。

全てを知ったラストで、僕はベネチオ・デル・トロをダークヒーローのように捉えることができなかった。やっぱり小さな町で暮らすことにするよ。そしてメキシコ国境と麻薬王の話なら、シュワちゃんの「ラストスタンド」に拍手を贈るくらいがちょうどいいのかも。うん。



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