袖ヶ浦フォレストでの9台の試乗車とは別にもう一台、マクラーレンMP4-12Cがあった。
他の予約が入っていたらしくサーキット走行はならなかったが、日を置いての試乗となった。
前日も晴天、試乗の次の日も晴天だったのにその日の都内は雨、うらめしい!
神経質なところはどこもないですから大丈夫ですよ、とスタッフの人に声を掛けられて試乗に出発、
の前に乗り込んでコクピットドリル。
興味はもちろんサスペンション。それとカーボンシャシー。
バネ下の振動あるいはバネ上と言われる車体振動を減衰させるショックアブソーバーと、
車体を支えるスプリングとで構成されている従来からのサスペンションに対してロールとピッチ制御を
主として考えられたプロアクティブシャシーコントロールと呼ばれるサスペンション(マクラーレンの呼称)。
硬い足がスポーツカー?速く走る為には足を硬めるのが常套手段、などと思っていると、
今回の乗り味は想像すら出来ない。
左右のサスペンションを結んで車体の傾きをコントロールする金属のスタビライザーはリヤのみ。
アスファルトの荒れたところを走らせても減衰の極端に低いダンパーをつけているかのように
路面からの入力をシナシナと逃がし、突っ張ったような印象がまるでない。
タイヤのゴツゴツと一緒に体で感じるハズのタテGがとてもやさしい。
それでいてハンドルを切って旋回姿勢を確かめると、見た目まったくのノンロール。
操舵速度を速めて横Gを強く立ち上げても、まったく沈み込む様子がない。
素早くハンドルを戻しても車体のグラツキは皆無に近い。
従来の車が強い横Gを受けている時の外輪側は縮み方向のストロークの終わり付近にあり
リジットサスペンションに限りなく近い。
旋回中に凸を通過すると急激なタイヤの接地荷重変動が起きて、走行ラインにズレが生じやすい。
マクラーレンの場合、ノンロールとイメージすればサスペンションの伸び縮みのストローク寸法の
バランスが変わらずに待機していながら、コーナリングしている訳だから、凸の乗り上げも吸収でき
タイヤの接地荷重変動をおだやかにできる。
つまり接地が安定していると想像できる。
他のスーパーカーと同じく低い車両姿勢からみて、サスペンションストロークは似たような機械寸法と
思われるが、有効なストロークを維持し続けられる点でまったく別物と考える事ができる。
軟体動物のように地面を捕らえ、ブルッともしない強固で軽量な車体のこの乗り物は
速度の管理のみDrに要求し、後は全て俺にまかせろ、と車が言ってくれている気がする。
サスペンションのアイデアは数十年来のもので、目新しいものではないが、
現代のカーボンシャシー、電子制御技術などと組み合わせた結果、より完成度が高まったと言える。
その中でもっとも寄与しているのはカーボンシャシー。
サスペンションだけを真似ても“やわ”なシャシーでは、おそらくうまくいかないと推測する。
よいサスペンションは、よいシャシーに宿る・・・だ。