Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

ミッション:インポッシブル フォールアウト

2018-09-29 | 映画(ま行)

■「ミッション:インポッシブル フォールアウト/Mission:Impossible Fallout」(2018年・アメリカ)

監督=クリストファー・マッカリー
主演=トム・クルーズ サイモン・ペッグ ヴィング・レイムス レベッカ・ファーガソン

トム・クルーズとエイリアンは嫌い!と公言しているくせについつい映画館で観てしまう。
このシリーズだって、オリジナルの設定そっちのけでトムくんがええかっこしいするために製作され続けている。
それがここまでブロックバスターなヒットを飛ばし続ければ、
プロデューサーとしてのトムくん、55歳になっても危険なスタンドに挑み続けるトムくんを認めざるを得ない。
本作では撮影中に怪我をしたと聞くが、実際に本編を観て、よくもまぁ怪我で済んだよなと思う。
自殺願望があるんじゃないの?とさえ思う。
それは言い換えれば、映画の為なら死ねるという覚悟なんだろう。

脚本も兼ねるマッカリー監督は、ここ数年トムくん主演作を撮り続けている。
だからトムくんの役柄をどう描けば好印象になるのか、どう撮ればカッコよく映るのかを熟知している。
非情なスパイ像ではダメだ。
知的にうまく立ち回れて人情味あるヒーローでなくてはならない。
「M:I」シリーズの初期作品だってトムくんをカッコよく見せた。
けれどマッカリー監督がさらに上手いのは、
複雑な組織の関係や二重三重に入り乱れたスパイ戦をスタイリッシュに、
しかも謎解きのように観客に少しずつ理解させていくこと。
そこでは当然チームの仲間のキャラやチームプレイが不可欠な訳で、
シリーズ初期3作のトムだけがカッコいい映画とはひと味もふた味も違う。

サイレント映画の時代から、連続活劇はヒーローが崖に追い詰められていくのがクライマックス。
そういう状況を"クリフハンガー"と呼ぶ。
この「フォールアウト」のクライマックスは、まさに崖にぶら下がりっぱなしの数十分。
ヘリコプターのぶら下がりから、崖の割れ目にハマった機体がジリジリと落ちていくハラハラ。
さらに崖っぷちで屈強なスーパーマン俳優と殴り合って、再び崖にロープ一本でぶら下がる。
スピルバーグもクリフハンガー描写が好きな人だけど、ここまで長い時間崖っぷちが続くのはやり過ぎ。
高所恐怖症なんでキツかったっす。

何にしても、マッカリー監督の前作と本作はええかっこしいとチームプレイのバランス感が実にいい。
そしてヘンリー・カヴィルやアンジェラ・バセットなどキャスティングもナイス。
おなじみの主題曲のアレンジが、今回はちと地味だったかなあ。
・・・とトム嫌いを公言してるくせに、このシリーズちゃんと観ている私なのでしたww

『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』本予告


コメント (2)
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波の数だけ抱きしめて

2018-09-24 | 映画(な行)

■「波の数だけ抱きしめて」(1991年・日本)

監督=馬場康夫
主演=中山美穂 織田裕二 別所哲也 松下由樹 阪田マサノブ

バブル期のニッポン青春映画を代表する、「私をスキーに連れてって」から始まるホイチョイ三部作。
原田知世ファンだったのでもちろん最初の2作は観ているのだが、
「波の数だけ抱きしめて」だけは未見だった。
だってねー、主役がミポリンだもん(ファンの方すんません)。
ところが、後に80〜90年代のコンピ盤サントラを集めるのが大好きになった僕は、
1982年が舞台になっているこの映画のサントラに手を出した。
バーティ・ヒギンズ、J・D・サウザー、TOTO、カーラ・ボノフなどが収録されている。
映画の舞台となるミニFM局で流れる楽曲とのことで、やっと観る気になったのだ。
長い前置きですんません。

黄色いビートルを砂浜に乗り入れて脱出できずに困っていた吉岡を救ったのは、
浜辺のサーフショップでアルバイトしている真理子だった。
吉岡は彼女に一目惚れ。
彼女と仲良し3人の仲間はミニFM局をやっており、手作りの電波中継機でエリアを拡大させようとしていた。
湘南の海岸線を走ったらどこでも自分たちのラジオが聴けるように。
大手広告代理店に勤める吉岡は、資金力をチラつかせて彼らの仲間に入ろうとし、
仕事で手がけるJT(82年当時は日本専売公社ね)の新製品キャンペーンに、
真理子たちのFM局を結びつけようと思いつく。
そんな吉岡の態度を心良く思わないのが、メンバーの一人小杉。
高校時代から真理子が好きだが、なかなか告白できないでいた。
吉岡の支援で海岸線一帯にエリアは順調に拡大。
一方で小杉には、真理子と吉岡の関係が近づいているように見えて、苛立ちが募っていく。
そしてキャンペーンのイベントが迫ってくるのだが・・・。

ホイチョイ三部作の頃、映画で描かれた週末スキーだのビーチリゾートなんて、
地方都市でくすぶってた僕には全く縁遠い世界のお話だった。
特に「私をスキーに連れてって」は、かなり冷めた目で観てた気がする。
それでも「波の数だけ・・・」は、シンプルな恋のすれ違いが主軸だから今観ると意外と好感。
チャラくっていけ好かない役柄の別所哲也が、あの頃の象徴みたいな役柄。
アメリカンエキスプレスのカードチラつかせる、ピンク色のポロシャツをパンツにインして着てる。
車を運転するのに誰もシートベルトしてないし、六本木のリゾートディスコが出て来るし、
時代の空気感もいい具合に描かれている。

クライマックスの大イベントに見舞われるトラブル。
それは機材トラブルと恋模様が原因。
この場面、単に中継機器が直って放送開始が間に合うのか?というハラハラだけでなく、
ミポリンと織田裕二の恋の行方は?、
別所哲也の仕事は大失敗になるのか?、
そして決死の告白が届くのか?という二重三重のサスペンスが並走している。
単なる追いかけっこだった「彼女が水着に着替えたら」とは大違い。
なかなか巧い構成だと思ったら、「好きだあー!」と絶叫する織田裕二に唖然(笑)。

ネタバレになるけど、最後の告白はミポリンに届かない。
それはちょうど彼女の車がトンネルに入って、FMの電波が届かなかったから
マイク越しの「好きだぁー!」を聴くことができなかったという結末。
でも今じゃ電波が届くトンネルもあるし、
アプリでラジオ聴ける時代だから若い世代がこの場面観るとピンとこないかもしれないな。

あ、最後に。
若き日の松下由樹に惚れそうですっ、オレ。

波の数だけ抱きしめてcm







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猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)

2018-09-17 | 映画(さ行)

■「猿の惑星:聖戦記(グレートウォー)/War Of The Planet Of The Apes」(2017年・アメリカ)

監督=マット・リーヴス
主演=アンディ・サーキス ウディ・ハレルソン スティーヴ・ザーン 

2011年に始まった新たな「猿の惑星」三部作の最後を飾る「聖戦記」は、
第2作の監督マット・リーブスが続投。
前作ではオリジナルの第5作「最後の猿の惑星」を下敷きに、
仲間だったコバが人間への憎しみ故にシーザーを裏切って戦争へと発展する様子が描かれた。
その物語は人間が繰り返してきた愚かな歴史を辿っているようで胸に迫る佳作であった。

「聖戦記」は、シーザーの行方を追っていた人間によって、猿たちの平穏が崩れ去る悲劇がまず示される。
常に猿たちの未来を見据えて、信念の揺らぐことのなかった理性的なシーザーが、
家族を殺されたことで復讐の鬼と化す。
前作で"猿は猿を殺さない。野蛮な人間とは違う"という理想が打ち砕かれたシーザー。
仲間を守るための戦いが、個人の恨みを晴らす戦いへと変わる。
その経緯が描かれる前半は、既にヘヴィーで悲壮感がいっぱいだ。
ところが、新天地を求めて移動を始めたはずの仲間が人間たちに囚われてしまう。
シーザーはその軍隊を率いる大佐に立ち向かう。

第3作で印象的なのは"人間の弱さ"。
自らと異なる者や考えを受け入れることもなく、それらを排除しようとし、終いには殺しあう。
ウディ・ハレルソンが演ずるクレイジーな大佐は、そうした人間たちの一つの代表であり、
シーザーたちに立ちはだかる強大な敵。
だが、その大佐も映画のクライマックスでは絶望の淵に立つことになる。

大佐を排除しようとやってくる北の軍隊を隔てる為に、猿たちを労働力にして高い壁を築こうとする。
猿たちは親子が引き離されて檻に入れられる。
・・・あれ?
こんな光景を最近テレビで見た気がする。
そう、不法移民たちが親子引き離されて柵で囲まれた施設に入れられ、
自国にとって不都合な人が来ないように大統領が国境に高い壁を作ろうとしている国が、
まさに現実に存在しているのだ。
映画を見ていて、だんだん重なって見えてきて切なくなった。

前作では、戦争へ突き進んだ猿たちの姿に、
人間が繰り返してきた愚行の歴史を後追いしているように感じた。
しかし本作の後半ではそれ以上に愚かな人間の姿が映し出される。
"言葉を失った人間はケダモノだ"と見下していた大佐が、
自分を支えていたはずのその考えによって身を滅ぼしていく。
僕はオリジナルの「猿の惑星」第2作で、地下に潜って核爆弾を神と崇めていた人間たちの姿を思い出した。
それがどんな悲劇を生んだのか。
「続・猿の惑星」未見の方は是非確かめて欲しい。

アンディ・サーキス、本作でも名演でした。

映画『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』予告編


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ロスト・エモーション

2018-09-13 | 映画(ら行)

■「ロスト・エモーション/Equals」(2015年・アメリカ)

監督=ドレイク・ドレマス
主演=ニコラス・ホルト クリステン・スチュワート ジャッキー・ウィーヴァー ガイ・ピアース

絶望的な未来観を持つSF映画は70年代によく製作されていたが、
2000年代に入ってディストピアが描かれる近未来SF映画は確実に増えている。
リドリー・スコットが製作総指揮したこの「ロスト・エモーション」もそのひとつ。
この映画、特撮をほぼ用いずに冷ややかな印象の未来社会を表現してみせる。
その為に、ロケ地として選ばれたのが日本の特徴ある建物なのだ。
安藤忠雄設計の淡路夢舞台狭山池博物館を始め、独特な造形の建築物が舞台となっており、
セットやCGとは違い、ロケだからできるリアルな空気感が作品の緊張感を高めてくれる。
建築に興味がある人には是非オススメしたい映画。

地球の陸地の大部分が大戦争で失われた近未来。
わずかに生き残った人々は、感情を抑える遺伝子操作をして管理された共同体を形成していた。
感情を"発症"した者は治療、施設に送られて、最後は安楽死させられる。
雑誌を作成する部門に属するサイラスは、飛び降り自殺の現場に居合わせた女性ニアに興味を惹かれ、
次第に彼女へ抑えきれない気持ちを抱くことになる。
ニアも"闇発症者"であったことから親密な関係になり、
二人はこの共同体から脱出することを考えるようになるが・・・。

管理社会となった未来では人間の感情が抑えられるという設定は、別にSF作品では珍しいものではない。
白一色の衣装は、ロバート・ワイズ監督の「SFアンドロメダ…」や
ジョージ・ルーカス監督の「THX-1138」を思わせるし、
「華氏451」や「1984」、アニメの「ダーリン・イン・ザ・フランキス」を思い浮かべる方もあるだろう。
それでも「ロスト・エモーション」が他の映画とひと味違うのは、
舞台設定こそ似ているものの、突き詰めると普遍的なラブストーリーであることだ。
ラストのすれ違いなんて、まるで「ロミオとジュリエット」。

Equals | Official Trailer HD | A24


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カメラを止めるな!

2018-09-02 | 映画(か行)

■「カメラを止めるな!/One Cut of The Dead」(2017年・日本)

監督=上田慎一郎
主演=濱津隆之 真魚 しゅはまはるみ

自主製作でゾンビ映画を撮っていた現場で、本物のゾンビが襲いかかる。
犠牲者となった者は次々とゾンビ化していく。
映像にリアルを求める監督はそれでもカメラを回し続ける。
狂気に満ちていく惨劇の場。
彼らの運命は・・・。

監督俳優養成スクールのワークショップとして製作された低予算映画に世間が熱狂している。
確かにかつて例がないヒット作だ。
ネタバレなしでこの映画の面白さを語るのは困難。
だけど、この映画が他の映画と何が違うのかと言えば、作り手の情熱が見えることではないか。

もちろん映画全体の独特な構成や展開も、伏線回収、観客に訴えるタイミングの良さは見事。
しかも最後にはジーンとさせる場面も用意されている。
だけどそれ以上にグッとくるのは、
スタッフやキャストのアイディアや工夫が、
巨額の費用を投じて技術に頼った映画に負けない面白さを発揮することの爽快感。
今や編集技術でワンカット(途切れなく撮影すること)のように見せることは可能だ。
最近なら映画全編をワンカットに見せた「バードマン」の例もある。
だけど、手持ちカメラとアイディアだけで長回しのシーンを撮るには、
並々ならぬ努力と綿密な計画とそれを実行する度胸が必要だ。

「カメラを止めるな!」の37分に及ぶワンカットのシーンは、
カメラのレンズに血のりが飛んだり、
それまで走り回っていたカメラが突然横倒しになるハプニングも残している。
それが意味するものを知った時に、僕らはそうだったのか!と納得するだけでなく大笑いさせてもらえる。
ハリウッド大作やイケメン並べたお気軽日本映画よりも、この低予算映画が動員や支持を集めてるのは、
なーんか公立高校が大活躍する高校野球みたいで面白いじゃない。
確かに見方によっちゃチープな映画かもしれないけど、
暑い今年の夏に、なんか"頑張ってる映画"観たという記憶が多くの人に刻まれるのは嬉しいことだ。
とにかくこの映画は、予備知識なしでスクリーンに向かって欲しい。

映画の撮影はアイディアなくしてできない。
ワンカット撮影がこんだけ話題になったので、
アルフレッド・ヒッチコック監督の密室サスペンス映画「ロープ」を是非観て欲しいな。
フィルムの入れ替えが必要だった時代に、長ーいワンカットに挑んだ意欲作だぞ。


映画『カメラを止めるな!』予告編

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君の膵臓をたべたい

2018-09-01 | 映画(か行)

■「君の膵臓をたべたい」(2017年・日本)

●2017年日本アカデミー賞 話題賞・新人俳優賞

監督=月川翔
主演=浜辺美波 北村匠海 小栗旬 北川景子

住野よるの原作小説に、12年後の現在のエピソードを追加して実写映画化。
同じひとつの言葉や台詞でも、
それを発する人物の状況や気持ち、映画の受け手である僕らの理解や気持ちで、どのようにも変わる。
日本の映画宣伝は変に泣かせようとしたり、観ることを煽るばっかりで、
ほんとに下手だと常々思っているのだが、
この映画のコピー「ラスト、きっとこのタイトルに涙する」は、"泣かせ"に見えるのだけど、
本編を知らないと泣けない訳で、
久々に作品そのものと物語の良さを観てくれる人に伝えたい!という気持ちとセンスがうかがえて好感。
既に小説を読んでる人には共感を生むだろうし、映画で初めてこの物語に触れる人には興味と期待を抱かせてくれる。
それはもちろん原作の良さがあってのことだけど。
でも原作の良さを前面に出した宣伝に見事に騙された「ノルウェイの森」とは全然違う。
日本の今どき青春映画なんぞ全く観ないこの僕が観る気になったのは、
おそらくこのコピーのせいだ。

優れた難病ものの映画は、単に死に直面する姿を見せて観客を悲しませるのではない。
その日が訪れるまでに、主人公がどう生きたかをきちんと描いてこそ秀作になる。
この映画ではヒロイン桜良が日々を大切に過ごそうとする姿が描かれる。
「一日の価値は平等なんだよ」というひと言が心に響く。
時に小悪魔のような彼女の言動に振り回される"仲良し君"【僕】の妙な諦め感を前半じれったく思う。
あのお年頃男子のギラギラ感もないし・・・あ、お前と違うって?失礼しましたww。
だが行動が変わる後半の懸命な姿には声援を送りたくなる。
外国映画ファンには「死ぬまでにしたい10のこと」を思い出した方もあったのでは。

「星の王子さま」は好きな本なのでもっとストーリーに絡むのかと期待した。
謎解きのようなラストに向けて見事な小道具として使われているのがナイス。
「真実か挑戦か」は小さな勇気を後押ししてくれる場面。
小説も読んでみるか。

「君の膵臓をたべたい」予告


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