クルマのサスペンションと長いお付き合い

サスペンションの話、試乗記、旅の話、諸々・・・。

GTRの場合 その10

2018-11-29 23:26:12 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
「乗り心地が悪いのは、ランフラットタイヤを履いているからだと諦めていませんか?」⋯⋯コピーライト風。

ならばタイヤを変えればと誰しもが考えます。

ところが一般ラジアルに履き替えても35GTRの場合サスペンションがそのままだと、改善しろは期待するほどではなくわずかです。

仕込みの減衰値がとにかく硬いというのがその理由で、何かを意図してのことだと思うのですが、
どこにピントが合っているのかよくわかりません。

特に初期型は印象が良くないので、なんとかしたい度が高いと思われます。

さて純正ダンパーのチューニング後はどうなったか。

ランフラットタイヤを履いたままで静かな乗り心地の時間がウンと増えました。

ヘッドレストに頭を押し付けていても、後ろからツンツンと突かれません。

高速道路で居眠りできるかもしれないの快適さです。もちろん助手席で。

左右の揺さぶられもシートと体の間で吸収できる範囲。

同時にワンダリングと言われる路面のウネリでハンドルが取られるふらつき現象も大きく改善、
幅広のランフラットタイヤを履いているだけあってそれなりには取られるのですが許容範囲。
純正時の悪質な印象はなくなりました。

ソリッドタイヤに近いタイヤ硬さゆえに出ていた振動をどう抑え込むかもチューニングしました。

微小ストロークから減衰が出るようにダンパーの応答性を高めたことで、タイヤ起因の振動(音)をかなり抑え込むことができるようになりました。

かつ減衰を出すディスクバルブのフリクションを下げて雑味を減らすなど、気になる振動レベルを下げたり、
こうあってほしい特性を演出するのに、持ち手を全部使ってもう後がないところまでやって⋯⋯店じまい

あのコチコチタイヤを履いた35GTRがフツーに走れるようになりました。

納車完了です。




工作の時間 エアーチャック開発

2018-11-23 09:44:49 | なんでもレポート
レーシングカーはタイヤの空気圧管理を厳しく問われます。

その日の路面コンディション、外気温、天気を読んで、狙いの空気圧で走れるように調整します。

そのタイヤ内圧調整の時、タイヤバルブにエアーチェックを押し当てた時と離す時に「ブシュ」と二度音がします。

エアーゲージで見た値よりも、微量とは言え「ブシュ」の一撃で内圧は少し下がった値になっているはずです。

エアー調整作業を手際よくやって、その漏れを少なくするのがベテランらしさ⋯みたいなところがあるのですが。
繰り返し測定すると誰がやっても内圧は下がる一方です。

そんな仔細なことをと思われるかもしれませんが、エアーボリュームのあるタイヤはともかく、
ダンパーなどのガス室容積の小さい場合では、ガス充填作業での「ブシュ」は命取り。

なのでダンパー作業では、ねじ込み式のエアーチャック(口金)使います。
外ネジを締めこんで口金を装着、次に真ん中のネジを締めこんでバルブを押し開き、ガスを充填。
規定圧がかかったところで、真ん中のネジを緩め、その後に口金を外して作業終了。

漏らさずに作業できますが、エアーチェック作業には不向きです。

そこで「ガス充填」も「エアーチェック」もワンタッチで作業できて漏れないエアーチャックを⋯ということで開発しました。

今度はエアーゲージの値と内圧が一致します。

ダンパーへのガス充填も一瞬にして終わらせることができます。しかも正確に。

ゆっくり作業でもブシュ音がしません。

エアーチャックの先端構造が現在のデザインになって70年超。

音のしない静かなエアーチャックが加わります。

今年5月のスーパーフォーミュラレースから全チームに支給、採用されています。










35GTRの場合 その9

2018-11-18 20:22:00 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
走行時に自重が2トン近くあるクルマのサスペンションチューニングがそもそも難しいのか、
GTRだからなのかわからないのですが手こずりました。

第1段階
別タンク式に改造。
*今回の改造の中で加点要素が最も大きいのがこれです。

第2段階
別タンク式、デグレッシブピストンでチューニング
*純正値が明らかに過減衰なのを確認できたので削り落としました。加点要素大。

第三段階
別タンク式、リニアピストンでチューニング
*デグレッシブ特性でしっくりこないのでリニアピストンをトライ。加点要素中。

第四段階
別タンク式、デグレッシブピストンでリニア特性チューニング
*圧側の高速域の印象が良くないので試しにもう一度デグレッシブピストンでリニア特性をトライ、加点要素大。

第五段階
一体型別タンク式に改造。
*ホース別タンク式からホースを外して一体型に変更。加点要素中。

第六段階
別タンク式、デグレッシブピストンで圧側リニア特性、伸び側デグレッシブ特性チューニング
*圧側の特性はリニア、伸び側はデグレッシブ特性が良さそうなのでトライ、加点要素大。

第七段階
別タンク式、デグレッシブピストンにチェックバルブ組み込み、圧側リニア特性、伸び側デグレッシブ特性のハイブリット方式でまとめ。
*ランフラットタイヤタイヤとの格闘にやっと決着の時が⋯

それぞれの段階で複数回走行テストが入るので時間がかかりました。

純正仕様で感じていた「不快なかたさ」「揺さぶられ」が取れて、しっかりとした乗り心地でありながらフラットライドに。

あとは納車です。


35GTRの場合 その8

2018-11-09 09:57:09 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
時間のかかっている35GTRの「快適仕様」チューニング。

テストを繰り返したダンパーではなく、オーナーに渡すダンパーを新たに組み立てました。

ホース別タンク式から今度は、本体一体型の別タンク式にデザイン変更。

ホース別タンク式のメリットは、ホースの長さを生かしてタンクの取り付け場所を探すことができること。

一体型の場合フェンダー内のサスペンションスペースに余裕がないと小さなタンクと言えども設置するのが難しいことがあります。

35GTRについてどうかといえば、すでに売られているものの中に同じようなデザインがあるのでなんとかなりそうです。

肝心の乗り心地はどうなったかといえば、バネレートがかなり硬め、ということもあって手こずりました。

正直にいえば快適を目指したというよりも、まずは不快に感じるところを探して削っていったというのが
今回のチューニングのような気がします。

目地の通過はタイヤ硬さが気になるものの、良路はフツーの乗り心地になってきました。

やっと⋯


躍度日和 その8

2018-11-04 11:24:24 | G-BOWL
「発進」を皆さんと練習しました。

①ブレーキをリリースして、クリープ状態でクルマがどう動くか確かめます。

②次に最小のアクセル開度で駆動をかけます。

③さらに駆動をもう一段階(薄皮一枚の感じで)加え⋯さらに加える。

各操作の間を2〜3秒置きます。

①〜③の動作の間を詰めたパターンもトライしていきます。

数トライしたら教室に戻ってG BOWLアプリで振り返り。

*音楽室を借りたのですが、響の少ないとてもいい環境でした。

全員のデーターを瞬時にシェアして見られるのもこういった集まりならでは。

今日のテーマをタクシーした時の私のデータと比較することもできます。

発進がテーマなので、アクセル操作一つでできるはずなのですが、クルマのクセとの付き合い方とも言えます。

①のブレーキの離し方のところから気を使わなければいけないクルマが今回ありました。

トルクフルなエンジンを積んだそのクルマは、ブレーキを離した途端に、アイドル回転でも

元気よく飛び出します。

それならブレーキリリースをゆっくりやれば駆動と受け渡しができるのでは、と思っていたら、
ブレーキをゆっくり離すとビリビリ音が出る、それが嫌だからパンと一気に離すようにしている⋯

データを見ると、クルマの動き始めの躍度もGも一気に立ち上がっています。

こうなると当然②のアクセル操作も気を使います。

うまくいったのがあったわよ⋯普段使いは奥方でこの日のデータ採りはご主人、との会話。

努力目標ができたとも言えるのですが、クルマのクセが強すぎる場合、
できる範囲が限られるかもしれません。

躍度に着目して、快適運転との仕切り線がどの辺りにあるのか全員で話し合ったのですが、

これが意外に難しく、不快を人はどこで感じているのか、というのを
データーに落とし込もうとしても⋯よくわかりませんでした。

というのがこの日のまとめ。

でも、発進の「コツ」は伝わったかな。









35GT-Rの場合 その7

2018-11-02 23:01:38 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
クルマからダンパーを取り外す。
減衰値をチューニングする。
テスターにかけて確認する。
クルマに組み込む。
アライメントを調整する。
テスト走行をする。
これの繰り返し。
手間がかかります。

チューニングするのは必ず一箇所。
ここもあそこも触りたいけど、結果を確認しながら進めていくのが結局のところ早道だし、
こんな時ここを触ったらこうなったらをしっかり覚えておけば、他のシーンでも生かすことができます。

二箇所以上同時にチューニングをしてしまうと、動きだとか乗り心地がガラッと変わって、
それまでの延長線では無くなることがよくあります。

つまり仕切り直しとなるので、良い方に転じればいいのですが、ダメになるとさらに回数が増えることになります。

だから一度に一箇所は鉄則とも言えます。

やっとここまできたのですが、道半ばと言ったところでしょうか。

数十回は当たり前なのが市販車の仕様出し。

今回の35GTRもそれに近いかもしれません。

オーダーしていた部品が届き、いよいよまとめに入りたい⋯頃です。

すでに満タン三回。いやまだ三回か。

楽しみです。