クルマのサスペンションと長いお付き合い

サスペンションの話、試乗記、旅の話、諸々・・・。

シャシーエンジニア

2012-08-26 14:04:09 | なんでもレポート

開発の技術支援という形で、こちらに来始めたころ、
私が車から降りてテストコースの脇に立っていると、この時の車両開発のスタッフの一人が近づいてきた。
「国政さん、質問していいですか!?」 日本語だ。
通訳を介さず彼とは簡単なやり取りだったが話した記憶がある。
今回の仕事も彼がいる。
これ迄も何回か仕事をやってきたが、初めてあった時から彼のペースは変わらない。
昨日お昼ご飯を一緒に食べている時に、彼に「部下は今何人いるの?」か尋ねた。
すると同席していた若いスタッフから
「彼はもっとえらくなって、シャシー開発のトップ?だから、今は部下はいない。」と言われた。
 今回のテスト走行中、必ず同乗しているし、
走り終わったあとの毎回のミーティングにも、熱心にメモを取り質問をしてくる。
自分のコメントも忘れない。
私からの報告にもわからないことは必ず質問してくる。
この場面では通訳を介してのやり取りだが、彼の中の疑問が出てくると、
通訳のいない車の中で質問がくる。
私が丁寧になるべくわかりやすい言葉で伝えると、必ず同乗している若いスタッフに、
今何を質問したのかを話す。
教科書の知識から抜け出し、実車での手応えをすでにつかんでいるのか、
その質問の内容は鋭い。
今回のメンバーは彼も含めて全員が一生懸命メモを取り、汗を流して手を真っ黒にして
交換作業を手伝い頑張っている。
自分たちも必ずハンドルを握りインプレッションを取る。
彼らと付き合っていると一日があっという間だ。


ロードテスト

2012-08-24 22:37:46 | なんでもレポート

テストコースの都合で、スケジュールの前半は会社のすぐ近くにある、
なんとか公園の周りの道路を使ってテストしている。
一般道だから当然私はハンドルを握れない。
助手席か後部座席に乗って評価し作業を進めて行く。
これで乗り心地と安定性は何となく判断できる。
肝心の操縦性はやはりハンドルを握らないと分からないから、テストコースに頼るしかない。
しかしテストコースでなければといったところも当然あるものの、
実はテストで走らせたいのはなんたって一般道。
ここで確認して行くのが一番大切なことだし、上手く仕上がれば安心できる。
誰がどう見てもバリバリのテストカー然とした姿の車を、一般道でテストできるのもこちらならでは。
惜しむらくは返す返すもハンドルを握れないこと。
さてこの公園の周りの道が、ロードノイズがにぎやかに聞こえる路面、
タイヤが叩かれるようなバネ下の微振動が出る路面、
ホイールストロークをちょうど使い切るほどのウネリ路、段差、
ハーシュ入力、バネ上のバウンシング、ピッチング、
超スロー走行でオフロード車を走らせている気分のダート路、こういった道が数キロの中に全てある。
ある意味こちらで遭遇しそうな道の形態が揃っているといえる。
バックりと割れた舗装の切れ目、穴は言うまでもない。
そのまま通過するとサスペンションが破壊しそうな悪路もこちらでは珍しくないのだ。
馬鹿でかい工業団地の一角にあるこの道は、交通量も少なく信号もない。
感じたい或いは確認したい動きが非常によくわかる。
人工的に作られたテストコースでは、何か釈然としないところがあるのはこれ迄に何度も経験がある。
迷ったら一般道に出て確認、と言うのがこちらではできるので助かっている。
今回の路面はその点申し分ない。
確認したい症状をあぶり出してくれるからだ。
だからといって仕事がサッサと終わるわけではないが、ひとつの仕様変更に対して良いも悪いも
全体のバランス確認が一度にできるのが、結局作業の無駄を少なくしているように思える。
ひとまず前半戦は順調だ。

suspensiondrive


渋滞

2012-08-22 13:40:04 | なんでもレポート

前回出張の時、中国-長春の朝の渋滞の話を書きました。再び今回もその話です。

いつも通りにホテルに迎えのクルマが来たものの、15Km先の会社に到着したのは、一時間と四十五分後。
今までなら四十分か五十分でいけたところが、朝髭剃りをしたばかりなのに、
移動している間に伸びてきているのが手触りでわかってしまうほどの、街中は駐車場状態。
会社に辿り着いて、情報集めをしてもその混雑の理由が誰もわからない。
先週迄はいつも通りに、特に酷い渋滞などなかったらしい。
帰りは大丈夫だろうと思っていたら、要した時間はほぼ同じ。
今日の朝に至ってはもっとかかって二時間弱。
どこか街の一角が停滞するとあっという間に街全体がマヒしてしまうようだ。

こちらの人達はいつもギュウギュウの車間と車幅で走っているので、駐車場状態の車の列の間を抜けて、
歩いて車道を横切る人達ですら、途方に暮れて立ち尽くすシーンがあちこちで見られた。
おかげで今日は朝から観光気分だ!?
迂回路に次ぐ迂回路、さらに迂回路の迂回路と、一度街から出て、見慣れない光景を見学しながら、
もう一度街に戻るようなルートを通ってたどり着いた。
車にカップコーヒーを持ち込み、渋滞対策もバッチリ。
自分で運転していないからイライラはゼロ。
しかし朝夕二時間の通勤は何とも・・・。

どうやら街の中心部の立体交差工事と地下鉄の工事が本格化してきたのがその理由らしい。
こちらの新学期が今週からはじまったので、それも関係あるのかも。


真夏の練習会

2012-08-18 12:51:50 | イベントレポート

ダートラの練習会に合流した時の話。

「今日の練習のテーマは?」
→「特にありません!」
「じゃ、ベストタイム方式でやる?」
→「何ですかそれ?」
「その方法はウンヌンカンヌン・・・」要は体内時計のチェック(照合)だ。

ダートラドライバーだったら普段からやっている事だが、改めて確認、というのも
たまにはいいのでは?と思って計測を手伝うことにした。
車を走らせる経験も技術もたっぷりとあるこの日の参加メンバーだったから
技術的な細かな話よりも、個人的にはこちら側の体内時計の正確さに興味があったからだ。
ダートラの2トライでベストタイムを出す走りの組み立て方の復習(予習?)でもある。

まず全員が足慣らしも兼ねて、かる~く一周。
これが本日の基準タイム(遅くてもOK)。
次に2LAP目・・・当然タイムUPする。
ここからは本人から先に「何秒タイムUPしたか」を申告してもらう。
 (当然だがさっそく体内時計とのズレが判明する)
その後にゴールタイムを伝える。
これを繰り返していく。

どういったペースで走らせるかは本人が組み立てていけば良い。
しばらくアタックを続けていると、タイムUPの伸びシロが小さくなってくる。
前半・後半・ゴールタイムと中間計測もやっていたので、こちらから提案。
「後半部分は1トライ前と同じ走り(タイム)で、前半部分のみ工夫してタイムUPを狙ってみて。」
するとどうなったか。
前半は1秒落ちて!後半がなんと1秒以上UP!ゴールタイムは結果少しUP。
ゴール後の本人の申告は、約束通り前半UPし、後半は同じタイム・・・のつもり。
この時の事を考えていくと、色々な事が見えてくる。
もしも中間計測をしていなかったら、ゴールタイムが少しUPしているので
“本人のつもり”の通り、前半のアタックがタイムUPにつながった・・・と。

実はその逆のことをやっていた(起きていた)。
前半はタイムUPを狙ってアタックしすぎた(タイムの削り方を間違っているといった方が
結果からみると正しい)、後半は同じに走ればよいハズがタイムを削らなくても良いと思うから
気持ちに余裕ができて、自然と無理のない走りになって、自分ではタイムを削っている意識の無いところで
タイムUPしてしまった・・・と読める。

タイムが思うように出せない人、
熱くアタックするほどタイムが荒れる人、など
本人の思いが強い時に失敗するのには、こういった筋書きがある・・・のだ。
心のカットウと体内時計のお話でした。



昔のラリールートを巡る旅

2012-08-17 13:54:47 | ドライブレポート

お盆休みの間、ロードスターで旅に出かけた。
木曽福島から高山に抜けるR361に入り、途中からルートを変えて濁河(にごりご)温泉に寄る。
日本で最も標高の高いところ(1800m)にある温泉で、その中の市営の日帰り風呂はこの日貸切状態。

             
ひとっ風呂入った後、下呂に下り、途中から鈴蘭高原を抜けて再びR361に戻って高山市へ。
この濁河峠の辺りは、昔なつかしいラリールート。
今は全線ホソウ路になり、ガードレールもあるが、当時はダート。
谷側は夏草が覆いかぶさるように生え、狭い道を更に見えづらくしていた。
ブラインドコーナーが連続し、道も上下していてヘッドライトの先に何も見えない直線があったりして
とにかく走りづらかった。
もしも足を踏み外したら数百メートルを一気に駆け下りる(まあ、落ちるということです)けわしい林道で
知っているだけにコワかった。
しかしこの日は小雨と雲があって視界不良。
天気が良くないのが幸いして、昔のビクツイて走っていた記憶全部を思い出すことはなかった。
丹生川村でトマトを買い、上高地脇を松本に向かって観光客と逆行するように移動。
幸い渋滞には巻き込まれなかった。
次の日、信州スポーツランドで、クラブ員の練習走行に合流。
この日は朝からカンカン照りの夏日。
少し早めに会場を後にして神奈川まで戻ってきた。
ロードスター プラス 高原のワインディング路。
行き交う車もたまに会うくらいの少なさ。
久々にドライブを楽しんだ。


キューバ音楽

2012-08-11 13:50:06 | なんでもレポート

TVの音楽チャンネルを見ていると、“あれっ このバンドまだやっているの?”と横やりが入った。
“だってもうウン十年経っているし、とっくにいなくなっていてもおかしくないのに”・・・。
番組はリアルタイムではなく、10年20年前の放送もあるので、しょっちゅうこんな事が起きる。
期限切れじゃないの?と言っているようにも聞こえるが・・・夫婦の他愛ない会話は別にして、
キューバのミュージシャンのコンパイセグンドを知った時、彼は90歳を超えていた。
日本にも公演に来ているから、ごく一部の人は知っているかもしれない(今日の出来事の言いだしっぺも、
その公演を見に行った)。
葉巻を片手に、「人生は音楽とタバコと女?」と言い放っていた(映画の中のワンシーンで)。
そのステージが圧巻。
張りのある声、体の一部のように奏でるギター、バンドとの息の合い方も背筋の伸びたリズムも
どこにも90を超えているとは感じさせないものだった。(残念ながら既にこの世の人ではないが)
年を取ると反応が遅くなってくるから、自動車の運転は危ないと、ある国では言い、免許証を
早く返納しなさいと・・・。
確かに年とともに筋力の絶対値が下がり、視力も下がる。
しかし、反応が遅くは、どうしても引っ掛かる。

もしもこのことを、コンパイセグンドに当てはめたらどうだろうか?
100歳を目前にして、十数人のバンドとリズムを刻むことなどできず、音楽にならないのではなかろうか?
間を取る、リズムを刻む、自動車の運転も同じだ。
他の車の流れを読み、リズムを刻む、ここに歳が関係するだろうか?
若者は未熟で危ないなら(任意保険ではそうなっている)、経験を積んだ年配者は、
もっとも安全な運転ができる・・・とは考えないのだろうか。
筋力も視力も“絶対値”を必要とする場面なら、その不足分が何かの違いを生むかもしれないが
それが事故とは限らないし、自動車運転は心拍数もほどほどで、全身運動などではない。
どうもこの国の人たちの多くは、運転について勘違いをしているように思えてならない。
80歳のピアニストが素晴らしい音楽を奏でられるのと同じで、歩くのに杖つく人でも運転はできる・・・
と、車の中で考えながら、今日は会社に。
明日からお休みだ。




にほんのくるま

2012-08-07 13:50:22 | なんでもレポート

*中仙道・馬籠のキキョウです。

長々と渋滞の話を書いてしまった。
要は、日本の高速道路で100km/hだか80km/hの速度維持がむつかしい車と、
そのことに気が付かないでいる今ひとつ成熟しないドライバー、
速度管理のしづらい車を作り続けているメーカーの3つ巴が、
ほんの少しの坂道で渋滞を生み、事故の中でも乗用車の追突が
圧倒的な割合を占める元となっている、というのを言いたかっただけだ。
速度管理がしづらい日本車を口にする自動車評論家といわれる人は居ないし、
こんなの危なくてしようがないと自動車ディーラーに喰ってかかるユーザーも少ない。
 (思ってはいても黙っているのか)
それとも少数意見で片付けられてしまうのか、更に作り続けているメーカー側の人達も
扱いづらいと感じていないところが恐ろしい!
自動車は西洋からきた文化、今では追いつき追い越したとのたまう日本のメーカーもあるが
“人が扱う道具”の部分がスッポリと抜け落ちているから、欧州車を走らせると多くの人は
乗り易さを口にする。
もっとも大切なところが真似できていない、いや気が付いていない、いやそこを作り込む技術が・・・
レシピがあれば(車が)料理できる?・・・味見はいらない?・・・不味いものはまずい!
おいしいものを口にすれば、おいしいと感じるのにね~。

今日は料理の話?いや、まずいものの話でした。

          


こわ~い話

2012-08-04 14:02:11 | なんでもレポート

JAFMATE(JAF会員誌)に目を通していると、高速道路の渋滞原因となるドライバーは何人いるか、
と題した記事が小さく載っている(手元にある方はP.6です)。
場所は中央道・小仏トンネル手前の上り車線。
なぜかよく渋滞する。
かなり前から取りざたされていて、道の形状が原因ではないかと、最近では3車線をフルに使って
少しでも流れを良くしようと対策が取られているが、渋滞の難所である事に変わりない。
記事の内容は、高速道路をまたいでいる歩道橋の上から“減速”しているドライバーの数を
数えるというもの。ここの上り坂はアクセルを一定にしていると10km/hはスピードが落ちるところ、
と記事をまとめた人が書いている。
観察の結果3台中2台が“減速”をしている・・・。
この、“減速”しているの言葉の使い方も気になる。
この場面では“速度の維持が出来ていないドライバー”ではないだろうか。
記事の最後は、坂道にさしかかったら、アクセルを踏み込んで、速度維持に努めてくださいと、
締めくくられている。こんな事何十年も前から言われている話だ。
イモ堀に行った人が、汗も掻かず手も汚さず野菜直売所から“洗った”イモを買って帰ってきた話を
聞かされたような気分の記事の内容はさておいて・・・。
ここで終われたら渋滞の原因は3分の2のドライバーということになってしまう。
本当にそうだろうか。

現場の上り坂にさしかかった車をイメージして下さい。
先を走っているAさんは速度が落ちた事に気づきアクセルを踏み込みます。
一段階踏み込めば、速度が下がらないよう保つことが出来る。
ここから元の速度に戻すには、上り坂での加速が必要だから平坦路の加速よりも
更に深くアクセルを踏み込まなくてはいけない。平坦路の加速を1段階とするなら
2段階強くしてやっと速度を上げられる。
一度、速度が低下した所からは計3段階踏み込んで速度の回復が適うという事だ。
Aさんの後続のBさんも、同じように上りにさしかかれば速度が落ちるのだが、
車間が少し不足気味だとすると、速度の落ちるタイミングは、ほんの少しの時間差しか
ないものの、Aさんの速度が先に落ちる分、車間が急速につまる印象になる。

Bさんが速度を一定に保つには一段アクセルを踏み込むタイミングなのに
Aさんとの車間の管理を優先しなくてはいけないのでアクセルを緩める、
上り坂でアクセルを緩めたらどうなるか。
一定アクセルのAさんよりもBさんは更に速度が落ちる。
車間が保てたとして、ここからBさんが元のスピードに戻すには4~5段階強く踏み込む必要がある。
AT車で強くアクセルを踏み込むと、キックダウン(勝手にギヤダウン)してエンジンがうなりを上げて
怒ったように加速を始める。
“なにしたの?”と助手席の人に思われると嫌だから、ついアクセルの踏み込みが甘くなり
トロトロとしたまま速度が上がらない。
Bさんの後にCさんがいれば、更に速度が下がり渋滞がエンエンと始まる。
ハイギャードのまま、ギャホールドして、軽くアクセルを踏み込めば速度の維持、再加速が
出来るのでは、と思いたいがスカスカのエンジントルクでは加速してくれません(ホント、国○エンジンは
なさけない)。上り坂と言わず平坦路に近いところを走らせても速度の維持管理がうまくいかない車が
多くある。80km/h目標で走らせても、70km~100km/hの間くらいの振れ巾は当たり前。
根をつめても息を止めてコントロールしても、仕上げの良くないATはうまくいかない。
お気軽イメージのATだが、ドライバーの管理半分、あとは車の都合、出たなりのスピードで
そのときのスピードが決まる。
“扱いづらいのがATのスタンダード”と化してしまっている車列では、渋滞はなくならない。
走らせているドライバーの努力も要るが、言う事を聞かない車では話にならない。
こんなATにいったい誰がした!
渋滞の原因もそうだが、一歩間違えれば事故にもつながる話。

成熟しないドライバーと、ノーコンATの組み合わせはこわーいという話。

          


カングーと旅

2012-08-01 13:23:05 | ドライブレポート

この暑い最中、岡山の実家に母親の三回忌で帰った。
そのついでに少し足を伸ばして、島根・鳥取を回った。
行く先々、名の知れた観光地だったが、この連日の暑さのせいか人が少なく
車で移動中も、車から降りて目的地を歩いてもノンビリペースが保てた。

          

神奈川県から出掛けて、一番遠いところが出雲大社。
ナビで見ると800kmちょい。
少し回り道、寄り道が入ったから、往復で1700km程だと思われる。
この行程を3日半だから、平均すると1日400kmと少々を走った事になるが
途中で宿を取ったり、観光地ではたっぷりと時間をとって移動した。

カングーとの旅では、もう何回もこんな感じを繰り返している。
移動の足として充分にその役目を果たしてくれるのはもちろん、
ドライビングの“負荷”も全くといって良いほど気にならない。
慣れもあるにしろ、その日の疲れがドライブ疲れでない事は確かで、
マイッタマイッタといったことは、これまで一度も無い。

旅と疲れの尺度で車を見ていったとすると、カングーはかなり上位に来るのではと思う。
運転席もそうだが、同乗者にもその快適さは同じくだ。
改めてカングーの味をかみしめている。