Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

危険な関係

2018-04-30 | 映画(か行)

■「危険な関係/Les Liaisons Dangereuses 1960」(1959年・フランス)

監督=ロジェ・バディム
主演=ジェラール・フィリップ ジャンヌ・モロー ジャンヌ・ヴァレリー アネット・バディム ジャン・ルイ・トランティニャン

ずっと観たかったロジェ・バディム監督作「危険な関係」鑑賞。
ジェラール・フィリップ、ジャンヌ・モロー、アート・ブレイキーにセロニアス・モンク。
あまりに淫らなお話なので本国で上映禁止を喰らったという逸話が残るこの映画。
観終わってしばし放心状態。
この世にはまだこんなすげぇ映画があるんだ・・・感動とも衝撃とも違う快感。

外交官夫妻のバルモンとジュリエットは、お互いの情事を報告し合う奇妙な夫婦関係。
ジュリエットは愛人だった男性が18歳のセシルと結婚すると聞き、
バルモンにセシルを誘惑するように提案。
バルモンにとってセシルは従姉妹の娘なので、
抵抗を感じながらも彼女を追ってスキーリゾート地メジェーブへ。
セシルに迫る一方で、彼は美しい人妻マリアンヌと出会い、惹かれていく。

バルモンが仕掛ける恋の駆け引きだけでも十二分にスリリングなのに、
ジュリエットが彼に次々にアドバイスや口添えをし、さらには行動を急き立てるから、
先がどうなるのかハラハラする。
しかもセシルの本命彼氏である学生ダンスニの存在が、登場する男女関係をますます複雑にする。
なかなかおとせない貞淑なマリアンヌに心が傾いていくバルモンに、
ジュリエットが関係の清算を急がせたことから、物語はとんでもない悲劇的な結末へ。

フェチで脚線を舐めるようなカメラワーク、
女性をどう撮ったら美しいのかを知り尽くしたようなバディムの演出。
椅子の背から撮ったラブシーンなど絵になる場面の連続。
全編に流れるジャズ。
ダンディなジェラール・フィリップも素晴らしいが、
それ以上に後半のジャンヌ・モローの怖さが強く印象に残る。
この映画を美しいリマスター版で観る機会に恵まれたことを、映画の神様に感謝。

大傑作。

映画『危険な関係』4Kデジタル・リマスター版 予告編




コメント (5)
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君の名前で僕を呼んで

2018-04-29 | 映画(か行)

■「君の名前で僕を呼んで/Call Me By Your Name」(2017年・イタリア=フランス=ブラジル=アメリカ)

●2017年アカデミー賞 脚色賞
●2017年LA批評家協会賞 作品賞・男優賞・監督賞

監督=ルカ・グァダニーノ
主演=ティモシー・シャラメ アーミー・ハマー マイケル・スタールバーグ アミラ・カサール


「モーリス」のジェームズ・アイボリーが脚本、秀作「ミラノ、愛に生きる」のルカ・グァダニーノが監督。
アイボリー翁が史上最年長でオスカー受賞したし、LGBT映画にハズレなし!が持論の友達のお勧めもあり鑑賞。

主人公エリオは17歳。
イタリアの避暑地で過ごす1983年の夏、大学教授の父を手伝う為に大学院生オリバーがやってきた。
最初はオリバーの物言いが気に障っていたエリオだったが、
一緒に過ごすうちに、彼に対する憧れが次第に恋心へと変わっていき、二人はやがて密かな恋に落ちていく。

映像の美しさ、散りばめられた音楽との調和が見事。
男子二人のラブシーンは撮り方が巧みでいやらしさは全く感じない。
いや、むしろ人と人が肌と心を合わせる瞬間のときめきや、心地よさが伝わってくる気がした。
その分、後半の展開が実に切なくて。
そうか、晩年を迎えたジェームズ・アイボリーが撮りたかったのはこういう愛の姿なのだ。
一部のシーンがちょっと生々しいのだが、そこまで表現できたのも、
LGBTへの理解が「モーリス」を撮った80年代とは違う今だからこそ。

そして、映画はさらにグァダニーノ監督が撮ったことで、
家族を描かせたら天下一品のイタリア映画の伝統が織り込まれる。
二人のその後が描かれるクライマックス、
この映画は単なる男子二人の恋愛映画ではなく、家族愛が貫かれた映画だと思い知らされる。
残酷なまでに長回しのラストシーンが残す余韻。こんなエンドクレジットの使い方はなかなかない。
これは、アイボリーらしさと、イタリア映画伝統の家族愛が沁みる見事なコラボレーション。

「フラッシュダンス」で使われていたジョー・エスポジトのLady, Lady, Ladyや、
サイケデリックファーズのLove My Wayなど80年代の楽曲が懐かしい。
坂本龍一のピアノ曲など、音楽の使われ方もナイス。

『君の名前で僕を呼んで』日本語字幕予告編





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レディ・プレイヤー1

2018-04-22 | 映画(ら行)

■「レディ・プレイヤー1/Ready Player 1」(2018年・アメリカ)

監督=スティーブン・スピルバーグ
主演=タイ・シェリダン オリヴィア・クック ベン・メンデルソーン サイモン・ペッグ

スピルバーグ監督が、VRをネタに遊びまくったド派手なエンターテイメント作品
「レディ・プレーヤー1」を試写会で鑑賞。
ゲームやサブカルチャーをてんこ盛りにして若い客層に媚びたのだ・・・という邪推もできるのだけど、
「いやいや、オレにだってこんな映画撮れるんだよ」
というスピルバーグの余裕(ってか自慢?)だと僕には感じられた。
数々のアニメやゲームの引用は確かに楽しい。
メカゴジラ機竜やらRX78-2、「AKIRA」のバイク・・・ニッポン万歳WW

ただね。多くの人が楽しむVRゲームの中で起こった事件が
リアルを巻き込んだ騒動に発展する事情にどうも現実味がない。
似たような設定なら
生活の管理までコンピュータに頼った社会とその危うさを描いていた
「サマーウォーズ」の方がよっぽど説得力がある。
都合の良い展開も確かにあるしツッコミどころも満載。

だけどね、この映画には僕らを日々楽しませてくれるエンターテイメントへの愛と、
そんなエンタメを心の支えに毎日を不器用に生きている僕らへのメッセージがある。
ただのCG満載のお気楽映画にはしないからスピルバーグはやっぱりうまい。
映画ファンに向けてのお楽しみもある。
特にスタンリー・キューブリック監督作「シャイニング」の再現シーンの見事なこと!
デロリアンやマイケル・ジャクソンなど80年代カルチャーも楽しすぎる。
ジョン・ヒューズ監督作の名前が並ぶ粋な台詞、
そしてヴァン・ヘイレンで始まってツイステッド・シスター、
ホール&オーツで終わるサントラがもうたまらん♪

ここに盛り込まれた映画たちのルーツを
若い映画ファンが触れていくことにつながったら嬉しいな。

『レディ・プレイヤー1』日本版予告 (2018年)






コメント (3)
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たかが世界の終わり

2018-04-09 | 映画(た行)

■「たかが世界の終わり/Juste La Fin Du Monde」(2016年・フランス=カナダ)

●2016年カンヌ映画祭 グランプリ
●2016年セザール賞 監督賞・主演男優賞・編集賞

監督=グザヴィエ・ドラン
主演=ギャスパー・ウリエル マリオン・コティヤール ヴァンサン・カッセル ナタリー・バイ レア・セドゥ

豪華キャストのフランス映画だけに、期待があったのだけど、ちょっと観ていて辛い映画でした。
死期が迫った若き主人公が、ずっと疎遠だった家族にそれを伝えに行くお話。
死が迫っている理由やそれまでの経緯は場面としてほぼ明確に語られず、
台詞から家族それぞれが主人公へ抱く思いを感じ取ることが求められる。
なかなか本題を切り出せないじれったい時間が淡々とすぎる中、
自分の思いを素直に伝えられない家族が口汚く罵りあうのは、
やはり観ていて辛い。

会話の行間を読むことで、お互いの寂しさは確かに滲んでくる。
歳の離れた妹からは「兄さんは才能もあるしすごい。でもそれは家族の役には立っていない。」と言われ、
家族を支え続けた兄からは嫌味のような悪口雑言。
それは寂しさの裏返しなのだが、
こういう言い方しかできない不器用かがまた寂しくなってくる。
でも、この映画を自分自身に置き換えてみると、
社会人になってこれまで、家族に貢献できたことって何かあっただろうか、と考えさせられもする。
その思いがまた映画を切なくさせる。

突然音楽がドーンと前面に出て映像美を見せつけてくるのは監督のセンスを感じるけど、
全体としては浮いている。
しかもよりによって「恋のマイアヒ」だけに、別な映像が脳裏をよぎっちゃってさ(笑)

『たかが世界の終わり』本予告




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