クルマのサスペンションと長いお付き合い

サスペンションの話、試乗記、旅の話、諸々・・・。

R8の場合

2022-08-26 13:06:53 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
R8の純正ダンパーはマグネライド。

(マグネティックライドコントロール、磁性流体ダンパー)

金属粉の混ざったオイル(ダンパーオイル)を電磁石でコントロールするセミアクティブサスペンション。

冷たいミルクシェークを太めのストローで吸い込むシーンを思い浮かべてください。

ストローの周りに電磁石のコイルを巻きます。

クラッシュアイスを金属粉に置き換えると、電流を流すと磁力でストローの内壁に金属粉が張り付きます。

壁際は動きにくく、磁力の弱い中央付近は抵抗を生みつつ押されると動きます。

これがダンピングフォースを生む原理で、オイルポート径(ストローサイズ)を
磁力によって太くしたり細くしたりさせているイメージです。

*もう一つの考え方は磁力を受けて、金属粉が半固体状態となるので、
 オイル粘度が変化するイメージで捉えてもいいかもしれません。

実際ダンパーの構造は穴の空いたピストンと電磁コイルだけで、可動部品はありません。

どういったシーンでどれほどの減衰値が必要なのかが分かれば
自在にかつ"瞬時"にコントロールできるというわけです。

その優れたダンパーが標準装着されているのになぜ入庫してきたのか。

理由は簡単で油漏れ。

新品部品も入手可能なのですが、オーナーさんの希望は別のダンパーにしてみたい。

オーバーホールできない純正ダンパーから、オーバーホールも仕様変更もできるダンパーへとも言えます。

ここで問題になるのは減衰値をどうするか。

磁性流体式のダンパーは"入力シーン対応型"の流動的減衰値。

従来式のダンパーは"速度感応型"の固定減衰値と呼ばれるもの。

走行中刻々と減衰値が変化するセミアクティブダンパーから、定点の値を抽出しても参考になりません。

といったこともあって一から減衰特性、減衰ボリューム、減衰バランスなど
走行テストを繰り返して決めていきます。

ハンドリングと乗り心地と安定性⋯

近所のコンビニで減衰データーを買うことができれば10分で解決!

そんなわけないですよ。

サスペンションチューニングの極意

2022-08-20 10:35:22 | セッティングレポート(SUSPENSIONDRIVE)
依頼は「乗り心地を良くしてほしい」

持ち込まれたクルマは国産のスポーツモデル、足回りは純正。

依頼主は、うちと古い付き合いの同業者(エンジン系)の中学生時代の同級生。

普段このクルマを使っているのはその同級生の奥さん。

乗り心地に不満を持っているのは奥さんのようです。

FIAT X1/9 →ロードスター→ボクスター→今回のクルマ

筋金入りのオープンカー道を歩んでいる女性です。

なんとかせねばと旦那さんが同級生に相談⋯そしてクルマとともに来社。

乗り心地の印象を聞いていくうちに、現状だと犬も不安げで落ち着きがないとのこと。

つまり同乗の"愛犬"が落ち着いていられる乗り心地にしないといけないわけです。

何日かかけてサスペンションチューニングを行なったあと、まずは知り合いに試乗してもらったのですが、
あまり変わっていない?が一言目。

日が変わって次に旦那さん試乗⋯良くなった?と思います。

で引き取っていかれました。

二人のコメントよりも、気になるのは奥さんのコメント。

⋯何日かのち連絡をいただきました。納得してもらえたようです。

肝心の愛犬も落ち着いていられる乗り心地になったと。

ということでOKがもらえました。

犬をも黙らせるチューニング。

喋らず態度で示されるだけに真剣勝負です。