クルマのサスペンションと長いお付き合い

サスペンションの話、試乗記、旅の話、諸々・・・。

世界一快適なロードスター その5

2021-02-22 13:45:20 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
NA8Cの快適さ試乗から戻ってくると、このクルマのブレーキ何かやってありますか?と聞かれます。

具合のいいブレーキタッチにおやっとなるのでしょう、乗り心地の話を後回しにするくらいですから。

・踏み始めのカツンが無い。
・その先の踏み応えと制動力の関係が素直
・ブレーキを緩める時にジワッとができる

これは何か改造してあるに違いない⋯⋯

でもブレーキはNA8C純正です。
(この時代のブレーキはフツーに扱いやすい)

扱いやすいのでそのままにしているのですが、手入れついでにリヤキャリパーを新品に交換。
NB6CのNRA車両用のディスクローターにしました(大径化)

フロントは純正のままです。

レーシングカーであれば前後タイヤのグリップ限界までブレーキを効かせられるように装備するのが当たり前ですが、
市販車はさまざまな環境下で百人百様の運転手が走らせます。

ブレーキは直線でのみ使われる訳ではなく、下り坂ヘアピンフルブレーキもあるかもしれません。
当たり前のことですが幅広い条件下で安定性を損なわないように配慮されていて、そのための前提条件がリヤタイヤをロックさせないこと。

一番条件の厳しいところに合わせざるを得ず、リヤブレーキは
ほどほどにしか効かせていないことになります(60:40のFF車のリヤブレーキが最も効いていない)

ミッドシップ、リヤエンジン車など元々の重量配分が後ろ寄りのクルマは、リヤブレーキを生かすことができます。

その流れから行けばロードスターの前後重量配分は50:50なので、
リヤブレーキを積極的に効かせられる部類のクルマではないかということでやってみました。

フロントブレーキだけでも0.4Gは出せるし、リヤブレーキを効かせたとしても0.4Gは同じですが、
フロントだけ効かせた時とリヤをしっかり効かせて四輪で減速するのとでは、車両ピッチ角に違いが出ます。

大袈裟に言えば、フロントブレーキ主導の前のめり姿勢に対して、リヤブレーキをしっかり効かせると、
前後車高が下がりながら減速するイメージのサブマリンブレーキ、レーシングカーのそれに近づきます。

実際にはリヤリフト量が若干減る程度ですが、ホイールベースの中央あたりにあったピッチングセンターが、
リヤアクスル寄りに移動して、ホイールベースが伸びてピッチ角が減ったかのような落ち着いた動きに感じます。

リヤリフトが少ない分ブレーキングからコーナーに入っていく時にロール姿勢に持ち込みやすく、
ブレーキング無しでコーナーに入る時とハンドルの切り込みやすさが似ています。

つまりブレーキング時のピッチング剛性が上がったことで動きにキレが出て、ハンドリングが軽快になりました。

ブレーキバランスでハンドリングが変わる一例⋯⋯

快適さ優先の純正バネのままでハンドリング向上の工夫が一つ進みました。



車軸式サスペンション その2

2021-02-02 14:53:12 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
何代目のセンチュリーか分かりませんが入庫してきました。

エアーサスペンションが壊れて交換部品が手に入らないのでなんとかならないか、というのが入庫の経緯。

年数は経っているものの、走行距離が数万キロで車体もシャキッとしていて、外観も綺麗だが走れない⋯

エアーサスペンションのラバーに穴が空いて、コンプレッサーが回りっぱなしになって壊れたのではないか。と入庫時に聞いた話。

仮にコンプレッサーが手に入っても、ダンパーと一体になっているラバーに穴が空いているのは修理不能。結局のところお手上げ状態。

幸いなのは金属バネを併用しているエアーサスペンションなので、これまで補助の役目だった金属バネを、
主バネに作り直す作戦にすればなんとかなりそうです。
バネ新規製作。
ダンパーも新規製作。

ただし車高を自動調整してくれるエアーサスペンションの働きがなくなるのは仕方ありません。

補助バネのレート測定と、元の正しい車高を出すためのストローク配分、ロアーアーム角、
バネ上荷重測定などを行い、主バネの諸元出し作業から始めます。

この年式のセンチュリーはフロントストラット、ロワーアームはアイアームでテンションロッドで前後力を止めるタイプ。

リヤは5リンクリジットアクスル、車軸式です。

乗り心地最優先の高級車なのにダブルウイッシュボンでもマルチリンクでもない車軸式・・・

車軸式は乗り心地に不利で接地性が悪くトラック御用達、とどの教科書にも書かれています。
つまり乗用車向けではない、昔からある足だと。

しかし横振れの発生が少なく、良路の快適性はダブルウイッシュボーンよりも、マルチリンクよりも優れているのですが、
そこを取り上げる人はあまりいないような気がします。
そんな記事も見かけません。

*実際高速走行時の横振れの少なさは秀逸です。

憶測でしかありませんが、このクルマの設計者は車軸式の本当の良さを理解してたのではないかと。

いや〜その時都合よくあった部品がこれだった、というオチがあったとしてもです。