Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

マイ・フェア・レディ

2020-04-29 | 映画(ま行)

◾️「マイ・フェア・レディ/My Fair Lady」(1964年・アメリカ)


監督=ジョージ・キューカー

主演=オードリー・ヘプバーン レックス・ハリスン スタンリー・ホロウェイ ウィルフリッド・ハイド・ホワイト


自分が理想とする女性に相手を近づけたいという男心。立場が違えばなんとも身勝手に聞こえるが、昔から男の願望。ギリシア神話に出てくるピグマリオンなる人物は、自分が作った女性像に恋をしてしまい、女神アフロディーテに頼んでその彫像に命を吹き込んでもらう。そのエピソードを語源に、こうした自分好みの女性にしたがったり、人形のように愛してしまう男の願望はピグマリオンシンドロームやらピグマリオンコンプレックスなどと呼ばれる。日本で例を挙げるなら、光源氏にとっての紫の上なんて最たるものだろ。

その「ピグマリオン」の名を題したミュージカルを原作とした映画が、「マイ・フェア・レディ」。街をぶらついていた汚い小娘を社交界のレディに育て上げる賭けをした言語学者が、やがて彼女と恋に落ちる有名なお話だ。3時間の長尺ながら決して飽きることはない。とにかくゴージャスなのだ。歌われる楽曲は今や作品と切り離しても歌い継がれているような名曲ばかり。キャスティングはもちろん演出もジバンシーの衣装も、この映画に注ぎ込まれたあらゆる要素が日常と時間を忘れさせてくれる。

こうした男が女性を変貌させる話は、手を変え品を変え語り継がれている。だが、単に男によって変えられるだけが、オンナがヒロインになれる方法ではない。「プリティウーマン」を代表として、時代と共にいろんなバリエーションが生まれているのも面白いよね。

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12モンキーズ

2020-04-26 | 映画(た行)







◾️「 12モンキーズ/ 12 Monkeys」(1995年・アメリカ)




監督=テリー・ギリアム


主演=ブルース・ウィリス マデリン・ストー ブラッド・ピット クリストファー・プラマー


世界中で新型コロナウィルス感染拡大が続く。日々感染者が増えていく報道の中で、ウィルスが世界に拡大する「猿の惑星 創世記」のエンドクレジットで戦慄した記憶がよみがえった。されど、これは現実。一刻も早い収束を祈るより他はない。そんなご時世に未見だったテリー・ギリアム監督作「12モンキーズ」に挑んでみた。

21世期初め、世界に蔓延したウィルスで人類が絶滅の危機にある世界。人々は地下に逃れていた。科学者たちはウィルス感染拡大の原因を探るべく、過去に調査員を送って対策を講じようとしていた。特赦を条件に1990年代に送り込まれた主人公ジェームズ・コールは、日々同じ夢にうなされていた。それは記憶なのか、単なる夢なのか。そしてウィルスを撒き散らしたのは誰なのか。その事件の発端とされる" 12モンキーズ"とは?

練り上げられた脚本の力に圧倒される130分だった。物語の設定はもちろん、各エピソードが後々の伏線として見事に機能して終息へと向かう構成。Blueberry HillsやWhat A Wonderful Worldなど今の僕らでもノスタルジックに響く楽曲が、未来人の心に響く様子。逃げ込んだ映画館で観るヒッチコックの「めまい」と「鳥」。キム・ノバクが木の年輪で時間について語る場面とタイムリープ、鳥に襲われる場面と動物が闊歩する場面。マデリン・ストーが髪の色を変えるクライマックスは、「めまい」のキム・ノバクに重なる(詳しくは「めまい」を観て!)。まるで詩が韻を踏むような映像の呼応。これに気持ちがどんどん乗せられていき、怒涛の結末へとなだれ込む。展開を楽しむだけでなく、ちょっと頭使わないといけないから、ますます引き込まれていく。こういう映画をウェルメイドと称していいだろう。

テリー・ギリアム監督作は「未来世紀ブラジル」こそお気に入りだけど、あんまり観ていない。「モンティパイソン」は若い頃観たせいか笑いのツボが理解できなかったし、「バロン」も映像には感激したもののどうもピンとこなかった。そんな苦手意識が先に立って、以後観るのを避けてきた監督の一人。そんな僕が言うのはおかしいかもしれないけど、「12モンキーズ」はギリアム監督"らしい"映画なんだろか。ハリウッド製エンターテインメントに、テリー・ギリアムの世界観をスパイスとして持ち込んだ映画という印象を受けた。未来世界の描写に「ブラジル」のようなダークで独特な造形と映像が欲しかっただけのようにも思えた。

とはいえ、SF映画らしいストーリーと発想に、映画としての満足度はかなり高い。マデリン・ストーもまさにカッコいい女っぷりが輝いていた時期だし、フッきれた演技のブラッド・ピットはやっぱり上手い。映画館での会話がとても印象的だった。「自分の過去を見ることは映画を見るのと同じ。同じ映画なのに自分が変わっているから違ったものに見える」と主観の変化を口にするブルース・ウィリス。「それでも起こったことは変えられない」と客観的に答えるマデリン・ストー。どちらの言葉にも心に響く。

今騒がれているこのウィルス騒ぎが、こんなことがあったよね、と話せる日が訪れることを心から望む。未来から救済保険業の人が来てくれないだろかw




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悪魔の手毬唄

2020-04-21 | 映画(あ行)


◾️「悪魔の手毬唄」(1961年・日本)


監督=渡辺邦男

主演=高倉健 北原しげみ 小野透 永田靖


名探偵金田一耕助は数多くの方が演じているけれど、高倉健の金田一耕助というレアな作品。しかも映画館で観られるなんて貴重な機会。小倉昭和館に感謝。僕らが持っている金田一耕助のイメージとは全く異なり、スポーツカーにサングラス、美人秘書を従えるイケメン探偵。渡辺邦男監督は、戦後から1950年代にかけて片岡千恵蔵主演の金田一耕助シリーズにも参加している。この頃、変装と射撃の名手の名探偵多羅尾伴内シリーズも人気があったから、似たスタイルになっているのですな。


原作に近いとされる市川崑監督版やテレビドラマで見ているイメージやストーリーとは異なるので、あれこれ観ている人は肩透かしを喰らうかも。なによりも、手毬唄に込められている因縁めいたおどろおどろしさは皆無。あのゾクゾクする感覚を求めるなら、期待しないが吉。しかし、それぞれの時代にそれぞれの金田一耕助がある。そう思って観るとなかなか興味深い。


(2015年6月鑑賞)





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カメラ男へ。

2020-04-18 | その他のつぶやき
コロナ騒ぎで映画館も当分の間営業できない。
カメラ男、お前が恋しくて仕方ない。

でも待ってろ。
外出自粛の間に、多くの人に映画に興味を持ってもらうのが、オレたち映画ファンの務めだ。



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時をかける少女

2020-04-14 | 映画(た行)



◾️「時をかける少女」(1983年・日本)


監督=大林宣彦

主演=原田知世 高柳良一 尾美としのり 根岸季衣 岸部一徳


大林宣彦監督が亡くなった。カルトな傑作「ハウス」、「ねらわれた学園」そしてこの尾道三部作で当時僕ら世代には忘れえぬ映画作家の一人となった。変わった映画を撮る監督、若手女優好きな監督、いろんな評価があるけれど、古き良き日本の風景や情緒を大切に思う作風が多くの人に支持されたのだと思う。

監督作最大のヒット作「時をかける少女」。角川映画リアルタイム世代なので、僕も公開当時に観ている。プロデューサーの角川春樹は、原田知世の最初で最後の主演映画にするつもりだった。当時人気があったアイドルの路線とはちょっと違うから、きっと長続きすることはないと考えていたらしい。映画デビュー作にして花道にしてくれ、という映画化企画を持ちかけられた大林宣彦監督。昔からの風景が失われ始めたことを残念を思っていた故郷尾道をロケ地に選び、思い入れのある古くからの風景を映像に刻み込んだ。可憐な少女をヒロインに好きなことを映像に詰め込んだ。これはある種の開き直りだったのかもしれない。

大林監督は実験的な映像や編集を持ち味としていた人だが、尾道三部作の他の2本と比べても「時かけ」に注ぎ込まれたテクニックや映像の冒険は強く印象に残る。少しずつモノクロに色が付いていく場面、ホラー映画のような地震の予兆の演出、静止画がつなぎ合わされたタイムリープの場面。ラストシーンでは、ヒッチコックの「めまい」と逆のドリーズームを用いる。カメラが捉えたヒロインの大きさは変わらないのに、背景だけがグッと遠くになっていく撮影手法。遠ざかる背中がさらに遠のいて、ただでさえ切ないラストシーンをより鮮明なものにしている。見事だ。

そしてミュージックビデオのようなエンドクレジット。あの頃はこの場面をやりすぎだと感じていた僕だが、今改めて見ると現場の楽しさが伝わってくるような幸福感がある。ヒロインの部屋に飾られた「オズの魔法使い」のポスターは、舞台が尾道だけに小津安二郎をかけてるのでは、と勝手な推測までしてしまう。この映画には愛が溢れている。

しかしながら、僕は不勉強なことに大林宣彦監督作はまだ観ていないものが多い。監督が遺したメッセージを少しずつ追いかけてみたいと思う。御冥福をお祈りします。
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写真甲子園0.5秒の夏

2020-04-02 | 映画(さ行)






◾️「写真甲子園 0.5秒の夏」(2017年・日本)


監督=菅原浩志


主演=笠菜月 中田青渚 甲斐翔真 萩原利久 河合我聞 秋野暢子




北海道東川町で毎年開催される全国高等学校写真選手権大会、通称「写真甲子園」。カメラメーカーの工場がある訳でもないが、写真で町おこしを始め、20年続く大会だそうだ。ブロック予選を勝ち抜いた全国18校が頂点を競う。映画は大阪代表の明るい女子3人と、やっと部員を集めて初参加する東京の進学校の3人を軸にひと夏の青春群像が描かれる。物事に真剣になる若者の姿って素敵だ。




菅原浩志監督はデビュー作「ぼくらの七日間戦争」以来、青春映画が多かった人でもある。それぞれのエピソードは短いながらも、登場人物それぞれのキャラクターが描かれていて無駄がない印象。そしてこの映画自体は北海道東川町の町おこしムービーの性格を持ちながらも、決して過剰なPRに偏らず、高校生たちの成長物語としてもバランスがとれていると思った。さらに顧問である教師二人を通じて、偏差値偏重の方針、部活動指導、外部からのクレーム、現場に押しつけられる責任といった、ビターな大人たちの事情も織り込まれており、単なる青春映画で終わらせない。




残念なのは、映像に不自然に文字を挿入する加工。舞台となる学校名や、大会初日から選手たちに課題として出される撮影テーマが、どデカく建物に映し出されたりする。写真部の選手たちはトリミングもエフェクト加工もダメと言われているのに、センスのなさを感じてしまう。あとはもっとキャラクターに深く迫って欲しかったかな。




千葉真一演ずる家具職人が主人公に語る過去の大会のエピソードは泣かせどころのひとつで、どこまでも続く美しいひまわり畑とフィルムカメラを手にした少女の映像は強く印象に残る。また、実際の大会にも参加している審査員の立木義浩氏や竹田津実氏が、学生たちの作品への講評として写真表現について語る場面は、なかなか聞けないお話だけに見ごたえがある。



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