クルマのサスペンションと長いお付き合い

サスペンションの話、試乗記、旅の話、諸々・・・。

検証 バランススロットル 85 4つのライン

2013-07-29 21:29:20 | バランススロットル
検証バランススロットルの練習会でも必ず四つのラインを走ります。
この時の走行軌跡は、速度の分布図であるというのもこれまで説明してきました。

旋回半径が小さければ、Rに比例して速度は遅くなるし、
速度が速ければ速度に見合った大きさのR(旋回半径)に自動的になります。

Rの大きさを見れば、旋回中の最低速度のポイントが分かる(最も小回りしているところ)し、
減速円であれば大きい円から徐々に円を小さくしていくから、速度を連続して落としていることが
分かります。
加速円はその逆。

と、ここまでの説明の前提はRの大きさと速度が釣り合った状態、つまりタイアグリップの上限を使った走り、
又は都度発生しているGの上限を綺麗に一定に揃えた時の走りと言う条件下。

車両に発生するGの方向は変われども、Gコントロールと走行軌跡の管理が
シンクロした時のみ描くことのできるライン取り。
別の表現なら”速度管理が描くライン”、とも言えます。

もう口が酸っぱくなる程説明してきたことですが、
ここで駄目押しを。(少し頭を柔らかくして考えて見ましょう)

タイヤグリップに余裕がある中で、”一定のスピードで”四つのラインを描いてみたらどうなるでしょうか。

一定のスピードでということは加減速無しということなので、
ハンドル操作だけに考え方を絞ればいいことになります。

ハンドルを切れば横Gが発生する、切り増して行けばどんどんGが強くなる、
切り込んだところでハンドルを止めればGはそのまま持続する、戻せばGが減る、
ハンドルを動かしている間はGが変動する、コレが約束になります。

#1のライン取りの場合、進入では徐々にRが小さくなって行く。
連続してハンドルを切り込んでいけば、横Gもその通りに増えていく。
コーナー中央の少し手前でハンドルを切り込み終えるから、横Gのピークもこの辺り。

そこからクリッピングポイントまでほぼ同じGが続き、
立ち上がりの加速円に合わせてハンドルを戻し始めると、今度は舵角の通りにGが下がって行きます。

この一連のハンドル操作と横Gの関係に車両のロールを重ね合わせると、
横Gの強さとロールの傾きは(ロールは途中で止まりますが)ほぼ同じイメージで捉えることができます。

では残りの#2、#3、#4。
イメージして見て下さい。
Gの立ち上がり方、持続、抜け方、ピークのポイント、など分かりやすく。
なんちゃっての#1ラインも。(勇気ある方は書き込みを!)

この一定スピードで描くラインとハンドル操作のまま、減速と加速を加えたものが
目標の四つのラインということになります。





トラクションロッド新設中

2013-07-27 14:02:25 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
リヤサスペンションはリーフリジット方式、車体はおよそ50年ほど前のもの。
リヤアクスルを外して、デフキャリアーを外してみると、
オイル片寄りを防ぐ」バッフルプレートが設置されている!
アクスルシャフトの止め方は4分の3フロー式。
これはタイヤの保持剛性が高い。

国産車の多くはセミフロー式で、シャフトの剛性も手伝って、タイヤの保持剛性を保てるタイプ。
構造がカンタン(コストが安い)。
バッフルプレートの設置されたものも、あまり見たことがない(コストが安い)・・・!

しっかりとした作りのアクスルを見ると、なんだかうれしくなる。
写真で黒く見えるリーフスプリングはFRP製。
さて、どんな走りになるか楽しみだ。

※フルフロー式
 タイヤの支持はアクスルのベアリングで全て支える方式。
 ハーフシャフトは駆動力を伝えるだけ。(トラック・ダンプなど)

※セミフロー式
 タイヤの支持はアクスルのベアリングが半分、残りはハーフシャフトの曲げ剛性が頼り。
 ハーフシャフトが駆動力を支える役目を持つ。(小型乗用車)

※4分の3フロー式
 フルフローに近いが、アクスルベアリングの一部手助けをハーフシャフトが行うので
 4分の3方式。(調べてみると大型乗用車あるいは小型トラックなどに採用されるとある。
 耐荷重が大きいといえる)


検証 バランススロットル 84

2013-07-20 21:03:06 | バランススロットル
6月22日開催の「検証 バランススロットル練習会」の内容が
auto sport誌 8/2号(http://as-web.jp/autosport/issue_info.php?no=570)に紹介されています。

ページ数は少ないのですが、練習会の内容がギュッと詰め込まれています。もちろんキチンと。
当日参加された皆さんにとっては、復習に良いかと思います。

一日走り回ったけど、何~にも覚えてない人には、記憶の糸をたどるキッカケになると思います。
練習会に興味あるけど、その中身が知りたいと思われている方にも、いいのではないでしょうか。

基本運転の再確認のようなところがあるのですが、
これがやってみるとなかなかむつかしい(メニューはシンプル)。
初めてではないハズなのに、こんなこと一度もやったこと無いぞ、の気分になれます。

そこでうまくいかなかった時に、
こんなことやらなくても、と自分に目をつむってしまうのか、
なぜだろうどうしてだろう、と自分を追い込むのか、
すでに自分流の運転スタイルのでき上がっているドライバーは
基本運転が意外にむつかしかったりするのです。
練習会は、そういった気付きの場とも言えます。



F1野次馬目線

2013-07-10 20:47:09 | なんでもレポート
遅ればせながらF1イギリスグランプリを見た。
タイヤバーストが目立ったレースだった。
何やらメルセデスGPはサスペンションに、油圧システムの変わったのを入れているとか。
だから中速コーナーが速いとか、他にも使っているチームがあるのないの、
それは左右を結んでいる金属のスタビライザーを、油圧に置き換えて途中でダンピング効かせるみたいな。

アナウンサーと解説者の話を並べて見ても、その呼称もあるらしいけど
未だによく分からない、何とかシステムが採用されているらしい。

で、トップを走っていたメルセデスの左リヤータイヤがバースト。
ピットに帰ってくる時の後ろ姿を見て、そうかそういうことかが少し見えた。
一つはサスペンション油圧システムの何たるか。

パッシブな作動のものしかレギュレーションで許されていないはずだから、
バーストしても車両姿勢がフラットに保たれるシステムと言えば、四輪を結ぶあの方法だろう、
と思っていたら次のグランプリで、T川さんが昔からあるシステムと解説。
おそらくキネティックサスペンションを基本としたものだろうと推測できる。

それともう一つ、その油圧システムを使っていても、重量配分の重い側(今回はリヤー側)の
タイヤがバーストしたなら、やはり尻餅をつくはずだ。
ところがメルセデスは尻餅をついていない。
という事は燃料をたくさん積んでいるあの時点では前後重量配分が前寄りであると考えることができる。

予選は速いが決勝はズルズルと順位を下げてと言うのが目立つメルセデス。
キネティックサスペンションの働きを考えれば、タイヤへの瞬間的な負荷が大きいことから、
消耗が激しい事が予想できる。

予選アタックは燃料が少なく、その時の前後配分は具合がよくて、フルタンク時に前寄りなのかもしれない。
などなど勝手に野次馬してみた。

ヒストリックラリー参戦 第4期

2013-07-07 13:31:03 | イベントレポート
昨日の天気、かなり暑かったですね~。
あの暑い最中、ヒストリックラリーに参戦した2台のラリーカーを中心に学生、
サポートドライバーとラリーカーのドライバーとコドライバーの大人、関係者全員でパチリ。
汗だくでした。

そしてその後、参戦報告会(90名以上が参加)と、
次年度(すでにスタートしています)つまり今年のメンバーのキックオフ、と続きました。
終わるやいなや、打ち上げパーティー・・・なかなかタフな一日でした。

この授業、年を重ねるごとに学生が増え、協力企業の輪もどんどん広がりつつあります。
3年間、一度もリタイア無しでゴールしていることから、ラリーの幕引きはうまく行っていて申し分ない。
そして中身は、と言えば失敗だらけ。
どちらかと言えば成功ではなく、いかに出来なかったかを知ることが、
この授業の一番の目的と言えるかも知れません。

そう思えば回りの大人も少しは気が楽です?!
今年度の学生達の目標は1位を獲ること。

takumirally.com   時々のぞいてみて下さい。


オトナのためのメカニズム 基礎知識 今回は減衰力の2

2013-07-05 16:56:08 | なんでもレポート

ダンパー(ショックアブソーバー)の減衰力についてのお話。
* auto sport 7/19号(http://as-web.jp/autosport/issue_info.php?no=569)

車を走らせると路面の凸凹から様々な変動をともなう入力を受けます。
乗り心地に直結する車体の揺れをコントロールしたい時とか、
バネ下と言われるタイヤの上下動をバタバタと遊ばせないように路面に追従させるといった時に
減衰力のセッティングが必要になります。

路面振動はタイヤを介してダンパーに伝わってくることから、
タイヤの特性もダンパーは影響を受けます。
また、車体を支えているメインスプリングのカタサにも影響を受けます。
一般乗用車あるいはスポーツカーなどであれば、サスペンションブッシュ、マウント類の
形状、カタサにも影響を受けます。
これらをひとまとめにして、車体振動をなるべく少なくなるように
ダンパーのセッティングを進めていけば、乗り心地も安定性も良くなってきます。

バネ下とバネ上の間にあるダンパーは、振動の仲裁役を成すものと、イメージすることができます。
しかし、そのセッティングは、、とてもむつかしいものです。


検証 バランススロットル 83 一本の線

2013-07-01 23:51:03 | バランススロットル

ある日若者が、数枚の日本画に出合いました。
額に入れられる前のその絵は、仕上がった一枚と下絵のように見える未完成の何枚かが
一緒になっていました。

僅か数本の線が描かれただけの絵から始まり、色付けされた繊細な仕上がりの絵まで、
徐々に仕上げられて行くその道のりを示した工程図のようにも見えたのですが、
すぐにそれは書き直しされたモノだと判りました。

カラーコピーもCGもない時代に、まるで複写されたかの様に見えるそれは、
どこか作者の気に入らないところがあったのでしょう。

そんな作者の心の動きを一堂に会して見る機会に恵まれたときに、
若者が一番驚いたのは、一枚目の絵です。

数本の線から、浴衣を着た若い女性の立ち姿が背筋を伸ばし、
何かを思い巡らせているのか、顔の表情まで見えてくるような。

外郭をなぞっただけの線で、既に表現されていることだった。
そして、見る人の想像を掻き立てるような、その絵の大部分は
最初の数本の線で出来上がっている事にも気づかされます。

心の中にある絵を、細い細い毛先で、手直しも後戻りもできない一本の線にしたためる。
それを見て、これが人の成せる技であることを、驚きとともに心に刻み込みました。
(後に、高名な日本画家の作品あったことを知りました。)

真っ白な紙の上に、墨の一筆を入れる瞬間と同じく、全神経を研ぎ澄ませて自動車を操る。
手直しも後戻りもできないところは同じ。