クルマのサスペンションと長いお付き合い

サスペンションの話、試乗記、旅の話、諸々・・・。

データシート その2

2023-11-22 10:12:10 | なんでもレポート
ホイールアライメントテスターで見れるのは。

・タイヤキャンバー角
・キャスター角
・スラスト角
・セットバック
・トータルトー

といった項目だったと思います。

必ず純正サスペンションであること。
そのクルマの基本情報がテスターにストックされていること。
タイヤホイールに損傷がないことなどが前提です。

ホイールアライメントテスターは最強、高精度のイメージがあるのですが
"ホイール"を測定しているので、車体の傾きとか車高の判定はできません。

なのでレーシングカーでは、フロアー下の高さ、車両姿勢、車高を整えるので、
ホイールアライメントテスターは使えません。

ではレーシングカーのアライメント調整はどうしているのかというと、
キャンバー角キャスター角は測定ポイントがあり、さらにはホイールハブに専用治具をセットして
"車体"を中心に車高が測定できるようになっているのです。

さて、ホイールアライメント調整と言えば、タイヤの整列のことなので理解しやすいのですが、
車高を測定、調整する意味は?

見た目が変わること以外、何かが変わることは分かるけど確かなことはわからない⋯

四輪のタイヤが地面に立っていて、サスペンションを介してボディーが地上高さを保ちます。

そのサスペンションはボディーの取り付けポイントを中心にして動くので、
この取り付けポイントの位置で車両姿勢が決まり、サスペンションの可動範囲が決まります。

そうなると個々のクルマごとに適値がありそうですが⋯

心配いりません。

飛行機の重心点と主翼の関係のように、
サスペンションの動的中心と車両運動はどのクルマも共通しています。(レーシングカーも)

アーチハイト、スタンディングハイト、ステップハイト、ホイールストローク⋯

レーシングカーでなくても、サスペンションが交換されていたり車高が違っていれば、
基本情報を採取するところから始めます。

それを記録するのがデーターシートです

データシート

2023-11-14 13:20:19 | なんでもレポート
サスペンションセッティング作業に欠かせない記録用紙(データシート)が
残り少なくなってきたので、何年ぶりかに作ります。

せっかくなので、直感的になんの数値を表しているのかが
わかるようにイラストを加えました。

これまで、遠くの方とやりとりする際、
メモ書きを渡してサスペンションの寸法を教えてもらうのですが、
新しい記録用紙なら説明が少なくて済みそうです。

うちに見えたお客様との会話も、たとえばこのダンパーキットのストロークバランス云々とか、
アンダーステアーを強く感じたらここの数値を何ミリ調整してください⋯
こういった説明もしやすくなります。

それと新たに追加した項目に「Standing Height」スタンディングハイトがあります。

ロワーアームの下反角(アンチロール角)のことで、スタンディングハイトは
1950年代のロールス・ロイス社の広報資料からの引用。

我が社のクルマはロワーアームが地面に対して水平より下がった(バンザイ)状態で出荷されることはありません。
とどの部分の寸法なのかイラスト入りで記されています。

この時代すでにロールス・ロイス社のエンジニアがロワーアームの角度に着目していたことが分かります。

でもそこには皆んなが知っているロールセンター理論が出てこないので、
おそらく口うるさい人たちはこれじゃあ根拠がわからないとか言って無視したのかもしれません。

その後にアーム角の話が出てこないことからも世間の理解を得られなかったんでしょうね。

もう70年以上前の話です。

この情報を見つけたのは森慶太氏。

ということで新作の記録紙の見本ができあがりました。


サスペンションセッティング

2023-11-01 15:39:32 | なんでもレポート
サスペンションセッティングの参考になる⋯はたまた迷わせるだけかもしれませんが、
サスペンションセッティング+タイヤの話をオートスポーツ誌に、
お茶飲み話的に載せていただきました。

必要なところを読み取っていただければと思います。

現在販売中の12月号。

ドライビング特集で読み応えがあります。

タイヤの話は横浜ゴムのスーパーフォミュラー用タイヤの元開発担当者。

空気圧とタイムの関係など興味深い話を教えていただきました。

サーキットアタックのタイムはタイヤ依存。
サスペンションの寄与度は?の話も出てきます。

サーキットに乗り込む時にはバネレートを高くする、減衰を高くする、
車高を下げられるだけ下げる。

これは四輪の自由度を拘束して車体と同化させる方向です。

サスペンションが動いてしまうとコントロール不能の状態に陥りやすいことが
わかっているからです。

この不安定な動きの元はといえば、
サスペンションストローク、減衰値、バネレートの固い柔らかいではなく"アーム角"です。

ロワーアームの角度のことで、地面との相対角のことです。

両サイドのタイヤを川の両岸に立てた柱とすると、
市販車をローダウンするとロワーアームはバンザイ(上反角)状態になり、
吊り橋の真ん中に車体を吊るしているのに似ています。

この状態で柱が内側に押されるとロープが緩んで車体がポチャっと川に落ちます。

これはタイヤに横力が入ると車体の上下動に影響を及ぼすということです。

次にアーム角が下反角状態の場合は突っ張り方向で支える"アーチ橋"と考えることができます。

横力を受けて柱が内側に押されると中央に置かれた車体は
川面から持ち上がる方向の力を受けて突っ張り合うことから
車体の沈み込みにくさ、傾きにくさが生じます。

つまりこの時のロワーアーム角をアンチロール角として考えるのはもちろん、
他にもいくつかの動きに影響をもたらすことから、
セッティングの最重要項目として扱います。

フォミュラカー、GTカーなどレーシングカーとして設計されているサスペンションは
例外なく下反角がついているかほぼ地面と並行に近いはずです。

格好が優先のローダウン車両は、強い上反角のせいで必ず"吊り橋川ポチャ仕様"になります。

それを知ってか知らずか水面に落ちないように必死で固めるんです。

市販車であっても、
ロワーアームに下反角のついたセッティングが走行安定性の元になることは、
世界中のクルマがそうなっていることからもうかがえます。

純粋なレーシングカーも市販車も、
安定性を得るためサスペンションセッティングの基本は同じということです。