Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

あぜ道のダンディ

2011-11-27 | 映画(あ行)

■「あぜ道のダンディ」(2010年・日本)

監督=石井裕也
主演=光石研 田口トモロヲ 森岡龍 吉永淳

日々お父さんは頑張っている。中高年のおじさん達は頑張って生きている。あれ程自分を「おじさん」と呼ぶのを嫌っていた僕でも、さすがにこの年齢になればそうも思える。父親がカラオケで唄ってた「時代おくれ」の良さがわかるようになってきた。日々の苦労なんて、誰もわかちゃくれやしない。まだそれほど後退してもない前髪をネタに家族に笑われても、帰宅すると息子に初音ミクの「サラリーマンのうた」を唄いながら出迎えられたりしても、一緒に風呂に入れば娘に「お父さんの入ったお風呂は高濃度汚染水」とか言われても、お父さんは頑張っている。僕らは自分の独りよがりな信念、頑固さ、そして自己流の美学を胸に日々を生きている。

「あぜ道のダンディ」の主人公宮田淳一もそうだ。自転車で職場に向かう自分を競馬馬にみたてて自分にムチを入れて叱咤する。オープニングで登場したこの場面に、冴えないおっちゃんが主人公なんだと思った。でもそれに呼応するかのように繰り返されるラストシーン、僕は素直に涙しそうになった。僕らもああやって日々を頑張ってるんだよ。100分そこらでそんな気持ちにさせてくれる光石研の演技。素晴らしい。もしこの映画を5年後に観たら僕は自分を重ねて号泣するかもしれない。

地方都市で運送会社に勤める宮田淳一。妻をガンで亡くして、浪人中の長男と高3の娘と3人暮らし。世間のおじさんたちと同様に子供達とは会話もない。子供二人が私立大学に合格する。「お金はいっぱいあるから」と言いきるが心配の種は尽きない。胃が痛んできて、妻と同じガンではないかと疑い始める。そんな日々の悩みを打ち明けられるのは、幼い頃からの友人真田だけ。真田は長年介護をしてきた親が亡くなり、遺産で生活している。自分へのご褒美だと、ソフト帽を愛用している。仕事帰りに酒場で交わす二人のやりとりが面白いし、羨ましい。男という生き物は何か同じコミュニティに属しているとか、現在進行形のつながりがないとなかなか群れることができない生き物だ。胃をおさえながら「弱音を吐けるのはお前しかいない。」と真田に言う場面は笑っちゃうけど、そんないい関係でいることが素敵だと思った。

この映画には中年男の悲哀がいっぱいだ。胃ガンだと勘違いして遺影に使えそうな写真を注文したり、酔って娘の部屋に行く場面の「人を好きになるってことは、恥ずかしいことなんだぞ。でもな・・・」って語り始める場面が好き。不器用な、ほんとに不器用な父親だけど大切に思う気持ちがにじみ出る。東京に行く子供と一緒にいられる時間はあとわずか。そんな思いで親子3人でプリクラ撮る場面。おそるおそる子供の肩にのばす手。こういう場面で泣ける年齢になったんだな、オレ。まだ若い監督だそうだが、ここまで男の悲哀を描けるってすごいね。

映画が終わって映画館を後にするとき、お誘いがあったのだが僕はまっすぐ帰宅した。週明けに(彼にとっては)重い英語のテストを控えた息子が「勉強手伝えー」と言ってたからだ。そう言われるのも今のうちだろうし、この映画を観てますますそう思ったからでもある。

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今日の映画台詞・「ノッティングヒルの恋人」(1999)

2011-11-27 | 今日の映画台詞
00:31 from Twitter for iPhone
今日の映画台詞◆

「私は好きな男性に告白しているただの女の子。」 
「ノッティングヒルの恋人」(1999)


◆ジュリア・ロバーツは苦手な女優だけど、この映画は古今東西の恋愛映画の中でもお気に入りの一本。
ヒュー・グラントの「夢の中ならもっと大胆になれるのに。」と共に、等身大の台詞が素敵。
by t_somelikeithot on Twitter

ノッティングヒルの恋人 [DVD]

Notting Hill(ノッティングヒルの恋人)-You've Got a Way by Shania Twain


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ハードロマンチッカー

2011-11-26 | 映画(は行)

■「ハードロマンチッカー」(2011年・日本)

監督=グ・スーヨン
主演=松田翔太 永山絢斗 柄本時生 遠藤要 渡部篤郎

先日発表された北九州市のイメージ調査。「工業都市」が圧倒的なイメージ。市が力を入れているだけに「環境都市」のイメージは確かに伸びたが、「暴力の街」と答えた割合も倍増したと報じられた。暴力追放の取り込みを進めているだけに残念なことだ。そうした”怖い”と見られる一面を払拭すべくイメージアップに努め、映画ロケ誘致もその策の一つと位置づけられている。数多くの映画が北九州市で撮影されて銀幕を飾ってきた。見慣れた風景が誇らしく思えたものだ。

そんな中、北九州ロケ映画「ハードロマンチッカー」を観た。下関出身のグ・スーヨン監督の新作だ。観る前から暴力的な映画とは聞いていた。一般的なバイオレンス映画は嫌いだが、それでも独特の美学を感じられる映画だったらクエンティン・タランティーノやサム・ペキンパー監督作のようにむしろ好む映画もあった。スーヨン監督の旧作「プルコギ」は大好きな映画だけに、苦手かもしれないけど好きになれる要素もあるかも・・・とかすかな期待をしつつ劇場へ。

うーん・・・正直席を立とうかと思った。在日朝鮮人の主人公グーが明け暮れる暴力にまみれた日常が綴られる。淡々とした雰囲気と淡い色彩の映像が映し出すのは、理屈のない暴力の連鎖。数分おきに誰かが殴られ、女の子は押し倒される。セックスとバイオレンスの羅列…。そうなるに至った主人公やその背後にある心情を掘り下げることもない。暴力描写に美学もなにも感じられなかった。何が撮りたかったのだろう。こういう映画を商業ベースで撮って、フツーにそこらの映画館で上映される日本はルーズ過ぎない?ちょっと麻痺してきていない?久々に映画に嫌悪感を抱いた。地元ロケという前提がなければ絶対に観ない映画。コインロッカーに託されたものをフッと笑ってトイレに流すラスト。そこで主人公が愛情について考えてみるとか、男と女について考えてみるとか・・・そんなヒューマニズムを感じさせるところが少しでもあれば、もうちょっと違った見方もできた気がするのだが。繰り返し口にされる「オレには関係ねぇ」と同じように、人を思う気持ちすら理解できないってことなのか。全編を通じて成長物語にも何にもならない。

原作あってのものだけど、観終わって残るのは、やっぱりステレオタイプな「暴力の街」のイメージ。これが関門海峡周辺のイメージだと植え付けられる人は確実にいるだろうな。もちろん、たくさんのロケがある北九州・下関だからこういう映画も確かにあるだろう。それは仕方ないし、作り手にして見ればロケ地として拝借したに過ぎない。それは十分わかっている。地元に都合のいいところを撮ってくれる訳ではないのだから。でも観る側の立場として、これが地元で撮られたから誇らしい気持ちになれるか?と言われたら決してそうではない。背景として映し出されている風景を知っているだけに余計に違う・・・と思う。まぁ、こういうのも撮れる街ということでいいのでしょ。イメージダウンにはなるかもしれないけど。ともかく個人的には、久々に「嫌」と思える映画だったんでした。



コメント (4)
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カウボーイ&エイリアン

2011-11-12 | 映画(か行)

■「カウボーイ&エイリアン/Cowboys & Aliens」(2011年・アメリカ)

監督=ジョン・ファヴロー
主演=ダニエル・クレイグ ハリソン・フォード オリヴィア・ワイルド

西部劇に異質な要素を取り入れる試みはかつてもあった。例えば怪獣映画とウエスタンを融合させた「恐竜グワンジ」。
The Valley of Gwangi trailer

テレビ東京系の映画番組でむかし観たことがある。レイ・ハリーハウゼンの特撮と西部劇にミスマッチを感じながらもそれなりに楽しんだ記憶がある。記憶に新しいのは「ワイルド・ワイルド・ウェスト」。西部劇に派手なメカの特撮とラップの組み合わせが楽しそう。

そして本作「カウボーイ&エイリアン」だ。異星人侵略と西部劇。考えてみりゃ、新旧娯楽映画ジャンルの取り合わせだから安直と言えばかなり安直。タイトルもあまりに直球。発想自体はB級だと言われても不思議ではなかったかも。ところがそんなお気楽とも思える企画に、スピルバーグにロン・ハワード、ジェームズ・ボンドにインディ・ジョーンズが集結する!これは映画愛以外に理由があろうか。タランティーノとロドリゲスがグラインドハウス映画にオマージュを捧げたように、彼らもウエスタンやSF映画にわくわくして大きくなったということなのだろう。

確かにツッコミどころは満載。異星人が金の採掘に地球にやって来たのはよいとしても、人間をさらって何をしようとしていたのかは最後までわからないまま。ダニエル・クレイグの妻が殺される場面こそあるけれど、やっぱりそれは何の目的なのか理解できない。異星人の造形は、同じスピルバーグが関係している「スーパーエイト」のクリーチャー(ポケモンのカイリキーかゴーリキー似)にどこか似ている。高度な文明をもっているであろう異星人が素手で戦うのもどうかと思うし・・・、腕輪の銃だって異星人の方がよっぽど使い慣れてるはずなのにダニエル・クレイグには当たらない・・・。いちばん意表を突かれたのは「私は地球人じゃないの」というオリヴィア・ワイルドの唐突な告白。隠密の使命なら正体を明かすのは最後の最後でもいいような・・・。

されど僕はこの映画を楽しめなかったか?と言われればそうでもない。クールなダニエル・クレイグはかっこいい。「007」では派手な武器をなかなか使わせてもらえてない分だけ(?)、この映画の銃撃戦はド派手。ハリソン・フォードの演技は、バカ親振りや元軍人の頑固さ、人種を超えた心の交流などこの映画に血を通わせている部分をより深みあるものにしている。やっぱりハリソン・フォードには帽子がよく似合う。そう言えば「アメリカン・グラフィティ」の端役のときもカウボーイハットだったよな。脇役に芸達者なサム・ロックウェルや、西部劇に数多く出演した父親をもつキース・キャラダインを配しているのもいいね。





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11月11日(金)のつぶやき

2011-11-12 | Weblog
07:46 from Twitter for iPhone
iPodのシャッフルが選んでくれた今朝の一曲目は、駅までの足取りを軽くしてくれるようなサイケデリック・ファーズのPretty in pink。同名映画の冒頭、ヒロインのモリー・リングウォルドが身支度をする場面のスラリとした脚が頭をよぎる。決してエロ親父の妄想ではない…そのはずだ。
by t_somelikeithot on Twitter

Pretty In Pink: Original Motion Picture Soundtrack

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今日の映画台詞・「南極料理人」(2009)

2011-11-11 | 今日の映画台詞
00:17 from Twitter for iPhone
今日の映画台詞◆

「ぼくの体はラーメンでできてるんだよ。」
「南極料理人」(2009)


◆南極勤務という過酷な環境を食が和ませる素敵な映画。ラーメン在庫が底をつく場面、きたろうの泣きそうな表情も忘れられない台詞。「サラリーマンNEO」の生瀬勝久さんも「おひさま」の高良健吾君も好演。
by t_somelikeithot on Twitter

南極料理人 [DVD]

南極料理人 予告編


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11月5日(土)のつぶやき

2011-11-06 | Weblog
22:35 from Twitter for iPhone
中3から今でもやってる映画チラシのコレクション。
公開年ごとにファイルして保管してる。

ちょっと探し物してたらこんなのが…

たのきんトリオ!
30年前かっ!

懐かしくて涙出そう。
「サヨナラなんて…言えないよ。バカヤロー!!」
思わず口にしてしまう♪
by t_somelikeithot on Twitter

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今日の映画台詞・「太陽がいっぱい」(1960)

2011-11-05 | 今日の映画台詞
20:22 from web
今日の映画台詞◆

「マルジューッ!」 
「太陽がいっぱい」(1960)


◆何のこっちゃと思うかもしれないけど、
これはモーリス・ロネがアラン・ドロンに殺される場面で、最期に恋人の名前を叫んだもの。

中坊だった僕は
「俺は死ぬときに愛する女の名前を叫ぶことができるのか?」
とマジで考えた(汗)。
by t_somelikeithot on Twitter

すみません・・・「太陽がいっぱい」はもちろんもっといい台詞があるんです。
しかし僕が「太陽がいっぱい」で強烈に覚えている場面は、とにかく台詞がないんです。
フィリップのサインを真似するトム、
ギターを弾くマルジュをじっと見つめるトム、
死体が見つかるラストシーン、
ボートに置き去りにされるトム・・・。
それだけ緊張感がある映画ってことなのかも。

太陽がいっぱい [DVD]

Plein Soleil


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スーパーエイト

2011-11-03 | 映画(さ行)

■「スーパーエイト/Super 8」(2011年・アメリカ)

監督=J・J・エイブラムス
主演=ジョエル・コートニー エル・ファニング カイル・チャンドラー ライリー・グリフィス

※注意・ネタバレあります。
巷では賛否両論あるけれど、おそらくこの映画を評価するのは僕らのようなスピルバーグ映画で大きくなった元少年たちではなかろうか。多くの人が言っているようにこれは過去のスピルバーグ作品に対する愛情あふるるトリビュート映画だ。冒険する少年たちは「E.T.」や「グーニーズ」を思わせるし、ラストで飛び立つ宇宙船はまさに「未知との遭遇」。J・J・エイブラムス監督と僕は同い年だから、これらの作品を10代に鑑賞しているはず。スピルバーグのプロデュースの下、自身の脚本でSFジュブナイル映画を撮ることができたのは、映画に携わる者としてはこの上ない出来事に違いない。「M:I3」でみせたすべてを見せないスピード感ある演出はここでも冴えている。

確かにお子様向け映画と思える甘さもある。異星人が、喰らうため(?)に吊しているさらわれた人間たち。でもそれが捕食の為なら生々しい人骨の一つでも転がってるはずなのね。そうした描写に遠慮がなかった韓国映画「グエムル」ほどのことを望みはしないけど、きれい事のように思えてならない。また映画撮影のために少年達が乗ってきた自動車にしても現場検証で軍がすぐにかぎつけそうな気がするのだが、このあたりのノロノロした感じも甘さを感じずにはいられない。最近観た「カウボーイ&エイリアン」のクリーチャーと造形が似て見えるのもちょっと気になる。ポケモンのカイリキーかワンリキーみたい・・・。製作にどちらもスピルバーグが関係しているせいなのか?細かいことを言えばきりがない。

でもね、この映画が素敵なのは映画に対する愛情に満ちていること。少年たちが8ミリフィルムで自主映画を撮っている。しかもそれがゾンビ映画というのがたまらなくいいね!。主人公(ジョエル・コートニー)の部屋は、随所に往年のホラー・SF映画の香りがぷんぷん。しかもその趣味嗜好を理解してくれる女の子(エル・ファニング)の登場。映画撮影につきあってくれるだけでも万歳なのに、模型やホラー映画みたいなヲタな趣味にも「イヤだぁ」と言わない彼女。そして次第に高まる恋心・・・。もう少年男子の願望以外の何でもない(笑)。リーダー格のデブ少年の横恋慕で関係がギクシャクするのも素敵なエピソード。エンドクレジットで流される彼らの自主製作映画には思わず笑っちゃったけど、それも映画へのアツい思いの表れ。少年の心に2時間だけ戻してくれる素敵な映画。



コメント (2)
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