「中国問題」の内幕 清水美和 ちくま新書
本書は胡錦濤と江沢民前総書記率いる上海グループとの主導権争いなど普通の新聞・雑誌では書かれることの無い、まさに中国共産党の内幕を白日のもとに晒したものだ。清水氏は共産党政治局員の友人がいるのではと思うくらいだ。
いま中国は経済格差、環境問題、拝金主義、民族問題等々深刻な問題を抱えている。これは共産党そのものが腐敗と貧富の差を生み出す元凶になっていることに起因すると言っても過言ではない。一党独裁の限界が露呈したものだ。都市の党幹部から地方の幹部に至るまで国家の資産を食い物にして恥じない体質はこの国を破滅に導く可能性があることを筆者は危惧する。
共産党内部の権力闘争はいまに始まったことではないが、それにしても12億の人民を7人の政治局党務委員が支配する中でドラスチックに展開される権謀術数。中国が中国たる所以である。
胡錦濤は農民出身で清華大学の共産主義青年団出身のたたき上げである。彼はこの共青団系の人脈を権力中枢に作りたい意向だが、これに対抗するのが太子党と言われる中華人民共和国建国に功績のあった革命家の子弟たちである。そして、もう一つは斜陽だが、江沢民前総書記ら経済的富裕層を味方につけた上海グループである。この三つ巴の戦いがしばらく続く。
よって対日本の外交も日本と直接向き合った形で行われるのではなく、内部のせめぎあいの結果に左右されることになる。これが中国外交の難しいところだ。豊富な情報と適切な判断が要求される。日本のインテリジェンス能力が問われるのだ。