クルマのサスペンションと長いお付き合い

サスペンションの話、試乗記、旅の話、諸々・・・。

アンチロールアングル その8

2019-10-30 13:16:31 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
滑り出しが速いタイヤ⋯

時々耳にするフレーズです。

タイヤグリップは、タイヤを地面に押さえつける「垂直荷重」と「スリップアングル」の二つの条件があります。(もちろん空気圧も)

消しゴムを一定の力で机に押し付けて動かせば、どちらの方向であれ手応えは変わりません、
力を抜けば軽くなり浮かせば手応えが無くなります。

これと同じことがタイヤと路面の間で起きていると考えれば、滑り出しが速い時は荷重が抜けていると考えるのが道理。

四輪で接地している自動車はドッシリと安定しているように見えるのですが、走行中のタイヤ接地圧は変化し続けます。

加減速時、旋回時の荷重移動に限らず、路面の起伏でサスペンションが伸び下がる時に、
ダンパーが「加減衰」だったり伸びストロークが不足していると、タイヤが車体に吊るされた状態になり、
接地圧が失われます。

その逆に一輪に荷重が集中する場面もあります。
荷重の掛かったタイヤはしっかりグリップするので、そのタイヤ中心に他のタイヤが滑り出すことがあります。
スナップオーバーステアーと呼ばれる、旋回外側の前輪を軸にスピンする挙動がそれです。

軸となった前輪に集まった荷重は他の車輪から移ってきたもので、荷重の抜けたタイヤがグリップを失うからです。

荷重移動のタイミングとその量をドライバーのコントロール下に置けるようにするのがサスペンションチューニング。

車両運動を紐解いていけば自ずとわかることですが、結局こういった現象はあくまでサスペンションの「しつけ」によるもの。

例えばオーバースピードでコーナーに侵入した時のことを思い出してみてください。

あわてた操作を加えなければ、時が止まったかのようにゆっくり滑り出すはずです。

つい、このタイヤは滑り出しがと言いたくなるのですが⋯タイヤにしてみれば「濡れ衣」

この世に滑り出しの速いタイヤ⋯と言うのはありません。

ニュートンブレーキ本 2019

2019-10-25 09:57:45 | NEWTON BRAKE
二種類の山登りガイドブックがあるとします。

一冊は、この山に行けば季節にこんな草花が咲いていて、この峰から見える絶景はこのルート、の
山を紹介するガイドブック。

もう一冊は天気の読み方、岩場に足をかける時の注意、装備品の考え方など普遍的ガイドブック。

ニュートンブレーキ本は今更ですが後者です。

どちらも無事に家路にたどり着くためのガイドブック。

いい景色を見れたとしても戻ってこれなかったら元も子もありません。

ドライブも同じです。

常識では考えられないような自動車事故を見るにつけ、自分を守ることはもちろんのこと、
他人に及ぶ不注意な行動は残念な限り。

知らず知らずのうちに他人頼みの行動になっている人が蔓延しているようにも感じますね。

ただ一般道を移動するだけでも、最近はクルマを走らせること以外のなにか余計な心配ごとが増えてきた気がします。
気のせいでしょうか。

狭い道で道幅一杯まで身を細めて避けても、こちらを見向きもしないで通り過ぎる対向車の運転手は総じて仏頂面。

運転が楽しくないんだろうな⋯⋯と思うことにしています。

ニュートンブレーキ本の存在も知らない。







アンチロールアングル その7

2019-10-16 09:44:25 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
ダンパーの減衰イメージは、乗用車が低く、スポーツカーは高い。レーシングカーはもっと高い。

横比較すればだいたいはこの通り。

使われているバネレート、ストローク長さなどが連動しています。

速く走るレーシングカーがカタイ足だから、カタイことと「速い」をセットで考えている人もいるようです。

カタクすれば速くなる・・・と。

純正バネだったり、自分よりも柔らかいバネを選択しているのを見ると遅い!と勝手に思い込んだり。

サスペンションをカタメルということは、四輪をストロークさせてより良い接地性を得ようとする、サスペンション本来の
目的を否定していく方向なので、当然ながらやり過ぎはいけません。

サスペンションの機能を大切にしながら程よいところを探し出す⋯

これがサーキットセッティングとか、サスペンションセッティングと呼ばれているのですが。

ここで厄介なのは「超良路」で、両手で数えられるほどのコーナーしかないサーキット中心に話が進んでしまうことです。

サーキットの中に限れば、タイヤが4本ついていればどんなカタイ足(いい加減な)でも走れます。

格闘技のようなドライビングを要求する足だとして、タイムが出ないのは走らせ方の問題、
完璧に乗りこなせば尖った動きの先にいいタイムの予感がする⋯

労多くして⋯でしかないと思うのですが、乗りづらい足とセットで「走り込み文化」もあるので、
長く楽しむにはいいかもしれません⋯おススメはしませんが。



アンチロールアングル その6

2019-10-05 16:14:10 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
浅間火山耐久レース用の競技車スバルビビオは純正車高より15mm高くしています。

コースはサクサクの火山灰路面なので、十数台が走リ始めればいたるところに深い轍ができてきます。
軽のロードクリアランスではどう避けてもお腹を地面に打ちつけ、レースを走り終えると
下に凸だったアンダーガードが凹に変形するのを、少しでも減らすための対策です。

でも軽のトレッドのままで車高を高くすると、いかにも不安定でややもすると横転しやすくなるのでは?

その方向ではあるのですが、幸い路面のμそのものが舗装路に比べてかなり低いので、心配には及びません。

重心高さからくる転倒というより、轍に引っかかってとか土手に乗り上げてと言った理由のほうが多い気がします。

車高を上げることで腹を打ちにくくするのもそうですが、ロワーアームのアンチロールアングルが15mm追加されるので、
バネを硬くしたりスタビライザーを強化しているわけではないのに、コーナリングしている時のロールに張りがあって、
元の姿勢に戻ろうとする力が常に働いている安心感があります。

アンチロールアングルがしっかりと効いている(働いている)実感がこれです。