クルマのサスペンションと長いお付き合い

サスペンションの話、試乗記、旅の話、諸々・・・。

ゼロタッチバネのその後

2023-08-24 13:29:46 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
これまで製作してきたセロタッチバネキットの車型は次の通り。少しづつですが増えています。

・NA/NB共通。
・NC 専用
・ND 1.5l/2.0l共通
・デミオ ディーゼル4WD専用
・デミオMB専用
・Swift1.2l専用
・997ポルシェ専用
・レガシーアウトバック専用(納品待ち)

ローダウンキットと一番の違いはサスペンションの「アンチロール角」を生かしていること。
アンチロール角はロワーアームの下反角のことです。

ロワーアーム角と車高は連動しているので、ゼロタッチバネ製作時に「適正車高」になるように
こだわりの数値を依頼します。

個々の車両の特徴に合わせて調整をすることもあるのですが、適正車高はほぼ純正車高です。

ゼロタッチバネ仕様にしてバネレートアップした分、アンチロール角の角度変化量が純正バネの時よりも
少なくなるので、ロール運動に対して有利に働きます。

アンチロール角はロールに抵抗する力を生むのと、横Gを受けている間ロールを「起き上がらせる力」を
発揮し続けるので、ハンドル操作に対してキレキレのロールレスポンスが返ってきます。

これは元の構えに戻りやすいと言いかえることもできます。

サスペンションの筋力が何倍にもなって、ハンドル操作に対して車体ごとの動きが
ピタリついてくるクルマとの一体感が、笑顔で試乗から戻ってくる、の理由です。

仮に車高を下げてしまうと、ロワーアームの角度がアンチロール角からプロロール角ゾーンに移行するので、
横Gを受けるとロール角を増やす力を生みロールが深くなります。

今度はロールを「起き上がらせない力」として働き、横Gが消えるまでフラット姿勢に戻らなくなります。

もしローダウン仕様に乗っている人がいたら、ないしは経験者だったら、直進姿勢に戻る時、
「ハンドル」でロールを戻していることに気がつくはずです。

「適正車高仕様」と「ローダウン仕様」とはアンチロール角を効果的に使うか、プロロール角領域で
ロール応答をやっかいなものにして乗りにくくするかの違いがあります。

アンチロール角の存在は教科書に載っていません。

(それらしい説明がどこかにあるかもしれませんが⋯)

しかし、車高の上げ下げで起きることは明白で、ほとんどのクルマが当てはまります。

ゼロタッチバネの仕様を走らせれば、その「なるほど」が笑顔で実感できます。





プリロードでサスペンションセッティング?

2023-08-10 14:40:03 | セッティングレポート(SUSPENSIONDRIVE)
バイクのサスペンションセッティングと言えば"プリロード"がいの一番に出てきます。

メインスプリングが少し縮められてダンパーに組み込まれている状態のことですが、
この時のバネの反発力=セット荷重のことをプリロード。

ジャッキから降ろして走行姿勢になれば、プリロード値は車体重量で押し潰されて、バネたわみの中に吸収されてしまいます。

プリロード値を変更するにはスプリングシート高さを調整します。

しかしスプリングシートは車高を調整するためのもので車高が変わります。

車高が変わるとキャスター角もスイングアームの角度も変わります。

そうなると当然走りに違いが生じます。

リヤだけ触っても車体のピッチ角が変わるのでフロントにも影響が及びます。

フロントも同じでリヤにも影響します。

これらことを踏まえてプリロードという言葉に集約してバイクファンの方々は話しているのでしょうか・・・。

もしもプリロードを「直訳」してその違いが出るのは、ダンパーが伸び切る瞬間です。

この時、減衰値が並列でついてくるので判断は簡単ではありませんが、
もし違いが分かったとしても伸び切りのコツンの大小です。

サーキット走行でリヤタイヤが地面から離れるほどブレーキを掛けられる人なら、
この伸び切りの印象をどうにかしようとするかもしれませんが⋯

つまりダンパーが伸び切らないことにはプリロード違いを体感するチャンスはないのです。

なので仮に乗車状態から伸び切りまでのストロークが10mm程度といった、極端に偏ったストロークバランス(セッティング)の場合、
路面の凸凹でダンパーが伸び切る瞬間がたくさんあるので、コツンの大小をお尻で感じられるかもしれません。

でもこれはあくまで乗り心地の話です。

操作性とかコーナリングの話ではありません。

プリロードでサスペンションセッティング?・・・これがスタンディングハイト(車高)という言葉なら
サスペンションセッティングの基本となる項目なので筋が通ります。

プリロード値の大小の話に限ればサスペンションに魔法は掛かりません。

それでもプリロードを変えたら走りに違いが出たと言われたら、それは車高が変わったからに他ならず、
プリロード値の違いが走りに出たわけではありません。

プリロード⋯紛らわしいですよね。