クルマのサスペンションと長いお付き合い

サスペンションの話、試乗記、旅の話、諸々・・・。

ポロGTIの場合 その6

2017-10-29 13:00:04 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
ビルシュタインのカタログにVWポロGTI用の車高調整式だとか減衰力調整式など何種類か載っています。
その中の純正形状のモノを探したのですが日本国内にはなく、ドイツ本国に在庫確認しても今は「在庫無し納期未定」の状態。

とりあえず注文を入れて品物ができあがってくるのを待つ、という選択肢もあるのですが、
それだと納期が読めないのと、今回は車高を適正位置にする事も含めて乗り心地の改善を図りたいというのが一番の目標です。

市販されているキットでは狙いの車高になる可能性は低いだろうし、
いつ手に入るかわからないモノを待つよりもワンオフで製作した方が確実、ということで作りました。

ワンオフの減衰値、ストロークバランスの変更、設定車高の変更、バンプラバーの硬さ違い、封入ガス圧の違いなど、
ポロオーナーが期待している快適仕様を目指してそれぞれのスペックを決めていきました。

次は走行確認、ここが一番肝心なところ。

続く⋯⋯


ポロGTIの場合 その5

2017-10-16 13:01:02 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
VWポロのフロントサスペンションを見ると、ストラットにタイヤが一番接近するあたりに凹み加工がしてあります。

大半のクルマは丸パイプのままなので、VWだけに見られる加工かもしれません。

タイヤに接触しないように必要なスキマを取ってストラットを配置すれば自動的にトップマウントの位置が決まり、
その位置がキングピンの上端になるので、内側に寝た転舵軸になるのが一般的です。
ストラット本体の傾きとは符合しないので分かりずらいのですが実はかなり寝ています。

ストラットの一部を凹ませてまでもタイヤに近づけるのは、トップマウントの位置を僅かでも外側に置いて「転舵軸」を立てたいのではないかと⋯⋯おそらく。

転舵軸の傾きが大きい場合何が考えられるか⋯⋯転舵軸周りの重量物のアンバランスが大きくなっていきます。
マスオフセットと説明されることもあります。

クルマの正面から、タイヤ、ストラットをシルエットで見ます。
その中にトップマウントとロワーアームボールジョイントを結んだ線(転舵軸)を地面まで引きます。

この時、転舵軸の外側と内側の影の大きさを比べると外側の面積が内側に比べ広い事が分かります。
つまり転舵軸の外側が重く内側は軽いということです。

これで何が起きるかというと、真ん中ではなく端っこに串が刺さっている団子をクルクル回すと串がブレるように、
路面からの入力を受けるとタイヤが転舵軸を揺さぶるので、ハンドルの手応え、乗り心地、質感に影響が出ます。

参考例として・・スバルff-1の転舵軸はタイヤの真上から串刺したようなセンターピボット方式(マスオフセットほぼゼロ)
ストラット方式とは一味違うスッキリとした手応えを「生ハンドル」を通して感じられることと、タイヤの回転が静かなことに感激します。

そこにこだわっている証がストラットの凹みのように見えるのですが、果たしてその効果のほどは?

続く⋯⋯





ポロGTIの場合 その4

2017-10-09 10:28:22 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
ショックアブソーバーを新たに製作する場合、各寸法を決めるのはもちろん「減衰値」を仕込みます。

それって純正値を参考にするんでしょ?⋯⋯今回のポロGTIの場合はその純正の乗り心地が気になるので、そのままというわけにはいきません。

それとビルシュタイン(モノチューブ)で純正値に近い値を採用するとしても、ツインチューブとの印象違いを考慮しなくてはいけません。

どのメーカーのものを使っても減衰値が同じなら結果は同じだよ⋯と言い放ったある人の言葉を思い出すのですが、そんなことはありません。
メーカーが変わると同じ減衰値を仕込んでも乗り味は違います。

ショックアブソーバーの形式がツインチューブ同士であっても、モノチューブのメーカー違いであってもです。

ショックアブソーバーに仕込まれている減衰値が大切なことには変わりないのですが、乗り心地を決める要素は他にもあり、
そちらの印象を乗り心地の良し悪しと捉えることがよくあるのです。

ビルシュタインショックで言えば、高圧ガスで加圧されたオイルで満たされたチャンバーの中をピストンが動くので、遊び感がなく応答性が良いのですが、
減衰力値の仕込みがうまくいっていない時には、ダメな結果もハッキリすると言えます。

さて減衰特性の話です、ポロの純正データは飽和型と呼ばれる三分の二乗型の特性に見えます、しかし今回は考えがあってリニアタイプの特性を選択しました。

低速域の数値を低くして、サスペンションの動き始めをスムースにして乗り心地に配慮します。
するとハンドリングのための減衰値は最小になるのですが、日常走行で不自由ありません。
この辺りが狙い目です。

続く⋯⋯





車間距離

2017-10-02 10:05:42 | NEWTON BRAKE
車間距離の話は耳タコだと思いますが⋯⋯

「車間距離」は前走車(あるいは前後走車)との安全を保つための距離のこと。

その目安は自分の反応時間1秒と余裕しろ1秒を合わせた計2秒が必要と言われています。

前の車が急ブレーキをかけたとしても、瞬時にゼロスピードになるわけではないので、同じようなブレーキか、
より強めに掛けることができればぶつからないという計算です。

ただし2秒ルールは前走車と「同じ速度」で移動している時の話です、自車の速度が上回っていたら適用外です。

では道路上に速度ゼロの障害物があるとしたら⋯⋯
この場面が出てきたら自身の反応時間と制動停止距離の合計でもってぶつからないで済むかどうかが決まります。

時速100kmからゼロスピードまでの停止距離はドライ舗装の条件下で、0.8G以上の減速が間髪入れずにできたとして70mほどです。

時速100kmからの制動停止距離は40数メートル⋯⋯のデータを見たことがある方はあれれ⁉︎と思われるでしょう、
あの数値は制動を開始したところから測った距離で、空走距離だとか減速Gの立ち上げに要する時間を含んでいません。

時速100km時の1秒の空走距離は27.7m⋯⋯
アクセルペダルに足を乗せているところから、正面の道路で起きていることを認知、判断して、ペダルを踏み替えて制動が始まるまでに
最低でも0.8秒以上かかると言われているので、27.7×0.8は22m、先の40数メートルを足すと70mほどと言う説明につながります。

高速道路をノホホンと走っていて、サーキットアタックと同じ「フルブレーキング」がためらわずにできたとしての話なので、
70mで誰でも止められるとは気楽に考えない方がいいと思います。


一度でも時速100kmからフルブレーキでクルマを止めたことのある人ならまだしも、そこが未体験の人は、
ある意味怖さも距離感もよくわからない、何かに備えようといった心の準備も曖昧なままです。
そうなると出たとこ勝負的なドライビングに日々挑戦⋯⋯していることと同じになります。


心配し過ぎかもしれませんが高速道路は流れに乗った運転の組み立てが難しい場所だと言えると思います。

ゼロスピードの障害物のことまで考えると、自分がドキドキしないでいられる「空間」を前にも後ろにも確保するのが正しい車間距離の考え方かもしれません。

えっ⋯後ろにもと思われた方は、フルブレーキングのシーンを思い浮かべてください、後続車が同じブレーキングができないと、あなたが障害物になってしまいます。