クルマのサスペンションと長いお付き合い

サスペンションの話、試乗記、旅の話、諸々・・・。

クルマのサスペンション その5

2023-02-23 10:19:28 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
減衰値の仕込み方によってはロールセンターが右に左に動きまわるクルマになってしまう⋯

そのロールセンターはなるべく車両の中央にあって、動き回らないのが操作のしやすさにつながるのですが、
さらにもう少し細かく時間を追って考えていきます。

ハンドル操作を開始すると、四輪すべてのダンパーが縮み方向か伸び方向に、
いっせいのせいでストロークし始めます。
動かないでじっとしているダンパーはありません。

その動き始めと、そこからの車体の傾きに分けて考えます。

動き始めの瞬間は低速域の減衰値と主にフリクションと呼ばれる、機械摩擦が影響します。

わずかに引っかかるだけで遅れが生じ、力が溜まった後の動きはオーバーシュートしたり、
タイミングがまちまちだったりと、大味な応答になります。

スっと動き始めれば、例えば高速道路での微細な修正舵が楽に行えたりします。

次に動き始めたあとは「ロール感」と言われている、車体が傾いていく時の速さと、この時に感じる減衰感です。

減衰不足なら、支えを失ったかの如く倒れ込みが速く、ロールさせすぎないように
丁寧なハンドル操作を心がけなければいけません。

不用意な運転で同乗者を不快にさせる可能性が高いのがこの仕様です。

減衰が強く効けばいいかというと、ライン取りが先行してロールが後追いになり、
ハンドルを止めたあとにロール感を感じるとか、操作と動きの一体感を得にくいことになります。

減衰不足でもなく減衰過多でもない、ロールセンターが動き回らないような伸び圧のバランスのとれた
適度な減衰値を盛り込んでいくのがハンドリングチューニングです。



クルマのサスペンション その4

2023-02-18 09:45:34 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
どのあたりを中心にして車両が傾いているのか、その瞬間のロールセンター位置は減衰値が関係している⋯

伸び圧の減衰値が1:1に近ければロールセンターは中央付近に位置します。

圧側1に対して伸び側の減衰値が2倍〜5倍と差が開いていくと、つまり伸び側が極端に強い減衰バランスの場合、
ハンドル操作を開始した直後のロールセンターは内輪寄りに移動します。(伸び側の減衰値だけの時に近づく)

またこの減衰バランスで旋回姿勢からフラットに戻るターンアウトの行程では、
外輪側は減衰が効いてゆっくり伸び上がり、減衰の低い内輪はパタンと落ち込みます。
この瞬間のロールセンターは動きの遅い外輪寄りです。

ターンインの時は内輪寄りで、ターンアウトは外輪寄りとハンドル操作のたびに
ロールセンターが横移動するパターンです。

但し一連の動きはハンドル操作開始直後のある時間内のできごとで、そのあと旋回姿勢が落ち着けば
ロールセンターは関係なくなるので、そこに達するまでの「時間差」の話ともいえます。

当然ながらロールセンターはなるべく車両の中央で落ち着いていることが望まれます。

ロールセンターが右に左に動き回る車は、内輪側と外輪側の動きのリズムが異なることから、
ハンドル操作のたびに過敏さともっさりした動きを感じてしっくりきません。

⋯つづく

クルマのサスペンション その3

2023-02-07 16:53:26 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
バネだけのロールに対して、減衰値を効かせたらどうなるか。

動きを分かりやすくするために縮み側の減衰バルブを外して
"伸び側"の減衰だけが効くダンパーで左コーナーに入ったとします。

内輪側は伸び上がり方向なので減衰が効いてスコーンとは伸び上がりません。

外輪側は縮み方向なので減衰が効きません。
ハンドル操作を加えると間髪を入れずに沈み込み、操舵速度が速いと
倒れ込みの勢いがついてダンパーが底付きするところまで一気にストロークします。

時間をかけて伸び上がる内輪に対して、素早く外輪は沈み込むことから、
同じ時間内でストローク量の差が生じます。

この瞬間のロールセンターはストローク量の少ない内輪寄りにあることになります。

イメージはこうです。
割り箸の真ん中を掴んで片方を上下に揺さぶると反対側も同じ量だけ上下します。
片方を多めに反対側を少なめにするには、真ん中を掴んでいる手を少なくしたい方にずらせば
ストローク差をつけることができます。

これがストロークの少ない側にロールセンターがある理由です。

バネだけの時は車体中央にあったロールセンターが、減衰値の影響を受けて移動することが
あるということです。



⋯つづく