クルマのサスペンションと長いお付き合い

サスペンションの話、試乗記、旅の話、諸々・・・。

アンチロールアングル その2

2019-08-27 16:42:58 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
アンチロールアングルその2


揺動軸*1の車体取り付け角を動きにくい方向に取り付けるので、柔軟さが削られて動きの渋さがでます。
これが車体を支える力になってアンチダイブ、アンチスコートの効果が得られるようになります。

ロワーアーム、アッパーアーム、トレーリングアーム*2は、今度は角度に応じて分力が発生し「水平を境」にして
クルマを持ち上げたり押し下げたりします。

1G車高でタイヤ側から車体に向かって上向きにアーム角をつければ、横力に応じた分力(ジャッキアップ力)が
車体を持ち上げロールの抵抗力となります。

この時のアーム角がアンチロールアングル(アンチロール角)⋯ロワーアームの下半角のことです。

アンチロール角を持つことでサスペンションに"筋力"が備わるので「ロール角」「ロール感」「ロールタイミング」
「ロール戻り」「直進性」「フラットライド」「ライントレース性」に対して好影響があります。

都合のいいことばかりのようですが、なぜ?のメカニズム解説できるはもちろんのこと、再現性もあります。

もしも水平よりも車体側の取り付け点が下がって上反角(バンザイ状態)が付いていると、
今度は発生する分力が車体を押し下げる働きをするので速く大きくロールします。
上記の七項目が減点されるのはいうまでもありません。

高G旋回の安定感を期待してローダウンしたのに、クタっとロールして張り感がなくなるのがその一例。
バネレートを上げても根本的な解決策になりません。

アーム角水平*3を境にして、分力の方向が反転して車両挙動が激変することをここまで説明してきたのですが、
ロールセンター理論ではこの事象の説明がなされていません。

つまりクルマで実際に起きてる事をロールセンター理論に落とし込むことができない。その逆も然りです。

自分で走らせる競技車をセッティングしていて、幸いなことにかなり初期の段階でこのことに気がつきました。
カギは下反角にあることも。

頭を切り替えてみると、百年前のクルマも現代のクルマもレーシングカーも、同じ基本で見渡せることも分かりました。

以来サスペンションとのお付き合いはあまり迷わずこれたのですが、その中でも格段に面白いのがダンパー。

構造もチューニングも少しでもいいものにしようと考え始めると、
終わらない夏休みの宿題をワクワクしながらやっている気分です。


加速、減速、旋回のタイヤの力が車体にどう伝わるのか、力の「方向」を決めるのがサスペンションで、
伝わり方の「リズム」を整えるのが減衰値。

ここの整理がついてくるとサスペンションセッティングが俄然楽しくなってきます。



*1 ロワーアームが揺動して動く時の軸のこと、車体に固定されます。
*2 揺動軸をを中心にして角度変化を伴いながら揺動するアーム類のこと。
*3 ロワーアームの外側ボールジョイントと内側取り付けブッシュの地上高さが同じ寸法の時を水平と考えます。

アンチロールアングル その1

2019-08-21 10:59:09 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
アンチロールアングル
ブレーキをかけた時の前のめりを減らすのがアンチダイブとアンチリフト。
発進する時のお尻のへたり込みを減らすのがアンチスコート。

どれもサスペンションの取り付け角、マウント位置を工夫してピッチングを減らす仕掛けです。

バイクのスイングアームも加速時の姿勢変化が少なくなるように角度が付いています。

ロールを規制するには硬いスプリングを選択するかスタビライザーを太くする、
ショックストロークを短くする、バンプラバーを有効に使う、など機械寸法で固めます。

スタビライザーはARB(アンチロールバー)とも呼ばれ、この部品がアンチロールの役目を担っていることがわかります。

教科書を開けば「ロールセンター理論」が載っていて、車高を変えるとロールセンター高さが変わり、
重心点からの距離をモーメントアームと見て、長いとロールしやすく、短かければしにくいと解説されています。

サスペンションでロール角をコントロールする話になると⋯それは難しい計算式を用いて⋯。

ロールセンター理論はサスペンションの幾何学中心(瞬間中心)を求めるところまでの説明はあるのですが、
そこから先がありません。車両運動を紐解く為の理論じゃなかったの?

ハンドリングの良いクルマの幾何学中心(ロールセンター高)が地上8cmにあったとします。
じゃあということで別のクルマでも8cmにすれば同じハンドリングになるか、というと
かなりの偶然が重ならない限り同じになりません。

その訳は、ロールセンター高さが8cmの条件だけでは、サスペンションの取り付け点、
アームの長さ、配置、タイヤの直径、トレッド寸法が無限にレイアウトできるからです。

つまり8cmを基準にしてもほとんど意味がないと言うことです。

だからというわけではないのですが、できあがっているクルマの車高を変えてもロールが多少変わるだけで、
いきなり不安定になったりしないだろうと、ある意味都合よく理解されています。

実際、自動車メーカーが設定するスポーツタイプは、必ずと言っていいほど標準車よりも車高を下げて、
ほらかっこいいでしょ⋯を見せています。

車高が下がればモーメントアームは長くなるのでロールが増えるにもかかわらずです。

ローダウンは速さを強調するときの常套手段かもしれませんが、メーカーテストを経て純正車高を決めたはずなのに、
わざわざバランスを崩すという辻褄の合わないことを自動車メーカーがやっている⋯⋯
これも先のロールセンター理論が曖昧故にだからです。

続く



何がなんだかさっぱり

2019-08-11 12:56:05 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
仕事で来社されたのですが、

仕事が一段落したところでご自分のジムカーナ車両の話になりました。

あれこれ部品を選んでいるようなのですが、今ひとつしっくりこないようなのでどんな具合ですかと尋ねると。

よく分からない。けど乗りやすくない……

これじゃあ話が先に進みません。

一体どういったセッティングなのか本人もわかっていないようです。

こちらが知りたい車高も、サスペンションストロークも分かりません。

ダンパーメーカーまでは知っているのですが、それ以外は皆目⋯

さらにどんな運転をしているのかもわかりません。

クルマの動きを誰しもがうまく言葉にできるわけではないというのは分かっているのですが⋯困りました。

一人で悩んでいる人って多いんでしょうね〜