読書日記

いろいろな本のレビュー

イチャモン研究会 小野田正利 ミネルヴァ書房

2009-11-20 22:13:31 | Weblog
 副題は「学校と保護者のいい関係づくりへ」である。阪大教授の小野田氏が保護者のクレームにどう対処したらいいか各方面の有識者の提言をまとめたもの。読むと、保育所・幼稚園・小学校あたりのイチャモンが特に多いことがわかる。親としては頑張っていい子育てをしたいという意識が強烈に出てくる頃だ。自子中心主義が学芸会の主役争奪戦になっていくのだ。子供をペット化するアホな親がこうした行動を助長する。教師は尊敬すべき対象ではなく。不満の捌け口として攻撃の対象になる。いわばサンドバッグだ。こういう親の傾向として自己の経済的困窮や社会的に不遇な状況のもとで抑圧された鬱屈がイチャモンとして爆発する事が多い。学校は一番文句が言い易いこともあって、攻撃の対象となった教師は精神的・肉体的に追い詰められて辞職あるいは休職に追い込まれる。かくて小学校や中学校の義務教育現場は安い賃金と重労働で最近志願者がどんどん減少している。国の基である義務教育が荒廃すると由々しき事態が起こることは容易に想像できる。民主党は公立高校の授業料無償化を来年度から実施するようだが、教員の待遇も向上させないと優秀な人材が集まらなくなるだろう。この辺のことを真剣に考えるべきだ。
 かつて田中角栄は1970年代に人材確保法案を作って教員の給与を大幅にアップさせたが、今あのような政治家はいない。田中はある意味偉大だった。民主党のガラス張りの予算折衝もいいが、何か子供じみていやな感じがする。国民の一部がよく「私達の納めた税金を正しく使って欲しい」などとほざいているが、「おまえらいったいどれだけの税金を納めているんじゃ。偉そうなこと言うな」と言いたい気もする。政府も「皆さんの税金を公正に使わせていただく」などと機会あるごとに言うものだから、最前の連中を増長させるのだ。
 企業における「お客様の苦情は会社発展の糧」などと言うコピーが消費者のクレームを増やす一因になっており、この風潮が教育界に波及していることは確かだ。最近はすぐに教育委員会に電話したり、府会議員を使ったりして現場に脅しをかけてくる親が多い。このような親の中には明らかに病気と思われる場合もあるので、対応が非常に難しい。それもこれも含めて、教員に対する尊敬の気持ちを持っている生徒や親はどれくらいいるのだろう。特に大阪はそれが少ないように思われる。それが民度や文化程度の低下を助長しているのではないか。その象徴があの知事の出現だと考えられなくもない。